贖罪のゼロ   作:KEROTA

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協奏三歌XX-1 反撃開始 -フェーズ1-

 

「──それじゃあ、反撃開始と行きましょうか!」

 

 モニカはどこか高揚したように告げる。彼女の前にはいくつかのビジネスデスクが『コ』の字型に配置されていた。彼女の正面には複数のモニターとパソコンが取り付けられており、左右の机上にはゼムクリップでまとめられた紙の資料や、用途別の複数のスマートフォンが所狭しと、しかし整然並べられている。

 

『それで、ボクはどうすればいい?』

 

 モニカが耳に当てたスマートフォンの向こう側から、シモンが尋ねる。その声には疲労が滲んでいるものの、逆境に差し込んだ反撃の兆しに活路を見出したらしく、確かな生気と戦意が込められている。

 

 即ちそれは、自身に対する無条件かつ絶対の信頼に他ならない。小躍りしたくなるほどの喜色に駆られるが、彼女はそれをグッとこらえて口を開く。

 

「合図があるまでその場で待機よ。今、そっちに迎えが行くから」

 

『迎え?』

 

 声の主の首をかしげるしぐさが目に浮かぶようで、モニカは思わず頬を緩めた。「今にわかるわ」と告げると、彼女は一時的にマイクをミュートにし、すぐさま別のスマートフォンを手に取った。

 

「音声認識:モニカ・ベックマン。アルファチームに通信を繋いで」

 

 ピピ、という電子音と共にチャンネルが接続されたことを確認すると、彼女は決戦の口火を切る。

 

「これよりオペレーション『クロスピン』、フェーズワンを開始するわ。アルファチーム各員、応答して頂戴」

 

 ※※※

 

「こちらアルファワン! 準備完了だ、いつでもいけるぜ!」

 

 ホワイトハウス上空を旋回する三機のヘリコプター。そのうちの一機の操縦席で操縦桿を握ったその男、チャーリー・アルダーソンはインカムからの呼びかけに答える

 

『アルファワン。あなたたちの役割は()()()()()()()()()()()()。ただし、狙撃は必ずこちらで準備した銃と弾頭で行うこと。もしそれ以外の銃をぶっ放そうものなら……社会的な死を迎えてもらうことになるからそのつもりで』

 

「おっかねぇ指揮官様だなオイ」

 

 思わずぼやくチャーリーに、モニカは『それと』と付け加える。

 

『狙撃に注文を一つ追加するわ。引き金を引く前に、レーザーサイト(赤外線ポインター)で標的に照準を合わせて。作戦の成功率が上がるかもしれない』

 

「だとよ! いけるか、リック!?」

 

 操縦席からプロペラの駆動音に負けないよう怒鳴り返せば、後部席に座る2人のうち片割れ──裏アネックス北米第一班で狙撃手を務める軍人、リック・アシュクロフトが「お安い御用だ!」と快活な声を上げる。

 

 土壇場での追加注文にも気後れせず、鼻歌交じりに銃の最終調整を始める部下を尻目に、チャーリーは「他に変更は?」とインカムに問いかける。

 

『ないわ。事前に通達した通り、狙撃後は最短距離で最終ポイントへ急行。到着したら、合図があるまで上空で待機して頂戴』

 

「アルファワン、了解」

 

『武運を祈っているわ……できるなら私も、優秀なアメリカの戦闘員をオカマバー送りになんてしたくないもの』

 

「…………アルファワン、極めて了解」

 

 ──今回の任務、やべぇ女多すぎだろ。

 

 喉まで出かかったその言葉を何とか呑み込んで、チャーリーは心の底から作戦の成功を祈った。

 

 

 

 

 

「こちらアルファツー。配置についた、指示を乞う」

 

 インカムから響く音声に、ダニエル・アーサーJr.元中佐──一警護(仲間内)ではダンと呼ばれている男が応じる。ヘリの窓から身を乗り出した彼の腕には、一丁のスナイパーライフル。覗き込んだスコープの中央には、一切のブレなくヴォーパルの姿を捉えていた。

 

『アルファツー。あなたたちの役割は、あの怪物に追跡装置(マーカー)を撃ちこむことよ。狙撃後は実働部隊の移動と同時にホワイトハウス前に着陸、現場の処理をお願い』

 

