贖罪のゼロ   作:KEROTA

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 ――ローマ帝国におけるキリスト教徒への迫害は日を追うごとに激しくなり、虐殺を恐れた者たちが国外へ脱出する事も当たり前になっていた。

 男は最後までローマにとどまるつもりであったが、周囲の人々の強い要請により、渋々ながらローマを離れるのに同意した。夜中に出発してアッピア街道を歩いていた男は、夜明けの光の中に、こちらに来るイエス・キリストの姿を見る。男は驚き、ひざまずき、尋ねた。

 Quo vadis, Domine(主よ、どこに行かれるのですか)

 キリストは言う

 そなたが私の民を見捨てるなら、私はローマに行って今一度十字架にかかるであろう。

 男はしばらく気を失っていたが、起き上がると迷うことなく元来た道を引き返した。そしてローマで捕らえられ、十字架にかけられて殉教したのである。

(阿部知二他編 『西洋故事物語 上』 河出文庫 1983年 より一部改変)




第27話 FROM SECRET 水面下の日常

 

 ――恩人をあの星へ置き去りにして、自分だけが生き延びてしまった。

 

 君のその認識は間違っていると、私は思う。君が置き去りにしたわけじゃない。彼は自分の遺志であの地に残り、君たちに遺志を託したんだ。

 

 けれど、今の私が何を言ったところで、君にとっては何の気休めにもならないだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()。例え誰もが君のことを許したとしても、他ならない君自身が、それを許せないだろうから。

 

 ならばそれは、君の『罪』だ。そしてそれが罪であるならば、君は償わなければならない。そのために××、君の名前は私が一度預かろう。代わりに君には、ある男の名前を名乗ってもらう。

 

 ――彼はかつて、イエス・キリストに教えを乞うていた弟子の一人だ。

 

 彼は弟子の中でも特に強くキリストを慕っていた人物だったが、キリストが十字架にかけられた時、彼は主を見捨てて逃走してしまう。

 

 しかし、それを心から悔いた彼はその生涯を宣教に捧げ、自らの死を悟りながら死地へと戻り、最期には師と同じくローマで逆十字にかけられ、殉教した。

 

 

 

 ――××。

 

 

 

 これから君と私は、20年の時間をかけて次の脅威に備えることになるだろう。そしてその時が来たのなら、君はもう一度火星に行って、あの悪魔たちと戦わなくてはならない。

 

 だから、その命をかけて贖罪に臨む君に、この名前を贈ろうと思う。十字架を背負い、それでも折れることなき信念を掲げて茨の道を進む君には、彼の名こそが相応しい。

 

 

 

 彼の名は、聖ペテロ。そしてその本名を――

 

 

 

 

 

 ――()()()()()()

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「――モン……シモン! しっかりしなさい!」

 

 聞き慣れたその声に意識が夢から現へと引き戻され、シモンは跳び起きた。心臓が早鐘のように胸を打ち、呼吸が荒い。右手で額をぬぐってみれば、手の甲はじっとりとした感触を感じ取った。

 

「ん、あれ……? ボクは……」

 

 チカチカと眩暈がする。何かの夢を見ていたようだが、記憶に靄がかかったように思い出せない。ぼんやりとする頭で記憶をたどってみたところ、書類に印を押したところでそれは途切れていた。どうやら、そのまま眠ってしまったらしい。

 

「混乱してるところ悪いけど、シモン。何か言うことがあるんじゃないの?」

 

 鈴の鳴る様な声が聞こえた。思わずシモンは顔を上げ、視界に1人の人物の姿を納めると、少しだけ目を丸くした。

 

 そこにいたのは、ブロンドの髪と雪のように白い肌が特徴的な女性。

 

 童顔で小柄、起伏の緩やかな体型をした彼女は、一見すると少女と見紛うほどに幼い印象を受ける。しかし、薄手のベビードールという彼女の衣装や、隅々まで丁寧に手入れのされた肢体、そして何気ない一つ一つの仕草が、彼女に気品と艶めかしさを与えている。

 

「あれ、モニカ……?」

 

