贖罪のゼロ   作:KEROTA

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第34話 SIDE ARM 潜入員

 ――幸運だったのは。

 

 彼女の脳が目の前の状況を瞬時に理解し、かつ彼女の体が硬直することなく動いたことだろう。

 

「皆、逃げてッ!」

 

 乱暴にシャワールームのドアを閉め、キャロルは後方へと飛び退きながら叫んだ。

 

「えっ――」

 

 ただならぬ様子のキャロルの声にマルコスが疑問の声を漏らしたその瞬間――キャロルが閉めたばかりのドアが、轟音と共に宙を舞った。

 

 ガン、という音と共にドアが床に叩きつけられると同時、シャワールームの中から、ドアを蹴破った下手人――テラフォーマーが姿を現す。

 

「なっ……!?」

 

 目の前の光景に、燈たちが目を見開いた。黒い甲皮に覆われた肉体、頭部に揺れる触角……どれも、彼らが地球での戦闘訓練で散々目にしてきたものだ。

 

「なんでッ……何でテラフォーマーがここにいるんだよッ!? まだ火星に着いてねえだろうがッ!!」

 

 燈とマルコスの額に、嫌な汗が滲む。

 

 ――()()()

 

 中から出てきたテラフォーマーは、1匹だけ。戦闘員の中でも、とりわけ上位に位置する実力を持つ燈とマルコスにとって、この程度は何の問題もない個体数だ――()()()()()()()

 

「クソッ……今は薬が……!」

 

 ――問題なのは、今の彼らが変態用の薬を持っていないということ。

 

 彼らがその身に施されたMO手術、その真価を発揮するための薬は2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。逆に言えば、今彼らの手元に薬はない――あるはずがないのだ。

 

 今更言うまでもないことだが、人間大のゴキブリであるテラフォーマーの身体能力は、非常に高い。

 

 一歩目から時速320kmで駆け出す瞬発力に、条件さえ整えば力持ちの代名詞たるカブトムシに匹敵する牽引力を発揮する筋肉、そして尾葉を始めとして全身の鋭敏な感覚器官。

 

 これらを備えたテラフォーマーを打ち倒すのは――生身の常人には、まず不可能。常人ならざる身体能力を持つ燈ですら、防戦が精一杯だろう。

 

 更にこのタイミングで、彼らへ追い打ちをかけるかのような事態が発生する。

 

「う、おぉッ!?」

 

 腹の底に響くような爆音と共に、彼らの体を衝撃が襲ったのだ。どうやらそれは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、廊下の向こう側からちらほらと悲鳴が聞こえ始めた。

 

「爆発だと……!?」

 

 辛うじて態勢を崩さずに保ったニコライは、その目を大きく見開いた。

 

 ――仕掛けられていたの類は、全て取っ払ったはず。

 

 彼はテラフォーマーへの注意を緩めずに、視線だけをチラリと窓の外へと向け――視界に飛び込んできた光景に、愕然とすることになる。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ――突如として現れたテラフォーマーは、広間にいた数十人の乗組員たちをパニックにそこへと突き落とした。

 

「薬、薬はどこだ!?」

 

「う、嘘だ……! こ、こんな……!」

 

「それより、誰か幹部を呼んできて!」

 

 ありもしない薬を探す者、恐怖のあまり棒立ちになるもの、オフィサーを呼べと叫ぶ者――動転した彼らは、まるで狼に襲われた羊の群れのように、統率を失って右往左往を始める。

 

 混乱の極地に立たされた彼ら――そんな彼らを更なる絶望の淵へと引きずり込むように、爆音が響き渡る。

 

「な、何だよ、今の爆発は――って、はぁ!?」

 

 偶然、窓の近くにいた乗組員は窓の向こうを覗きこみ――そして、ギョッとしたような声を上げた。

 

「おい! どうした!?」

 

「……べ、()()()()()()!」

 

 別の乗組員が問い正すと、窓を覗きこんだ乗組員が愕然とした様子で答えた。

 

 

 

「別の宇宙船が、アネックスにぶつかったんだッ!」

 

 

 

