やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。短編集 作:うみがめ。
「――色、一色。起きろ」
先輩は私を揺すりながら声をかける。
……んっ。 ………ふぁ。
私は小さく欠伸をしながら、寝起きの頭を整理する。
……あ、あーそうだ。先輩と生徒会の仕事をしてたら眠くなって私寝ちゃったんだ。
「一色、起きろ。早く帰ろうぜ」
そう言い先輩はまた私をゆさゆさと揺する。
ふぁ、眠い。
起きるのなんか面倒くさいなぁ。んー、これってこのまま寝てたら先輩はちゃんと私のことを起こしてくれるのかな?
よし!もう少し寝たふりしてみよう。もしかしたら先輩が私にいたずらしちゃうかもしれないしね。
「一色さーん。起きてないんですかー?」
「…………」
「はぁ、こいつが起きねぇと俺も帰れねぇしなぁ」
「つうか、本当に寝てるのか?寝たふりとかじゃないのか」
……!?気づかれてる?
いやいや、でもそんなはずないよね?
ていうか、なんで先輩はこんな美少女が2人きりの空間で寝てるっていうのになんもしないんですかね。もうちょい先輩も獣の血を出していいと思うですけど。
そんな風に悶々としていると。
「普段はあざといけど、寝ているとこいつも意外と可愛んだな」
……ふぇ!?
……今、先輩私のことを可愛いって言ったんだよね?気のせいじゃないよね?
「普段もこんな感じでおとなしかったら可愛げもあるんだけどなぁ」
やっぱり先輩が可愛いって言ってる。気のせいじゃない。
私はにやけそうな顔を我慢する。
ふふふ、なんですか。先輩もやっぱり私のことを可愛いって思ってるんじゃないですか。
「本当に寝てるんだよな?」
先輩はそう言うと、私の頭にそっと手を乗せる。そしてそのまま私の頭を髪に沿って軽く撫でる。
せ、先輩!?
「おぉ、髪ももサラサラしてるな」
「さすがあざといだけあってケアとかちゃんとしてるのか」
「…………」
先輩はそのまま頭を撫で続ける。
せ、先輩!?なにしてるんですか!?そんな簡単になんで撫でるんですか?高いですよ!私の頭を撫でるのは高いですよ!払えないなら身体ぇ払ってもらうことになりますよ!払えませんよね?なら私と付き合って下さい。よろしくお願いします。
と、私は先輩に頭を撫でられたことによって気が動転してしまい頭の中でいつもの断りの言葉を考えていた。
ってそうじゃない。せ、せ、先輩!どうしちゃったんですか。なんなんですか、私のポイント稼いでるんですか?言っときますけどね今更頭を撫でてポイント稼がなくてももう先輩はいろはポイント満タンですよ!いつでもポイントと私本体を交換できますよ!
「一色、本当に起きねぇなあ」
「頭を触っても起きないってなると……」
そして、先輩は。
『プニッ』と今度は私と頬を突いてくる。
…………えっ?
『プニッ、プニッ』
「お、おお。柔らかいな。小さい時の小町みたいだなぁ」
「この柔らかさはハマるな」
そんなことを言いながら先輩はプニプニ私の頬っぺたを突き続ける。
……せんぱい?今日どうしちゃったんですか。こんな風に躊躇なく私に触れるような人でしたっけ?
いつもはアッタクしても全然振り向いてくれなかったのにいくら寝ているからって先輩からこんなガンガン来られるとなんか調子が狂うっていうか……恥ずかしいですよ。
うぅー。どうしよう。このまま寝たふりしていようかな。いやでもこのまま先輩に触られていると恥ずかしくて耐えられる気がしないよ。
そんなことを考えている間も先輩は私の頬っぺたを突き続け。
とうとう私は、
「んっ…………」
声を出すと先輩はガタッガタと私から離れる。
「んー、……ふぁ…………あれ、私寝ちゃってました?」
「あ、あぁ。……お、起こしてたんだけどお前なかなか起きないんだよ」
「す、すいません」
「……でもそんなこと言って先輩、本当は寝ていることをいいことに私にいたずらしちゃったりしてたんじゃないんですかぁ?」
「……いやいや、するわけないだろ」
と先輩は私の方を見ずにそっぽを向いて答える。
でも先輩は私にしたことを思い出したのかほんのり顔を赤くしている。
「い、一色!お前も起きたしそろそろ帰ろうぜ」
「あ、そうですねー」
先輩に言われ、私は鞄を背負い廊下に出て、生徒会室の鍵を閉める。
「ところで、先輩ー」
「ん?」
「もう、今は私の頭を撫でたり、頬っぺたを触ったりしないんですかー?」
「…………起きてたのか?」
「はいっ!『――色、一色起きろ』から起きてましたよ?」
「いやー、先輩気持ちよさそうに私のことを触ってましたねー」
「……なにか望みでしょうか?」
「そんな、怖がらないでくださいよー」
なんでそんな敬語になっちゃうんですかー、失礼しちゃいますよ。私がこんなことで先輩を脅すだなんて思ってるんですかねー?大事な先輩に向かって脅したり、そんな大層なお願いしませんよ。
そして、私は先輩の目を見て。
「さっきのことを雪ノ下先輩や結衣先輩に言われたくなかったら私とちょっとお付き合い下さい」
私は満面の笑みで先輩に向かって言う。