贖罪のゼロ   作:KEROTA

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『チェックメイト』



 その瞬間を以て黒の駒は一切が盤上より脱落し、趨勢は決した。此度、勝利の女神がほほ笑んだのは『灰』。



 かくして、絶対凱歌は終焉に至る。



絶対凱歌EDGAR―14 制御不能

 

【S】EVEN SINSの一角、グリードの朝は早い。

 

 AM5:30(火星標準時)──彼の一日は、戦いから始まる。

 

「じょうっ……!」

 

 険しい表情で、彼は歯を食いしばる。どうやら今日の相手は、かなり手ごわいらしい。

 

「じッ、じぎぎ……!」

 

 足に力を入れ、気張る……勝負所だ。額には血管が浮き出し、体は小刻みに震わせながらも、彼はその瞬間を待ちわびる。そして──。

 

 

 

「ジッ……じぎぎィェアァッー!!」

 

 

 

 ──およそ文章には表しがたい、汚い排泄音が個室内に響き渡った。

 

「じょっ……じょほおぉ~~……」

 

 強敵との戦いを制したグリードは恍惚とした表情を浮かべながら、トイレットペーパーを巻き取った。グリードはダブルロール以外認めない過激派である。そんな彼の厳しい品質チェックをクリアして配備された、最高級の紙による至高の尻触りを堪能する。

 

 それを終えるとレバーを引き、彼は水洗音を背に個室を出る。すると大体の場合、トイレの前には行列──アダム・ベイリアルの本拠地たる火星のラボ、そのスタッフとして勤続するテラフォーマーたちの行列ができているのだ。この時間、パートタイム型はまだ出勤していない。つまりこの列をなすテラフォーマーたちは、常勤型のテラフォーマーである。

 

「【……今日も小生が一番乗り、か】」

 

 やれやれ、と言わんばかりにオーバーな仕草で肩をすくめ、グリードは苦笑する。

 

「【この程度のトイレラッシュに乗り後れるようでは、2年後に乗り込んでくるアネックスや裏アネックスの人間たちの笑いものになるぞ】」

 

 なお、彼は己の排泄物に含まれている集合フェロモンが混雑の原因になっていることには気が付いていない。

 

「【だがま、そう気を落とさなくてもいい。お前達も鍛錬すれば、すぐこの領域にはたどり着けるだろう】」

 

 グリードはそう言うと、先頭のテラフォーマーの肩に手を乗せた。彼らを激励するかのように。

 

「【励めよ、若人。火星の未来は、小生だけじゃない……お前達全員の肩にかかってるんだ】」

 

「じょう」

 

 そしてバシッという音と共に、その手は払いのけられた。

 

「……。……?」

 

 目を白黒させながら、グリードは払われた己の手を見つめる。

 

 ──自分は今、割といいことを言ったはずだ。いやまぁ場所は男子トイレだったけども。

 

 これが火星のゴキブリたちのまとめ役しているゴキブリ……額に『\・|・/』の模様が刻まれた、右目がちょっと面白いことになってる彼であったのならば、今頃このテラフォーマー達はその威光にひれ伏していたはずである。

 

「【うそ、小生のカリスマなさすぎ……?】」

 

 さめざめと泣くグリード。そんな彼の前で、肩を払った先頭のテラフォーマーはトイレの壁の一画を指さした。つられてグリードが視線を向ければ、そこには『うんこをしたら手を洗おう! byアダム・ベイリアル』と書かれた張り紙。

 

「……」

 

「【……すまんて】」

 

 どこか咎めるようなテラフォーマーたちの無数の視線に、グリードはしょぼくれた顔で手を洗うと、絹製の赤い将校外套を翻しトイレを後にした。

 

「【にしても腹減ったな……飯にするか】」

 

 その足で彼が立ち寄ったのは、厨房である。出すものを出した分、お腹がすいたのだ。

 

 彼は冷蔵庫の中にしまってある具材を適当に取り出すと、慣れた手つきで軽食をこしらえる。今朝のメニューはホウ酸団子のロシアンルーレットだ。

 

「~♪」

 

 慣れた手つきでボウルの中に16個の団子をこしらえると、うち1つに大量のホウ酸を混ぜ込む。それらを皿に丁寧に盛りつけたら、仕上げにブルーベリーソースを垂らしパセリを添えて完成である。

 

「じぎっ、じぎぎぎ……GE(げっ)GE(げっ)GE(げっ)!!」

 

 悪い笑みを浮かべたグリードは、その皿と二つのコップ(内容物はコーラと苔のスムージー)をトレイに乗せ、軽やかな足取りで目的地──アダムの私室へと向かった。

 

「ハァイ、じょうじィ?」

 

 両手が塞がっているため、足を器用に使って扉を開ける。案の定その先には、この部屋の主である白衣を纏った少年──アダムがいた。

 

「【あ、グリードおはよー……え、もうそんな時間になってんの? 今何時?】」

 

「……はァー」

 

 配信準備にかかりきりで、時計を見ようともしない彼にグリードは思わず溜息をつく。彼の視線の先では、壁掛け時計が既にAM6:00を示していた。全くしょうがない奴め、仕方ないから小生が教えてやろう……グリードは寛大な心で口を開き。

 

lo()……lo()……ッ!!」

 

 ──発音できなかった。

 

 悲しいかな、彼の言語野は同族に比べ非常に発達しているのだが、肝心の発音が追い付いていない。リスニングはできてもスピーキングがまだまだなのである。

 これが「よじ」とか「ごじ」とか「じゅうじ」ならいけたのだが。

 

Lo()じゅじッッ! ア゛ァ゛ッ!!」

 

「【えー? 何言ってるかわかんなーい】」

 

「ギギィ……!」

 

 ムカつく顔で煽り散らすアダムに、グリードはお宝が目の前で自爆したかのような表情を浮かべる。が、このやりとりもいつものこと。気を取り直したグリードは彼の隣にどっかりと腰を下ろすと、デスクの上にお盆を置いた。

 

「【ほれ、飯。一緒に食おうぜ】」

 

 しれっとお盆を回転させ、アダムが真っ先に手を付けるだろう位置にホウ酸団子入りを配置するのも忘れない。

 

「【お、気利くじゃーん! でも僕ゴキブリ用のご飯食べたくないし、グリード全部食べちゃっていいよ。気持ちだけもらっとく】」

 

 悲報:グリード、ホウ酸団子確定ガチャ。

 

「オォ、ジョージ……」

 

 なぜか世を儚む表情で天を仰いだグリードに首を傾げつつ、アダムは「あ、そうそう」と指を鳴らした。

 

「【痛し痒し(ツークツワンク)なんだけどさ、君が寝てる間に決着ついたよ】」

 

「まじィ?」

 

 覚悟を決めて団子を頬張りながら、グリードは興味津々といった様子でアダムに視線を戻した。

 

「【で、結果は?】」

 

「……」

 

 無言で顔を背けるアダム。それを見て何かを確信したグリードは、一転してニタニタとした笑みで詰め寄る。

 

