「はぁ、はぁ……。この野郎、何時になったら学習するんだよ!」
『自分で自分に嫌味を言ってどうするのですか。それよりもこの状況を反省し、少しでも前に進む為に……』
お説教モードに入ったクイーンを無視しながら、川からよたよたと上がる。全身がびしょ濡れになって、服が体に張り付く感触が気持ち悪い。
全く、どうして俺はここぞという所で失敗ばかりするんだ。ここまで来ると、あたかもそういう星の元に生まれたかの様な気さえしてくる。
「な、ななななっ!」
「ん、何だ?」
川の向こう岸から、変な声が聞こえた。まずい、見られたかな…。
そちらに視線を向けると、目を丸くしてオロオロとしている小学生ぐらいの女の子がいた。一般人だとしたら、記憶とか改竄しとかないといけないんだろうな。
残念な事に、そっち系の魔術は得意じゃない。下手に失敗したら脳が壊れて、相手を一生植物状態にしてしまう……、みたいな事を師匠が言ってたような気がする。
そんな事は絶対にしたくない。本当にやらなきゃならないのかな……
いや、まだ間に合う! この場で何とかして。誤魔化せばいいんだ!
「えー、えっとですね、こ、これはマジックの練習なんですよ! 空から飛び降りて、落ちていく途中でパッと消えるっていうヤツです。いやー、まだ練習が足りませんね」
『まさか、それで相手を納得させられると思っているわけではありませんよね?』
『やっぱ無理か。取り敢えず気絶してもらって、後からじっくりとやれば何とかなるよな』
『その時は私も手伝いますから。早くやっちゃってください』
クイーンにかなり呆れられている。このままだと俺の株は下がりっぱなしだ。もう下がるとこまで下がってるような気もするけど、ここは少しでもいいところを見せないと!
「了解っと、それじゃ其処の人、悪いんだけどちょっと意識をもらっていいかな」
「な、何わけ分かんない事言ってんだ。と言うかお前いったい何者だよ、あんたに高い所から落ちてきて、無傷だなんて……」
「あー、その辺は気にしなくてもいいから。どうせ忘れるんだから、そこまで深く考えなくてもいい」
「そうだな。“どうせ死ぬんだから”お前の事は考えなくてもいいよな!」
彼女のおどおどとしていた態度が豹変した。両腕から飛び出した黒い光が、こちらに向かって飛び出してくる。
「うおっと!」
咄嗟に頭を右に振る。頬のぎりぎりの所を掠め、光弾はそのまま飛んで行った。
左頬に激痛が走る。どろりとした血の感触が、首筋まで垂れてくる。まともに食らったら首が飛んでたぞ!
「そうか、あんたも魔術師だったのか!」
「ああ、そうだよ。気付くの遅過ぎないか? 流石はブレドアリナのお坊ちゃま、実戦には疎いと見える」
彼女が首を左右に振ると、少しづつ体が大きくなっていく。それに合わせて服も大きくなっていき、最後には二十代ぐらいの見かけになった。
自身の身体を加工する魔術となると、相当難しいはず……、いや、多分ただの幻だろう。
目の前に魔術師がいるのに見逃すなんて油断し過ぎだ。憑依状態で良かった。
「まぁ何にせよ、まんまと引っ掛かってくれたんだ。お礼はちゃんとしないとな! SUN!」
「くっ、舐めるなよ。加速、開始(ラッシュ・バースト)!」
一気に視界が加速する、俺はその速度に任せ、相手に向かって突き進む。
「所詮は馬鹿の一つ覚え! 力任せに突っ込むだけじゃ、限界があるってもんだぜ!」
全身が黄金に輝いた後、服装が茶色、髪が赤色に変わる。やっぱり彼女もマスターか。
「さぁ来な! あたしの力を見せてやるよ!」
俺は右腕に力を籠め、大きく後ろに引いて勢いをつけると――
「悪いな、今はそれどころじゃないんだよ!」
其処からさらに魔力を吹き出し、相手を一気に飛び越えた。
さすがはサーヴァントの力。圧倒的な高速挙動だ!
「この野郎、待ちやがれ!」
「待てと言われて待つ奴はいないよ!」
今は守宮さんを助ける方が大事だ。ここでのんびり戦ってる場合じゃない。
俺はそれを捨てぜりふに残し、川の土手を一気に駆け上がっていった。
多人数だとそれぞれの行動を書くのが大変ですね