Fate/choise of fool   作:直視明光

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久しぶりの投稿です


魔女

「はぁ、くそ、このっっ!」

『女の子がくそ、なんて言ってはいけないわ。どんな時でも美しく、周りの目を意識して―』

『今はそういうの良いから!使い魔(アガシオン)は届くかな?』

『ええ、何とか。あれだけ放てば一匹ぐらいは辿り着けるはずよ。』

「IMPREGNABLE COMET、後もうちょっと頑張って!QUICKRAPID CLAW、深追いは厳禁だからね!」

「■■■■■■、■ォ!」

「シギャァァァァァ―――ッ!」

大地を揺るがす巨人と獣、幾重にも重なり天を覆う緑の閃光。それをかき分けるようにして飛び回るいくつもの影。その正体は―

「目標はっけーん。とっとと殲滅しちゃうよ!」

「それは相手がたくさんいる時に使う言葉じゃない。日本語も上手く使えないの?」

「戯言言ってる暇があるならとっとと戦いに参加しろ!来んのが遅すぎんだよ!」

 黒い帽子と黒いマント。箒に乗って宙を舞い、黒猫を相棒とする。古から恐れられ、禁忌とされた存在。

 悪魔と契約を交わし、その力でもって様々な神秘を扱う、ワルプルギスの夜の住人。

 まごう事なき魔女が、平凡なこの町に君臨していた。

 

 

 

「もう、こんなの聞いてないよ。どう考えても敵が多すぎる。」

 混乱しつつも服から一枚の紙を取り出し、地面に叩きつける守宮。

 それに呼応して大地が盛り上がり、大きな人型を形造る。

「IMPREGNABLE COMET、もう十分だよ、ありがとう。SUBVERSIVE FIST!出番だよ、しっかり戦ってね!」

「グォォォォォォッッッ―――ッ!」

 崩れ落ちる巨体を乗り越え、強烈な突きが魔女を吹き飛ばした。

「痛ったいなぁ、そんなの女の子にする攻撃じゃない、もっと手加減してよ。」

 しかしそれでも、迫りくる攻撃は止まらない。一人一人とは戦えても複数体が補っているため、追撃を掛けられないのだ。その隙に相手はダメージを回復し、再び戦線に復帰する。その繰り返しだ。

『もう抑えきれない…。MOON、宝具を!』

『ごめんなさいね。私の宝具、こういう状況では無力なの。』

『そんなぁ。私、ここで死ぬの?どうせなら英霊相手にかっこ良く逝きたかったなぁ。』

『そんな事を言う余裕があるなら、まだ頑張れるんじゃない?ほら、気合いを入れて。』

「だぁぁぁぁ、チェストぉぉぉぉぉ!」

 叫びながら右腕を大きく振りかぶると、拳に握っている紋印の彫られた石が紫色に輝いた。

 それを正面に思いっきり投げつける。不自然な速さまで石は加速し、空中で形を変える。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 そのまま地面に激突し、粉塵を巻き上げて大爆発した。辺りが炎で真っ赤に染め上げられる。

「今ので三人ぐらいは気絶したはず!相手が混乱している内に逃げるよ!」

 守宮の呼びかけに合わせ、ゴーレムたちが合体して一つの形をとる。バイクを思わせるフォルムを形作ったそれに跨ると、後ろから蒸気を吹き出し、その勢いで急速発進した。

「あーもう。あいつらのせいで携帯電話は落とすし、晩御飯はいつになっても食べれないし―――」

 ブツブツと愚痴を言いつつ、走るスピードを上げていく。周りの風景が線になって流れる。

『ねぇマスター。もういい加減に覚悟を決めるべきじゃないかしら。あなた、魔術師でしょう。』

『何の話?それより、どうやったら逃げ切れると思う。あれで全部じゃないみたいだし、また捕まるのは時間の問題だよ。どうにかしてジョーたちと合流しないと、結局やられちゃう。』

 風に髪を任せつつ、前を見据える。その瞳は焦騒に揺らいでいた。

『相手に配慮している場合じゃないと言っているのよ。人を殺すのがそんなに怖いの?』

『なっ!当たり前だよ。犠牲は最小限に、要は相手のマスターだけ倒せればいいんだから。』

『そんな余裕めいた事を言っていると、先にあの世に行く羽目になるわ。手加減なんて必要ないの。』

『私はそういうの嫌いだな。』

『ふふ…。よくそんな事が言えるわね。そんな覚悟で戦場に来ては駄目よ、必ずいつか命を奪うのだから。心構えだけはしておかないと。』

『怒られたってこれだけは曲げられないよ。』

『どうして?』

『どうしてもだよ。昔それで痛い目に遭ったことがあるの。』

『ふぅん、そう。それはそうと、敵さんはもう立ち直ったみたいよ』

「わぁ本当だ!総員、戦闘態勢に―」

「遅っそぉーい!」

 再びゴーレムが元の姿に戻るよりも早く、一直線に駆け抜けた箒が守宮を背中から叩き落した。

「がっ、わっ、だっ、つっ!」

 地面をゴロゴロと転がりながら、かろうじて受け身を取る。

「おら、いくぜみんな!一斉に突撃だぁ―――っ!」

 掛け声に合わせ、一人、また一人と魔女が突っ込んで来る。

 あんな物をまともに受けたらそれこそ本当に死んでしまいかねない。擦り傷だらけの体に鞭打ち、守宮は何とか正面を向き直した。

「みんな、私を守って!」

 正面に一枚の巨大な盾が展開する。一瞬全ての攻撃を受け止めるも、最初から無かったかの様に雲散霧消した。

「くっ、殆ど品切れだ。こうなったら仕方ない。切り札、切っちゃうよ!」

 頭の後ろに手をまわし、ポニーテールにしてある髪留めを引き抜く。

大きく揺れる髪を払い除け、そこから一枚の魔法陣を取り出した。

 一体の魔女が突っ込んで来た所をひらりと躱し、高速で印を結ぶ。

「ここに刻まれるはその息吹。貫き通すその覚悟がもたらす善なる焔で、悪しき炎を焼き尽くせ。四大元素の一柱の担い手よ、今ここに顕現せよ!SALAMANDRA SALAMANDRA!」