「……Grey?」

 

「……」

 

「Greeeeeey??」

 

「あぁそうだよ灰陣営だよ灰陣営っ! 僕が賭けてた黒陣営は敗けましたけどなにかァ!?」

 

 逆切れするアダムを見て爆笑しながら、グリードは次々と団子を押し込んでいく。

 

「【っぱ人間だわ。意志の力パネェ】」

 

「【ふんっ、別にいいもんね! こっからヴォーパルが勝てば実質僕の勝ちだし!】」

 

「【100歩譲ってそれで灰が負けても、お前が黒に賭けて負けた事実は変わらんのよ】」

 

 呆れたようにツッコミを入れつつ、グリードは苔スムージーを呑み干す。

 

「【まぁそんなわけで、エキシビションマッチはこのあとすぐ! なんだけど……ゲームマスターとして、先にやること終わらせないとね】」

 

「【というと?】」

 

 グリードは覚悟を決め、最後に残った問題のホウ酸団子に手を付けた。胃の中はかさましした──ワンチャン、いけるのではないだろうか? 

 

「【ちょっとレギュレーションの関係でね。ゲームマスターとして動かなきゃな状況が発覚しちゃったのさ】」

 

「【なるほどなー……ウッ!?」

 

 泡を噴きながら倒れたグリードを尻目に、アダムが開いたのは『JOUTUBE』──この火星唯一の動画配信サイトだった。

 

「よーし、それじゃあ……配信スタート!」

 

 ヘッドホンを装着した彼は画面を切り替え、『配信開始』のボタンを押す。果たして表示されたそのウィンドウの中に映し出されたのは、騒然とした様子のフランス軍司令室であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──フランス軍司令室。

 

「ッ!」

 

 ステファニー・ローズは、勢いよく立ち上がった。反動で腰かけていた椅子が後ろに倒れる。周囲の通信兵たちが驚いたように視線を向けるが、それを気にも留めない。珍しく──彼女にしては本当に珍しいことに、どこか冷静さを欠いた様子であった。

 

 眼鏡の奥で見開かれた眼が釘付けとなっているのは、本部内に設置されたモニターだった。

 シドの体内に内蔵されたカメラ経由し、ほんの十数秒前まで作戦の進行状況を映していたそれは現在、『SIGNAL/LOST』と無機質な文字列をひたすらに表示している。加えてその隣では彼の心拍数をリアルタイムで計測する機器は、平たんに沈黙した波形のみを示している。

 

「──馬鹿な」

 

 彼女が思索に耽った時間自体は、1秒にも満たない。その中でステファニーがまず疑ったのは、己の目の異常だった。次に計器が揃って不調を起こした可能性が浮かび、それを棄却してようやく彼女は現実を受け入れた。

 

「まさか、しくじったのかクロムウェル……!? 幹部(オフィサー)でも特記戦力でもない、ただの軍人を相手に……!?」

 

 ──騎士に就任して以降、シドが解放された事案はこれまでに4回。

 

 割り当てられた任務はステファニーから見ても手を焼くような厄介事だったが、その全てを彼は完璧にこなしてきた。そんな彼が、MO手術を受けているとはいえ、ただの一軍人に敗れた。

 

 このありうべからざる事態を、『鋼鉄の薔薇』の異名をとる才女は驚愕を以て迎えた。

 

「……各員に伝達」

 

 ただし、その動揺も一瞬のもの。一度だけ深呼吸をした彼女はすぐに思考を切り替え、持ち前の冷静さで淡々と指示を出していく。

 

「ロチェスターの活動拠点は廃棄。事前に設置させたリモート爆弾を起動し、我が軍の痕跡を抹消せよ。また現地のバックアップ人員は直ちに撤収。実働部隊の回収は不要だ」

 

「よ、よろしいのですか?」

 

 兵士の一人が確認するが、ステファニーは「構わん」と頷く。

 

「優先回収対象である女王(クイーン)城塞(ルーク)僧侶(ビショップ)は死亡。騎士(ナイト)も軒並み戦闘不能の状況。ここからホワイトハウスの制圧は不可能だろう」

 

 そう指示を出す間にも、ステファニーの脳内では目まぐるしいシミュレートが繰り返されている。だが、何通り試そうとも結果は同じ。彼女の聡明な頭脳を以てしても、この盤面をひっくり返す手立ては思い浮かばなかった。

 

 ──幸い、黒陣営(フランス)側の駒は、灰陣営(アメリカ)にとられたとしても足がつかない人員を選出してある。

 

 元はイギリスの諜報員であるシドに、日本の名家の出自である千桐、戸籍上は死亡して別人ということになっているフィリップ。捕虜になった猛毒部隊がフランスの情報を吐いたところで、所詮は犯罪者の戯言。知らぬ存ぜぬで押し通せる。

 

(念のためにかけた保険に救われた形だな。あの三人の喪失は手痛いが、その分のリターンも回収した。ギリギリ及第点、といったところか)

 

 不甲斐ない自己採点に内心で歯噛みをしつつ、ステファニーは重々しく口を開く。

 

「苦々しいがこのゲーム、我々の敗北だ。現時刻を以て、本作戦は中止。槍の一族とフランス、両者敗退で『痛し痒し(ツークツワンク)』はおわ──」

 

 

 

『デデーン! ステファニー、希维、あとそこのモブ兵士達、全員OUT~!』

 

 

 

 場違いに響いたその声に、ステファニーは口を閉ざした。途端、室内にあった軍用PCの一つが突如として制御不能に陥り、画面上に食い尽くされたリンゴの芯に巻き付いた幼虫のエンブレムが映し出された。

 

「……アダム・ベイリアルか。何の用だ?」

 

 動揺を浮かべた部下たちを手で制し、ステファニーは電波越しに狂人へと語り掛ける。果たしてその直後、画面は再び切り替わり、平凡な顔立ちの少年の映像が表示される。

 

「悪いが私は後始末で忙しいのでな。ちょっかいをかけるなら、貴様が考案したこの馬鹿みたいなゲームに乗った大統領にしてほしいのだが」

 

『わお、辛辣。たださ、僕が用あるのって君らなんだよねー。ステファニーちゃんさぁ、レギュレーション違反したでしょ』

 

「なに?」

 

 覚えのない言葉に、ステファニーは思わず眉をひそめた。

 

「なんの言いがかりだ。(キング)女王(クイーン)城塞(ルーク)僧侶(ビショップ)騎士団(ナイツ)兵士(ポーン)……作戦の人員は、間違いなく貴様が提示したルールの範疇に収めているぞ」

 

『そうだね。でもステファニーちゃんさ、大事なところが抜けてるぜ?』

 

「どういう意味だ?」

 

「どういう意味も何も、そのままの意味だよ」

 

 怪訝そうなステファニーに対し、アダムは言って聞かせるように言葉を続ける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。盗人猛々しいっていうかさぁ、ここまで堂々とやられると、さすがの僕も一周して感心しちゃうよね』

 

「なんだと?」

 

