今回は今までのおまけと比べて短めです。でも渋く行きますよ。登場キャラは……ゾイドバトルカードの公式絵よりも老けて描いてしまった
そして、アニメにも出たあの方がついに登場です。ここまでの物語的に、出番を削られてしまいましたからね。
では、どうぞ。
ああそうだ。こっちに来るんだろう? なぁ、一緒に飲もうぜ。レイノス貸してくれた礼も兼ねて、ワシの驕りだからよぉ。他の奴らは? 来れんのか?
……そうか、来れるのはお前くらいか。いや、構わねぇ。こっちもワシ一人だ。アイツは、死んださ。当の昔にな。
……わーってる。おめぇが気乗りしねぇってのはよぉ。おめぇは共和国の将、ワシは、元帝国の将だ。だが、戦争は終わったんだ。恨み辛みはあるだろうが、あの頃を知る戦友は、おめぇくらいしかいねーんだ。それに、約束を忘れたなんて言わせねぇ。……ああ、だからよぉ、いいだろ?
一杯、付き合えよ。
(
――――――――――――
ガイロス帝国領の小さな町。通称、風の都と呼ばれる町。代々のガイロス皇帝が避暑地として愛する美しい街並みが自慢だった。
プロイツェンが実権を握ってる間に盗賊まがいの帝国兵の襲撃という不運があったが、今は復興を遂げ嘗ての美しい街並みを取り戻すに至った。
その町の一角に、観光地には似合わない一軒の店があった。「居酒屋アダム」という。アダムスという風変わりな男が営む居酒屋である。が、その主だったメニューは揚げ物――天麩羅・フライ・串カツ――が大半を占めている。
店主であるアダムスのどこが風変りかと言えば、彼はもともとガイロス帝国の軍人だった。しばらくは正規軍として戦争に赴く兵士をやっていたが、ある日、とある特殊部隊に異動。しかし、とある戦闘を切っ掛けに部隊から――そして軍そのものを退役。その後何を思ったのか揚げ物屋に転職し、とある町で天麩羅店に勤め、今はこの居酒屋を営んでいる。
軍人時代に培った縁が太いのか、今でも彼の店には多くの帝国軍人が足しげく通う隠れた名店だ。つい数ヶ月前は帝都崩壊という一大事が巻き起こり、さらに新たなガイロス皇帝――ルドルフ皇帝の戴冠式という大いにめでたい事態となった。当然「居酒屋アダム」も三日三晩に渡る大騒ぎ。飲めや騒げやのドンチャン騒ぎが続いた。
そしてそれも落ち着いたこの日。
「お客さん。なんにします?」
アダムスはいつもの陽気な口調で本日の客に話しかけた。客、といっても今日はこの一人だけだ。連日の大騒ぎ、また店自体がそれなりに名を馳せるようになったため店内はそれなりの広さを有している。
時刻は午後五時三十分。店を開けるには早すぎる気もする時間だが、今日の客はそれを待ってられないとばかりに店の前で待っていた。だからこそ、アダムスも普段より三十分早く店を開けたのである。
カウンターには一人の大男が座っていた。筋骨隆々、さらに厳つい顔と見るからに頑固親父な雰囲気を醸し出している。大抵の者なら関わり合いを避けたくなるだろう。いや、軍人だろうとこの男に苦手意識を持つ者は多い。
「……適当で構わん。まだ来てないからな」
大男の名はアクア・エリウス。ガイロス帝国軍の兵の一人だった男だ。空戦ゾイドを得意とし、その他にもさまざまなゾイドを乗りこなし共和国との戦場を駆け廻ってきた。そんな彼は、ガイロス帝国きっての猛将と呼ばれた。
だが、そんな経歴も久しく聞かなくなった。ある時期を境に彼は表舞台から姿を消したからだ。表向きは怪我による退役。裏では、プロイツェンの息子が指揮を執る影の部隊の鬼教官として手腕を揮っていた。教官となったのは彼自身の意志だ。自らのゾイド乗りの魂を新たな世代に伝える。そんな志を持ったエリウスは、ガイロス帝国軍人時代にも多くの兵を育て上げていた。それゆえ、猛将とも鬼教官とも呼ばれる。