「了解した」

 

 力強く頷くダン。そんな彼に、モニカは『ところで』と切り出す。

 

『注意事項をもう一度言っておくわ。他の皆にも言えることだけど、この作戦で見聞きしたことは一切他言無用。詮索も禁止よ』

 

「? 無論、承知しているとも」

 

 含みを持たせた言い方に、ダンは怪訝そうに片眉を上げる。

 

『我々一警護は契約者の財産を力づくで守ることがモットー。ましてそれが個人情報なら、なおのことだ』

 

「……そう。それを聞いて安心したわ」

 

 言葉とは裏腹に、モニカの口調はどこか冷ややかだった。こちらをあまり信用していないことが分かる──いや、あえてそれが伝わるようにふるまっているのか。

 

(警戒心が強い雇用主だ……いや、あのアダム・ベイリアルが関与している事件。ある意味で、この過敏な反応も当然か)

 

 脳内で推察しながら次の言葉を待つダン。そんな彼の耳に、モニカの声が届く。

 

『もしも約束を破ったりしたら……貴方には多重債務マンに過剰変態してもらうから、そのつもりで』

 

「社の威信と私の財布にかけて、絶対に口外しないと誓おう」

 

 全身から脂汗を噴き出しながら、ダンは考えるよりも先にその言葉を口にしていた。半ば条件反射であった。

 

 未だかつてないプレッシャーに、ライフルを握る手に力がこもる。スコープ内の十字が僅かに標的から逸れていることに気付き、ダンは慌てて照準を修正した。

 

 

 

 

 

「ッハハ。隅に置けないな、あいつも」

 

 通信に応じながら、ルドン・ブルグスミュラーは操縦席で思わず苦笑する。それが聞こえていたのだろう、インカムから「何か可笑しいことでも?」と尋ねる声が鼓膜に届く。

 

「ああ、すまん。そういうわけじゃないんだ。ただ、無性に嬉しくてな」

 

 彼はフロントガラス越しに、地上で怪物と相対する青年を見やる。

 

「アイツのことは昔から知ってるが……いつもいつも、無茶ばかりなんだ。好き好んで、茨の道を進みやがる」

 

「違いない」

 

 後部席でからからと笑いながら、トシオが相槌を打つ。今、自分とトシオの脳内を覗いたら、きっと同じものを見ることになるだろう、とルドンは思う。

 

 ──かつて自分たちを救うため、我が身を顧みずに火星へと身を投じたかつての少年の姿。

 

 今での彼の脳裏には、それが強く焼き付いている。いや、バグズ2号のクルーだった者は皆きっとそうだろう。

 

 20年の歳月の中で、少年は青年へと成長した。あの頃よりもずっと背丈は伸び、体つきも男らしくなり、強くなった。

 

 だが、その本質は何も変わっていない。純粋で、思いやりにあふれ、自己犠牲を厭わない優しさは、ずっとあの頃のままだ──その心が今も、凶星に取り残されているが故に。

 

「だからまぁ、ちゃんとあいつを心配してくれる奴がいて安心したって話さ。これからもあいつのこと、よろしく頼む」

 

『勿論よ』

 

 そう答えたモニカの声は柔らかく、感慨が込められていた。おそらくは、本人にしかわらかないだろう感慨が。

 

『彼の願いは私の願い。あの人が進む道が茨に覆われてるっていうなら、私が芝刈り機で根絶やしにして、なんなら道を舗装してやるわ……そう、バージンロードにね』

 

「おぉう、思ってたよりパワフルな回答が来たな」

 

「見たかアメリカ人。これが噂の素直クールだ。俺ほどの有識者でも初めて現物を見る」

 

 軽口を叩く、元バグズ2号の乗組員二人。そんな彼らに対し、モニカは『雑談はここまでにしましょう』と告げ、話を本筋に戻す。

 

『アルファスリー。あなたたちの役割は誘導と支援物資の運搬よ。アルファワン、アルファツーの狙撃を確認したら、実働部隊をポイントXまで誘導。フェーズツーが完了次第、実働部隊に()()()()()()()

 

「アルファスリー、了解。各機の健闘を祈る」

 