 不穏なものを感じ、ステファニーは微かに表情を強張らせる。そんな彼女の反応に、アダムは『あれれー?』と首をかしげて見せた。

 

『僕、確かにエドガー君とオリヴィエ君に説明したはずなんだけどなー? 『君たちは差し手グランドマスターであると同時に王キングだ』『誰かに代わってもらうことはできないのでご注意を』ってね。あと駒じゃないのに盤内に動きまわっちゃうのはアカンでしょ』

 

 諭すようにいいながら、アダムは『そんなわけで!』と声を弾ませた。

 

『知らなかったとはいえ、ルール違反はルール違反だからね。ステファニーちゃんとそこのフランス兵諸君、ついでに希维ちゃんにはキツーイお仕置きを受けてもらう! と、いうわけで──』

 

 怒涛の展開に理解が追い付かない兵士、何かを考え込んだ様子で黙り込むステファニー、この場にはいないが何も知らない希维……そんな張りつめた混沌の表面張力に、アダムはとどめの一石を投じた。

 

 

 

『カモンっ、お仕置きアーミーズ!』

 

 

 

 アダムの声が響くと同時、どこからともなく某仕事人風のBGMが流れ出す。そして次の瞬間、作戦本部の扉が勢いよく蹴破られた。

 

「ッ、なんだ!?」

 

 兵士たちは咄嗟に立ち上がり、各々の火器を破壊された入口へと向ける。果たして破られた扉の先から突入してきたのは、テラフォーマーの小隊であった。

 

 いずれの個体も両腕に赤く染めた紐を一本ずつ巻き付け、その手には新種合金製と思しき金属バットを持っている。『お仕置き』とは名ばかり、実質『処刑』のための要員であることは容易に想像ができた。

 

「──ジョウジっ!」

 

 彼らは足並みを揃えて整列すると、一斉に直立不動の姿勢をとった。明らかに訓練された一連の動きに一瞬気圧されるも、彼らはすぐに気を取り直し、いつでも引き金を引けるように集中力を研ぎ澄ませる。

 

「警戒しろ! コイツら、M()O()()()()()()()()()!」

 

 兵士の一人は緊張した面持ちで仲間に呼びかけながら、テラフォーマー達の外見を観察する。

 

 まず外見上の特徴として目に留まるのは、通常のテラフォーマーと異なる体色だろうか。全身を彩る鮮やかな黄緑──それは彼らの肉体を覆う、鱗の色であった。形状は魚鱗に近いものの粘膜がなく、硬く乾燥した質感はなめしたワニ革のそれに近い。

 

 そんな配色と対を成すような器官が、口の周りに形成された暗褐色のクチバシだ。鳥を思わせる厚みと丸みを帯びているが、一度それを開けば、中から鋭い牙が生え揃った顎が迫り出すという、奇妙な構造。

 

 一方、彼らはその背中にベース生物に由来するだろう翼を有していたが、それらは明らかに滑空ではなく飛行を目的としているように思える。しかしその形は、鳥の羽とも虫の翅とも異なっていた。

 

(……妙だ)

 

 極度の緊張が張り詰めた司令室。その最中に合ってステファニーはただ一人、至って冷静に脳内で思索を巡らせる。

 

(ここで私が死ぬとなると、()()()()()()

 

 此度の戦いでフランスが被った損害は、決して軽いものではない。

 

 盤内戦ではエドガーの騎士であるシド、食客である千桐、騎兵長のフィリップ、ジェヴォーダン計画の成功検体・メリュジーヌが死亡。猛毒部隊隊長・ゲレルはアメリカによって確保。

 

 盤外戦では近衛長であるオリアンヌに加え、共和国親衛隊第一歩兵連隊の兵士多数が死亡。また第二歩兵連隊の精鋭はベネズエラで壊走、衛士長セレスタンも重傷。加えてパリ市街も大きく被害を受け、復興には相当の費用を要するだろう。

 

 それでも、支払ったコストに釣り合うだけのリターンは辛うじて得ているのが現状。しかしここでステファニーが死んだ場合、この計算は一気に狂うことになる。

 

(私が死んだ場合、軍の再編には甘く見積もっても3倍の遅れが生じる。その意味を、あの男が理解していないはずがない)

 

 軍部の動揺は、そのまま外部勢力がフランスに付け入る隙になる。さすがに槍の一族がすぐに動くことはないだろうが、この好機にニュートン本家の者たちが手を回さないはずがない。

 

 もしも本家筋の人間によりフランス内部への介入を許せば、エドガーにとって割に合わないどころの話ではない。最悪、エドガー政権崩壊の引き金となってもおかしくはないのだ。

 

(奴がルールを失念するとも思えん。キングの交代に関する情報は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。とすれば、奴の目的は──)

 

 状況証拠という名の断片(ピース)を次々に組み立て、ステファニーはエドガーの真意を炙り出していく。数秒の思考の後、彼女は確信と共に口を開いた。

 

「……総員、銃を放棄しろ」

 

「「「!?」」」

 

『おぉ?』

 

 思いがけないその指示に、兵士のみならずアダムすら目を丸くする。

 

「し、しかし統合参謀長……!」

 

「命令を直ちに実行せよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ステファニーが有無を言わせぬ口調で告げれば、戸惑いながらも兵士たちはそれに従い次々と銃を地面に投げ捨てた。それを確認すると、ステファニーは自らの懐から取り出した拳銃をテラフォーマーの内の一匹へと突きつけた。

 

 それを見たアダムは、おぉと感心の声を上げる。

 

『大した肝の座りようだ。だけど最下級(赤紐)とはいえ、そこにいるのは僕直属のテラフォーマー。さすがにその豆鉄砲でどうにかなると思ってもらっちゃあ、困るぜ?』

 

「まさか。私は戦う人間ではない。仮に手術を受けたとして、テラフォーマーに勝てるなどと思いあがってはいない……テラフォーマーが狙う人間には優先度があるそうだな?」

 

 アダムの言葉を否定しながら、彼女は言葉を連ねていく。

 

「『女』と『武器を携帯している者』。この理屈に従うなら、この場で最優先の排除対象は私になるだろう? 殺すならばまず、私からにしてもらおうか」

 

『ああ、そういう。なるほどねぇ……【かくかくしかじからしいけど、みんなどうするー?】』

 

「っ──」

 

 突然未知の言語を発しながら、テラフォーマー達へと声をかけるアダム。思わず目を見開くステファニーの眼前で、テラフォーマー達は顔を見合わせた。数秒の後、協議の結果が出たのか、彼らは「じょう」と短く鳴くとアダムが映るモニターへと親指を立てて見せた。

 

『よかったね、ステファニーちゃん! 君の部下を想う心はしっかりとテラフォーマー達にも届いたみたい! 全く手心は加えないけど、お仕置きは君からにしてくれるってさ! いやー感動しちゃったよ僕! 種を超えた美談っていうのかな、こういうハートフルなの好きなんだよねー!』

 

「……狂人め」

 

