贖罪のゼロ   作:KEROTA

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第36話-【B】 JORKERS 切り札と道化師

 ――アネックス1号へのテラフォーマー襲撃より、遡ること10分前。

 

 火星の地表には、1台の大型宇宙船があった。『アネックス1号』と瓜二つの――というよりは全く同一の規格で作られたそれ。しかしその船には、全く別の名前が付けられていた。

 

 

 

 ――ゴキックス1号。

 

 

 

 搭乗ゲートの横に取り付けられたネームプレートに刻まれていたのは、そんなあまりにもふざけた名前だった。

 

「……じょうじ」

 

 そんな宇宙艦の前に整列するのは、100匹のテラフォーマー達。だが、通常のテラフォーマーと違っている点が2つほどあった。

 

 1つ目は、彼らがアネックスの乗組員と同規格の制服に身を包んでいるという点。更にはウィッグなどをつけているものもおり、その見た目は遠くから見れば人間に見えないこともない。

 

 そして2つ目は、彼らがどれも特異な見た目をしているということ。具体的には額に蜘蛛を思わせる6つの目を備えた者や、鷲を思わせる羽が腕に生えている者、シャチを思わせる背びれが背中に生えたものなど……彼らがMO手術を受けていることは明白だった。

 

 一見何の統一性もないようにも見える、ゴキブリ達の背格好。だが、アネックス計画に携わる者ならばすぐに察することができるだろう……彼らの衣装や特性が、アネックス1号の搭乗員たちを模していることに。

 

「じょじょう」

 

 そんなアネックス乗組員を模した94匹の指揮をとるのは、オフィサーを模した6匹のテラフォーマー。

 

 短い頭髪を雑に逆立てた、腕に黒光りする毒針を生やした個体。

 

 安物の金髪ウィッグと眼鏡をかけた、力士型もかくやというマッチョな体格の個体。

 

 どう見ても偽物と分かる付け髭を付け、茹であがった蟹の様な色合いの甲殻に全身を覆われた個体。

 

 同じく付け髭と眼鏡を付けた、まだら模様の触腕を卑猥にくねらせる個体。

 

 口元に傷シールを貼りつけた、体表が妙にぬるついている個体。

 

 もはや現物に似せるのは諦めたのか、腰に太刀を携えただけのスキンヘッドの個体。

 

 

 

「じょうじじょうじ、じょう」

 

 毒針を携えた個体――おそらく、小町小吉に扮したつもりなのだろう――が、居並ぶテラフォーマーたちに声をかける。それと同時に、テラフォーマーたちはゴキックス1号への搭乗を開始した。

 

 

 

 ――地球有ゴキ制圧計画 『ゴキックス1号計画』

 

 MISSION① 『地球にA・E・ウイルスをばらまき、サンプル(人間)を各班200人以上捕獲すること』

 

 MISSION② 『その間、可能な限り人間を殺すこと』

 

 ――『ゴキックス1号計画』一般ゴキブリ用マニュアルより

 

 

 自らの故郷を踏み荒らす人間(害虫)を駆除すべく、混沌に塗れた100匹の兵士は今、火星を発つ――。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「という設定でした~♪」

 

 今まさに、強力なジェット噴射と共に火星地表を離陸した宇宙艦『ゴキックス1号』を見上げながら、彼はケラケラと笑い声を上げた。

 

 平々凡々を絵に描いたかのような、西洋人の少年である。強いて特徴らしい特徴を挙げるのならば、衣服が白衣であることくらいだろうか。

 

 ――アダム・ベイリアル。

 

 狂人と悪ふざけの権化たる彼は、徐々に小さくなっていく宇宙艦を見上げた。

 

「行っておいで、ゴキックス。そして必ず、戻って……ん? 何あれ?」

 

 万感の思いと共に彼は呟きながら、彼は地平線の向こう側が微かに輝いたのを見た。

 

 

 

 そしてその直後――火星の対流圏に差し掛かろうとしていたゴキックス1号が、()()()()

 

 

 

「え、えええぇぇ!?」

 

 驚きと残念さが入り混じったような声で叫ぶアダムの真上で爆炎が広がり、周囲に宇宙船の残骸や破片が雨のように降り注ぐ。

 

「ちょっとちょっと! いくらなんでもそりゃないでしょ!? 人件費はゴキブリ達がやってくれたからまあいいとして、あの宇宙船結構高かっ……あばっ!?」

 

 ブーイングを飛ばすアダムの頭に、ゴキックス1号の破片がぶつかった。破片といってもそれは人間の顔面程の大きさがあり、落下速度は優に時速100kmを超える。当然衝撃も「痛い」で済むようなものではなく、破片がぶつかったアダムの顔右半分が、まるで銃で撃たれたトマトのように吹き飛んだ。血とピンク色の肉片が飛び散り、火星の土を赤に染める。

 

「あイテテ……これはひどい」

 

 ――通常なら即死しているはずの怪我。

 

 アダムはしかし、それを意に介した様子を全く見せなかった。彼はぐっと伸びをし――そして無事な左耳で、背後から近づいてくる足音を捉えた。

 

 

 

「相変わらず化け物じみた生命力ですね、博士」

 

 

 

 アダムが振り返ると、彼の左目に1人の人間が映りこんだ。痩身ながらも、しなやかな筋肉を持った男性だ。闇で塗りつぶしたかのようにドス黒い髪に、濁ったグリーンの瞳に灯る鋭い眼光。顔を始めとして全身についた傷も相まって、非常に近寄りがたい雰囲気を放っている。

 

「ああ、おかえりプライド。首尾はどう?」

 

「……まずは頭を再生してください、気色の悪い。報告はそれからです」

 

「あ、ごめんごめん」

 

 心底不快そうな男性――プライドの言葉に、アダムは悪びれた様子もなく言うと、パチンと指を弾いた。途端、彼の顔の骨肉がぐじゅぐじゅと蠢き始め、数秒と経たずに彼の右頭部が元の形に再現された。

 

「これでよし、と。それで、首尾はいかほど?」

 

「――万事、滞りなく。予定通りゴキックス1号を『囮にして』、バグズ1号は無事に熱圏へと飛翔しました。もう間もなく、アネックスと衝突するかと」

 

「うん、まぁ当初の目的は達成したかな」

 

 プライドの報告にアダムは頷くと、未だ黒い煙の晴れない空を仰いだ。

 

「あーあ……あの調子じゃ多分生きてるゴキブリ居ないよねー。一応、再生能力がある奴も結構いるけど――」

 

「無理でしょうね。艦を墜としたのは、例の救助艦に取り付けられた小型『ピョートル巨砲』のようですから」

 

 ――ピョートル巨砲。

 

 ロシア史の中でも特に偉大な皇帝の名を冠するその兵器は、人類史上最も『巨大』にして『強力』な大砲だ。条件さえ揃えば地球から火星を砲撃することさえ可能だというのだから、その威力は文字通り化け物級。