 ――彼の視界に映っていたのは、眼下に広がる深緑の惑星と、炎を噴き上げるアネックス1号のエンジン。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 どこか卵を思わせる楕円体に近い形の宇宙艦。その外装に書かれていたのは――。

 

「ば、バグズ1号だと!? 何で40年も前の宇宙艦が……まさか、これもゴキブリ達がやったのか!?」

 

 青ざめた顔で乗組員が叫ぶと、それに呼応して別の乗組員が悲鳴を上げる。

 

「お、おい、どうすんだよッ!? テラフォーマーが襲って来て、薬はなくて、しかもアネックスが落ちてて……! このままじゃ、このままじゃ俺ら……!」

 

 その言葉に、この場の乗組員たちの脳裏に共通の言葉が浮かぶ。

 

 

 

 即ち――『死』。

 

 

 

 手元に薬がない、頼れるオフィサーも近くにはいないという、最悪に近いこの状況。彼らの顔が、絶望と諦めに染まり――

 

 

 

「お前ら、ぼさっとすんなァ!」

 

 

 

 ――それを、打ち払うとまではいかないまでも。彼らの意識を現実へと引き戻す、野太い声が広間に響く。

 

 

 

 唯一、この場にいた者たちにとって幸運だったといえる要素が2つあった。

 

 1つは、カリーナの捨て身の行動によって奇跡的に死者が出ていない点。

 

 もしも死人が出ていれば、彼らの恐慌は収拾のつかないものとなっていた。それはやがて彼ら自身の首を絞め、より被害を拡大させるという最悪の結果を招くことになっていただろう。

 

 そしてもう1つは、ある程度の判断力を伴い、この状況下で動けた者が2人存在したことだ。

 

「逃げろ、お前らッ! 俺が奴の足止めをする!」

 

 1人目は、ボーン。

 

 他の乗組員たちを守るように飛び出した彼の手には、1丁の機関銃が握られていた。それを見た第1班の乗組員の一人が、震える声でボーンに言う。

 

「む、無茶だ、ボーン! 忘れたのか、対人用の防犯器具程度じゃこいつらは……!」

 

「んなことは分かってんだよ!」

 

 しかしボーンは一歩も退かず、自身に声をかけた同僚に怒鳴り返す。

 

「お前こそ、忘れたのかよ!? 『()()()()()()()()()()()』! リー教官に言われただろうが!」

 

 彼の言葉にはっとした表情を浮かべたのは、日米合同第1・第2班に所属する乗組員たち。同時にその脳裏には、彼らの教官を務めた旧バグズ2号の乗組員、ゴッド・リーが毎日のように口にしていた言葉が蘇る。

 

『臆病なのは結構。だが、『非戦闘員だから自分は戦わなくていい』……そんな甘ったれた考えは、今すぐに捨てろ。その油断に土壇場で食い殺された奴を、俺は何人も見てきた』

 

『安全地帯なんてもん、あの地獄(ほし)にねぇ。ゴキブリはどこからでも入り込むからな……どんなに強い奴だろうと、あの星じゃ死ぬんだよ。いいか、これだけは覚えとけクソムシ共』

 

『戦場は竦んだ奴から死ぬ。諦めた奴から殺される。もし、お前らが本気で生き延びてぇと思ってるなら――』

 

()()()()()()()()()()! ()()()()()()()! 今が、その時だろうがよォ!」

 

 ボーンは叫ぶと同時に、銃の引き金を引く。途端、銃口が火を噴き上げ、鉛の弾丸がテラフォーマーの体へと撃ち込まれた。放たれた弾丸は黒の甲皮を貫き、その体から白い体液を飛び散らせた。

 

 ――テラフォーマーに、銃の効果は薄い。

 

 だが、テラフォーマーに銃が傷をつけているという事実。多少なりとも、対抗策があるという事実に、周囲の者たちは僅かながらに冷静さを取り戻した。

 

「そうだ……! このまま何もしなきゃ、全員本当に死んじまう!」

 

「こんな、こんな終わり方……認められるかよォ!」

 

 そんな声が乗組員たちの間から沸き上がり――それが、彼らを縛り付けていた死神の抱擁を振りほどく。

 