 シモンの呼びかけに、女性――モニカは返事をしなかった。彼女はその菫色の瞳に、どこか心配そうな、あるいは不機嫌そうな光を灯し、シモンのことを見つめる。

 自分が先程の問いに答えるまで、口を開くつもりはないらしい。それを察したシモンは、少し考え込んでから口を開いた。

 

「えっと……おはよ?」

 

「やだ、あざと可愛い。これは下半身にキュンと……じゃなくて!」

 

 首をかしげたシモンに萌死にそうになるも、モニカは辛うじて理性を保った。緩んだ表情筋をキッと引き締め直し、彼女はシモンへと詰め寄る。

 

「あなた、大丈夫なの? またうなされてたわよ」

 

 彼女の言葉に、シモンは「あー」とばつの悪そうな声を出して、視線を泳がせる。

 

「……うん、ボクは大丈夫。心配させてごめんね」

 

 ――明らかに嘘をついている。

 

 シモンの仕草から、モニカは瞬時にそれを見抜く。大きなため息を吐き、それから彼女は、目の前に座るシモンへと一つの質問を投げかけた。

 

「シモン、今日のあなたの睡眠時間は?」

 

「うん? えっと……四時間だね」

 

 時計を確認しながら「ちょっと寝すぎちゃったかな?」と漏らすシモン。そんな彼の頭を、モニカは無言で引っ叩いた。

 

「根を詰めすぎよ、シモン。戦術の勉強や戦闘訓練に余念がないのはいいことだけど、少しは自分をいたわったらどうなの?」

 

 そう言ってモニカが目を向けたのは、先程までシモンが眠っていた事務机と、そこに積み上げられた山のような書籍の数々、そしてここ一カ月ほど使った形跡の見られないベッド。先程の発言と合わせれば、彼がハードワークに追われていることは容易に想像が付いた。

 

「いや、このくらいなら全然大丈夫だよ。ボクが自分から言ったことだし」

 

 しかも、本人がそれを望んでやっているから性質が悪い。シモンは隈の浮かんだ目を細めると、更に続けた。

 

「それにほら、そもそもボクの体は人間じゃな――」

 

「少し黙りなさい。それ以上言ったら押し倒してぐちょぐちょにするわよ?」

 

「!?」

 

 慌てて口を閉じた彼の前でしゃがみこみ、モニカは目線の高さをシモンへと合せた。

 

「いい、シモン? その体がどれだけ昆虫に近かろうと、あなたの心は人間なのよ。安息がなければ、どんなに強い精神も必ず壊れるわ」

 

 そう言うと、モニカは己の掌をシモンの胸に当てた。

 

「あなたが壊れてしまったら、私たちの計画は間違いなく破綻するわ。あなたの二十年をこんなことで無駄にするなんて、誰が許しても私が許さない――だから、自分をもっと大切にして。あなたは自分で思っている以上に、大きな存在なの」

 

 いいわね? と念を押すと、シモンはコクコクと頷いた。

 

 ――これでしばらくは大丈夫。

 

 モニカは張りつめていた糸を緩めると、すっと立ち上がった。

 

「本当はあなたに報告があったんだけど……そろそろ朝食ができるから、その時にしましょうか。とりあえずシモン――」

 

 そこでモニカは口をつぐみ、一拍の間を置いてから続けた。

 

「――顔を洗ってきなさい。()()()()()、洗い流した方がいいわ」

 

「!」

 

 驚いたシモンに無言で手を振り、モニカは部屋を出ていった。シモンは慌てて鏡を覗き込み――そして、嘆息混じりに呟く。

 

「……ああ、またやっちゃったのか」

 

 鏡面に映し出された、己の顔。そこには掻き毟ったような生傷がいくつも刻まれており、じんわりと赤い血が滲んでいる。

 

 ――自傷癖。

 

 あの日以来――シモンはたまに、自分で自分の体を傷つけていることがある。意識してやっているわけではない。だが気が付くと、彼の腕は体中を傷つけているのだ。まるで、それが自分に対する罰だとでもいうかのように。

 

「最近よくなってきたと思ったんだけどなぁ」

 

 ぼやきながらシモンは、部屋の中に取り付けられた洗面台の蛇口をひねり、水で顔の汚れを洗い流した。ヒリヒリと痛む傷に顔をしかめつつ、タオルで水気をぬぐい取る。それからシモンは、身に着けていた衣類を脱いでハンガーへとかけていった。