投げやりな注文を受けたアダムスは、肩をすくめながらゆっくり調理に移った。待ち人がまだ来てないと彼が言ったのだ。ならば、じっくり最高の料理をふるまえばいい。鬼教官と呼ばれる彼も、その待ち時間くらいは待ってくれるだろう。
程なくして、店内にカツの食欲をそそる匂いが広がった。
それから三十分。エリウスの言葉通り適当に盛り合わせを揚げたアダムスはそれを振舞う。エリウスは片眉を持ち上げ、内の一本を摘み上げると一息に口内に収めた。何度か咀嚼し、飲み込んで一言
「……うまいな」
アダムスは内心でガッツポーズをする。軍人時代から付き合いは長いが、エリウスから素直なお褒めの言葉を貰うのはなかなかに珍しい。ゾイド戦を教授してもらう時は、罵声と怒鳴りしか聞いた覚えがなかったからだ。ゾイド戦ではないとは言え、エリウスの口から賞賛の言葉を引きずり出したのだ。これほど嬉しいことはない。
やがて、午後六時を回ると店内にちらほらと客がやってくる。三十分も経てば、店内はたちまち現役帝国軍人で溢れかえった。
アダムスや店員も他の客の相手をし、エリウスのことを気にしなくなっていったころ、午後七時になって、また店の戸が開かれる。
瞬間、店内の雑踏に驚きの声が紛れる。同時に、沈黙が店内を覆った。その原因は、一人の来店者だった。皺の目立つ顔はその人物が相応に年老いていることを示す。だが、その年齢に裏付けされた隙のない立ち振る舞いから、この場にいるほとんどの帝国兵が悟った。
ただものではないと。
ただ、沈黙をもたらしたのはそれが理由ではない。多くのガイロス帝国将校が通う居酒屋。そこに来た男は、本来帝国に居ないはずの男だった。何人かが殺意すら籠った眼光を男に向ける。男は、少し居心地悪げにしながらもそれを涼しい顔で流した。
男が殺意を向けられた理由は簡単だ。帝国軍に居て、男の顔を知らない者はいない。多くの将校が苦汁をなめさせられてきた相手なのだから。
男は店内を軽く見回し、カウンターに静かに座しているエリウスの姿を見つけると少し表情を緩ませてゆっくり歩み寄り、その横の椅子に腰かけた。
エリウスも男が来ることが分かっていたのか、男がカウンターに座るタイミングでアダムスを呼び、酒を注文した。アダムスは若干その男に警戒しつつ、表面上はいつもの陽気な表情を見せ店の奥に下がる。
そんな教え子の姿を見送り、エリウスはニヤリと笑った。
「おせぇぞ。どんだけ待たせるんだよ」
「ふっ、嘗ての敵陣だからな。警戒するさ。それに、儂もこれだけが目的で来たわけじゃないからな」
エリウスの愚痴を男は柔らかい笑顔でやり過ごす。しばしの時間が経ち、アダムスが注文の酒と串カツの盛り合わせを持って、二人の前に出した。
「おい、まだ頼んでねぇぞ」
「俺からの驕りです。教官、じっくり味わってくださいよ」
「……悪いな」
エリウスは小さく礼を口にし、出された徳利を傾けて猪口に酒を注ぐ。
その酒は、先祖が惑星Ziに移住する以前、遠く離れた青い星の島国で作られたという酒を模して生み出されたものだった。
エリウスが酒を注ぎ終わると相手の男が同じように注ぎ返し、そして二人は静かに猪口を打ち合わせた。
「久しぶりの再会を機に、乾杯だ。クルーガー」
「ああエリウス。やっとこの時代が来たな。――乾杯」
共和国軍の“知将”クルーガー、嘗ての帝国軍の“猛将”エリウス、二人は、この日ようやく杯を交わした。
***
もう、幾年前の事かは二人も覚えていない。ただ、少なくとも十年以上は昔のことだ。
共和国の知将クルーガーと帝国軍の猛将エリウス。後にそう呼ばれることになる二人が初めてぶつかりあった時の話だ。
