書けるだけ書いた分をとりあえず載せたいと思います。
いよいよ主人公の登場です。
シリアスパートはしばらくお休みです。主人公の認識に合わせて書いているので、ノリが少し軽いところは許してやってください。
個人的には、公式と微妙に変えてある召喚術式を見てほしかったりします。
―――物心ついた時から、俺の身近には魔術があった。
幼い頃1番最初に与えられた本は魔術について書かれた理論書だったし、両親は毎日の様に俺に魔術の基本を学ばせ、俺がそれを身に付けていくのを見て喜んだ。
自分でもそれが普通だと思っていたし、疑問も感じなかった。
なぜ家族の中で俺しか魔術を使えないのだろうかという事以外は。
後から分かった事だが、俺の家系“ブレドアリナ家”はこの当時完全に終わっていた。
かつてはヨーロッパ1と呼ばれた事もあったらしいが、4世代ほど前から廃れ始め、親 父の代になってついに魔術師の生命線である魔術回路が完全になくなってしまうという体たらくだった。
父はかつての栄華の名残である魔術刻印を細々と保ち続けることで精いっぱいだったらしい。
そんなひどい状況だったからこそ、魔術回路を平均の25本程度しか持っていない俺が“天才”だの“神童”などと呼ばれて、無駄に調子に乗っていたのだろう。
あの頃の俺は、自分は凄いのだと無邪気に信じ込んでいたし、周りの人々が自分よりも劣っていると思っていたふしさえあった。
だがそんな思い込みは、時計塔に行って他の魔術師を見て一瞬で砕け散ってしまった。こちらが必死になってやることを奴らは簡単にこなしてしまう。
正直言ってレベルが、次元が違うなんてものじゃなかった。彼らの周りだけ異世界で、これは上手く作られたCG映画のワンシーンだと言われても信じられただろう。
あまりにも差がありすぎて、いったいどれぐらい差があるのかさえ分からなかった。
そこから努力した。もうこれ以上ないほど毎日毎日、少しでも追いつこうとして必死になった。
まだ追いつけていないけれど、“彼らの弟子”程度の実力は手に入れられたと思う。
そして今やっている“コレ”が成功すれば彼らさえも追い越せるかもしれない。
そう、これはチャンスなんだ。後は落ち着いて正面を向き、誰が来たかを確認するだけ。
失敗はしてない。絶対にしてないんだから、こんなにドキドキする必要はないはずなんだ!
――――わざわざこんなに長い回想までして、俺は今自分を落ち着かせることに必死になっていた。
聖杯戦争、と呼ばれるものを知っているだろうか。
日本においてある町で5度開催された、7つの英雄の魂を呼び出して行う殺し合いを。
最後まで残った者は、あらゆる願いをかなえる力を持つ聖杯を手に入れることが出来るという。それをめぐって、過去五回すさまじい争いが繰り広げられた。
その戦いにおいて確認されたものと同じようなものがこの土地で始まるなんて夢物語を聞かされたら、誰だってテンションが上がる。とりあえず土地の管理者らしいから教えておくぜ、なんて適当なテンションで来た相手がドン引きするぐらいに俺は喜んでいた。
何でも俺の家の家系の中でもトップを張れるぐらいの魔術師によって、たった1人で作った仕組みが、今になって動き出したらしい。本物の方は三つの魔術師の一族が協力して作ったそうだから、それがどれくらいすごい事かはわかる。ありがとうご先祖様!
「ただ、魂を集める力があることが確認されただけで、聖杯が出て来るかどうかは未知数なんだけどね。英霊のクラスも本物の3倍以上あるらしいし……」
本来聖杯戦争がどのようなものなのかもも禄に知らない俺に対して、そいつはそんなよく分からない事だけ報告して帰って行った。結局何が言いたかったんだろう。
一人きりになってからも俺は1人でずっと盛り上がっていた。魔術師同士の戦いなんて初めてだし、何よりも沢山の魔術師と実力を比べあう事が出来るんじゃないかと思うとわくわくした。
その日から召喚を行う日に向けて毎日準備した。倉庫をあさったり、親父の遺品を持って来たりして必要な道具を集めた。やっぱり準備は重要だ。魔方陣の書き方や呪文の唱え方を覚え、リハーサルも十回以上行った。これだけやれば絶対に成功する自信がある。
というわけで当日を無事迎え、俺はついに英霊を召喚する事となった。
まぁ結局聖遺物は見つけられなかったが、それはそれ、きっとなんとかなるだろう。今までの聖杯戦争でもなんだかんだ言って何かは出て来たみたいだし。優勝するなんて夢のまた夢、俺の望みは最後まで無事生き延びる事だ。それぐらいなら大抵の英霊ならどうにかなる!