 

 衣類の下からあらわになったのは、鍛え上げられて引き締まった肉体。アスリート顔負けの肉体だが、その全身には歴戦の軍人さながらに大小様々な傷跡が残っている。

 

 

 しかし、真に目を引くのはその傷ついた体ではなく――その手足。

 

 

 彼の体は、薬を打っていないにもかかわらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 また小麦色の髪の隙間からは昆虫の触角が伸び、周囲を探るかの如く、盛んにピクピクと動いている。

 

「――大分、人間離れしたなぁ」

 

 変わり果てた自分の体を見下ろして、シモンは何の感慨もなさそうに言った。

 

 

 

 ――これも、二十年の間に彼の体に起こった異変。

 

 

 

 戦闘訓練、手術、実戦任務。力を求めて自らの『特性』を酷使し続けた結果、いつの頃からか、体の一部が変態状態から元に戻らなくなったのだ。

 

 元々、変態薬を接種せずとも一部の能力は使えた彼だが、生来のベースに関していえば『いつでも使える』を通り越して『常に発現している』状態。その肉体は昆虫の遺伝子を組み込まれた人間から、人間の形をした昆虫の域へと傾きつつあった。

 

 彼が普段からフルフェイスに中華拳法服という奇特な格好をしているのも、これらの異常を隠すためであった。

 

「……まぁ、いっか。特に人間じゃないと困ることもないし」

 

 しかしシモンは、それに対して特に嫌悪感を抱くようなそぶりは見せない。それどころかむしろ、歓迎している節さえ見られる。

 

 ――人としての幸福は、二十年前のあの日に置いてきた。異形になり果てて皆を守れる力が手に入るなら、自分の肉体などいくらでも差し出そう。

 

 その先の未来で、自分以外の皆が笑いあえているのなら、それで十分だ。

 

 シモンは自らの体を隠すように中間拳法服を羽織ると、くしゃくしゃと手櫛で髪を整える。それからシモンは、部屋のドアノブをひねった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ――地下闘技場での一件より二週間後、現地時間にして朝の七時すぎのこと。

 

 シモン達の活動拠点である『基地』内の食堂にて、2人はテーブルを挟んで座っていた。

 既に食堂内は大勢の人で溢れかえっており、彼らの喧騒と朝食の優しい匂いで満たされている。シモンとモニカの前にもトレイが置かれており、乗せられた皿には2人の好みに合わせた朝食が盛りつけられていた。ちなみにメニューはシモンがパン、コーンスープ、それからビタミン剤などのサプリ。モニカはサラダとフルーツの盛り合わせ、それにできたてのスムージーだ。

 

「それじゃあ、シモン。さっそくだけれど、良い報告と悪い報告とエロい報告。どれから聞きたいかしら?」

 

「……とりあえず、最後の報告はいらないかな」

 

 シモンの言葉を聞き流すと、モニカは目の前の大皿から、これ見よがしにバナナを手に取った。彼女は皮を剥いたそれを口元へ運び、舌先でチロチロと舐めながら妖艶にほほ笑む。向かいの机に座っていた男性数名の鼻の下が伸びた。

 

「私は今、発情期よ」

 

「ボクの話聞いてた? あと、お行儀悪いからちゃんと食べてね」

 

 ちなみに、シモンに対しては全く効果が無いようだ。それを悟ったモニカは残念そうに肩をすくめ、そのままバナナにがぶりと喰らいつく。よからぬ妄想を巡らせていた男性数名は一斉に顔を青くして股間を押さえ、周囲にいた女性達の白い視線を集めた。

 

「さて、改めて……どっちから話すべきかしら?」

 

 口の中の果肉を飲み込んで、モニカが言う。その言葉にシモンは少しだけ考え込んでから、「それじゃあ、良い報告から」と返す。モニカは手にしたフォークでトマトをつつきながら頷くと、口を開いた。

 

「良い報告その1。あなたとクロード博士以外、私を含めた6人の団長(メインアーム)の戦闘調整が終わったわ」

 

「本当!?」

 

