Fate/choise of fool   作:直視明光

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また新たなサーヴァントが登場します。
彼女は他ルートではヒロインをやったりもします。


影人、参上!

「それで結局、今日はその後一言も話せなかったんだ。森野には『まぁ流星君だからしょうがないよね。』て言われるし。どいつもこいつも俺の事を何だと思ってんだろう」

「そう言いたいのは、延々とあなたの愚痴を聞く羽目になっている私の方だと思うのですが…」

 学校が終わった帰り道、俺はクイーンに学校での出来事を話していた。

「学校に来て一日でファンクラブが出来るってどういう事だよ。いくらなんでも人気過ぎだろ」

「あなたも少しは彼のことを見習ったらどうです。少しは効果があるかもしれませんよ」

「俺にそんな事が出来ると思うか?失敗してみんなの笑いものになるのがオチだよ」

「またそんな後ろ向きなことを言って。少しはがんばりましょうよ」

「頑張ってこれなんだよ。こう見えても少しはましになった方なんだぜ」

 自分の家が見えてきた。早く荷物を持ってジョーの家に行こう。

 鍵を開けて玄関に入る。当たり前だけど、一日前に家を出てから何の変化もない。

「ここに何しに来たのですか。魔術に使う道具なら、ストーンズの家にある物の方が強力だと思いますが」

「冷蔵庫から買いだめしといた食材を持って帰ろうと思ってさ。腐らせたらもったいないし、ジョーは放っておくとパンしか食べなくなるからな。執事の人に頼んでも良かったんだけど、あんまり手間取らせても悪いし…。」

「そんな理由で来たのですか!なんてくだらな。」

「くだらないとは何だ。時計塔からの奨学金しか収入がない俺にとっては死活問題なんだよ」

 キッチンに入り、冷蔵庫を開ける。確か前スーパーの全品10%で沢山買った豚肉が残ってたよな…。

「あれ、変だな」

 中にあったほとんどのものがなくなっていた。残っているのは調味料だけ。それ以外は何一つ残っていない。

「マジかよ!空き巣にでも入られたのか?」

 でも鍵はかかっていたし、窓だって割れていなかった。というか結界が張ってあるんだから誰かが侵入したら分かるはずだ。一体とうやって入ってきたんだろう。

「どうしました?」

 脇にどいて冷蔵庫の中身を見せたが、クイーンは特に驚いた様子は見せなかった。

「それがどうかしたのですか」

 不思議そうな顔をしている。小首をかしげた仕草がやたらと可愛い

「だから、冷蔵庫の中が空っぽになっているだろ」

「はい。」

 一応うなずいているものの、顔に分かった様子はない。クイーンは現代の知識が乏しいから、これがどれだけ大変な事か理解できていないようだ。

「まず冷蔵庫は、食べ物が腐らないように入れて置くものなんだ」

「はい」

「それに、家の食べ物は殆どここに入っている」

「はい。」

「つまり、もしジョーの家に行っていなかったら、俺たちの夕食はなかったって事なんだ。」

「それは大変ですね!そうならなくて良かったです!」

 良かった、ようやく伝わったみたいだ。

「お前がストーンズの仕掛けた罠に気づかなかったのも、ストーンズの屋敷の方がここに比べてはるかに豪華だったのも、全ては必然だったということですね」

「ん、まぁ、そうだね…」

 そうとも言えるけど、なかなかグサリと来るなぁ。これって天然なのか?絶対違うな。

「ってそれどころじゃない。玄関の鍵を閉め忘れたとすると、鍵がかかっているという事は…」

「と言う事は?」

「まだ家に俺たち以外の誰かがいるってことだよ!」

「何ですって!」 

「これはまずい事になった。急いで警察に電話をして―」

 いや、それはだめだ。家中にある魔術道具について聞かれたら、色々と面倒くさい。

「待ってください。私をお前に憑依させて、家の中を探索してみるというのはどうでしょう?」

「いいね。そうしよう。」

 クイーンの力があれば、相手が誰だろうが安心だ。とっとと侵入者を捕まえよう!