 何気ない顔で害虫の言語を使いこなしてみせたアダムに、ステファニーはただ一言、短くそう吐き捨てた。

 

『つれないなぁ……まぁいいや。それじゃあステファニーちゃん、来世ではルールを守って楽しく遊ぶんだよ?』

 

 モニターの中で言い聞かせるように告げたアダム。その口が、上弦の弧を描いた。

 

『お仕置き、執行♪』

 

 その言葉を合図に、テラフォーマー達は一斉に床を蹴った。ある者は手にした金棒を振りかぶり、ある者は標的を目掛けて指先から生えた鉤爪を繰り出し、ある者は翼を忙しなく羽ばたかせて突撃し、またある者はクチバシの中からせり出した顎で食らいつかんとする。

 

 そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく、相変わらず豪胆なお嬢ちゃんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 ──そのどれも、ステファニーの体を傷つけるどころか触れることさえもできず、地に叩き伏せられた。

 

『なん……だと……?』

 

 アダムのそんな呟きをかき消すように、排気用ダクトの蓋が床に落ちる音が響いた。直後、「よっ」という気の抜けた声と共に、()は地面へと着地した。

 

「なんだ、歯ごたえのねーゴキブリどもだな」

 

「……やはり貴方でしたか、御老」

 

 首を鳴らしながらぼやく老人──水無月六禄にステファニーが言えば、彼は意外そうに目を丸くした。

 

「なんだ、気付いてたのか? 気配は完全に消してたはずだが」

 

「恥ずかしながら気配云々は全く。だが状況を分析していけば、貴方という伏兵に行き着くのはそう難しくない」

 

 ──そうでしょう、()()()? 

 

 鉄面皮に僅かな青筋を立てながら、ステファニーはそう問いかける。真意を察した六禄はニヤリと笑うと、ポケットから取り出した通信端末をおもむろに放った。

 すかさずそれをキャッチした彼女の視界の端に、液晶の中に表示された上司の顔が映り込む。

 

『ご苦労、統合参謀長』

 

 威厳のある声が響く。声の主、エドガー・ド・デカルトは満足げにその笑みを深めた。

 

『現時刻を以て、貴様はこの作戦における役割を完全に遂行した。よくやった、といっておこうか』

 

「お褒めいただき恐悦至極。次からは是非とも、正確な情報をいただきたいものですな」

 

『クハハ! 善処しよう』

 

 苛立ちを隠そうともしないステファニー。その静かな剣幕に思わず生唾を呑み込む兵士たちだが、当のエドガーはそれを全く意にも介さない。さらりと皮肉を流す彼の様子に、外野で見守っていたアダムは思わず『うわ、エラそー』と呆れ声をあげる。

 

『ていうかエドガー君、ひどくなーい? 六禄くんの介入があと一歩遅かったらステファニーちゃん、危うく金剛丹製のバットでお尻ぶっ叩かれるとこだったんだよ? 人の心とかないんか?』

 

『クハッ、戯言だな! いずれ神になる余だぞ? 人の尺度など持ち合わせているわけなかろう』

 

『うわ、言い切ったよこの人』

 

 アダムの言葉を無視し、エドガーは「それに」と言葉を続ける。

 

『此度の戦いではそうする必要があった。ただそれだけのことだ』

 

『そうする必要? わっかんないなー、それって君が僕の提案に乗った目的と関係あったりするわけ?』

 

 

 

『──おや。それは私も気になるかな』

 

 

 

 エドガーとアダムの会話に相槌を打ったのは、この場にはいないはずの第三者の声。

 

 兵士たちがぎょっとして声がした方を見やれば、いつの間にかモニターの一つに金髪碧眼の青年の顔が映し出されていた。

 

 

『あ、オリヴィエ君じゃん。やっほー』

 

『こんにちは。ところでアダム君、今しがた私の神殿に奇妙な姿をしたテラフォーマーの小隊が現れてね。時代劇のBGMを流しながら帰還直後の希维に襲い掛かって、あっさり返り討ちにあったのだけど……犯人は君かな?』

 

『いいえ、エドガー君です』

 

『見え透いた嘘を吐くな』

 

 今にも舌打ちをしそうな様子のエドガーに、オリヴィエは『それで』と続ける。

 

『君がこのゲームに乗った目的というのが気になってね。私がアダム君の提案に乗った理由は、まぁエドガー君が先日指摘した通りなのだけど……この痛し痒し(ツークツワンク)が君の趣向に合っているとはどうしても思えなくてね』

 

『ハッ、知れたこと。今後の情勢を見据え、布石を打つために決まっていよう』

 

 黒の王はそう切り出すと、己の目的を語る。

 

『アメリカ合衆国軍部を一時的に掌握し、合衆国の機密情報を奪った。既に諜報員も潜り込ませてある──衰えたと言えど、アメリカは今もなお大国。2年後に控えたアネックス計画・裏アネックス計画の件もある。無駄にはなるまい。そしてその片手間で、貴様が抱える戦力を削ぐことも可能というわけだ』

 

『なるほどね』

 

『だが、それだけではない。余の目的はむしろ貴様だ、アダム・ベイリアル』

 

『え、僕?』

 

 思わず自分を指さすアダムを、エドガーは静かに睨みつける。

 

『イギリス、アメリカ、槍の一族……余が神となるにあたり、障害となりうる者どもの情報はおおよそ掴んでいる。だが、貴様だけは別だ』

 

 その目に、いつもの侮蔑の色はない。ただ未知の存在を推し量るかのような、強い警戒心が表れていた。

 

『アダム・ベイリアルの名に集る蛆虫どもではない。貴様自身についての情報があまりにも欠けていたのだ──黒幕気取りの道化師、アダム・ベイリアル・■■■■■よ』

 

『……その名前さぁ、嫌いなんだよね』

 

 そうぼやいたアダムの声は、平時に比べて一段階低い。

 

『その呼び方、やめてくんない?』

 

『余の知ったことか』

 

 エドガーの言葉にむくれたように黙り込んだアダムを、オリヴィエは物珍し気に眺めた。大げさな挙動こそ見慣れているものの、彼がこうして機嫌を崩すのはオリヴィエが知る限り初めてのことだ。珍しい、と彼は口を挟まず二人のやり取りを静観する。

 

『貴様を野放しにしておけば、肝心な時に横槍を入れられかねんのでな。こうしてルール違反という餌を垂らしたわけだが……思った以上の釣果であったな』

 

(……やはりそういうことか)

 

 その言葉を聞きながら、ステファニーは胸中で呟いた。

 

 彼女が推察したエドガーの目的。それは()()()()()()()()()()()というものだった。

 

 仮に明確なルール違反を犯したとして、ゲームマスターであるアダム・ベイリアルがそれを見逃すはずがない。悪質極まりない方法で報復措置を講じてくることは、容易に想像がつく。

 

 故にそれを逆手にとり、エドガーは槍の一族にも匹敵する脅威の情報収集に利用した……それがことの真相だろう。

 

『──それが『当初』の余の考えであった』

 

