Fate/choise of fool   作:直視明光

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今回は主人公に修行をさせます。頑張って強くなれ!


流星の魔術練習 初級編

「全くやってくれたな。絶好のチャンスだったのに無様にも逃げられた。おまけに相手はアサシンだ。おかげで俺たちは四六時中不意打ちで殺される恐怖に怯え続けるってわけだ。もはや逆に笑えるぐらいだぜ。」

「うう…。面目ない。」

「これからはちゃんと魔術の練習をしてください。一つでもまともに決まっていれば絶対に勝てたはずです。」

「はい、一生懸命やります…。」

 ジョーの屋敷までの帰り道、俺はずっと叱られていた。まぁそれだけの事をしでかしちゃったってのはよく分かってるんだけど、結構こたえるなぁ…。

「で、でもさ、流星君だけが悪いわけじゃないよね。すぐに共闘しなかった私たちも悪いし、相手がアサシンって事も最初は分かってなかったんだから、対処できなくたってしょうがないと。」

「いいえマスター、それは違うわ。相手の出方を窺うのは当然よ。寧ろ今回私たちが反省すべきなのは、ここまで早く戦闘が起こるはずがないと無意識に油断していた事。もう少し沢山の使い魔を派遣していれば、相手の動きも探知できたのだけれど。」

「すいません。完全に余裕ぶってました。これぐらいなら自分でもどうにかなると自惚れちゃってました。」

 もしもスカラベを放ってもらっていなかったらと思うとぞっとする。最初の脱落者になる所だった。

「後でビアンキに連絡するぞ。最も、奴が状況を把握しているとは思えんがな。」

「いや、あの人はきっと知っていると思う。たぶんもう事態の収拾に動いているんじゃないかな。」

 それどころか今頃一戦交えていたっておかしくない。あんなにスペック高そうな人なんだ。それぐらいのことは俺たちよりもずっと簡単に出来てしまうだろう。

「はぁ、それにしてもなぁ。」

 自分の失敗を嫌でも意識してしまう。明日から頑張ろう。これ以上足をひっぱるわけにはいかない!

「そう言えば、私の真名についての話はどうなったのですか?このまま触れずに流してしまうのならそれでも構いませんけど…。」

「そういやそうだな。一応話しとこうか。」

「一応、ですか。なんというか、凄く残念な気分です。もっと驚いていると思っていたのですが。」

「気にするなエンプレス。単にこいつが処理落ちしてるだけだ。」

 色々ありすぎてもう全部投げ出したくなってしまっている自分が良く分かる。頑張れ、諦めるのはまだ早いぞ!

「で、どうしてお婆さんの姿じゃないんだ?エリザベス女王の人生の最盛期って、たぶんスペインの無敵艦隊を破った時だと思うんだけど、それって結構年取ってからの出来事だったよな。」

「そうだな。最ももしその時の姿で出てきたら、ただの老けたお婆さんと一緒に聖杯戦争を戦う事になるわけだが。きっと最大の問題は腰痛の治療だ。」

 茶々を入れてハハハ、と軽すぎる笑い声を上げるジョー。クイーンと七夢さんに冷たい目を向けられていることにも気づいていない。いや、気づいてないふりをしてるのかな?

「私はそんな年寄りではありませんっ。英霊はその全盛期の姿で召喚されます。今の私は二十歳、その後に起きた事は知識として頭の中にあるだけです。言ってみれば、『私の一生』という題名の台本を読まされた様なものですね。」

「え、俺たちの方が年下だったのか。同い年か年上だと思ってた。」

 四つも年上にはとても見えない。そうか、もし現代で生きていたら大学に通ったり就職して働いててもおかしくないぐらいの年なのか…。

「反応するべきなのはそこじゃないわ。要は、若い姿でも問題はない。と言いたいのよ。」

「年上のお嬢様か…。悪くないなぁ。」

「駄目だな。現実に早く戻って来い。」

 喫茶店でバイトしたり、皆で合コンしたりしているんだろうなぁ…。

「そういや、ムーンは何歳なんだ?」 

「乙女に年齢を聞くのはマナー違反よ。」

「別に気になるわけじゃないが、そんなに勿体付けなくても――げふっ。」

「マナー違反よ☆」

 いつか彼氏が出来て、二人で水族館にでも行って…

「いい加減に正気に帰れ。」

「痛って!あれ、俺何してた?」

「はぁ、やってらんねぇな。」

「ジョー、頑張って。」

「他人事みたいなこと言いやがって。七夢、お前もコイツをなんとかするのを手伝え。」

「ごめん、それは無理。」

 ようやく家が見えてきた。少し休みたいと思いつつ、俺は今日の晩御飯を何にするか考え始めていた。

 