「それじゃ行こうか。EMPRESS!」

 全身が光に包まれ英霊が憑依する。まぁ魔術師と戦うわけじゃないから、そこまで本気出す必要はないけど。

 そのままキッチン、リビング、と探していく。結局ソファーの下や風呂の中まで探したが見つけられなかった。

 ええっと、まだ探してないところは…

「分かったぞ。奴は地下室にいる」

『当然でしょう。いかにも推理しましたみたいな態度をとらないでください』

 魔法陣や昔からある道具を下手にいじくられたら、こっちにとっても相手にとっても厄介なことになる。これは急いで対処したほうが良さそうだ。

 鍵で扉を開けて地下まで下りていく。普段は全く使っていないので、えらく埃っぽい。

「私はこんな汚れた所で召喚されたんですね…できればもっと明るい所が良かったです」

「うるさいな。普段はイギリスにいるんだから仕方ないだろ」

 暗すぎて先に何があるかよく分からない。ここで奇襲されたら一発だな。

 一番下までつくと、ぼんやりと置きっぱなしにしてある様々な道具が見えた。とりあえず明かりをつけよう。

 手探りでスイッチを探す。カチリと音を立てて、天井の古めかしい蛍光灯がついた。

 人影は見当たらない。どうやら地下にもいないようだ。

 きっと冷蔵庫の中の物を食べたのはゴキブリか何かだったのだろう。やれやれ…、心配して損した。

「ほう、あれは何ですか?」

 クイーンが初めて見る物に目を丸くして驚いている。何を見ても新鮮に感じるってのはうらやましい。

「扇風機だよ。もう少し暑くなると出してきて使うんだ。風が吹いて、とても涼しいよ」

「では、あちらは?」

「オーブン。食べ物を焼くのに使うんだ。電子レンジを買ってからいらなくなったんだけど、捨てられなくて…」

「でんしれんじ?ま、まぁとりあえずそれはいいです。それなら、こちらは?」

「えっと、それは…」

 クイーンの指さした先には、見知らぬ物が転がっていた。

 大きく真っ黒な布に、何かがくるまれている。大きさはちょうど俺と同じぐらいだ。

「こんなのあったかな?ちょっと調べてみるか。」

 少しづつ布を解いていく。何重にも巻かれていて、なかなか中身が見えない。

「どんな物が入っているのでしょうか?伝説の剣とか、指輪とか、そういうかっこいいものだといいですね。」

「そんな物とうの昔に売り払っちゃったよ。何しろお金が足りなくてさ。」

 両親が亡くなってから二か月ほどは地獄の日々だった。家を売ればいいんだけど、一応魔術師の工房を一般人に見せるわけにもいかないし、ずいぶんと苦労させられたなぁ。

 まぁそんな体験も、思い出すと懐かしい感じがして―

「駄目だ、今でも悲しくなってくる。下手に思い出すんじゃなかった」

 今やっていることに集中しよう。別に暗い気持ちになりたいわけじゃないんだから。

「早くしてください。今すぐ終わらないのなら帰りましょう。」

 クイーンがいらいらしている。そんなに急ぐことないだろう、やる事もないんだし。

最初に比べて随分と布が捲れてきた。あとちょっとで何が入っているのか分かりそうだ。

 腕をせっせと動かす。俺だって何が入っているかは早く知りたいんだ。

 すると突然コテンと音を立てて、白い物が転がりだしてきた。

 とっさに拾い上げて調べてみる。これで大体中に入っている物の見当がつけられるぞ。

「えっと、こりゃお面だな。それも骸骨の。なんて悪趣味なデザインだ」

 薄くて軽いわりに固くて付けやすそうだ。だけどこんな縁起の悪そうな物が家にあったかなぁ。

「流星、変な音がしませんか?何にしても、早くここから離れたほうが良さそうです!」

 クイーンの声につられて振り返ると、ガタガタと高速で震えている黒い布が見えた。今にも爆発とか消滅とかしてしまいそうな雰囲気を醸し出している。

「急いで逃げよう!きっと侵入者用のトラップか何かだったんだ。俺の魔術刻印に反応したに違いない!」

 こんな迷惑な物どこで手に入れたんだろう?と言うか、ちゃんと処分しとけよ昔の俺!

「EMPRESS!」

大きく後ろに飛びすさりつつ、クラス名を唱えてクイーンを憑依させる。最悪の場合はこれで何とかなる!

 その直後、バシンと音を立てて、黒い布が粉々に吹き飛んだ。一体どれだけの力ならそんな事が出来るんだ!