「なに?」

 

 そう思っていたからこそ、ステファニーはその一言に思わず声を漏らした。そんな彼女をチラリと見やり、エドガーは「事情が変わったのだ」と付け加える。

 

『余の真の目的はな、道化。途中から()()()()()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

『……うん?』

 

 神への挑戦者が口にした、あまりにも彼に似つかわしくない一言。それを耳にしたステファニーとオリヴィエは、柄にもなく思考を停止した。

 

 一方でアダムは、意味ありげに沈黙を貫くのみ。そんな彼に対し、エドガーは確信と共にその一言を叩きつける。

 

『アダム・ベイリアル。貴様、不敬にも余とそこのスペアを使って()()()()()()()()()()()()()()?』

 

『……へぇ?』

 

 面白がるように、アダムは口の端を歪める。

 

『【終焉シナリオ:Route(ルート)-Armageddon(アルマゲドン)】』

 

 そらんじるようにそう告げて、エドガーはアダムを睨みつけた。

 

『よもや知らんとは言うまい? 26世紀における貴様らの『自由研究』とやらだ、道化』

 

「ッ、それは──!」

 

 その言葉で真相を察したのか、ステファニーの顔色が変わる。

 

「我々が押収した資料にあった、『()()()()()()()()()()()』──! その中でも、ニュートンの一族を利用して世界滅亡させるプランか!」

 

『厳密にはその派生だがな。本来は『ニュートンとそれ以外の人類の間に軋轢を作り、全面戦争を引き起こさせる』というものだが、それ自体は狂人どもさえ「不確定要素が多い」「実現性に欠ける」と与太扱いしていたようだ』

 

 エドガーの言葉に、オリヴィエは『ああ、なるほど』と納得したように手を打つ。

 

『つまり今回の『痛し痒し(ツークツワンク)』は、それを槍の一族とフランスの対立にスケールダウン。更に駒という形で戦力を限定して、不確定要素を減らしたものだと』

 

『そうだ。無論、このゲームのみで世界が滅びることはない。最悪でも、国が2つ3つ落ちる程度であろうよ。だが、この戦いを端としてドミノ倒し式に破滅へ向かう未来はありえた』

 

 エドガーは首肯し、オリヴィエを一瞥する。

 

『貴様と余は元々敵対関係にあった。互いの計画が最終段階に至るまでは、本格的に衝突することはなかっただろうが……一度戦端が開かれてしまえば、あとは雪崩式だ。戦火は盤内から盤外へ飛び火し、いずれ全面戦争にもつれこむ』

 

 

 

『現にそこのスペアは、手札の一枚を切ってフランスへの侵攻を仕掛けた。こちらも当初は、親衛隊とMO古生物軍団(ジェヴォーダン)をアストリスの後詰めとして、ゲガルドの本拠を強襲する腹積もりであったからな』

 

 一度下した命を撤回するのは中々に骨であったがな、とエドガーは騒騒しい近衛長を思い出しながらぼやく。

 

『特に厄介なのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どちらが勝ち、どちらが敗けたか。雌雄が決すれば、その結果が白であろうと黒であろうと禍根になる。これを意図的に歪め喧伝すれば、末端どもの暴走は確実……やはり衝突は避けられまい』

 

 そこでエドガーは一拍の間を置き、不愉快げに顔をしかめながら口を開く。

 

()()()退()()()()()()()()()()()()()()。これ以外にこの道化の掌から逃れる術はなかった……クハハ、これほどの屈辱は久しぶりであったぞ、害虫め。よもやこの余に、『敗けるための戦力選出』を要求するとはな』

 

 ステファニーは絶句する。思えば、盤外戦(マインドゲーム)におけるエドガーの攻勢は、やけに手緩いものだった。「本気を出すまでもない」という余裕の表れと思っていたが、実体は違った。

 

 エドガー・ド・デカルトは、()()()()()()()()。完敗は論外、かといって少しでも勝過ぎればその瞬間に終焉シナリオが始まりかねない。それを理解したうえで適切な戦力を揃え、戦略を用意し、ルール違反とそれに伴うペナルティすらも逆手にとって、考えうる最大限のリターンを得た。

 

(この男──開始直後の段階で、この局面まで完全に読み切っていたというのか!?)

 

 老いた獅子の底知れぬ深謀に戦慄するステファニー。それを尻目に、アダムはパチパチと手を叩いてみせた。

 

『大正解! いやーさすがエドガー君だね! お見事お見事!』

 

『黙れ。貴様の賞賛など、余にとって侮辱以外の何者でもない』

 

 エドガーはそう吐き捨てると、暇そうにテラフォーマーの死体をつま先で小突く六禄へと視線を向けた。

 

『死体を回収し、レオの下へと運べ。大至急だ』

 

「お、話終わったか? まったく、老人使いの荒い大統領だな……っと!」

 

「……バルニエ軍曹、モルコ伍長。御老の補助を」

 

 六禄とステファニーに指名された兵士は、テラフォーマーの死体を担ぎ上げると足早に作戦本部を後にする。

 

『さて、余の目的は果たした。これ以上、貴様の下らん茶番に付き合ってやる必要もなかろう。統合参謀長、この不愉快な通信回線を切断しろ。事後処理に移る』

 

『おぉっと! それはちょっと待った方がいいんじゃなーい?』

 

 それは、静かな──しかし、何か含みのある口調だった。少なくとも、エドガーに通信切断を躊躇わせる程度には。

 

『──何が言いたい』

 

『かくして白と黒、全ての駒は脱落した。だけど、忘れちゃいけないぜ。盤面にはまだ、灰以外の駒が残ってる』

 

『……赤の怪物(モンスター)かな』

 

『YES、YES、YES!』

 

 ここまで沈黙を保っていたオリヴィエの呟きに、アダムはハイテンションに返す。もはや先ほどの妙な空気はない。いつも通りの狂人がそこにはいた。

 

『自分の番が終わったからって、即帰っちゃうのはマナー違反! せっかくだから見てきなよ、灰と赤のエキシビションマッチ! ……知りたいでしょ? 自分のとこの精鋭を、ああも簡単に蹴散らした怪物のヒミツって奴をさ』

 

 アダムのその言葉に、エドガーとオリヴィエの脳裏に浮かんだのは奇しくも同じ人物──赤の女王『アストリス・メギストス・ニュートン』の姿。

 

 各国が秘密裏に送り込んだ戦力によって、アストリス本人は討ち取られている。また、いち早く手を回した『ベックマン財閥』の手で、事態は辛うじて公にはならず処理も進められている。

 

 だが、彼女が引き起こした大疫災は完全に収束しきってはいない。状況は未だ予断を許さない段階なのだ。

 

 その妖魔と同格の存在としてアダムが送り込んだ『悪鬼』──彼について両者が持っている情報は『アストリスのように大陸を滅ぼしうる存在ではない』ことと『それを補って余りあるほど出鱈目に強い』ことの二点のみ。

 