戦場は帝国領の砂漠だ。クルーガー率いる共和国軍は密かに帝国領に進入、だが極秘任務に向かう途中だったエリウスの部隊と偶然鉢合わせた。互いに予期せぬ遭遇戦だったが、その戦いは両軍の将校の語り草になるほど有名なものとなった。
クルーガーは優秀な親友の力を借り、様々な策を用いて帝国部隊を罠にはめた。それに多くの犠牲を払いながらも、エリウスは共に戦地を駆ける親友と共にその罠を力ずくで打ち破り、クルーガーも予期せぬ大損害をもたらした。
やがて砂嵐が酷くなり、両軍ともに大きな犠牲を払った結果、共倒れを避けて引き下がることになる。ただ、混乱する戦場の中で前線まで出向いて指揮に当たっていた二人が部隊から孤立することになった。
「さすがに、これまでか」
砂漠に崩れ落ちたシールドライガー。それはクルーガーの愛機である。状態を確認するが、愛機は混戦のなかで大破しすでに動かすことはできない。その上、自身は十か所以上の骨折にいくつもの深手を負っていた。目は良く見えず、その瞳に宿る光もおぼろげだ。だが、
「……ふん、なにを弱気な」
クルーガー、当時大尉だった彼は諦めの悪い男だ。普通だったら動くことすら困難である。だが、クルーガーはボロボロの身体を引き摺ってなお、生きることに齧りつく。
そして、そこには同じ考え方の男がいた。
クルーガーが愛機の傍から這い出ると、横にもう一機のゾイドが崩れていた。レッドホーンだ。自身の愛機と同じように、もう動かすことはできないだろう傷を負っている。そして、そこにはクルーガーと同じように全身に傷を負った男が這い出ていた。
とっさにクルーガーは懐から拳銃を取り出す。その相手が帝国軍の軍服を纏っていたことに気づいたからだ。気づいたのは向こうも同じだったのか、相手も同じように拳銃を構えた。互いに互いを牽制する。
しばしの間、沈黙が続いた。互いに動くことは出来ず、静かに相手を見やる。やがて、このままでは埒が明かないと判断し、クルーガーはゆっくり拳銃を相手から逸らす。それに応えるように、相手も銃口を逸らす。
「俺は、共和国軍のクルーガー大尉だ」
「……帝国軍、エリウス大尉だ」
互いに名乗り、そして気づく。相手は今回の遭遇戦の敵方大将だと。
ふたりは、それ以上言葉を交わさない。が、二人そろって同じ方向に向かって歩き出す。理由はもちろん、この砂漠から抜けるためだった。
それからは意地の張り合いだった。
砂漠を歩き始めて三日。先に倒れたのはクルーガーだ。同じ戦士であり、戦場に身を置く関係上、体力面は互角。ならばなにがクルーガーを先に倒れさせたのか。単純な話、エリウスはクルーガーよりも十歳若いのだ。
砂漠に倒れたクルーガーを見下ろし、エリウスは冷笑を浮かべる。
「共和国の大将さんは、随分ひ弱なようだな。老いぼれはとっととくたばってな」
それに憤慨したクルーガーは、こいつには負けないという想いで死力を振り絞って歩き出す。
砂漠を歩き続けて五日。次に倒れたのはエリウスだった。体力の限界が来たのである。負けたくないという想いが働いていたクルーガーとは、意志の高さで負けていた。
そして、クルーガーは得意げに嘲笑う。
「ふん。所詮は帝国、お堅い帝国軍人はここまでと言ったところか。年寄りを嘗めるな、若造」
その言葉に青筋を立て、勢いよくエリウスは起き上がり、ドスドスと砂地を踏みしめる。
この時エリウスは二十代後半、クルーガーは四十近くだ。
砂漠を歩き始めて六日。互いに精も根も尽き果て熱い砂の大地に倒れ伏した。だが、それでも二人は生きることに齧りつき、相手より先に力尽きることを拒む。
二人の想いはただ一つ。
――
――
いつしか、互いの存在こそがこの無謀な砂漠横断を達成する糧となっていた。
砂漠を歩き始めて七日。
二人は隣り合わせで倒れていた。