 

 無論、アーク1号に取り付けられたそれは大幅に小型化しているため、本家本元ほどの破壊力はないが……それでもなお、破壊力と熱量は並大抵の兵器を凌ぐ。

 

「おそらく、小型化しても火星の半球は射程圏内でしょう。それを()()()()()()()()至近距離で受けたとなれば――再生云々以前に、細胞が残ってるかどうかが怪しいですね」

 

「デスヨネー……まぁゴキックスの皆も最低限の役割は果たしたわけだし、よしとしようか」

 

 そう言うとアダムは、己の体をクルリと反転させ、プライドに向き直った。

 

「それじゃあ本題だ、プライド君――()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()?」

 

 その問いに、プライドは何も答えない。彼は何も言わずに懐へと手を入れると、そこから携帯型のタブレット端末を取り出した。

 

「――調査の結果はこちらです、博士」

 

「ありがとう。さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 それを受けとるとアダムは、まるで子供のように目を輝かせながら端末を起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潜入員『ゴルゴン』よりメーデーコード発令要請! アネックス1号のエンジン部が破損し、テラフォーマーによる襲撃を受けた模様!」

 

「衛星カメラより確認! アネックスのエンジン部に炎上を確認! バグズ1号が接触したことによる機関部の破損が原因の模様!」

 

「墜落までおよそ推定50分――カウントスタート!」

 

 ――アネックス1号、事故発生直後。

 

 アーク1号の管制室にいた者たちは、上へ下への大騒ぎに見舞われていた。

 

 彼らはアーク計画において『管制』を司る特務部隊、『イース』の隊員たち。実際に救助活動を行う各団のオペレートやアーク1号の兵器操縦などを担当し、火星実働部隊にとっての司令部を務める特務部隊である。

 

「メーデーコード受諾、α班は非完全変態解除と交戦の許可を『ゴルゴン』へと通達しろ!β班は引き続き衛星カメラを通してアネックスを監視! 脱出が成ったのならすぐに報告! γ班は火星地表の監視を! 他にも宇宙船があったのなら、すぐに『インフェルノ』で叩き潰せ! δ班は車庫のハッチ付近にテラフォーマーの反応がないか索敵!」

 

 そんな特務部隊を束ねるのは、黒ぶち眼鏡と無精ひげが特徴的な中年男性――その名を紫藤(しどう)光政(みつまさ)といった。

 

「何から何まで連中の掌の上、か……」

 

 静かに呟く紫藤の顔に浮かぶのは、苛立ち。彼は次々と飛び込んでくる情報を処理しながら、思わず舌打ちを溢す。

 

 アーク1号に取り付けられた小型のピョートル巨砲――改め『インフェルノ』の爆撃で、謎の宇宙艦が飛び立つのを防いだところまでは良かった。

 だがそれが罠だと気づいた時には、既にバグズ1号は火星対流圏まで突入してしまっていた。下手に砲撃すればアネックスをも巻き込みかねない位置にまで飛翔してしまっていたそれを撃つわけにもいかず、彼らは黙ってアネックスが事故を起こすのを見ているしかできなかった。

 

 そこからは、ただ淡々と必然の連鎖だった。バグズ1号はアネックスへと衝突、エンジン部に大幅な損壊を与える。バグズ1号に潜んでいたテラフォーマーはアネックスへと飛び移り、アネックス計画はプランδへの移行を余儀なくされた。

 

「これ以上、奴らに好き勝手させるのは癪に障る。火星に来てまで過労死は避けたかったが……しゃーない。休日返上で働くとするか!」

 

 そう言って紫藤はガム型の変態薬を口に含むと、それを噛み潰した。途端、彼の額には6つの目が出現し、肌が黄と緑の縞模様で彩られていく。やがて変態を終えた彼の姿は、民家の軒下や公園の草木の影で頻繁に見かける、とある生物の特徴を象っていた。

 

 

 

 

 

 紫藤光政 

 

 

 

 MO手術ベース ”節足動物型”  

 

 

 

 ―――――――――――― ジョロウグモ ――――――――――――

 

 

 

 

 

『蜘蛛』と言われて真っ先にこの姿を思い浮かべる者も少なくないだろう。この生物は北海道を除く日本全域に生息する、ごくごくありふれた造網性の蜘蛛である。

 

 毒牙はあるが、原寸大ではほとんど人間に害は及ぼさず。蜘蛛のイメージ通りに強靭な糸を紡ぐものの、しばしば鳥すらも捕らえてしまうような近縁種に比べれば強度も控えめ。

 

 平均的な戦闘員並みの実力はある者の、怪力や猛毒などの対象を殺傷することに特化した強力な特性(ベース)が揃い踏みするアークにおいて、彼の能力はかなり大人しめといえるだろう。

 

 

 

 だが、それでいい。彼の本業は戦闘ではなく――現場から集まる情報の処理なのだから。

 

「マジックハンド、展開」

 

 紫藤が言うと同時、彼の背中に取り付けられた専用武器である神経接続式マジックハンドが展開された。彼は6本へと増えた手から糸を伸ばすと、天井に可動式のアームでつりさげられたモニターを引き寄せる。

 

「目と手が増えりゃ作業効率も倍ってね……ったく、細胞レベルで染みついた社畜気質は我ながら嫌になるぜ」

 

 そうぼやきながら、紫藤は自身を取り囲むように配置されたモニターのキーボードを叩き始めた。

 

 ――クモ類に由来する8つの目と、8本の手足。

 

 これを駆使した情報処理の速さこそ、紫藤が特務部隊『イース』の隊長を任されている理由。通常ならばできない芸当だが、日本の中でもとりわけ労働環境の悪いブラック企業で、過労死寸前まで追い込まれながら身に着けたスキルがそれを可能にしている、というのは何とも皮肉な話である。

 

 だが、情報処理に長けているのは彼に限った話ではない。特務部隊『イース』に配属されている他の隊員たちは、誰もが『情報処理』――コンピュータを使った作業において、何かしらの力を発揮する特性の持ち主たちだ。

 

 アーク計画がテラフォーマーやアネックスの裏切り者に仕掛けているのは、『競争』ではなく『戦争』。であれば、その勝敗はただ純粋な強さだけで決する程単純な物ではない。故に、強力無比な乗組員たちが万全の力を発揮できるよう、サポートすること――それこそが『管制』を司る特務部隊に与えられた任務であり、彼らの戦場である。

 

「――救助プランδへの移行準備完了っと! δ班、索敵状況はどうなってる!?」

 

 本来ならば数人がかりで行う作業を1人で片付け、紫藤が問う。すると、モニターに向かっていた若い隊員が口を開いた。

 

「ハッチ周辺にテラフォーマーの反応はありません! しかし――」

 

「よし! 今すぐに、アーク第一~第六団に出動指令を出せ!」

 

 間髪入れずに紫藤の口から放たれた言葉に、その隊員はぎょっとしたように眼を見開いた。

 