 モニカの口から告げられた言葉に、シモンの表情がぱっと明るくなった。

 

 ――団長(メインアーム)

 

 彼らは、シモンとクロードが極秘裏を進めている『アーク計画』の中核をなす存在だ。その立ち位置は、現在U-NASA主導の下で準備が行われている『アネックス計画』における幹部(オフィサー)と呼ばれる人材に近い。

 

 その多くが歴戦の軍人で構成され、強力な手術ベースを授けられたアネックスのオフィサーたちは『人間側の兵器』とまで言われる戦闘力を持つが、アーク計画の団長たちもまた、『兵器』と呼ぶに相応しい実力者たち。その能力は、科学者として幹部を良く知るクロードをして「純粋な戦闘能力は幹部と同等クラス」と言わしめる程だ。

 

 しかし彼らに与えられた手術ベースは、その強力さと引き換えに()()()()()()()()()()()()()()()()。中には本人でも制御が難しいほどに苛烈かつ繊細な特性を持つベースもあり、調整が思いのほか難航していたのだ。

 

 どうなることかと気をもんでいたが、この調子ならば計画の実行までには十分間に合うだろう。

 

「喜んでくれたみたいで嬉しいわ。続けて、良い報告その2。()()()()()()()()()()()

 

 その瞬間、音を立ててシモンの表情が固まった。

 

 ――あれ? 何か嫌な予感がする。

 

 硬直するシモンを面白そうに見つめながら、モニカは悪戯っぽい口調で続けた。

 

「ここで悪い報告よ。私達の調整に使った訓練場、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちょっとぉ!?」

 

 思わず大声を上げたシモンに、周囲の人々――全員『アーク計画』の関係者である――が何事かと彼を見つめた。視線に気付いたシモンは顔を赤らめ、恥ずかしそうに席につくと、小声でモニカに訊く。

 

「そ、それで、被害の状況は?」

 

「瓦礫の山になったのが1か所、内部がボロボロで使い物にならなくなったのが2か所、汚染されて防護服なしじゃ入れなくなったのが2か所、ほぼ全ての機器類が故障したのが1か所ね」

 

 その報告を聞いて、シモンはがっくりと肩を落とす。一方で、聞き耳を立てていた周囲の反応は淡泊だった。どうやら訓練場の閉鎖は日常茶飯事らしく、大半が「なんだ、いつものやつか」とばかりに、あっさり聞き流している。

 

「いや、正直こうなるんじゃないかとは思ってたけどさ……先週修理し直したばっかりだったのに……」

 

 恐る恐る脳内でそろばんを弾いてみると、先日の地下闘技場から押収してきた資金が全て吹き飛んだ。財政難――とまではいかないが、幾つか考えていた使い道がパーである。経理部にどんな顔で報告すればいいんだ、これ。

 

「……修繕費、よければウチの財閥から出しましょうか?」

 

 シモンが涙目になったその時、彼の耳はそんな囁き声を聞いた。顔を上げた彼の目に映ったのは、天使のような笑顔を浮かべたモニカだった。

 

「あなたとクロード博士にはお世話になってるし、そのくらいなら負担するわ」

 

「いいの!?」

 

「勿論よ。こう言ってはなんだけど――私たちベックマン財閥にとって、このくらいは大した額じゃないもの」

 

 こともなげにそう言って、モニカは微笑んだ。

 

 ――27世紀の地球上において、世界でも五指に入るほどの財力を有する『ベックマン財閥』。モニカ・ベックマンは、その若き当主である。

 

 彼女はとある事情からアーク計画の団長の一人として計画を主導する立場にいるが、その本業は経営者。成程確かに、差配1つで世界をも動かしかねない彼女にしてみれば、小規模な施設の修繕など大した出費にもならないだろう。

 

「ありがとう、モニカ! 本当にありがとう!」

 

「あら、気にしなくてもいいのよ。私とあなたの仲じゃない」

 

 元気を取り戻したシモンに、モニカが優しい声で言う。近くで話を聞いていた軍服の大男が「……これ、お嬢も訓練場ぶっ壊してるし、マッチポンプじゃねぇか?」と呟くが、他の者がそれを黙殺する。下手なことを言うと、社会的に抹殺されかねないのである。

