「はぁ、危なかった……」
大きく息を吐き、気分を落ち着かせた。背中の妙な感覚がゆっくりと薄れていく。
これを憑依状態、さらには宝具開放していても出来るようにならなきゃいけない。道のりは長そうだ…。
庭からリビングと廊下を通り抜け、マジシャンの部屋まで移動する。
「クイーン、ちょっといいかな」
ドアを開けて中を覗き込むと、休んでいるマジシャンが見えた。どうやらジョーの武器は完成したようだ。
「おお、流星。見ろ、これが俺専用の武器だ。かっこいいだろ?」
上機嫌でジョーが掲げているのは身長より少し長いぐらいの杖だった。表面に細かい彫細工がされていて、光を反射してキラキラ光っている。太さは人差し指ぐらいだ。戦いで使えるようには見えない。
「一応これはコイツの『宝具』だからな。真名開放だって出来る。最も出来なくても十分役に立つと思うがな」
自慢げに説明するマジシャン。一体どんな効果を持っているんだろう。
「コホン。それで何の用ですか、流星」
クイーンがわざとらしい咳払いをした。構ってほしいのかな?
「魔術の練習をしたいから、憑依させてもらっていいかな?」
「別に許可を取らなくても、お好きにどう―」
「EMPRESS!」
『ちょっと!話はちゃんと最後まで聞くものですよ!』
庭に戻り、両腕をかざす。さて、もう一度―
「竜巻大砲(ストーム・インパクト)っと!」
いきなり巨大な風の尖塔が飛び出した。大きすぎて制御できない。慎重に魔力の流れを抑えていく。落ち着け、落ち着け……。
『魔術の練習ですか?それならもっと力を抜いてください。そのように体を強張らせたままでは押し負けますよ。受け止めるのではなく、受け流すのです』
『悪いクイーン。正直、実感わかないというかそんな余裕ないというか……っっ!』
魔力を抜いていっているのにも関わらず、寧ろ風速はどんどん上がっている。ヤバい、調子乗りすぎた!
『余裕はある物ではなく創る物です。いいから力を抜いて、後は私が何とかします』
どっちにしたってこのままじゃ終わりだ。俺は一か八か、風を抑えていた力を一気に解き放った。
途端に轟、と吹き荒れる風。辺りの物を巻き上げて、滅茶苦茶にかき回す。
「失敗した―――っ!」
脳裏に浮かぶのは、マジ切れしたジョーにボッコボコにされる分かりやすい破滅への道。何てこった、やっぱり俺にまだこの力はレベルが高すぎた!
『私は国家と結婚した(アイ・マリッド・ザ・カントリー)』
そんな風にテンパっている俺の脳裏に、落ち着き払ったクイーンの声が染み渡った。
唐突に竜巻がスピードダウンする。あっという間にそよ風程度に下がり、すぐに消滅してしまった。
「おお、凄い!風が跡形もなく消えた!」
『別に驚かれるような事はしていません。より大きな力に取り込ませただけですから。』
『何だかよく分からないけど、ありがとう。で、具体的にはどういう事したんだ?仕組みが分からなきゃ、使いようがない』
『そうですね…。要は、もっと強力な風を吹かせたわけです。風そのものを力で押さえつけるよりも、自分で風を使った方が力の効率がいいんですよ』
『へぇ、なるほど。よく分かったよ。それじゃ俺も、そうやってやればいいんだな』
『言うほど簡単ではありませんけどね。鍛錬あるのみです』
「よーし。頑張るぞ!」
その後1時間ぐらい魔術の練習をした。最後の方は前よりは上手く出来るようになっていたと思う。
「はぁっ―――。RELEASE、っと……」
憑依を解き、リビングのソファ―の上に寝転がる。すっごく疲れた。もう動きたくない。
「一体どれだけ普段サボっているんだ。もう少し真面目になれ」
TⅤを見ながら嫌味を言うジョー。大画面の中では二枚目が気取って女性を口説いている。
「あれ、守宮さんまだ帰ってないんだ。大丈夫かな」
「迷子にでもなっているんじゃないか?何、何かあったら連絡してくるさ」
「アサシンと戦ってて、そんな余裕がないって事はないかな」
「ああ、その件なら大丈夫だ。ビアンキから交戦してある程度ダメージを与えたから二日ぐらいは心配しなくていいと連絡があった」
「マジで!あの人凄いな」
「本当にそうですね。あの裏切り者とは大違いです。」
それは良かった。さて、数学の復習でもしようかな……。
次は戦闘描写が書けます!