「で、ですが隊長……」

 

 恐る恐ると言った様子で、彼は紫藤に進言する。

 

「本艦は依然、2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。先程、掃討のために団長達が出撃しましたが、さすがにこの短時間では――」

 

「ああ、問題ない。団員たちに出撃の指示を出せ」

 

 しかし隊員の進言に頷かず、紫藤は先程と同じ指示を繰り返した。隊員は一瞬だけ迷ったような素振りを見せたものの、艦内放送用のマイクに手を伸ばす。やがて放送を終えてマイクの電源を切った彼に、紫藤が声をかける。

 

「お前は実働部隊に配属されてから日が浅かったな……ってことは、まだ団長達の実力は知らねえな?」

 

「……はい」

 

 紫藤の言葉に隊員は頷いてから、ゆっくりと口を開いた。

 

「団長達が強い、ということは分かっているつもりです。ですが2万のテラフォーマーを相手にするのは、人類の『兵器』と呼ばれるオフィサーでも厳しいはず……いや、そもそも。それだけのテラフォーマーを、たった7人だけで真っ向から迎え撃つなんて、()()()()()()()()()……!」

 

 ――彼の言葉は、実に妥当なものであった。

 

 2万のテラフォーマーは現在、7方向からアーク本艦へと強襲をしかけている。よって純粋に総軍と戦うというわけではないが……それでも、団長達が圧倒的多対一の戦いを強いられることに違いはない。

 

 例えどんなベース生物による手術を受けていようとも、普通は数千ものテラフォーマーに敵うはずがない。並外れた――それこそ、アネックスのオフィサー級の技術や戦闘技能を持ち合わせて、やっと勝負になるかどうかというレベル。

 常識的に考えれば、団長達の出撃から30分と経っていないこの状況で救助プランを開始する判断は、明らかに最悪手だ。

 

 

 

 

 

 ――常識の範疇で考えれば、の話だが。

 

 

 

 

 

「……一つ質問をしよう」

 

 隊員の言葉に明確な返事を返さず、紫藤は言った。

 

「難しく考えないで、普通に答えてくれ……拳銃と戦車砲、どっちが強いと思う?」

 

「は、はい?」

 

 突拍子のないその質問に、隊員の口から気の抜けた様な声が上がる。しかし呆然としたのも一瞬のこと、彼はすぐに気を取り直し、自分の脳内に浮かんだ答えを口にした。

 

「戦車砲です。強度・破壊力共に、拳銃の比ではありませんから」

 

「だよな。それじゃあ、その戦車砲と核爆弾なら?」

 

「……おそらくは、後者かと。核爆弾1発で、戦車砲よりも大規模な殺戮が可能です」

 

「それもその通りだ。それなら――」

 

 そう言って紫藤は、隊員の目を見据えた。

 

 

 

 

 

「――()()()()()()()。どっちが強い?」

 

 

 

 

 

「それは……」

 

 隊員が言い淀む。拳銃と戦車砲、戦車砲と核弾頭。これらはいずれも『兵器』というくくりであったために容易に比較し、すんなりと解を導き出すことができた。

 

 だが、最後の質問だけは、全くの別物同士の比較だ。これではすぐに答えることはできない……否、そもそも確固たる答えなどあるはずもない。どんな状況を想定しているのかによって、導き出される答えは違うのだから。

 

「ま、そういうことさ……アネックスのオフィサーが『兵器』なら、ウチの団長達は『災害』ってわけだ。どっちもやべー被害を叩きだすって面では変わらねえが、本質はまるで違う。だから団長達がオフィサー級の実力を持っているからと言って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――その逆もしかりだがな」

 

 紫藤はそう言いながら、天井のモニターへと糸を伸ばした。

 

「王道の強さなら、オフィサーの方に軍配が上がるだろう。的確に用いれば一騎当千、そうでなくとも十分に実力を発揮する。そういう意味じゃ、オフィサーの『兵器』って表現は実に的確だ」

 

 ――けどな。

 

「邪道の強さ、()()()()()()()()()()()()()()、間違いなくウチの団長たちの方が上だ。まさに『災害』――適応できなきゃ最期、数も実力も関係なしに、相手はただ蹂躙されることしかできない」

 

 するすると手繰られた糸に引き寄せられ、モニターが天井から降りてくる。そこに移されていたのは、団長達の動向を確認するために飛ばされたドローンカメラの映像。

 

「さ、実際に映像で確かめてみな。俺達アークの誇る、最強にして最大の『切り札』――その真価って奴をよ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 今から30分ほど前のこと。盆地にて待機していたアーク1号本艦に、総勢2万5000匹からなるテラフォーマーの大軍勢が大攻勢を仕掛けた。

 

 各々が棍棒や銃器で武装するか、そうでない者は例外なく力士型という、テラフォーマーたちの精兵部隊。

 

 そんな彼らを率いていたのは、腰布を巻いた8匹のテラフォーマー。突然変異で生まれたスキンヘッド型には及ばないものの、幼少期から教育を施され非常に優れた知能を持つ個体達だった。

 

 アークに搭載された兵器の危険性は、数日かけて散発的に送り込んだ偵察たちが身を以て教えられていた。そこで彼らは手勢を3000匹の部隊7つと、4000匹からなる部隊を1つの合計8部隊に分け、それぞれ別方向から攻め入った。

 

 ――彼らのトップが与えた指示はあくまで『威力偵察』であったものの、8匹のテラフォーマーたちは堅牢な人間どもの要塞を『陥落させる』べく入念に計画を練り、そのための準備も完全に整えていた。その作戦はまさに、テラフォーマーたちの装備と状況を考えれば『最適解』。故に彼らは――指揮官から一兵卒に至るまで、作戦の成功を信じて疑わなかった。

 

 

 

 この数十分後に、2万5000匹の大軍勢が全滅することになるなど――この時の彼らには、知る由もないことである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 アーク1号の北に広がる苔の平原から攻め込んだのは、8部隊の中でも特に大規模な4000匹のテラフォーマー部隊。

 

 彼らに与えられた役割はただ1つ。それは、アークに搭載された兵器やアークの団員たちの注意を引き付けること――早い話が、陽動である。だがこの部隊を率いる腰布のテラフォーマーは、陽動だけのために動くつもりはなかった。

 

 ――自分達が人間どもの猛攻をくぐりぬけて艦まで到達できれば、他の部隊も攻略に移りやすくなるだろう。故に、1匹でも多く敵の拠点までたどり着くことを目標とする。

 

 そう考えて大攻勢に出たのが、およそ10分前のこと。北の平原を駆け、彼らはアーク本艦へと迫った。

 

 そんな彼らを迎えたのはアークに取り付けられた兵器でもなければ、MO手術を受けた人間の部隊でもなく……たった1人の男性だった。

 

 

 

「……来たか」

 

 

 