「銃だ、銃を持ってこいッ! ボーンを助けるぞ!」

 

「私達は幹部に連絡を……ッ!」

 

 状況が、動き始める。

 

 つい先程まで脅かされるだけだった彼らは、たった今この瞬間から抗う者として、現実に向き合った。

 

 ――この場にいる者のほとんどは、非戦闘員。

 

 あるいは、テラフォーマーに対抗しうる実力を持った者であっても、薬がない現状で発揮できる力は常人の域を出ない。所詮は一山いくらの補充兵、生身の彼らにできることなどたかが知れている。

 

 だが、彼らは『人間』だった。

 

 食い扶持にあぶれ、借金に塗れ、たどり着いたアネックス計画。彼らが命を懸けたまでこの計画に身を投じたのは、遠い宇宙で虫のように殺されるためではない。

 

 金を、人権を……そして、人並みの幸福を勝ち取るためである。

 

「――人間舐めんな、ゴキブリ野郎! 俺達の仲間に、手ェ出すんじゃねぇッ!」

 

 故に、ボーンは咆哮した。自分達こそが人間であると、証明するかのように。

 

「じょうじょ……じじ」

 

 果たして彼の祈りが通じたのだろうか? あるいは、銃を持つ彼を少しばかりでも脅威と感じたのだろうか? 

 

 理由はどうあれ、テラフォーマーはカリーナから視線を外すと、ボーンへと向かって一直線に歩みを進め始めた。

 

 

 

「カリーナッ!」

 

 

 

 そしてその隙に、冷静さを保っていたもう1人――マルシアが、倒れ込んだカリーナに駆け寄る。彼女は倒れたカリーナを抱き起そうとして、その怪我の度合いに目を見開いた。

 

「ッ、これは……!」

 

 ――苦し気に息を荒げるカリーナの()()()、無くなっていたのだ。まるでスプーンで掬いとられたプリンのようにえぐり取られたそこからは白い骨が覗き、景気よく血が溢れだしている。

 

「まずい――!」

 

 マルシアの顔が青ざめる。かなりの重傷、しかもこのまま放っておけば失血死の可能性がある。一刻も早く処置を施さなければ、彼女の命が――

 

「ぐっ……!」

 

「っ! しゃべらないで、カリーナ! 傷が開く!」

 

 カリーナが何事か言おうとしてるのを見て、マルシアは慌てて制止の声を上げると、その体に腕を回した。

 

「今、医務室に連れてくから! いい、絶対に諦めるんじゃ――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……あなた方の理念は分かりました。あなた方がこれからやろうとしていることも」

 

 七星は頷きながら「ですが」と言葉を続けた。

 

()()()()()()()()()()。どれだけ強い兵士を先に火星に送り込んで、現地の安全を確保したとしても……」

 

「その通り。それだけでは、()()()()()()()()アネックスの乗組員たちが無防備になってしまう」

 

 クロードは頷くと、手中のグラスを軽く回した。カラン、という氷が耳心地の良い音を奏でる。

 

「だから、こちら側の内通者を紛れ込ませることにした。アネックスの定員を100人から110人へと無理やり拡張して、我々が集めた人材の中でも特に優れた能力の持ち主をね。これが、そのリストさ」

 

 そう言って、クロードは懐から折り畳み式の小型タブレットを取り出すと、画面を数度タップしてから、それを七星へと手渡した。

 そこに表示されていたのは、6人の乗組員だった。それぞれの顔写真の下には、それぞれの手術ベースやランキングなど、簡単なプロフィールが表示されている。

 

 

 

 第1班所属 東堂大河 マーズランキング76位

 

 MO手術『公式登録』ベース“環形動物型” イバラカンザシ 

 

 

 

 第2班所属 キャロル・ラヴロック マーズランキング98位

 

 MO手術『公式登録』ベース“植物型” ノシバ

 

 

 

 第3班所属 ニコライ・ヴィノグラード マーズランキング39位

 

 MO手術『公式登録』ベース“昆虫型” タマムシ

 

 

 

 第4班所属 (フー)鈴花(リンファ) マーズランキング71位

 

 MO手術『公式登録』ベース“両生類型” カジカガエル

 