 その真ん中に立つ黒一色のシルエットは―

「人間、だって!そんな馬鹿な!」

 見間違え様もないぐらいはっきりと、人のカタチをしていた。

『流星、これはどういう事ですか?魔術で動く絡繰なら何度か見たことがありますが、あれほどの力を持つ物は知りません。それ以前に、誰の指示もなく勝手に動き出すなんて…』

『俺も知らないよ。ホムンクルスとかゴーレムとかは専門じゃないんだ、そのへんは守宮さんに聞いてくれ』

『この役立たず。自分の家にある物の性質ぐらい理解しておくべきでしょう!』

『うるさいな、だからあんなの家になかったって言ってるだろ』

 クイーンとテレパシーで話しながら、怪人黒人間(仮)の様子を窺う。この際どうしてそんな事ができるのかは考えなくてもいい。こっちにどうやって接してくるかが問題だ。

 夜をそのまま溶かし込んだような色の布で全身を覆い隠し、不気味な雰囲気を漂わせている。顔は胸まで伸びている黒髪が邪魔でよく見えない。何を考えているのか分からないのは、なかなかに不安だ。

「―――――して。」

 それは金剛石の様に透き通った声で、何か一言呟いた。

『しゃ、喋りましたよ!自分の意思を持っている、という事でしょうか。なんと高度な…。』

『クイーン、ちょっと今黙っていてくれる?そんな暇があるなら相手の動きに注目していてくれ。ここで油断していると、下手すりゃ死ぬかもしれない』

 相手がいかなる者であったとしても、家の魔術結界に反応せずに侵入している時点で普通じゃない。警戒は十全にしておくべきだ。逃げるにせよ戦うにせよ、一瞬でも相手より早く動ければ勝機はある。

「もう一回言ってくれる?よく聞こえなかったんだ」

 自分にできる限りの笑顔を作って話しかけつつ、様子を窺う。さぁ、一体どう返してくる?

「―――早く返して。その仮面は私の物。なくすと怒られちゃう」

「えっと、これの事かな?」

 さっきの骸骨のお面を拾い上げる。ここは素直に言う事を聞いておいた方がいい!

「はい、どうぞ」

「―――ありがとう」

 それを渡すと、それは仮面を付けるために髪を掻き上げた。小麦色の肌と真っ赤な目、くっきりとした目鼻立ちを見ることが出来る。長い睫毛から判断するに、女性型だったようだ。

 カサリと音を立てて、彼女は仮面を慣れた手つきで付けた。衣装と相まって、さらに不気味度が増している。

 あれ、この姿、どっかで見たことあるような…。

『今すぐ逃げるぞクイーン!ジョーたちと急いで合流するんだ!』

『はい?いきなり慌ててどうしたのですか?』

「加速、最大(ラッシュ・マックス)!」

 全身から魔力を吹き出し、階段をひた走る。仮面を見た時点で気付くべきだった!

 あれはホムンクルスでも、ゴーレムでもない。冬木で行われた聖杯戦争で召喚される、サーヴァントの七つのクラスの一つ、隠密行動とマスター殺しを得意とする、ハサン・サッバーハの名を引継ぎし最高の暗殺者集団。アサシンだ!

 この家の結界に何の反応もなかったのも頷ける。彼らにとってはこの程度、造作もないに違いない。

 一人で戦うには分が悪すぎる。ジョーや守宮さんと協力して、三対一で―

「いや待てよ。別に俺一人でもなんとかなるんじゃないか」

『ようやく気づいたのですか。相手が私と同じ様にマスターに憑依することで力を発揮しているのなら、恐れることはありません。たとえ想像もつかないような卓越した才能を持っているとしても、マスターが凡人では何の意味もありませんからね』

 家を飛び出してからふと我に返る。そもそも冬木の聖杯戦争と違って、この聖杯戦争にアサシンというクラスは存在しない。相手にそこまでの戦闘能力があるのなら、目を合わせた瞬間に殺されていたはずだ。

「よし!どこからでも掛かってこい、返り討ちにしてやるよ!」

『あきれるほど単純ですね…。あまり調子に乗っているとあっさりやられますよ』

 魔力を溜め、相手が家から出てくるのを待つ。出て来た所を一撃でけりをつけよう。

「―――それはどうも」

 不意に後ろから声がすると同時に、首筋を雷が落ちるような衝撃が駆け抜けた。視界が明滅し、窒息しかける。

「―――惜しかった。他のマスターと協力するなんて卑怯」

「不意打ちで殺そうとした時点で、卑怯も何もないだろ―――っ」

 どうにかその一言を口にする。他のマスターって誰のことだろう。何にせよ助かった。

「流星君、聞こえる?私だよ。」

 後ろから守宮さんの声が聞こえる。いつから俺のそばにいたんだろう。

 全身に力を入れて振り向く。しかしそこには、ナイフを構えるアサシンしかいなかった。

「今はこの虫を使って通信してるの。早く逃げて!そいつは、流星君じゃ相性が悪い!」

 目の前にふわふわと浮いている、カナブン(?)から声がする。これが身を守ってくれたのか。

『一度撤退すべきです。このタイプの相手には、ダメージが与える術がありません。』

 クイーンも逃げろと言っている。自分がどれだけ弱いかよく分かるな…。

「―――来ないのなら、こちらから行く」

 アサシンが静かにナイフを構えるのが見える。仕方ない、ここは強行突破だ!