 ポークパイハットとオーバーコートが特徴的な、年若い男性である。彼の背後には巨大なコンテナが1つ置いてあるだけで、それ以外には兵器も兵士も見受けられない。

 彼は体の前に腕を突き出すと、落ち着いた様子で口を開いた。

 

 

 

「降臨せよ、72柱の魔神たち――我が名の下に集い来たりて、凶星を地獄で満たせ」

 

 

 

 その男性は、まるで謳うように言の葉を紡いでいく。その姿はまるで、ゲームの中に出てくる魔術師か何かのようであった。

 

「呼び覚ますは序列1位、バエル。汝、戦を司る者にして、不可視を象る者――即ち、我が手には不可視の剣ぞある――」

 

 そして彼は詠唱を止めると、地平線の向こうまで広がる黒に向かって、その口元を歪めた。

 

 

 

異次元よりの断裂(ナイフ・オブ・バアル)

 

 

 

 そう言って彼は、その手をさっと横に振る。

 

 ――十分な距離があった。別段、力を込めているような様子はなかった。何かが放たれたような様子もなかった。

 

 

 

 だが彼が動作を完了した次の瞬間、先頭を走っていた数百のテラフォーマー達が一斉に、まるで見えない刃に切り裂かれたかのように()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……!?」

 

 支えとなる下半身を失い、地面へと落ちる上半身。支えるべき上半身を失い、地面へと倒れ込む下半身。それらはぐちゃりと音を立てて、火星の大地に白を撒き散らす。

 

 

 

 ――それが、合図だった。

 

 

 

異次元よりの断裂(ナイフ・オブ・バアル)

 

 彼が手を横に振る。ただそれだけで、テラフォーマーたちの体はまるで溶けかけたバターのように切り裂かれる。

 

 

 

囀る慟哭(シャウト・オブ・カイム)

 

 彼が腕を振り上げる。途端、銀色の桜吹雪のようなものが吹き荒れてテラフォーマーたちの肉体を切り刻む。

 

 

 

降り注ぐ墓標(レイン・オブ・サブナック)

 

 彼が腕を振り下ろす。同時に彼の背後のコンテナから無数の剣が飛び出して、テラフォーマーの体を串刺しにする。

 

 

 

「く、く……クハハハハハ! 脆い、脆いぞ、凶星の悪魔(テラフォーマー)ども! よくもまぁそのザマで、悪魔を名乗れたものだ!」

 

 

 

 一秒を刻むごとに積み重なっていく死体を見て、彼は嗤う。

 

 

 

「我が魔神たちの真の力は、こんなものではないぞ!? さぁ武器をとり、挑むがいい! 屍山血河の果てに我を討ち取ること叶えば、貴様らの求めるものは、すぐそこだ!」

 

 

 

 ――もはやそれは、一方的な蹂躙であった。

 

 始め4000匹いたテラフォーマーたちは瞬きを1つするごとに100匹単位でその数を減らしていく。仲間を壁に突破しようにも肉盾ごと切り裂かれ、上空を抜けようとすれば撃ち落とされる。彼らは青年に傷を負わせるどころか、その場から一歩も動かすことすら能わず……気が付けば、4000のテラフォーマー達は1匹残らず肉塊となり果てていた。

 

「……嗚呼、こんなものか」

 

 彼は先程までの様子から一転、落胆したように呟くと指をパチンと鳴らした。すると彼の背後にあったコンテナは、役目を終えたことを理解したかのように、音もなくその口を閉ざした。

 

「……異端の悪魔どもを裁かんと、遥々この星まで赴いたわけだが。これは存外、審問はすぐに終わるやもしれんな」

 

 ――つまらん。

 

 そう呟いて、彼は踵を返した。もうじきアークから出撃するであろう、己の部下たちと合流するために。

 

 

 

 

 

 

 

 アーク第1団団長 ギルバート・アヴァロン

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース“哺乳類型” コキクガシラコウモリ

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

「じ、じ……!?」

 

 アーク1号の南西。本艦に奇襲を仕掛けるべく部隊を率いていた腰布のテラフォーマーは、眼前の光景を受け止めきれずに呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」

 

「げらrげらげEらげらGeらErら!」

 

「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」

 

「ギョエエエエエエエエ!」

 

「いあ! いあ!」

 

「ゲロロロロロァ!」

 

「AGrrrrrrrr!」

 

「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」

 

「ぱうー」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアッ」

 

 

 

 

 ――それは、聞いたこともないような金切り声を上げてテラフォーマーたちに襲い掛かる、名状し難い生物たちだった。

 ムカデの様でその何倍もおぞましい節足動物によって、万力を誇る力士型がいとも容易く絞め殺される。忌まわしい猛禽のような怪鳥が、空へと逃げたテラフォーマーに食らいつく。

 

 部隊は既に壊走した。半狂乱で逃げ回る者、既に息絶えて地面に転がっているものなど様々だが、もはやテラフォーマー達から戦意が失われていることは、火を見るよりも明らかだった。

 

 警戒は怠っていなかった。きちんと索敵に人員を割き、不審な点があればすぐに報告があるはずだった。

 

 だが気が付いた時、彼らは既に襲われていた。何の前触れもなく表れた異形によって、3000の精兵は抵抗むなしく惨殺された。

 

 もしもそれを見ていた者が人間であったのなら、間違いなくこの光景を『地獄』と形容することだろう。もっとも――

 

 

 

 

 

 

「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」「げらrげらげEらげらGeらErら!」「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」「ギョエエエエエエエエ!」「いあ! いあ!」「ゲロロロロロァ!」「AGrrrrrrrr!」「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」「ぱうー」「アアアアアアアアアアアアアアアッ」「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」「げらrげらげEらげらGeらErら!」「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」「ギョエエエエエエエエ!」「いあ! いあ!」「ゲロロロロロァ!」「AGrrrrrrrr!」「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」「ぱうー」「アアアアアアアアアアアアアアアッ」「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」「げらrげらげEらげらGeらErら!」「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」「ギョエエエエエエエエ!」「いあ! いあ!」「ゲロロロロロァ!」「AGrrrrrrrr!」「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」「ぱうー」「アアアアアアアアアアアアアアアッ」「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」「げらrげらげEらげらGeらErら!」「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」「ギョエエエエエエエエ!」「いあ! いあ!」「ゲロロロロロァ!」「AGrrrrrrrr!」「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」「ぱうー」「アアアアアアアアアアアアアアアッ」「ぎ、アaAあgぇaaoいaア!」「げらrげらげEらげらGeらErら!」「オーン! オーン! オーン! ンアッー!」「ギョエエエエエエエエ!」「いあ! いあ!」「ゲロロロロロァ!」「AGrrrrrrrr!」「ぷちゅぷちゅぷちゅくちゅ!」「ぱうー」「アアアアアアアアアアアアアアアッ」

 

 

 

 

 

 ――この光景を目の当たりにして正気を保っていれば、の話だが。

 

 

 

「キ、キィィイ!」

 

 ――もはや、任務の達成は不可能。

 