 

「さ、とりあえず契約書にサインしてちょうだい。大丈夫大丈夫、契約書って言っても形式的なものだから」

 

 だから目の前で、上司が漫然と『コスプレ写真撮影会の参加に同意します』などという怪しげな書類に署名させられそうになろうと、誰も助けない。よくよく内容を観察すると、かなり過激な内容も含まれているようだが――

 

「こいつは放っておいた方が面白そうだな」

 

「コスプレしたシモン団長とか滅茶苦茶気になる」

 

「団長のコスプレ写真売り出せば、予算も黒字なるんじゃね?」

 

 やはり、止めようとする者はこの場に誰一人としていないのであった。薄情な連中である。

 

「チョロ――じゃなくて、ありがとうシモン」

 

「? うん、こちらこそ」

 

 ――いつか詐欺にあって、全財産を巻き上げられたりするんじゃないかしら。

 

 モニカは自分の行いを完全に棚の上にあげ、心の中で呟く。束の間、そうなった状況をシミュレートしていた彼女だったが――

 

「……まぁ、その時は私が養うからいいか。むしろバッチ来いね」

 

 ――どうやら自己解決したらしい、アレな方向に。

 

 思考を終えた彼女は軌道の修正を図るため、小さく咳払いをするとその姿勢を正した。さりげなくシモンの手元から契約書を回収して、彼女は更に続ける。

 

「それとシモン、ついさっきクロード博士から連絡が入ったわ」

 

「!」

 

 僅かに体を前のめりにするシモン。そんな彼に「朗報よ」と告げて、モニカはその口端を釣り上げた。

 

「最後の1人が目を覚ましたわ。術後経過は良好、直に元の状態に戻るはずよ」

 

「よしっ! こっちも間に合った!」

 

 想定していた中でも最善の知らせに、シモンがガッツポーズで喜びを表現した。モニカはサラダを口に含むと、脇に置いていた鞄から小型のタブレット端末を取り出す。

 

()()()6()()()()()()()()()()()()。準備段階としては、怖いくらいに順調ね……それで、シモン。次の一手は?」

 

 シモンは考え込むようにそっと目を閉じると、彼女に問いかける。

 

「各種用品の貯蓄はどうなってる?」

 

「大分集まったわ。200人でも1年間くらいは籠城できるんじゃないかしら」

 

「艦と兵器の調整は終わった?」

 

「全部調整済みよ。小国相手なら戦争を仕掛けても勝てるはず」

 

「薬の備蓄は?」

 

「腐るほどあるわ。薬が尽きる前に、私達の寿命が削りきれないか心配なくらいよ」

 

「うん、問題なさそうだね。それなら――」

 

 そしてシモンは一度言葉を区切り、モニカに告げた。二十年の歳月をかけた、自分とクロードの計画。その成就に必要な、最後のピースの存在を。

 

 

 

 

 

「小吉さん――小町艦長をこっち側に引き込もう」

 

 

 

 

 

 そう言ってシモンは静かに、しかし自信ありげに微笑むのだった。

 

 

「あの人の協力を取り付けられれば――いよいよ『アーク計画』の準備段階は完了だ」

 

 

 

 




【オマケ】 訓練場閉鎖について、各団長の供述

モニカ「しょうがないでしょう? 私の特性を使うと嫌でもこうなるのよ」
(素直に全力を出した結果)

多重人格少女「ご、ごめんなさいぃ……!」
(一部の人格がはっちゃけるのを止められなかった)

フード「……(無言の土下座)」
(うっかり出力の調整を誤った)

オカマ「アタシ的に手加減とか超ナンセンス! こういうのはロックに行くべきよ!」
(そもそも配慮をするつもりがない)

厨二「クク……我が力をもってすれば、これしき造作もない事よ」
(『訓練場を単独で閉鎖させるほどの戦闘力』という厨二な肩書が欲しかった)

筋肉おじいちゃん「ヌハハハハ! ようし、今回も記録更新じゃあ!」
(むしろどれだけ速く訓練場を潰せるかに熱意を向け始めている)

シモン「毎度のこととはいえ、胃が痛い……」
(といいつつ、たまに上6人分の被害を1人で出したりする)


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