 

 

 第5班所属 バスティアン・フリーダー マーズランキング44位

 

 MO手術『公式登録』ベース“節足動物型” アカヤスデ

 

 

 

 第6班所属 カリーナ・チリッロ マーズランキング99位

 

 MO手術『公式登録』ベース“刺胞動物型” タコクラゲ

 

 

 

「非戦闘員が内通者……? いや――ベース生物を偽装して、ランキングを下げたのか!」

 

 無言で頷いたクロードに、七星は信じられないとばかりに首を横に振った。

 

「よく誤魔化せましたね……まさか、買収したんですか?」

 

「いや……我々は常に資金難でね、そんなことに回す予算はどこにもない」

 

 静かに笑うと、クロードは種を明かした。

 

「何のことはない……彼らの体に、特殊な装置を仕込んでおいたんだ。それが作動している間、彼らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言ってクロードはグラスの淵に口をつけると、ウイスキーを喉の奥へと流し込んだ。

 

「当然そんな状態じゃ本来の特性は発揮できないし、変態後の姿もかなり貧弱になる。だから査定側に手を回さず、本人たちに無理な演技もさせず……彼らを偽りのベースとまやかしの実力でランキングに登録することができた」

 

 クロードはそう言うと、やや赤らんだ顔にニヤリと笑みを浮かべた。

 

「だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。さすがにオフィサークラスとはいかなかったが……彼らは6人が6人とも、本気を出せば『マーズランキング』のトップランカーにも比肩しうる実力者たちだ」

 

 クロードの言葉に、七星は生唾を飲んだ。もしもその話が本当ならば、先程までは夢物語に過ぎなかった『全員生還』という任務内容も一気に現実味を帯びてくる。

 

 それほどの存在なのだ、マーズランキングのトップランカーとは。

 

 たった1人であっても、その戦力価値は下手な兵器を遥かに上回る。まして、彼らが送り込まれたのは資材の乏しい火星。その存在がどれだけ頼もしいかは、言うまでもないことだ。

 

 

 

 

 

 だが――()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「加えて、我々のアークにおける上位戦闘員の多くは――彼ら6人も含め、とある特殊なMO手術を施してある」

 

「特殊……ですか?」

 

 つまみとなる料理の皿を用意する手を止めると、本多はクロードに訊いた。

 

「バグズ手術と違って、MO手術では昆虫『以外』の生物もベースにすることができる、という話は既に聞いてますが……」

 

「その通り――だが我々の研究は、既に次の段階へと進んでいる」

 

 彼の疑問を首肯すると、クロードは更に続けた。

 

「我々は新たに、3種類の『新式人体改造手術』を開発した。これらの手術は失敗のリスクが高く、ついに完全な形まで持っていくこともできなかったが――それでも、通常のMO手術以上の力を、被験者へともたらす」

 

 そう言うとクロードは七星の手にあるタブレットを操作し、表示画面を切り替えた。新たに表示されたそのデータを読み進めるにつれ、本多と七星の顔は次第に驚愕へと染まっていった。

 

 

 

MO(モザイクオーガン)手術(オペレーション) ver(バージョン)『C』、『G』、『H』――これらの手術を受けたアークの隊員たちは、必ずや火星での『悲劇』を覆す起点となるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、医務室に連れてくから! いい、絶対に諦めるんじゃ――!」

 

 マルシアはカリーナへと激励の言葉をかけようとして――そして、口をつぐんだ。

 

 なぜなら手中のカリーナは、苦悶に顔を歪めながらも決して『諦め』や『恐怖』の色が、欠片も浮かんでいなかったから。

 

 マルシアは、その表情を知っていた。それは戦闘員(じぶんたち)が戦闘時に浮かべるものと同じ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……!?」

 

 思わず動きを止めたマルシアの腕の中、カリーナは一瞬だけ何かに驚いたような表情を浮かべ――そして。

 

 

 

Si(スィー)……!」

 

 