お互いに懐を漁る。水筒に残されたのは、僅かほどの水だ。四日目にオアシスを発見し水分補給を成すことが出来たが、補給した水分ももう僅かだ。これだけは尽き果てさせない思いで残してきた。だが、限界だ。これを飲まねば死ぬ。
「よぅ、クルーガー。あんた、水はどのくらい残ってる?」
「さぁてな。目が霞んできてどのくらい残ってるか分からん。が、ほんのわずかだ」
「そうかい」
「お前さんもだろう?」
「まぁな」
互いの水は僅か、ならばやることは一つだ。
クルーガーとエリウスは、自身の水筒を――
ここまで生きてきた相手に向かって投げた。
ボサッ、と砂地に水筒が落ちる。
「テメェが生きてりゃ、俺は意地でも生き続けてやる。だから……」
「お前さんがくたばらないなら、俺もまだまだ死ねん。だから……」
「「そいつはくれてやる。だから、俺より長く生き抜いて見せろ!」」
すべてが尽き果てる寸前の二人にとって、互いの存在こそが生き延びる理由となっていた。それは、この一週間生き続けてきた二人だからこそ行き着いた結論だ。だが、考えることも同じでは仕方がない。どちらも相手の水を飲む気はないのだ。
クルーガーはエリウスの水筒を、エリウスはクルーガーの水筒を腰に提げ、最後の力で起き上がる。
そんな二人の視線の先に、コマンドウルフとセイバータイガーの姿が映った。
駆け付けたコマンドウルフとセイバータイガーは、互いの親友の乗機だった。お互いに救出を諦める仲間を一喝し、最後まで互いの親友の捜索を諦めなかった。
一人は、クルーガーの親友にして共和国の若きゾイド乗り――ダン・フライハイト。
一人は、エリウスの親友にして帝国の高速ゾイド乗り――ロービアン・コーヴ。
クルーガーとエリウスを見つける前に対面したダンとロービアンは、一時休戦として互いの親友の捜索を共同することで意見を合致。程なくして、今にも死にそうなクルーガーとエリウスの発見に至ったのだ。
救出され、満身創痍ながらもクルーガーとエリウスは拳をぶつけ合った。そして、ある約束を交わす。
『次に戦場で
***
「結局、あれから幾度となく戦ったが、ついぞ決着はつかなんだ。おまけに、お前が雲隠れするから、儂もゾイド乗りの血が騒ぐことはめっきり減った」
クルーガーはそう言うと串カツを一本頬張る。そして、猪口の酒をゆっくり味わう。
「ワシも退屈だったな。最近のゾイド乗りは効率主義でいけねぇ。
エリウスも嘆くように酒を呷る。クルーガーが足してやるが、すでに中身は無くなっていた。クルーガーが追加の注文をしようとするが、予測していたのだろう。アダムスがその合間を埋めるように徳利を置いた。
「――で、結局終戦だ。本当なら
「仕方あるまい。儂ら老いぼれだけが死に損なってしまったからな。ダンの奴、先に逝ってしまいおったわ。借りを返しきる前にな」
「ワシも同じだ。ロービアンめ、軍を引退して田舎でのんびり暮らすとかほざいて、ガキをほっぽって逝きやがった。家族諸共な」
二人を救い、共に戦った戦友――親友は、もう、いなかった。戦争だったのだ。いつかはそんな時が来ると予感していたし、覚悟も決めていた。だが、実際にその事実を知った時は、怒りが、悔しさが、憤りが、全身を駆け巡った。
机の上には、酒の入った猪口が二つある。クルーガーとエリウスの物ではないが、誰かに捧げるような酒が。
「……なぁ、お前の同期の連中はどうよ」
「同期? まだ何人かしぶとく生きてるが……?」
「あいつだ。ガキみてぇなライガー乗り」
「……ああ、クレイジー・アーサーか? 奴は最強のレオマスターだ。最近は、良い目の若僧を見つけたとか言ってはしゃいでたな。“レイ”といったかな。それに、そうだ。トライ・アバロン中佐。知ってるだろう?