「大地爆散(ガイア・インパクト)!」

 地面が大きく盛り上がり、大量の砂を巻き上げる。この隙に―

「―――私に、煙幕は効かない」

 カナブンの辺りで甲高い音が聞こえる。投げる仕草は見えないのに、短剣(ダーク)が明確に首の辺りにある結界に突き刺さっているのが地味に怖い。どれだけ高速で投げりゃこんなこと出来るんだよ。

 こちらには相手は見えず、相手からこっちは見える。これって完全に逆効果だな。

『マスター、宝具を使います。それに合わせて行動してください!」

『了解!』

 この状況を打開するには、宝具しかない。役に立つ物だといいんだけど…

『我が心臓はイングランド王の物。肉体がか弱く脆いものであろうとも、王として君臨せん。私は国家と結婚した(アイ・マリッド・ザ・カントリー)!』

『え、それって―』

 薬指の指輪が大きく輝いた。魔力がさらに増大していく。これほどの魔力、地脈に直接繋ぎでもしない限り扱うどころか呼び出す事さえできないはずだ。

『って、今はそこじゃない。宝具の真名がそれって事は、クイーンって』

『はい、いかにも私はエリザベス。イギリスを治め、無敵艦隊を持つスペインを下した、偉大なる女王です!』

 唐突に明かされるクイーンの正体。凄い英霊だってことはわかったんだけど…

『でも確かその人って、七十歳ぐらいで亡くなったはずじゃなかったっけ?』

『それは後で説明しますから、今は戦いに集中してください!』

『分かった。気合い入れていくぜ!』

 いつもの百倍、いや二百倍ぐらいの力がある気がする。大きすぎてよくわからない。

 まぁなんだっていいや。これだけの量なら、ただ腕から発射するだけで十分だ。

「竜巻大砲(ストーム・インパクト)ってえええええ――!」

 飛び出した竜巻は、砂煙を跡形もなく消し去り、相手を軽く巻き上げて―

 その反動で、自分を後ろに五十メートルぐらい吹き飛ばしていた。

「―――少しは効いた。でも見かけほどじゃない。力を無駄遣いしすぎ」

 夕焼けの中立ち上がり、首をコキコキと鳴らすアサシン。使いこなすのに時間がかかりそうだ。

「―――不本意だけど、本気を出させてもらう。覚悟して」

 やばいぞ、アサシンの本気ってことは―

「回想婉腕(ザパーニーヤ)」

「ひゅ、人間爆弾(ヒューマンダイナマイト)!」

 全身から炎と風を吹き出し、防御を固める。こんな技で防げるのだろうか。

 辺りからコロコロと音がする。見回すと其処らじゅうに短剣(ダーク)が落ちていた。

 その数百本以上。え、いつの間にこんなにたくさん投げたんだ?

「―――やっぱり未完成。もっと練習が必要。」

 項垂れ、頭を掻きむしるアサシン。悔しがっているように見える。こんなに強力なら十分だと思う。

「だから自分を憑依させろと言った。お前に正面対決は向いていない」

 唐突にアサシンの後ろから声がした。曲刀を持った誰かが立っているのが見える。アサシンの仲間かな?

「―――仕方がない。ここで負けるよりはまし」

 アサシンが再びこちらに刃を向けた。次は何を仕掛けてくるんだ。

「―――FORCE」

 静かに口にした瞬間、アサシンの姿が紫色に輝いた。眩しいその輝きが収まると―

「―――この格好、動きにくい」

 彼女は鎖鎧を纏い銀色の布を被って髪を隠し、瞳の色をアメジストを直接打ち込んだような紫色に変えていた。

 その姿には先ほどまでの謎めいた雰囲気はなく、圧倒的な強者として君臨する気迫が現れている。

「―――それじゃ、行くよ」

 仮面を丁寧に懐にしまいつつ、アサシンは構える。その顔には標的を仕留める時の淡々とした瞳が輝いていた。

 

 




そろそろサーヴァントも増えて来たし、ステータスとかをまとめて投稿したいと思います。
細かいところまで詰めてないんだよなぁ…。
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