 槍の一族・フランス共に、彼を回収するべく向かった精鋭部隊は返り討ちに遭い、壊走している。

 

 いずれの指揮官も重体であり、とてもではないが話せる状態ではない。比較的傷が浅い者から事情を聞き出そうにも、何か恐ろしいものでも見たかのように錯乱した彼らの話は、要領を得なかった。

 

 こと赤の怪物(ヴォーパル)については、情報が足りていないというのが正直なところ。

 

『沈黙は肯定ってことで! まぁ減るもんじゃないし、御用とお急ぎの方もどうせだから見てってちょ』

 

 アダムは言いながら、パソコンのキーを叩く。モニターが切り替わり、アメリカのホワイトハウス近域と思われる光景が映し出された。

 

 

 

 

 

『──生物最強、その真価って奴をさ』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──同時刻、U-NASA研究棟。

 

 

 

「自分で言うのもなんだがね、私はこの分野においては相当な権威なのだよ」

 

「勿論、存じていますよ」

 

 モニターに表示される文字列を眺めながら、ヨーゼフとクロードは言葉を交わしていた。手にはコーヒーが入った紙コップを握り、机上には個包装のチョコレートが置いてある。

 

痛し痒し(ツークツワンク)』と『盤外戦(マインドゲーム)』、熾烈な戦場を駆ける戦士たちを影から支え続けたU-NASAの筆頭研究員、その僅かな休息の一幕だ。

 

「以前拝見した『SYSTEM』の設計図、実に見事なものでした。ベース生物の力を十二分に引き出しながら、テラフォーマーに奪われたところで何の不都合もない。まさに専用武器の極地とでもいうべきものです。私も随分と参考にさせていただきましたよ」

 

「……そう手放しに褒められると、こそばゆいものがあるな」

 

 ヨーゼフは笑うと、チョコレートを一つ口の中に放る。U-NASAの売店で販売されているものだ。特別上等な品ではない。人工香味料の香りに、苦すぎず甘すぎる味わい……普通のというと語弊があるが、標準的なアメリカの菓子である。

 

 日本人であれば吐き出すような代物だが、ヨーゼフにとってはむしろ都合が良かった。最近になって味覚が薄れ始めた彼でも楽しめる品であるし、何より今は糖分を脳に回さなければならない。

 

「だが、それを言えば君もだ。MO手術の手順をマニュアル化・簡略化することで成功率を引き上げ、執刀の心得があれば誰でも施術ができるようにした。バグズ手術発明以来の快挙といえるだろう」

 

「光栄です」

 

 クロードは小さく頭を下げると、紙コップのコーヒーを啜る。ヨーゼフの希望もあって普段の二倍の濃度で煮だしたブラックコーヒーは、コーヒー好きのクロードも思わず顔をしかめる程の苦さ。だが濃縮されたカフェインは脳を覚醒させ、鈍り始めていた思考を今一度冴えさせる。

 

「さて。つまりこの場には今、U-NASA最高峰の天才が二人、雁首を揃えているわけだが……一体どういうことなのだろうね」

 

 コーヒーが半分ほど残った紙コップをヨーゼフは机に置き、飲み干したクロードはそれをゴミ箱に捨てる。1分間の休憩が──現実逃避の時間が終わった合図だった。

 

「その我々をして、()()()()()()()()()()()()()()

 

 ヨーゼフの眼鏡が、ブルーライトを反射して青く輝く。その先に延々と映し出されているのは、ある生物の塩基配列だった。

 

 ──ヴォーパル・キフグス・ロフォカルス。

 

 幸嶋隆成が文字通り身を削り、U-NASAに持ち帰った怪物の左腕(サンプル)。その分析が、今現在の彼らが着手している業務であった。

 

「ベルトルト博士! 新たに遺伝子が一致する生物を確認しました! 日本固有種、マムシです!」

 

「素体側のDNAの一部が、蛭間首相のものと完全に同一! クロード博士、これは一体……!?」

 

「こちらからは未知のアミノ酸を検出! 既存のいかなる生物とも合致しません!」

 

「第39塩基配列、解読完了! ワニ、トカゲ……カエルにイカぁ!? なんだこの出鱈目な塩基!?」

 

 濁流のように押し寄せる情報。それを整理し、捌き、各スタッフに指示を出しながら、ヨーゼフはぼやく。

 

「なぜこれで生物として成立するんだ。そしてなぜこれをやろうと思った。あまつさえなぜやれた……あれかね。フィンランドの一件といい、アダム・ベイリアルは神懸かり的な天才か、そうでなければ余程の馬鹿なのかね?」

 

「どちらもです、ヨーゼフ博士。もっと言えば、考えるだけ時間の無駄でしょう」

 

 眉間を揉んで書類を睨みながら、クロードはヨーゼフの疑問に答える。

 

「『Why(なぜ)』『How(どうやって)』と問い詰めたところで『I can do it(やったらできた)』以上の答えは出ない。あの人はそういう人だ……それよりも今大事なのは、これが『What()』なのかを突き止めることです」

 

「違いない」

 

 応じたヨーゼフは自身もまた印刷されたばかりのコピー用紙に目を落とし……そしてうんざりしたように息を吐く。

 

「そしてこの意味の分からなさに眩暈を覚えると……私も学ばんな。この流れは何度目だったか」

 

 検査の概要をまとめたその資料には、夥しい数の生物種のDNAが記されていた。特定されたゲノムの種類は優に100種を超える。およそ、一つの人体の細胞から検出されていい数ではない。

 

「もう一度、想定されうる可能性をすり合わせましょう……まずは『複合型』」

 

違う(Nein)。風邪村一樹の前例こそあるが、いかに素体が強靭でもこれだけの数のDNAに耐えられるはずがない……『形質転換、ないし遺伝子の水平伝播による外部遺伝子の獲得』」

 

違う(NO)。素体とベース遺伝子の適合率やDNAの結合痕跡から考えて、頻繁に遺伝子の組成が入れ替わっているとは考えにくい。では……『古細菌や原核生物。細胞内共生による、他生物の特性の取り込み』」

 

違う(Nein)。似た特性に心当たりはあるが、その場合ベース生物の遺伝子はこのような発現の仕方はしない。となるとあとは……『何らかの合成生物』」

 

「……やはりそこに行き着きますか」

 

 顔をしかめたクロードは、寝不足で痛む頭を抱える。

 

 これはいわば、自分が秘密裏に開発したMO手術ver『Chimera』に近い技術だ。

 

 技術の収斂進化、とでもいうべきだろうか。クロードの場合は安全性を優先し、掛け合わせる遺伝子の種類と発現因子を限定している。しかしこちらはその逆で、安全性は度外視したうえで、遺憾なく特性を発揮できる仕様らしい。

 

 おそらくE.S.M.O手術(基盤になった技術)自体は、アダム製ではないのだろう。遺伝子のつなぎ方や組成には無駄がなく、この技術の発案者は合理的かつ優れた手腕を持っていることがうかがえる──が、その安定した基盤をいいことに無茶苦茶極まりない拡張が施されている。この魔改造は間違いなく、アダム・ベイリアルが手を加えた痕跡だ。

 

 無論、そんな遺伝子で手術を施されれば、素体となる人間はまず間違いなく死亡することになる。ただし、これを可能とする技術にクロードは心当たりがあった。

 

()()()()()()()()()()……!)