「ああ、あの読書ジジイか」
「そうだ。あいつは今、戦術教官としてうまくやっとるわ。お前さんの方は?」
「ワシか?」
「そうだ、いるだろう? 名前は……ガーデッシュ・クレイド、だったか」
「ああ……、さぁてな。ワシはもうガイロスの軍人じゃねぇんだ。詳しいこたぁ知らねぇ。ただ、あいつはガイロス軍きってのコング乗りで、優秀な指揮官だ。今回もシュバルツのとこの若僧と一緒に活躍してたらしいが。あとはギュデム・ランザーダックとか……そういや、テストパイロットだったが、良い目をした若造がガイロスにいたぜ。リッツなんとか、つったな」
「若いの、か。こっちだったらトミー・パリスが見どころあるぞ。ハーマンが目にかけてる。他には、アーサーの秘蔵っ子だな」
思わず蒸し返してしまう苦い記憶、懐かしいも辛い、セピア色の記憶を追いやるためか、今も軍で活躍する者たちを思い浮かべる。名だたる歴戦を戦い抜いた優秀な兵士たちは、エリウスとクルーガーにとって今も生きてくれている頼もしい戦友だった。そして、若いゾイド乗りたちの名も、未来を背負うにふさわしい者ばかりで、二人の心を躍らせてくれた。
思わず、酒も進んでしまうほどに。
気づけば、もう夜の一時を回っていた。店内の客も一人、また一人と姿を消し、すでにエリウスとクルーガーしか残っていない。
「……儂は、あの小僧を育てようと思う。ダンへのせめてもの恩返しだ。小僧が望めば、だがな」
クルーガーは静かに、万感の思いを込めて言った。
小僧、というのが誰なのか、エリウスはすぐに予測は出来た。デスザウラーに特攻をかける少年と愛機の獣王の姿は、エリウスの目にもしかと焼き付いている。在りし日のダン・フライハイトのように、荒く力強い操縦をする少年だ。
「しっかり見てやれよ」
「ああ、老いぼれにはふさわしい役目だ」
クルーガーの目には、未来が映っていた。戦争が終わったとて、この星の争いが全てなくなったわけではない。むしろ、この平和を乱す輩が現れるかもしれないこれからが、平和を守り抜くためのこれからが重要なのだ。
平和を守る新たな力を育てる。それが、クルーガーの語る新たな生きる道。
「お前さんは、これからどうするつもりだ?」
クルーガーが問いかける。自分が未来を語ったから、次はお前の番だと言いたげに。
「さぁてな。こっちのメンツを鍛えにゃならん。なにせ、ワシ等の若き大将は大望を掲げてるからな」
「ほぅ。大望とは?」
「それはアンタにも言えねぇな。まぁ、奴らがきちんと歩けるように道を整えてやるさ。それに」
猪口に残っていた酒をぐいっと飲み干し、酔いで赤く染まった顔でエリウスは言った。
「あいつらは、魂揺さぶるゾイド乗りだからな」
戦火で戦い続けて来たから分かる、ゾイド乗りの魂。彼らは、次代を担う未来のゾイド乗りだ。
エリウスの表情からそれを読み取ったのだろう。クルーガーは満足げに頷き、自分とエリウスの猪口に酒を注ぐ。
「そうか。……もう遅いな、これで最後としようか」
「だな。……明日を担う若きゾイド乗りに」
「平和を守り抜く戦士たちに」
「「乾杯!」」
生き残った二人は、互いの明日と未来の後輩たちに祈りを捧げ、飲み交わす。
机の上にずっと残され続けた二つの猪口とそれを満たす酒が、店内の明かりを反射しきらりと輝いた。
というわけで、老兵どもの語らいでした。
二人の出会いの戦闘――は、省略で。元ネタはアニメでのハーマンのセリフです。クルーガー大佐の武勇伝として語られてました。アニメ第61話での事です。
クルーガーは五十代後半を想定、エリウスは四十代です。年は離れてますが、敵国の戦友という妙な友情を育んだ者たちです。
さりげなく、名前だけ登場のキャラも増えてます。彼らについては、まぁ、ご期待をということで。
ではまた。