 ルドンが後部席を見やれば、アイコンタクトに気付いたトシオはおもむろに立ち上がる。人為変態用の薬が詰まった注射器を、首筋に突き刺しながら。

 

「んじゃまぁ……いっちょやりますか!」

 

「よしきた! 弟分の晴れ舞台だ、盛大に行こう」

 

 互いの拳を軽く合わせると、トシオは足元に準備していたジュラルミンケースを手に取った。

 

 そして背中にヤンマの翅を生やした彼が機内から飛び立ったのを見届けると、ルドンは視線を再びホワイトハウスのロータリーへと戻す。

 

 自分たちの登場によって束の間硬直していた戦況が、再び動き出そうとしていた。

 

 ※※※

 

「ハァァァァァ……ガン萎え」

 

 ヴォーパル・キフグス・ロフォカルスは上空を旋回する三機のヘリコプターに、苛立ちを募らせていた。

 

 鉄の鳥を思わせるそれの出現に、当初こそ新手の強者が現れたかと喜んだ彼であったが、蓋を開けてみれば何のことはない。ただチマチマと威嚇射撃を繰り返すだけの、腰抜けの群れであった。

 先ほど中から奇妙な翅を生やした男が飛び出したものの、彼もまた空中でこちらの様子を伺うばかりで、仕掛けてくる様子はない。大方、味方が逃げるための時間稼ぎであろう。

 

「マヂ親汁……既読無視(KS)確定ェ」

 

 盛大に舌打ちをして、ヴォーパルは再びシモンへと向き直る。自らへ向けられた殺気に微かに体を硬直させながら、しかし彼はこの場から逃走する気配を見せない。その姿に、ヴォーパルは少しばかり気を良くする。

 

 彼にとって、殺戮はこの上ない娯楽である。獲物を力でねじ伏せ、息の根を止める瞬間は、他の何にも代えがたい幸福だ。

 

 だが、そのカタルシスは獲物側の『程々の抵抗』と『まぁまぁの壊れにくさ』があって初めて感じることができるもの。早い話、彼を相手に手も足も出ないような雑魚を殺したところで何の面白味もないのだ。

 

 その点、ヴォーパルにとってシモンは『アリ寄りのナシ』といったところだった。

 

 潰し甲斐があるとは言えないが、暇つぶしに遊ぶくらいなら丁度いい。少なくとも、コバエのようにふらふらと飛び回るだけのヘリよりはマシだ。

 

「とりま、お前で優勝していくか」

 

 ゴキリと首を鳴らしたヴォーパルは、両手を地につけ、前傾の姿勢をとった。通常の人間同士の対決では早々用いられることがない『構え』──それを目にしたシモンは、俄かにフルフェイスの下で表情を固くする。

 

(次の行動が読みづらい──!)

 

 空手、柔道、八極拳……武道とは戦場で生まれたものであり、当然ながら対人を想定している。

 故にヴォーパルが見せた肉食獣さながら構えは、完全に武道という技術体系において慮外の現象。ただでさえ身体能力が高いヴォーパルを相手に、先を読むこともできなければ、不意を打つことも叶わない。間合いも速度も測れないプレッシャーに、シモンの肌にジワリと汗がにじむ。

 

「簡単に死ぬなよ? ──テンション下げみざわだからな」

 

 ギラリと歯を剥き出したヴォーパルは、次の瞬間躍動していた。彼は稲妻のような速さと軌道でシモンに襲い掛かり──。

 

 

 

「 ぐ ガ ッ ッ !?」

 

 

 

 ──突如真横から突っ込んできた車によって、轢き飛ばされた。

 

「なッ!?」

 

 驚愕の声をあげるシモンの前で巨体が宙を舞い、ホワイトハウスに叩きつけられる。純白の石柱や壁の一部が崩れ落ちて、そのままヴォーパルを生き埋めにする。

 一方で車はそのまま乱暴に停車し、すぐさま運転席側の窓を開ける。果たしてそこから顔を出した運転手は、スレヴィン・セイバーだった。

 

()()()()、シモンッ!」

 

「! 分かった!」

 

 その声が耳に届いた瞬間、彼は反射的に車の屋根の上へと跳躍した。おそらく彼こそが、モニカの言っていた『迎え』なのだろう。

 