 

 アダム・ベイリアル・サーマンが生み出した、遺伝子のパッチワーク技術。これを使えば遺伝子を一から設計し、出鱈目なベース生物と奇跡的に適合相性がいい素体を用意することが可能。

 

 パッチワークの材料として使われた人間のDNAは、判明している限り3名。

 

 ──人類最強、幸嶋隆成。

 

 ──奇跡の日本人、染矢龍大。

 

 ──日本国首相、蛭間一郎。

 

 そのいずれも、生身でテラフォーマーを凌駕する身体能力を有するもの。バグズデザイニングの時点では、材料になる人間はまるまる消費するレベルでDNAが必要だったようだが、この組み合わせを見る限り、どうやらほんのわずかな遺伝子でも作れるように改良を加えたらしい。

 

(しかも最悪なことに、先天的に保有する免疫寛容臓がαMOになるように遺伝子に細工がされている!)

 

 これは実に奇妙な逆転現象だが、通常ならば成功率が著しく低いはずのαMO手術関連の技術が用いられることで、ヴォーパルの場合はむしろ手術の成功率が底上げされていた。

 

 自分の心臓に拒絶反応を起こす人間がいないように、最初から体の一部に免疫寛容臓が存在していれば拒絶反応は起こらない。そして先天的に体内に免疫寛容臓を発現させられるのであれば、よりベース生物との親和性が高くなるαMOを使う方が()()

 

 そんな魂胆が透けて見えるようだった。

 

「疑うわけではないが、クロード博士。これに本当に規則性など存在するのかね?」

 

 眼鏡の奥から、ヨーゼフの青い瞳がクロードを覗く。

 

「私には正直、生物の遺伝子を手当たり次第に詰め込んだ合成獣(キメラ)にしか見えないのだが」

 

「いえ、『答え』は間違いなく存在します。そうでなければ、ゲームとして成立しない」

 

 ヨーゼフの言葉に首を横に振り、クロードは強く断言する。

 

「あの人はどれほど難易度が理不尽であろうと、攻略不可能なゲームだけは絶対に仕掛けない。『惜しかったね。あそこでアレに気付いていれば結末も違ったのに』……そうやって敗者を煽るためには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「最悪極まりないな」

 

「まったくです。とはいえ、どうやって解を出したものか……」

 

 二人が思考の袋小路に陥ったその時、「あの」という遠慮がちな声が彼らの鼓膜に届いた。

 

「む、ダニエル君か。なにかね?」

 

 ヨーゼフが視線を向けた先には、U-NASA第五(ドイツ)支局に所属する研究員であり裏アネックスのドイツ班員でもある青年──ダニエル・アードルングが立っていた。

 彼はどこか決まりの悪そうな表情を浮かべながら、彼は歯切れの悪い口調で切り出す。

 

「この生物の件で、お伝えした方がいいかもしれない情報がありまして……」

 

「ふむ?」

 

「もしかすると僕、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼がそう口にした瞬間、周りの科学者が一斉にダニエルを見やった。この場にいるのは、クロードやヨーゼフ程ではないにせよ、皆この界隈では名の知れた優秀な科学者たちだ。水を打ったように静まり返った研究室の中で、若手の彼はいよいよ居心地悪そうに付け加える。

 

「ただ、自分で言うのもなんですが……あまりにも馬鹿馬鹿しい上に現実味がなく──」

 

「聞かせてくれ」

 

 その言葉を遮り、クロードは告げる。

 

「今我々が相手にしている敵は、真面目に相手をすればするほど馬鹿を見る道化師だ。むしろ突飛で奇抜な発想こそが、正解である可能性が高い」

 

「どのみち、皆煮詰まっていたところだ。仮に間違っていたとしても、誰も君を責めたりはしない」

 

 クロードとヨーゼフが続けざまに言う。他の研究員たちは口を挟まないが、誰もがその目に肯定の色を浮かべていた。それを受けてダニエルは頷くと、意を決したように口を開き始めた。

 

「映像で確認できる特性とDNAの情報から、この生物は──────ではないかと」

 

「? 聞いたことがない生物だ」

 

 首をかしげるヨーゼフに追随し、クロードも頷く。ラボ内にいる多数の科学者も彼らと同じような反応を示し……しかしその一方で一部の研究員は心当たりがあるのか、ギョッとしたように目を見開く。

 

「仮に専門家でも、知らない人がほとんどでしょう。ただその一方で、MO手術や生物学に何のかかわりのない、一般人であっても知っている可能性がある生物でもあります」

 

 ダニエルはそう前置きし、核心を口にする。

 

「この生物は──」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「スレヴィン君!」

 

 ホワイトハウスの中を警戒しながら進んでいたシモンは、曲がり角の先から現れた友軍の姿に思わず声を上げた。

 

「おー、シモンか」

 

「無事でよかった! 敵は?」

 

 シモンの言葉に、スレヴィンは口端をニッと吊り上げる。

 

「あらかた倒したぜ。さすがに、生け捕りとはいかなかったがな……悪ィ、肩貸してくれ。ちと疲れた」

 

「勿論」

 

 喜色を浮かべ、スレヴィンの体を支えるシモン。ホワイトハウスの出口に向かって歩き始めた彼は、ふとあることに気付いて声を上げる。

 

「あれ、思ってたよりも傷、少がない……?」

 

「ああ、そりゃ過剰変態の恩恵だな」

 

 スレヴィンはそう答えると、思い出したように懐から小瓶を取り出し、シロップ上の免疫抑制剤を呑み干す。

 

「さっきまでズタボロだったんだが、すっかり治っちまった。まさか斬り飛ばされた首までくっつくとは思わなかったぜ」

 

「へぇ、過剰変態って首までくっつくんだ。便利だね……首を斬り飛ばされた!?」

 

 思わず二度見するシモンに、スレヴィンは「おー」と気のない返事を返す。

 

「ちょ、それ大丈夫!? というか、なんで生きてるの!?」

 

「なんか生きてたわ。まぁ今んとこ体も変に痺れたりしてないし、大丈夫だろ」

 

「そんなわけないでしょ!? もう、スレヴィン君は無茶して……」

 

「へいへい、すんませんしたー」

 

「返事は一回! あとちゃんと「はい」って言う!」

 

 ずらっとした様子のスレヴィンをシモンの咎めるような声が響くが、とうのスレヴィンはどこ吹く風。致命傷を超えた何かを受けた仲間の顔を睨みながら、シモンはホワイトハウスの玄関のドアノブを掴んだ。

 

「とにかく! 今すぐスレヴィン君は、病院で精密検査を受けて! 今、衛生兵を呼んでくるから!」

 

 ガチャリと音を立てて、ドアが開く。

 