 

「さてと、それじゃ買い物に行ってくる。」

 約十分間ゴロゴロした後、買い物に行く準備をする。今日は水曜日だから、海鮮物が少し安くなっているはずだ。夕ご飯のメインはエビフライで決まりだな。

「おい、まさかあんなことが起きた後、普通に外出するつもりじゃないだろうな。」

 怪訝な顔をしたジョーが持っているのは、ピザの出前のチラシ。確かに今日は行動したくない。またアレと遭遇したら、今度こそ生きて帰って来られないかもしれない。

 でもそんな事を怖がっていたら、おいしい夕食は作れない!俺は覚悟を決めて玄関に向かって歩き出し―

「買い物には私が行ってくるよ。流星君は家でゆっくりしていていいから。」

 守宮さんにとおせんぼして止められた。そりゃ行ってくれるのならありがたいけど…。

「守宮さんこそ外出しない方がいいんじゃないかな。この土地に慣れてないだろうし、迷子になったら大変だし。」

「スマホの地図を見ながら行くから大丈夫だよ。それと、晩御飯も私が作っていいよね。」

「ああ、構わん。MOONも連れてけ。とっとと帰れよ。」

 俺が反応するより早くジョーが答えた。振り向きもせず、心配するそぶりも見せない。

「それじゃ、行ってきます。」

「いや、ちょっと待―」

 俺の話を最後まで聞かず、彼女は行ってしまった。

「おい、ジョー。少し守宮さんに冷たくないか?」

「どこがだ?お前、何か誤解してるんじゃないか?」

「誤解してるってどういう意味だよ。」

「あのなぁ、あいつは俺たちよりも遥かに強い魔術師だぞ。不意打ちされようがサーヴァントと遭遇しようが、悪くても逃げ切り、下手すりゃ返り討ちにしたっておかしくないぐらいだ。」

「何が言いたいのさ。」

「要するに心配するだけ無駄って事。第一、俺たちがいたって何の役にも立たねぇよ。せいぜい体を張って縦になるぐらいが関の山だ。お前がそうなりたいって言うなら止めはしないが?」

「それはそうかもしれないけど…。」

 それにしたって薄情すぎると思う。付き合い長い相手なんだから、これぐらいが普通なのかもしれないけど。

「そんな事よりとっとと魔術の練習をしろ。また同じ様な失敗をしたら許さないからな。」

 そう言い放つとジョーは部屋を出ていった。大方マジシャンの様子でも見に行ったんだろう。

「言われなくてもするさ。全く…。」

 クイーンもマジシャンの方にいるし、今ここで俺は一人きりだ。集中するにはちょうどいいな。

 適当な箱を掴んで庭に出る。外でやった方がしくじった時に被害が少なくて済む。

 そこには巨大な噴水やローマっぽい石像、さらには楔型文字?が彫られた石板が並べられていた。ついこの間造られたとは思えない程の豪華さだ。

 壊したらきっと怒られるだけじゃ済まない。絶対に失敗しないようにしないと。

 地面に箱を置き、静かに呪文を唱える。

「竜巻大砲(ストーム・インパクト)」

 手のひらサイズの竜巻が箱の中に展開された。クイーンの力がなきゃこんなもんだ。

「ふぅ――――っと。」

 合わせた両手をゆっくりと離していくと、それに連動して竜巻が少しずつ大きくなっていく。後は箱から出さないまま、じっくりと風の勢いを強くしていけばいい。

 いつもはこのまま続けるんだけど、今日はちょっと挑戦してみたい気分だ。上手くいくかな?

「魔術刻印、展開(システム・オン)」

 背中に刺されるような痛みが走る。これに耐えられなきゃ、この力は使えない。

 段違いの速さで風の速度が上がる。徒歩から車に乗り換えたぐらいの差があると言えば分かりやすいか。

「集中、集中。」

 一瞬でも気を取られたら大惨事だ。風のコントロールにだけ神経を張り巡らせる。辺りが静かになり、この世界で自分が一人きりになったかのような感覚を味わう。

 風の余波で砂が舞い上がり、空中でキラキラと輝く。それはまるで砂漠に埋もれた宝石のようで―

「って危ない。何余計なこと考えてんだ俺は。」

 こんなんだからいつも失敗ばかりに違いない。気が付けば竜巻は縦に大きく伸び、今にも制御不能になってしまいそうだ。これ以上は危険だな。

 急いで魔力を流すのをやめる。竜巻は一瞬大きく膨らんだ後で、空気の中に急速に溶け込んでいった。

 




戦力になるにはまだまだ時間がかかりそうです…。
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