 そう判断した腰布のテラフォーマーは身を翻し、一目散に駆け出す。だがその判断を下すには、いささか遅すぎた。

 

 

 

 

 

 ――ドスッ。

 

 

 

 

 

 衝撃が走り、腰布のテラフォーマーは一瞬遅れて、己の胸が正面から貫かれたことを知る。思わずテラフォーマーが立ち止まると同時、ブチブチと音を立てながら、胸部に空いた穴から心臓が体外へと這い出した。

 

「じょ……」

 

 心臓は自身を体内にとどめようとする筋繊維や神経を引きちぎり、ふわふわと空中を飛んでテラフォーマーの体を離れていく。

 

 テラフォーマーがそれを目で追えば……一体いつからいたのだろうか? 彼の正面に、フード付きのマントを纏った何者かが立っていた。

 

「同じ生き物を殺すのは気が引けるガ……悪く思うナ」

 

 名状し難い魔物たちの金切声がひっきりなしに響いているはずなのに、その言葉はいやに大きく聞こえた。

 

「――これが、戦争というものダ」

 

 その言葉と同時、腰布のテラフォーマーは膝から崩れ落ちる。その胴体が地面に横たわる頃には既に息はなく――あとには、静寂だけが遺された。

 

「さテ、他の団長達が気にかかるところだガ……ひとまずは、自分の任務に集中するとしよウ」

 

 フードの人物はそう言うと、アークの方向からこちらへと走ってくる装甲車と、それに乗る己の部下達を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 アーク第3団団長 グラフィアス

 

 

 MO手術『公式登録』ベース”類線形動物型” ハリガネムシ

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 ――アークの北東にある峡谷の入り口。そこに足を踏み入れたテラフォーマー達の前に立ちはだかったのは、1人の少女だった。

 

「は、話には聞いてましたけど……いざこの数来られると、気色が悪いですね」

 

 青みがかった黒髪の少女は、その顔に嫌悪感と若干の不安が混ざった表情を浮かべて呟いた。彼女がその身に纏うベッドシーツの様な衣類は、『トーガ』と呼ばれる衣装に近い独特の形状をしていた。サイズは合っていないらしくぶかぶかで、少しかがめば首元から胸部が見えてしまいそうだ。

 

「……怖いか、オーナー?」

 

 少女にそう尋ねたのは、彼女の背後に立つ女性だった。少女と同じ青みがかった黒髪を腰まで伸ばし、やはりその体にはトーガを纏っている。もっともこちらは、きちんと採寸があっているようだが。

 

「正直なところ……ちょっとだけ、緊張はしてます」

 

 そう言って少女は目を瞑ると、はやる心を落ち着かせるかのように深呼吸をする。それから彼女は背後の女性へと振り返り、静かにほほ笑んだ。

 

「でも、大丈夫です。私は、1人じゃありませんから」

 

「……そうか。では号令を」

 

 女性が微かに和らいだ表情で頷くと少女は再び前を向き、慣れない様子で声を張り上げた。

 

「せ、戦闘に移りますっ! 皆さん、出てきてくださいっ!」

 

 彼女が叫んだその瞬間、偶然にも吹き込んだ突風によって峡谷内の砂塵が舞い上がり、2人の姿が束の間見えなくなる。

 

 テラフォーマーたちは視界が砂に覆われても、進軍を止めなかった。砂の向こう側から同胞の悲鳴と共に肉が砕ける音が聞こえても、やはり進軍は止めなかった。

 

 だが、砂塵が晴れて視界が明瞭になった瞬間、テラフォーマーたちは自らの目が捉えたその光景に足を止めた。

 

 彼らの眼前には、人間達がいた……いや、最初から少女と女性がいたという意味では、この表現は正確ではないだろう。

 

 正しくは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 性別も、年齢も、人種もバラバラな人間がざっと20人ほど。共通点といえば青みがかった黒髪であることと、全員が裸であることくらいで、それ以外は本当に統一感がない。

 

 青年に壮年、男性に女性、欧米人にアジア人……果ては全身を青黒い体毛に覆われた獣人の様な姿の者まで、まさしく多様性に富んだ『人間』の集団が、そこに立っていた。

 

「じょう」

 

 立ち止まった軍勢の中から、1匹のテラフォーマーが飛び出した。突如として現れた人間達が何者なのか、確かめるためである。

 

 大地を蹴った彼は一瞬にして少女との間合いを詰め――しかしその直後、圧倒的な『質量』による一撃をその身に受け、肉片と体液を飛び散らせながら圧死した。

 

 ――彼を叩き潰したのは、少女の右腕だった。

 

 とはいえ、果たしてそれを『腕』と形容していいのだろうか? テラフォーマーに打ち付けられたソレは、先程までの可愛らしい少女の細腕ではなく、巨大なハンマーを思わせるグロテスクで強靭な肉塊へと変化していたのだから。

 

 

 

「団の皆さんが来るまで、ざっと10分ほど……それまでに、全ての目標を討伐します」

 

 

 

 変形した右腕を元の形状へと戻しながら少女が言うと、彼女の周囲に立つ人間達が口々に返事を返した。それと同時に、彼らの体に異形の器官が次々と現れ始める。

 

 ある者は、尾てい骨部から鞭のようにしなやかな尾が生える。

 

 ある者は、両足の脛に出刃包丁のように鋭く頑丈な鉤爪が生える。

 

 ある者は、肘から先が木の枝のように分岐して、8本の腕が生える。

 

 ある者は、専用武器と思しき手中の筒状の装置を介して、肉と骨の槍を手中に生成した。

 

 少女もまた、腰に生成した4本の触腕をだぶついたトーガの裾から露出させると、静かにテラフォーマーたちを睨みつけた。

 

「……ここから先には、1匹たりとも通しません」

 

 

 

 

 

 

 

 アーク第4団団長 シャウラ・グレイディ

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース“軟体動物型” ミミックオクトパス

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、踏み込みが甘いぞ」

 

 ――アーク西側。

 

 自身の間合いへと踏み込んだ力士型のテラフォーマーに、老人は白と黒の甲皮で覆われた腕を振るった。

 といってもそれは相手を殺すための『攻撃』ではなく、相手の出方を見るための『牽制』ですらなく――相手を突き飛ばして距離をとるためだけに行われた『動作』。

 

 だがそれを受けた瞬間、力士型の重く巨大な体は、勢い良く吹き飛んだ。彼の体はそのまま崖の壁面に叩きつけられ、高所から落とした生卵のように砕け散る。崖に新しく刻まれた白い染みに、老人は思わず頭を抱えた。

 

「いかん、また加減を間違えたか……どうにも慣れんなぁ、これは」

 

 重苦しくため息をつきながら、老人は周囲を見渡した。彼のいる峡谷は、テラフォーマーたちの肉飛沫によって一面『白』に染まっていた。遠目に見れば、雪が降り積もったようにも見えるだろう。

 