「こちらスレヴィン、シモンを回収したぞ! 次はどうすりゃいいッ!?」

 

 シモンが危なげなく車上に着地したのを確認すると、スレヴィンはインカムに怒鳴る。

 

『合図と同時にホワイトハウスから離脱! 先行のヘリに続いて、最終ポイントを目指して!』

 

「了解! だが、急いでくれよ……」

 

 ──やっこさん、相当お冠みたいだからな。

 

 冷や汗混じりのスレヴィンが言うと同時、瓦礫の山が吹き飛んだ。常人ならば圧死する重量の重しをものともせず立ち上がった悪鬼は二、三度頭を振ると、フロントガラスごしにスレヴィンを睨みつける。

 

「我、激おこぷんぷん丸ッッ! 絶対に許さないかんなァ……!」

 

 口にした言葉の間抜けさとは裏腹に、向けられる殺気の量が尋常ではない。次の瞬間に車ごとひっくり返されてもおかしくない状況に、スレヴィンは心臓を鷲掴みにされたようなプレッシャーに襲われる。

 

(クソッ、まだか!?)

 

 再びヴォーパルが四足歩行の構えを取ったのを確認し、スレヴィンはいつでも車を出せるよう、クラッチギアに手を置く。

 

早く(Hurry)早くしろ(Hurry)! これが棺桶なんてごめんだぞ俺は!)

 

 しかしそんな彼の内心は裏切られ、その瞬間は中々訪れなかった──()()()()()()

 

「……どういうことだ?」

 

 その違和感にスレヴィンが気付いたのは、ヴォーパルが姿を見せてから10秒は経とうかという頃。合図はまだかという焦燥は次第に、彼が直面している別の疑問へとすり替わっていく。

 

 ──()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(あいつ……何で襲ってこない?)

 

 攻撃の時間は十分にあったはずだ。というより、今この瞬間も絶好の好機である。この短時間で嫌という程に見せつけられた凶暴性を踏まえれば、既に攻撃を受けていてもおかしくない──というより、攻撃を受けていなければおかしい。

 

『──やっぱりね』

 

 しかしその一方、モニカは満足そうな声を漏らす。全て予想した通り、そう言わんばかりの口調で。

 

 ──この時、車内のスレヴィンには知る由もなかったことであるが、車外ではごくごく小さな変化が起こっていた。

 

(これも作戦の内だろうから、何も言わないけど……)

 

 車の屋根の上に佇むシモン。彼が纏う拳法服の白地の上に小さく、集約された赤い光が点を作っていた。自らに合わせられたレーザーサイトの照準を見下ろしながら、彼は小さくため息を吐く。

 

(……すごく、落ち着かない)

 

 ──インドミナス・ラプトルはミッシェル・K・デイヴスにとってのバクダンオオアリ、あるいは膝丸燈にとってのオオミノガのように、ヴォーパルの遺伝子に後天的に組み込まれたベース生物(αMO)である。

 

 極めて高い身体能力と薬効耐性、そして高い知能を以て作中を跳梁したこの生物は、他の生物には見られない習性を持っている──より正確にいえば()()()()()()()

 

 それは『レーザーサイト(赤外線照準器)を当てられた標的に狙いを定め』『音響シグナルと同時に攻撃を開始する』というもの。

 軍用生物として人工的に付与されたこの反応は本能レベルのものであり、この生物は人間を欺く程の知能を有していながら、これに抗うことができない。

 そしてそれは、αESMOデザイニングという技術によってベース生物と極めて高い親和性を持つヴォーパルもまた同様。

 

『完全再現された“物語の怪物”が2体。それと細胞単位、しかもαMO手術の規格で融合した最強の生命体……なるほど、大した脅威ね。けど、お忘れかしら? アナタが物語の怪物だというのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──27世紀において『ジュラシック・パーク』シリーズは古典映画の傑作のひとつとして知られている。

 

 そして名作の性として、本作は俳優や監督を変えて幾度か撮り直されており……2618年現在。まさに進行形で製作が進んでいる三度目のリメイク作品に、モニカはスポンサーとして携わっていた。

 

『つまり見る人が見れば、アナタの弱いトコは丸わかり。敵の弱点を洗い出すなんて、地球(ここ)じゃ小学生でもやってるわ。当然それなりの額を出資する以上、私もこれまでの作品は履修済』