 その口元に薄く笑みを浮かべると、小さくそう呟いた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『『ゴルゴン』より、特務部隊『イース』へ。緊急事態発生、緊急事態発生。アネックス艦内へのテラフォーマー15匹の侵入、およびエンジン部の重大な破損を確認した。これにより『プランδ』への移行は確定的。迅速な対応のため、緊急事態(メーデーコード)の発令を要請する』

 

『こちら『イース』、状況了解! マニュアルに則り、緊急事態(メーデーコード)を発令! 潜入員(サイドアーム)6名に()完全変態の解除、及び敵対者との交戦を許可する! アーク1号による救援プランもαよりδへと移行する! オールオーバー、健闘を祈る!』

 

『了解! 聞いたな、お前ら! 既にオフィサー達が事態の対処に動いている! テラフォーマーの積極的駆除は彼らに任せ、俺達は一般乗組員の保護に向かう! さぁ――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――行くぞッ!』

 

『おう!』

 

YES(うん)!』

 

да(あいよ)!』

 

好的(おっけー)

 

Si(了解)……!』

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――倉庫エリア。

 

「ま、そういうわけだゴキブリ野郎。散々荒らしてくれやがったみてーだが……これ以上お前らの好きにはさせねぇ」

 

 進路を塞ぐようにテラフォーマーの前に立ちはだかり、腕を組んだリーゼント頭の青年が唸る。

 

「音声認識、『ゴールドアックス』――非完全変態解除(アンロック)!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――シャワールームエリア。

 

「さぁて、ニコライ君。アタシ達がやることは分かってるね?」

 

「たりめーです。ちょいと後手に回っちまいましたが――」

 

 日に焼けた赤毛の女性が背後の仲間を庇うように立ち、くすんだ金髪パーマの青年がガシガシと己の頭を掻く。そして、2人は同時に声を張り上げた。

 

 

「音声認識『シンデレラ』、非完全変態解除(アンロック)!」

 

「音声認識『ノースウィンド』、非完全変態解除(アンロック)!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――食糧庫前。

 

「むにゃむにゃ……はっ!? 大丈夫、つまみ食いはしてない……ちょっとしか」 

 

 床を蹴り、風の如き速さで迫るテラフォーマーに、シュシュで髪をサイドテールにまとめた少女がのんびりした調子で、眠たげに呟いた。

 

「音声認識『マーメイド』。非完全変態解除(アンロック)……ふわあぁ、眠い……」

 

 

 

 

 

 

 

 ――中央階段。

 

「そこまでだ」

 

 階段を上り、脱出機の格納庫へと向かおうとするテラフォーマー。その前に仁王立ちになった坊主頭の男性が、落ち着いた声で宣言する。

 

「音声認識『ゴルゴン』、非完全変態解除(アンロック)――俺を殺さない限り、ここは通れんと思え」

 

 

 

 

 

 

 

 ――クルー居住区。

 

()ッ……ふふ、さすが私ですね……! (みず)も滴る、クールビューティ……ですっ!」

 

 怒号と銃声が響く中、眼鏡の女性は痛みをこらえて一気に上体を跳ね起こすと、力の限り叫んだ。

 

「音声認識『ラプンツェル』……! 非完全変態、解除(アンロック)ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロード・ヴァレンシュタインの策によって、アネックス1号に紛れ込んだ潜入員たち。彼らの口は異なる場所で、しかしまるで示し合わせたかのように――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人 為 変 態 ―― ッ !」

 

 

 

Synth-METAMORPHOSIS(人為変態)!」

 

 

 

преобразование(人為変態)っと!」

 

 

 

人工转型(人為変態)……」

 

 

 

「――Künstlich(人為)- METAMORPHOSE(変態)

 

 

 

Artificialmente(人為)METAMORFOSI(変態)……!」

 

 

 

 

 

 ――全く同時に、人類の反撃の合図となる、その言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 




【オマケ】

クロード「MO手術ver『C』『G』『H』……語呂合わせは『HなCG』です」

本多「なるほど……! これは覚えやすい……!」

七星「それでいいんですか、お二人とも?」


【お願い】

 作者の外国語技能は高くありません。「今話の台詞、ここ文法的に間違ってるぞ!」というのがあったら、こっそり教えてください……(正しい文も教えていただけるとなお嬉しいです)

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