 そう叫ぶと同時、巨大な黒い影が唐突に現出した。

「GAAAAAAAAAAAAAA!」

 今までの物より数倍大きな雄たけびを上げるその姿は、まさに神話に出てくる怪物そのものだった。

 背中から生えた1対の歪んだ翼。電柱よりも太く長い尾。つららの様に尖った牙。

 全身に生えている黒曜石に似た鱗は、光を反射して鈍く輝いている。

「み、見掛け倒しよこんなの。きっと大したことない。」

「へぇ、本当にそう思う?そんな口を叩けるのも今の内だよ。やっちゃえ、サラマンダー!」

 轟!と放たれる焔の渦。それはまとめて魔女を巻き込み、黒コゲにして気絶させる。

「私を、私達を、ナメんな――!」

 それを掠めるようにして潜り抜け、体当たりで攻撃する魔女。だが悲しいかな、怪物には傷一つなかった。

「WOOOOOOOOOOOOO!」

「うきゃー!や、やられた…。」

 面倒くさげに翼を動かすと、それで竜巻が発生し、魔女を空の彼方に吹き飛ばした。

「ビビんな、前に出ろ。魔術師を直接狙え!」

『あら…。私も随分軽く見られたものね。隊列を崩し、統制を失った相手ぐらいなら、十分対処出来るのよ!』

 腕から迸る緑の閃光が、躊躇する魔女を容赦なく貫いていく。当てられた魔女は箒から落ち、そのまま微動だにしない。ついさっきまでのピンチが嘘だったかの様に、戦況は完全に逆転していた。

「撤退、てったーい!この野郎、今度必ず仕返ししてやんよ!」

 結局、そんないかにもなセリフを残して、魔女達は逃げていった。

 

 

 

「ふふん、やっぱり私強いな。これならジョーたちがいなくても、一人で何とか出来るんじゃない?」

『調子に乗っているところ悪いのだけれど、あの”切り札”っていうのはどういう意味?これだけ強力なら最初から使えば良かったんじゃない?』

『これ5分ぐらいで動けなくなっちゃうんだ。魔力を溜めるのに四枚合わせて一週間ぐらいかかっちゃうから、あんまり使用したくないんだけど―』

 守宮が言っている間にも、巨躯はゆっくりと空気に溶けていく。10秒ぐらい経った後大きな叫び声をあげ、その体は完全に消滅してしまった。

『あちゃー。後三枚か、大事に使わないと』

『四大元素の担い手を仮初とはいえ召喚するなんて…。あなた、アベレージ・ワンか何か?』

『いやいや、私にはどれだけ工夫しても風属性は使えないし、そもそも私の本来の属性は火属性だけだよ。ただ特殊体質―――召喚術に関してだけ特別に色々出来るようになっている――と言うのが正しいかな』

『それはどういう仕組みでやっているの?多分魔法陣で他の属性を部分的に付与しているとか、そんな感じね』

『トップシークレットです!』

『ふうん、あくまで秘密は明かせないと。そう言いたいわけね』

『一応一族代々引き継いできた技だから、そう易々とは教えられないよ――ん、あれ何?』

 守宮の目に、沢山の小さな黒い影が映り込んだ。心なしか少しずつ大きくなっている様に見える。

「POLICED WINGS。ちょっと様子を見て来てくれる?」

 紙を取り出し宙に投げ込む。するとそれはひらひらと舞ってから、風に乗って影の方に飛んでいった。

 暫く経った後、しゃがみ込んで地面に指で小さな魔法陣を描く。その後両手をごにょごにょと複雑に動かすと、空中にぼんやりと映像が浮かび始めた。

 

 

『あれです。あれ!あの呑気な顔してしゃがみこんでる奴ですよ!』

『ああ、あのバカっぽい女の事か?全く、たった一人に十人がかりで負けるなんて、意外にお前ら使えないな』

『仕方ねぇだろ。あれが神域の怪物を呼び出すとか、そんな事が出来るタマに見えるかよ。まぁなんにしたって、これだけの人数で挑めば、さすがに負けねぇだろ』

『だといいんだけどな。おい、そこの!隊列を崩すな』

『はーい、すいませーん』

 そこにいたのは三十人以上の魔女と、中心で腕を組む一人の男性だった。全員が同じ衣装を身に纏い、一団となって、確実にこちらに近づいてくる。

「ん、これは…」

 守宮の脳にステータスや能力値が浮かび上がる。これはサーヴァントの情報だ。

 あの内どれか一人が英霊を憑依している。その事がどうしようもなく自分を焦らせた。

「POLICED WINGS、もういいよ、早く戻って来て!」

 立ち上がって魔法陣を足でかき消す。地面に紙を投げつけ、出て来たバイクの様な物に乗り込もうとした時―

「尻尾を巻いて逃げるつもりかい?それはちょっと違うんじゃないか?」

 後ろから、やけに軽いテンションで誰かが呼びかけてきた。

 




ストックが切れたのを書いていたらだいぶ間が空いてしまいました…急いで書きだめしないと!
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