 

 艶のある声でそう言いながら、遂にモニカはその一手を打った。

 

Willkommen auf der Erde(地球にようこそ)、最強さん。”人脈(コネ)”、”財力(マネー)”、”技術(テク)”、”相互信頼(クレジット)”……アナタが手出しできない力でハメ倒してあげる。足腰立たなくなるまでね』

 

 ここまで後手に回らざるを得なかった灰陣営による、反撃の一手を。

 

 

 

 

『──アルファチーム、状況開始!』

 

 

 

 

 モニカの指示と同時、二人の狙撃手はスナイパーライフルの引き金を引く。重なり合うように二つの銃声が響き、二つの弾丸は的確に標的へと命中した。

 

 リック・アシュクロフトが放ったペイント弾──弾頭内のインキにテラフォーマーの集合フェロモンを混合させたそれは、シモンの胴体へ。

 

 ダニエル・アーサーJr.が放った追跡装置は、装甲が僅かに薄くなる皮骨板の継ぎ目を的確に縫って、ヴォーパルの左肩へ。

 

 

「グォオオオオオオッ!」

 

 

 そして銃声という音響シグナル(攻撃指令)と同時、ヴォーパルもまた殺戮のため大地を蹴る。一瞬でシモンとの間合いを詰めた彼は、その大爪と不揃いな牙で彼を八つ裂きにしようとし。

 

「スレヴィン君、発車()して!」

 

「待ちくたびれたぜ!」

 

 しかしそれらの凶器は、標的が足場とする車ごと急発進したためにあえなく空を切る。

 

 

「グァルルルル!」

 

 

 勢い余って転倒したヴォーパルは受け身をとると、その勢いのまま跳ね起きる。その頃には国道へ飛び出した車の姿は小さくなっていた。

 

「あーね、おけまる水産……ナシ寄りのアリだ」

 

 ──だが、何の問題もない。

 

「ならば我も、フッ軽で行く」

 

 ヴォーパルは凶暴に嗤うと、変態薬の容器を噛み砕く。中からあふれ出した液を呑み干せば、彼の体を覆う皮骨板が白と黒の格子模様へと変化し、更には稲妻を思わせる黄色い線がその身に浮かび上がる。これにより彼の肉体は、いよいよその身に宿す生物の因子を十全に使えるようになった。

 

 “インドミナス・レックス”と“インドミナス・ラプトル”という2種類のαMO、そして本来ならツノゼミを使用するベース枠に差し替えられた“スキンヘッド型テラフォーマー”の因子を。

 

「スゥウウウウ──」

 

 彼は目を閉じると大きく息を吸い込み、空気中に漂う集合フェロモンと標的の匂い分子を嗅ぎ分ける。犬以上に発達していたとされる“ティラノサウルスの嗅球”を用いれば、訳のないことだ……視認できない獲物の匂いと、その逃走経路をたどることなど。

 

 

 

「──全殺しであげぽよだ」

 

 

 

 そして再び目を見開くと、彼は一目散に駆け出した。

 

 

 ──初速から時速362kmを叩きだすテラフォーマーの走力。

 

 そこへ更に、脚力を増強するいくつかの特性を上乗せして。

 

 




【オマケ】コラボ先登場人物紹介part忘れた
リック・アシュクロフト(深緑の火星の物語)
 裏アネックス計画の第一班の班員(ダリウスの部下)。先に登場済みのチャーリー、ジョニーと同じく軍人で、手術ベースは擬態が得意と聞いて誰もが思い浮かべるあの爬虫類。『虹の弓(レイン・ボウ)』というド直球すぎる専用武器を引っ提げて敵を撃つゲーミングスナイパー。

Q.爬虫類型の変態薬ってどんな形状してるんですか?
※爬虫類型の変態薬は原作未登場

リック「え? あーあれだよ、あれ……なんだっけ? え、嘘だろ思い出せないんだけど。なにこれホラー?」

オリアンヌ「言われて見るとあまり意識したことがなかったな。だが戦えれば何も問題ないので良し!!」

ヴォーパル「わかりみが深い」

リック「俺たちは雰囲気で人為変態をしていた……?」
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