「季節外れじゃが、ホワイトクリスマスと思えばこれも――いや、ないな。飛び散った臓器がイルミネーションとか、(わっぱ)が泣き叫ぶわ」

 

 既に、彼が相手をしたテラフォーマーの部隊は1匹残らず肉飛沫となり果てていた。

 数に物を言わせた人海戦術、銃による遠距離からの頭部狙撃、最終手段である燃料爆弾の投下――これら全てを平然と受け止められた末に、3000匹の軍勢は成す術なく壊滅したのだ。

 

「ちと物足りんが……ま、準備運動としてはこんなもんじゃろ」

 

 そう言うと老人はその場にどっかりと腰を下ろし、腰に下げた水筒の蓋を開ける。中身はスポーツドリンク。以前の飲み会でグラフィアスに水分補給を指摘されて以来、運動後には欠かさず飲んでいるものだ。

 

「平和なもんじゃのぉ……退屈過ぎて死にそうじゃわい。早いとこ迎えに来てもらわんと、別の迎えが来るかもしれん」

 

 晴れ渡った青空を眺めながら、老人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()のほほんと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 アーク第5団団長 サウロ・カルデナス

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース“昆虫型” コーカサスオオカブト

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホラホラ、こっちよ」

 

 突風が駆け抜ける。彼がその手に握った刀を一振りすれば、軌道上にあった数十の首が宙に舞う。

 

「どこ見てるのかしらん? アタシはここよ」

 

 暴風が吹き乱れる。彼が刀を振るったその余波で、周囲にいた数十のテラフォーマーの肉体が大きく抉れた。

 

「外れ。ちょっとアンタ達、ちゃんと尾葉のお手入れしてんの?」

 

 爆風が吹き荒れる。彼が駆け抜ければ、また更に数十のテラフォーマーが挽肉と化した。

 

 

 

「ハイ、おしまい。アタシに触れたかったら、もっといいオトコになって出直すことね」

 

 ――接敵から僅か7分。アークの東側に回り込んだテラフォーマーは全て、地に伏せていた。

 

 3000の屍で黒く染まる丘の上、ただ1人立っているのは、ゴテゴテのメイクを顔に施した、坊主頭の人物。彼は抜き身の刀を鞘へと納めると、腕時計で時間を確認して「あらやだ!」と叫んだ。

 

「アタシったら、張り切りすぎ! まだ合流時間まで10分もあるじゃない……あーあ、やっちゃったわぁ……」

 

 ――どうやって時間潰そうかしら?

 

 がっくりと肩を落としたその時、彼の耳は背後からエンジン音が徐々に近づいてきていることに気が付いた。

 

「あらん?」

 

 彼が振り向いた先には、到着までもう少しかかるだろうと思われていた救助用の装甲車。装甲車が急ブレーキをかけて止まると荒々しく車の扉が開き、5人の団員が姿を現す。顔面にタトゥーのある者、目元に傷のある者……いずれも人相の悪い男たちだ。

 

 ――それもそのはず。アーク第6団に所属する者は、アネックスへ派遣された潜入員を除けば、全員が『犯罪者』なのだから。

 

 裏切りの心配はないとクロードによって太鼓判を押されているが、マフィアや殺し屋など、明らかに表社会では目にすることのない肩書の者が揃っている。

 

 人を殺すことに抵抗を覚えるようなカタギの人間は、この団にはいない。驚いたようにこちらを見つめる坊主頭の男性に、団員たちは口を開き――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママぁ~! 迎えに来たわよ~!」

 

「きゃー、すごーい☆ もうやっつけちゃったのねぇ!?」

 

「さすがママねぇ! アタシ達じゃ真似できないわァ!」

 

 

 

 口々にオネエ言葉で叫びながら、坊主頭の男性へと駆け寄った。

 

 

 

「んまぁ! ちょっとちょっと、あんた達どうしたのよ!? さっき紫藤ちゃんから入った通信じゃ「10分くらいかかる」って話だったのに!」

 

 坊主頭の男性が駆け寄ってくる団員に嬉しそうに訊けば、顔にタトゥーがある男性が「決まってるじゃないの!」と答える。

 

「ママは3000匹くらい絶対に神速で仕留めちゃうだろうってことで、ハッチが空いた瞬間からアクセル全開できたのよ! トニーの提案よ、褒めてあげて頂戴!」

 

「んもぉ~、トニーってば超ナイス! おかげで暇しなくて済んだわ!」

 

 死に絶えたテラフォーマーたちの上で、オネエ言葉ではしゃぐ人相の悪い男たち。控えめに言って、目を疑う光景である。

 

 ひとしきりガールズ(?)トークに花を咲かせた後、坊主頭の男性は「それじゃ!」と声を張り上げた。

 

「あんた達の気遣いを無駄にしないためにも、早いとこ向かいましょうか! ……準備はいいわね?」

 

 その瞬間、彼らの纏う空気が一気に張りつめた。全員がその瞳に冷徹な殺意の眼光を湛え、口元に凶悪な笑みを浮かべる。

 

 返事は不要だった。その表情だけで彼らの『是』という返事をくみ取った彼は、口を開いた。

 

「……アタシ達の救助目標は第6班。班長は皆大好きイケメンだから、たっっっっぷり可愛がってあげましょ♡」

 

「きゃー、楽しみぃ!」

 

「はぁん、胸がドキドキしすぎて死んじゃいそう!」

 

「もう、トニーったら奥手なんだから! 女の子ならもっとガツガツいかなきゃダメよォ!」

 

 嬉々として装甲車へと戻っていく団員たち。その背を見ながら、坊主頭の男性は静かに息を吐く。

 

 

 

 ――何を企んでいるのかは知らないけれど……そう何でもかんでも、思い通りに行くと思わないことね。

 

 

 

「――シモンちゃんの邪魔だけは、絶対にさせないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 アーク第6団団長 オスカル・新界(しんかい)

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース“節足動物型” オオゲジ

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

「……よくできました。偉いわよ、あなた達」

 

 周囲の景色を一通り俯瞰すると、モニカ・ベックマンは満足そうに頷いた。

 

 その背後に控えているのは、3000匹のテラフォーマー達。生気を感じさせぬ虚ろな目つきをした彼らは、本来ならば抹殺対象であるはずのモニカに見向きもせず、ただぼんやりとその場に立っていた。

 

「それにしても、そろそろ立っているのも疲れたわね……椅子を用意して頂戴な」

 

 モニカの言葉に1匹のテラフォーマーが進み出ると、膝を折って四つん這いになる。「ありがと」と言ってモニカはその背に腰を下ろすと、口元に妖しげな笑みを浮かべた。

 

「さて、敗軍の指揮官さん? 貴方、これからどうしてほしい?」

 

 モニカの視線の先にいたのは、腰布のテラフォーマー。しかし背中の翅は引きちぎられ、両腕は虚ろな目のテラフォーマー2体に取り押さえられている。

 

 