そんな甘い見通しを立てていた事を、後から俺は後悔した。もう少しまじめに悩めよ!余裕ぶってると、後からひどい目に合うってのに…。
「消去の中に退去、退去の陣を4つ刻んで召喚の陣で囲む、か」
地下室の床に陣を刻む。英霊なんてものを召喚するからには、もっと複雑で理解できないようなややこしい手順が必要なのだと思っていたが、そうでもなかった。
しかも現界してきてからでも大きな魔力の提供が必要ないそうだ。それって大丈夫なのか。後から莫大な請求を受けたりしないのか。
とはいえ一度は死んでしまった英雄の魂を、こちらの世界に無理矢理持って来ているんだ。それ相応の対価は覚悟しておくべきだ。
―――ところで、まだ死んでない偉人の召喚は出来ないのだろうか。魔術教会のトップ辺りを召喚できれば一騎当千なのだが…。
くだらない考えを振り払って集中し直す。そんな事を考えながら出来る程甘い儀式じゃない。
「雷と焔を糧に、礎に地に秘められし力を。偉大なる全能神の力を中心に据える。立ち昇る波には壁を。四方の道は集まり、無より出でて結末に至る最後の希望は巡り昇華せよ」
ゆっくりと呪文を唱え始める。
強力な英霊を召喚するために、俺はわざわざ俺の体内の魔力が最高潮になる午前1時まで起きていた。
魔術教会は『21体も召喚される英霊を同時に把握するため全員同じ日に召喚しろ』と指令を出してきたが、0時過ぎたらもうその日だ。誰も真夜中に召喚してはいけないなんて言ってない。
こっちは人生を賭けてるんだ。少しでも有利な立場で戦いたいと思うのは当然だろう?
自分の血液をこれだけ用意するのも大変だったし、失敗なんてするわけにはいかない。もししてしまったら原因となった者全てを一族郎党呪ってやる!
……結局誰に文句言うかってなると、自分に帰って来るわけだが。
この聖杯戦争だと、大本にはあった『令呪』という絶対命令権の様なものがなくなっているらしく、その代わりに何でも『サーヴァントとマスターが二重存在となる。』らしい。よくわからないが、万が一の為にすぐに攻撃できるように準備してある。英霊相手にそれが効くかは疑問なのだけれど。
「止まれ。廻れ。進め。三つの歯車を回す。ただ、終わりし頃に帰還せよ」
あと少しで狙った時間になる。おおむね計算通りだと言えるだろう。
とはいえここからが本番だ。軽く気合を入れ直して詠唱を再開する。
「CONNECT」
俺の中にある、見えないスイッチを押し上げる。
背中から翼が生えるような感覚。ミシミシと嫌な音がする。
身体の中身が入れ替わっていき、自分が人から魔術師へと変わっていく。
濃いマナを全身に取り込んで、違う魔力に変換する。
全身が熱い。身体をひどく邪魔くさく感じる。とっととやめてくれ、もう限界だと肉体が叫ぶ。
これは魔術を使おうとする俺を、人である俺が抑えようとする拒否反応のようなものだ。
魔術刻印が多い身である俺はその負荷がなおさら大きくなる。大事な魔術刻印だが、こういうのはどうにかならなかったのだろうか。
体の痛み、全身の違和感、そういうくだらない事を全部無視して、ただひたすらに詠唱を続ける。
「告げる。汝の身は我が内に、我らが命運は共に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば答えよ――」
突然、何も見えなくなった。本能的に焦る自分を押し留める。ここで失敗したら元も子もない。
今の俺は魔力を外に出し続けさえすればいい。余計なことは考えるな!
「誓いを此処に。我はうつしよの善を担う者。我はうつしよの悪を制す者。汝五霊に守られし柱、抑止の輪より脱出せよ、新たなる空間の管理者よ―――!」
呪文を最後まで言い切って、軽く一息ついた。
五感を感じる。自分が人に戻っていることを確認する。
上手くいった。失敗なんてありえない。そう思っているのに、なんでこんなに緊張するんだろうか。
問題はない。そう、問題はないはずなんだ。だから落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け!
ミスをしたんじゃないかとか、ダメなんじゃないかとか、ついついマイナス方向に加速していく思考を抑えこむ為、軽く回想でもしてみる。
心の中に浮かぶのは、幼少期の栄光の記憶とその後の挫折。
周りの魔術師からバカにされ、コケにされ、見下された日々。
………まぁこんな事で、気分が明るくなるはずはないか。
現れた英雄を見るべく、俺はそんな気分のまま正面に目線をやって―――
驚きのあまり言葉を失い、くだらない感傷は心の底から吹っ飛んだ。
次回も早く投稿すると思います。(やけくそ)
WORDからコピーして貼り付けるといちいち段落を変えなければならないのがめんどくさいです。