「ほら、救急車も来て──」

 

 そして。

 

 

 

「──え?」

 

「は?」

 

 

 

 そこに広がる光景に、思わず二人の思考は停止した。

 

 ホワイトハウス正面玄関。そこから見える正面ロータリーには、多くの軍用装甲車や救急車、そして駆け付けた兵士や医療従事者で溢れかえっていた。

 

 ただし……既に彼らは全滅済みで血だまりに沈んでおり、車両はほとんどが見る影もなく破壊され、炎に包まれているという状態で。

 

 

 

「なに、これ……?」

 

 

 

 シモンは愕然と呟く。

 

 ほんの十数分前、風邪村千桐と一騎打ちをした時にはこんな状態ではなかった。つまり目の前の惨状は、自分がホワイトハウスの中に突入して戻ってくるまでの僅か十数分の間に作られたものだということ。

 

「! ……気ィ抜くな、シモン」

 

 異常事態を察してM500を取り出したスレヴィンは、隣に立つシモンに警戒を発する。

 

()()()()()

 

 その鋭い眼光の先には、こちらに背を向けて座り込んでいる何かがいた。

 

 ──それは3m近い巨体を持つ、鬼のような大男であった。

 

 巌の如き筋骨で構成された肉体に、燃えるような紅蓮の長髪。その隙間から覗く背には──『喰い尽くされた林檎の芯に巻き付く幼虫』を象った刺青が刻み込まれている。

 

 

 

「マヂうますぎやろがい」

 

 

 

 血だまりの中に腰を下ろし、しきりに何かを貪っている様子である。ガツガツという咀嚼音と共に、頑丈な鱗に覆われた太い尾がゆらゆらとゆれている。

 

「……はにゃ?」

 

 しかし巨漢はふと何かに気付いたように、スンスンと鼻を動かした。食事の手を止め──肩越しにこちらを振り返る。

 

 そして──()()()()()()

 

「ッッ!」

 

「ウッ──!?」

 

 その瞬間、シモンとスレヴィンの全身から脂汗が噴き出す。自然界において、あらゆる生物が共通して兼ね備える最も原始的な感情(反応)──即ち、()()()()()()()()()

 

「新手か。マヂウケる」

 

 口元にべったりと付着した赤を腕で乱雑にぬぐい取り、その悪鬼──ヴォーパルはゆらりと立ち上がる。

 

「とりあえず、お前たちは……」

 

 その瞬間、シモンは咄嗟にスレヴィンを突き飛ばし──

 

 

 

「ひき肉になってもろて」

 

 

 

 ──気が付くと、シモンの体は敷地を囲う鉄のフェンスへと叩きつけられていた。

 

「かッ……!?」

 

 肺から空気が捻りだされる。喉が奇妙に軋みながら空気を送り出す音を、シモンは体の内側から聞いた。

 

(何だコイツ……!? いや、それ以前に──)

 

 混乱しながらも呼吸を整え、シモンは立ち上がる。幸いにも、行動に支障をきたすようなダメージはない。だが、破損したフルフェイスヘルメットの下で、シモンは表情を強張らせる。

 

(──()()()()()()()()

 

 その攻撃速度は、あまりにも速すぎた。武芸において達人の域に達しているシモンですら、目で追えない程に。

 

「ゲホッ……やるしか、ないか……」

 

 こちらを観察するヴォーパルに対し、シモンは槍を構えて迎撃の姿勢を取った──その時。シモンが耳に取り付けたインカム式の通信装置から、不意に声が聞こえた。

 

『シモン、聞こえるか!?』

 

「! せんせい……」

 

 通信の相手は、クロードだった。こちらから通信を入れる手間が省けたと、シモンは現状を手短に説明する。

 

「敵の攻撃を、受けました。背中にニュートンへの反逆印……多分、アダム・ベイリアルの──」

 

『ああ、状況はわかってる! いいか、シモン! 戦闘を中断し、ただちにその場を離脱しろ!』

 

 そんな彼に、クロードは間髪入れずに指示を下す。普段の彼からは考えられないほどに切迫した、有無を言わせぬ口調で。

 

 

 

『ヤツの特性(ベース)()()()()()()()()! 力を制御した君では、万が一にも勝ち目はない!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして白黒の駒は砕け散り、盤に残るは灰の駒。勝利に沸いたその首を、ヴォーパルの剣がちょん切った。全部の駒が欠け落ちて──そして、誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 終局は赤──神を嘲る道化師は今、星条旗を赤濁に汚す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生態系の外』

 

『赤の怪物(モンスター)

 

『七罪番外』

 

『妖魔と対成す悪鬼』

 

『α.E.S.M.O.デザイニング』

 

『生命への冒涜(レイプ)

 

『生物最強』

 

『■■■■型』

 

 

 

 

 

黒幕気取りの道化師(アダム・ベイリアル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴォーパル・キフグス・ロフォカルス

 

 

 

 

 

 

 

 国籍:────

 

 

 

 

 

 

 

 ●歳  ♂

 

 

 

 

 

 

 

 304cm  232kg

 

 

 

 

 

 

 

 

 烙印【R】 ― The Rex() ―

 

 

 

 

 

 

 

 MO手術ベース(ツノゼミ差替) “ 昆虫型 / ■■■■型 ”

 

 

 

 ──────────── テラフォーマー(スキンヘッド) ────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

αESMOデザイニングベース & 紅式αESMO手術ベース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──── “ 爬虫類型 / 軍用生物型 / ■■■■型 ”

 

 

 

 

 

 

 

 

──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

────────── インドミナス・レックス ──────────

 

 

 

 

 

 

────────── インドミナス・ラプトル ──────────

 

 

 

 

 

 

 ──冒涜する白き暴王(インドミナス・レックス)蹂躙(スローター)

 

 

 

 ──絶対なる黒き凶王(インドミナス・ラプトル)殺戮(ジェノサイド)

 

 

 

 

 ── 赤 の 怪 物 (ヴォーパル・C・ロフォカルス)制御不能(アンコントロール)

 

 

 




【オマケ①】久しぶりのコラボ先キャラ紹介

ダニエル・アードルング(深緑の火星の物語)
 裏アネックス計画の第五班の班員。研究員らしいが、深緑本編ではαMO手術の被験者相手に大立ち回りしている動けるタイプのインテリ。
 この人の名字なんだっけと思って深緑の火星の物語を読み直して、作者は思わず「アードルング!?!?」と叫んだ。


【オマケ②】ヴォーパル戦鑑賞会
エドガー『やりおったなこの狂人』

アダム『なんでさ! ちゃんと絶滅生物使ってるじゃん! 資料には「公式サイトの表記「EXTINCT(絶滅)」って書いてあったんだもん! ソースだってちゃんとあるもん!!』

https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

※Pixivに飛びます

オリヴィエ『アダム君。同じ科学者として言わせてもらうけど、ピク●ブ百科事典は研究の三次資料にもならないんだよ(真顔)』

ステファニー「(この回線のまま通話続けるのかこいつら)」
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