 

 ――彼は後方で待機していた部隊の指揮官を務めていた個体だった。

 

 

 

 彼の部隊に与えられていた任務は、各部隊から送られてくる情報の管理と、各部隊への増援の派遣だった。しかし、各方向から攻め込んだ他の部隊は一切の連絡を寄越さず、状況を把握するために送り込んだ斥候も戻らない。

 

 そんな折に彼の下へと舞い込んできたのが、『南東から進軍をしていた部隊が帰還した』という報告だった。

 

 ひとまずは彼らから情報を集めるべき、と彼は南東部隊を隊列の内側まで招き入れ……そして()()()()()()()()

 

 テラフォーマーたちは基本的に、個の利益を追求するという考えを持たない。ゆえに、裏切りという概念が彼らにはない。結果として同族が隊列の内部で起こした突然の反乱に対処できず、呆気なく壊滅したのだ。

 

「1つ、勉強になったわね。過ぎた合理は、時に非合理なものよ。あなた達の個と言う概念を持たない思考、経営者的にはぜひとも採用したいところなんだけど……もうちょっと、茶目っ気があってもいいんじゃないかしら」

 

 モニカはそう言って、腰布のテラフォーマーを見下ろした。

 

「だから、私が教えてあげるわ。とびっきりの悪い遊びと、それに溺れる快楽をね……彼の口を開けさせなさい」

 

 彼女の指示を受け、新たに3匹のテラフォーマーが腰布のテラフォーマーへと近づき、強引にその口を開けさせる。モニカは腰かけていたテラフォーマーの背中から飛び降りると、捕らわれたテラフォーマーの下まで歩み寄った。

 

 それを見た腰布のテラフォーマーは拘束を振りほどこうと力を込めるも、5匹がかりで拘束されては成す術がない。無理やり口を開けられたテラフォーマーに、モニカは蠱惑的なほほ笑みを浮かべた。

 

「ああ、怖がらなくてもいいわ……すぐに気持ちよくなるから」

 

 そう言うと彼女はテラフォーマーの口の上に人差し指を伸ばし、そこから何かの雫を垂らし始めた。

 

 

 

 ――ポタリ、ポタリ。

 

 

 

 蜜の様な粘性を帯びたそれはテラフォーマーの口の中へと滴り、静かに喉の奥へと流れていく。すると間もなく、腰布のテラフォーマーの体に異変が起こり始めた。

 

「――『快感』こそが、生きた証。押し寄せる幸福感に溺れる悦びをしるといいわ」

 

 テラフォーマーの息が荒くなり、その全身はまるで絶頂を迎えた乙女のように小刻みに痙攣する。瞳孔が開いた目はあらぬ方向をキョロキョロと見つめ、その顔には締まりのない恍惚とした笑みが浮かぶ。

 

「お味はいかが? ……もう放していいわよ」

 

 モニカが言うと、取り押さえていたテラフォーマーたちが一斉に手を離す。だが、腰布のテラフォーマーに逃げ出すような素振りはない。それどころか彼は、痙攣する全身でモニカの下まで這っていく。まるで、先程彼が得た極上の『蜜』から離れたくないとでもいうかのように。

 

「いい子ね――いえ、悪い子かしら? まぁ、どちらもいいのだけれど」

 

 ――さぁ、立って。

 

 モニカが耳元で囁くと、腰布を巻いたテラフォーマーは反抗する様子も見せずに立ち上がった。

 

人間(わたし)テラフォーマー(あなたたち)みたいな高等生物にとって、己を捨てるということは生きることを諦めることに他ならない。その虚しさは私が誰よりも知っているし……その無意味さは、彼が教えてくれた」

 

 呟いたモニカの脳裏に浮かぶのは、今よりもまだ幼いシモンの顔。どん底の様な日々を過ごす中で絶望すらも忘れかけた彼女に心を教えてくれた、誰よりも大切な人の姿。

 

「ついて来なさい、テラフォーマー。私に隷属するなら、極上の至福を約束するわ……その代り、ちょっとだけ私達のために戦ってもらうけど」

 

 ――これ以上、私達からは何も奪わせない。

 

 静かなる決意の炎を胸の奥に燃やしながら、モニカは息を吐く。既にそのための種は撒いた。果たして吉と出るか凶と出るかは分からないが……あとはもう、上手くやるだけだ。

 

「……さ、アークに戻るわよ。あなた達の役割は、これから全員の救助が完了するまで、私と一緒に本艦を守ること。上手にできたら、さっきよりももっと凄いのをあげる」

 

 そう言って踵を返し、赤いドレスの女性は来た道を引き返し始める。悦楽の虜となり、ヴィジョンを失ったテラフォーマーたちを引きつれて。

 

 

 

 

 

 

 

『本艦護衛』アーク第7団団長 モニカ・ベックマン

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース“植物型” コカノキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー……こりゃまた派手にやったなぁ、団長も」

 

 バスを思わせる大型装甲車の運転席。窓から外を眺めていた髭面の大男は、目に飛び込んできた光景に楽し気に呟いた。

 

 装甲車の外、大地を黒と白に染め上げていたのは、テラフォーマーたちの屍だった。周囲の地面や崖面には刻まれた破壊痕が、この場で起こった戦いの熾烈さを――否、この場で起こった殺戮の凄惨さを物語っている。

 

「普段はコスプレさせられたり、メシのおかず取られたりで覇気のない団長だと思ってたけど……本気出すとこんなことになるのか」

 

 意外そうな声音で呟いたのは、後部席に腰掛けている勝気そうな少女だ。

 

 まだこの団に配属されて日が浅い彼女の脳裏にちらつくのは、およそ強さとは縁のなさそうな上司の姿。彼女の中ではどうにも、うだつの上がらない彼とこの惨状が結びつかなかった。

 

「……つーかそもそもの話なんだけどさ」

 

 そう言って少女は、装甲車内にいる自分以外の4人の団員――髭面の大男、太った中年男性、秘書風の青年、髪を結った青年に声をかける。

 

「一体何のベースで手術を受ければ、こんなことになんの?」

 

 彼女が指さした先に転がるのは、テラフォーマーたちの死体。しかし異様なのは、それらの死因に統一性がないことだった。

 

 ある死体は頭部を叩き潰されて地面に転がっている。

 

 またある死体は糸で首を締め上げられ、大岩にその体を吊り下げられている。

 

  またある死体は、その全身に黒い焦げあとをつけ、焼けただれた傷から煙を吹き上げてこと切れている。

 

  刺殺、斬殺、絞殺、撲殺、毒殺、射殺、圧殺、爆殺、焼殺、溺死、感電死――およそ考えうる限り、ありとあらゆる方法で虐殺された3000の悪魔たち。その光景はまるで地獄の最下層がこの世にはみ出てきたかのようで、少女は戦慄を禁じえない。

 

「……一応、本人の言を借りるなら」

 

