「はぁっっ? 冗談でしょ、アンタみたいなちんちくりん男が、あの方と同じ名を名乗っていいわけがないじゃない! 撤回しなさい、今すぐ撤回しなさい! 今ならまだ、軽く呪うぐらいで許してあげるから!」
守宮の口から叫び声が飛び出した。そのあまりの剣幕に、言った本人も含めて驚かされる。
「いや、これ私じゃないよ? 多分MOONの言いたい事が、無理矢理出て来たんだと……」
右手で口を押さえ、左手を大きく動かして必死で弁明する守宮。その仕草を見て、少年は天を仰いだ。
「いやいや、きっとこのカエサルは君と出会う前の姿さ。だって聖杯戦争に英霊は、最盛期で召喚されるっていうじゃないか。」
如何にも面白い事を思いついたといった表情で嫌味を言ってくる。それに対し守宮は一枚の紙を取り出し―
「IMPREGNABLE COMET!このダメ男を吹き飛ばして!」
ゴーレムを素早く召喚する。大声で叫びながら、待ったましたとばかりに飛び出していくその姿を、後ろから大きく伸びた影が覆った。
「シャシャシャァァァァァァ―――――ッ!」
その正体は人一人ぐらいなら丸飲みしてしまいそうなぐらいの大蛇だった。尾を左右に振り回し、暴れまわるその姿は、ハリウッド映画でだって中々見れるものではない。
「え、ちょっとこれ何。シャレにならないぐらい大きいんだけど」
『エジプト呪術の力よ! さぁ、私の怒りをとくと受け止めなさい!』
「かかって来なよデカブツ。カエサルの力、その目に焼き付けてあげよう」
「だからアンタはカエサルじゃない!」
荒れ狂う巨体を、器用に躱し続ける少年。やはり英霊を憑依しているようだ。
空中から剣を抜き出し、二、三度切りつけてから顔をしかめた。
「刃こぼれしている。やはり並大抵の攻撃では、この鱗は砕けないみたいだね」
更に別の剣を抜き、一気呵成に斬り続ける。高い金属音が、辺りに響き渡る。
接近してくる魔女達をそっちのけで行われる戦いに、少年とMOON以外の全員が置いていかれていた。心なしか様子をうかがっている魔女達も困っているように見える。
『何をボケっとしているの! 早く攻撃しなさい!』
『協力するとかそういう話じゃなかったのかな……』
両腕から緑の閃光を打ち出しつつ、守宮は溜め息をつく。
「能天気なもんだ。まぁ、僕の仕組んだ通りなんだけどね」
それをじろりと睨んでぼそりと少年は呟いた。そのポケットには、大量の握りつぶされた甲虫の死体が入っていた。
「うう、さっぱり分からん。ベクトル方程式とか、微分積分とか、どうしてそんな物を人間は生み出したんだ」
難しすぎる問題を前に、俺は頭を抱えていた。こんな物がなければ日本中の高校生が幸せに過ごせるのに。
「流星?大丈夫ですか、何をしているのかはよく分かりませんが、無理をするのは良くありませんよ」
不思議そうな顔のクイーン。昔はこんな物なかったんだよな……。
「何を考えているか透けて見えるぞ、流星」
そう言ってジョーはクククと笑った。自分はこんな心配しなくていいから、俺の苦労が分からないんだ。
「そういや、お前何してるんだ? 随分と呑気だけどさ、パトロールでもしてきたら?」
「今日は別にすることはない。強いて言うなら、いつになっても帰ってこない七夢を迎えに行くぐらいか」
「そういやそうだね。どこに行ってるんだろう」
言いながらちらりと時計を見る。針は8時を指していた。
「えっ、もうこんな時間かよ! まだ1時間も経ってないと思ってたのに」
「気づいてなかったのか。いくら何でも遅すぎるだろう」
「早く探しに行きましょう。このままでは戦いに巻き込まれ、最悪の場合そのまま……」
言われなくても分かっている。俺とクイーンは、急いで外に飛び出した。
「EMPRESS!」
この強力な力にもだんだん慣れてきた。さてと、それじゃ――
「加速、開始(ラッシュ・バースト)!」
とっととヒロインを助け出すとしますか!
「おい、ちょっと待てよ。まだ連絡がないんだから――」
馬鹿なことを言っているジョーを置き去りにして。
一度間違えて別の作品のほうに投稿してしまいました……気を付けないと