 不思議そうな顔の少女の問いに答えたのは、彼女の対面の座席に腰掛ける秘書風の青年だった。

 

「『カマドウマ』だそうですよ」

 

「「「こんな便所コオロギがいてたまるか」」」

 

 少女と太った男性、髪を結わえた団員の声が重なる。それを聞いた運転席の大男は、思わず吹き出しながら後部席の4人に声をかけた。

 

「ま、団長のベースが何であれ頼りになるってことに変わりはないだろ! 他の団長達に比べりゃ、ウチの団長はまだまだ可愛げのある――おっと」

 

 言いかけた言葉を途中で切ると、彼はブレーキを踏み込んだ。何事かと視線を送る団員たちに、大男は顎で前方を示して見せる。

 

 フロントガラスの向こう側に広がるのは、死と沈黙に支配された峡谷の出口。その先には悪魔の骸を積み上げた山が築かれており――その頂に、この空間の主がポツンと立っていた。

 

 

 アーク第2団団長 シモン・ウルトル

 

 

 

 MO手術『公式登録』ベース”昆虫型” カマドウマ

 

 

 

「全員、降りるぞ」

 

 

 

 大男はそう言うと、脇に置いてあった銃――『対テラフォーマー10mm低反動ライフル』を手に取り、車のドアを開けた。他の団員たちも各々銃火器を持ち、その後に続く。

 

 シモンは団員たちに背を向けるように立ち、死体の山の上でぼんやりと空を眺めていた。普段通りの中華拳法服に、顔を覆い隠すフルフェイス・ヘルメット。こげ茶色の甲皮に覆われたその手には、彼の専用武器と思しき一本の槍が握られている。

 

「おーい、団長! 迎えに来たぞー!」

 

 大男が声をかけると、シモンは今気づいたとばかりに団員たちを振り返った。

 

「皆……? あ、もうそんな時間か」

 

 どうやら、装甲車が近づいていることにも気づいていなかったらしい。シモンは少しだけ驚いたように呟くと、ひょいと死体の山から飛び降りた。

 

「珍しいですね、団長が我々に気付かないなんて……何か、考え事でも?」

 

「ああ、うん……ちょっとね」

 

 秘書風の青年の言葉に、シモンはヘルメットの下で苦笑いを浮かべて頷いた。それを見た大男が「おいおい」と呆れたように声を上げる。

 

「頼むぜ、団長ォ……油断した拍子に襲われて死ぬような真似だけはしないでくれよ? あんたが死ねば、全体の士気はがた落ち待ったなしだ」

 

「はは……ごめん。次から気を付けるね」

 

 無遠慮な大男の言葉に気分を害した様子もなく、シモンは素直に謝罪の言葉を口にした。横からそれを見ていた少女が、「やっぱり結びつかねえ……!」と眉間に指をあてた。

 

「よし。それじゃあ行こうか、皆……ボク達の救助対象は、日米合同第2班だ」

 

 切り替えるように深呼吸をしてから、シモンはゆっくりと口を開いた。団員たちが姿勢を正したのを見て、シモンは

 

「合流するまでの時間は、キャロルちゃんが稼いでくれる。ボク達は合流次第速やかに、第2班の班員――特に火星での陰謀の起点となる『ファースト(ミッシェルさん)』、『セカンド(燈くん)』『エクストラ(百合子ちゃん)』の護衛に移る。さぁ、皆――」

 

 

 

 

 ――西暦2620年、4月12日。救助艦アーク1号の団員89名、7手に分かれて行動開始。

 

 アネックス計画プランδに則り、上空のアネックスから110人の乗組員たちが脱出するまで、あと30分。

 

 精鋭ぞろいの各団を率いるアークの団長達は、任務開始の号令を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――隊列(なら)べ! ()るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁにこれぇ?」

 

「……むしろそれは、私が訊きたかったんですが」

 

 タブレット端末に録画された戦闘映像を見終えたアダムの感想に、プライドが言った。

 

「一応、クロード博士のコンピュータへのハッキングで得られた結果として、彼らの公式登録されたベース生物のリストは得られましたが……」

 

「うん、ダミーだねこれ」

 

 プライドに向かって端末を放ると、アダムはうんざりしたようにため息を吐いた。クロードの時と同じだ、厳重に厳重にロックをかけた『いかにも』と言わんばかりのファイルに、精巧な偽情報を仕込んでおく。

 

 なるほど、あまり生物に詳しくない者ならば、恐らくこのリストでも誤魔化せただろう。だが、アダムは生物学のスペシャリスト。彼の目を欺くには、そのリストは少々役者不足であった。

 

「ま、多分これは僕達向けじゃなくて、『ち』から始まってどっちでも行けちゃう某国とか、某一族への対策なんだろうけど……しっかし分かんないなぁ。何のベースだろ、これ?」

 

 言いながらアダムは考え込み……直後、「まぁ、いっか!」と思考を止めた。

 

「何であろうと、ぶっ殺しちゃえば問題ないし! ……さて、それじゃあプライド。()()()()()()()()

 

「はっ……」

 

 プライドが頷いたのを確認すると、アダムは「そうだな、まずは手始めに……」と呟いてから、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「第1班にはエロフォーマー部隊を送り込んで」

 

 

 

()()()()を施したテラフォーマー達を、第2班が着陸する近辺の湖に放流し」

 

 

 

「第3班には奇形部隊を派遣して」

 

 

 

「第4班はノータッチ」

 

 

 

「薬中部隊は第5班に回して」

 

 

 

「第6班には、数の暴力を味わってもらおう!」

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、大まかな流れはこんな感じで。細かい部分の裁量は、君に任せるよ」

 

「……御意に」

 

 頷いて立ち去るプライドを見送って、アダムは肉眼で目視できる程の位置まで落ちつつあるアネックスと、地平線の向こうにいるだろうアークを見つめた。

 

「君たちは『地球を嘗めんな』ってよく言いたがるけど……それにちなんで僕も1つ、カッコいい台詞で決めちゃおうかな」

 

 そう言って、アダムはピッと空中を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「内ゲバって、お互いに足を引っ張り合って、始まる前からぐっだぐだの人間が……火星を嘗めるなよ! ――さぁ、開幕だ」

 

 

 

 




【オマケ①】 強さ談義

シモン「ちなみに今回の戦闘シーンを見て『誰が勝てるんだよこんなの!?』と思ったかもしれないけど……多分アシモフさんなら、半分以上の団長に素手で勝てるんじゃないかな?」

テラフォーマーズ「!?」

アシモフ「おい、そのバケモノ見るような目やめろ」


【オマケ②】 ベース予想お待ちしています(難易度:ルナティック)

クロード「さぁ、ベースを予想してください……ただし、今回は偽装ベースが ほ と ん ど あ て に な り ま せ ん が ね !」

七星「……なぜ彼はあんなにやさぐれているんだ?」

百燐「お眼鏡に叶う偽装ベースが見つからなかったのですよ。どうかお気になさらず」




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