ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

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第64話:ガイロス帝国の波乱

 前略

 

 報告書は受け取った。非常に興味深いものだ。この成果が世に現れたその時、ゾイド戦の常識を大きく変えることになると思われる。今後も、研究成果を伝えてほしい。極秘に、な。

 さて、息子はよく育ってくれた。部隊の総指揮官になるほどの成長を遂げてくれたよ。あの日心に決めた通り、私の待望の手足となってくれるよう育ってくれた。近頃はその成長が嬉しい限りだ。ただ、息子の心が少しずつ私から離れているように思えてならない。

 なぁ、ダッツよ。私は間違っていたのだろうか。息子すら巻き込み、亡国の再誕を願った私の想いは、父の無念を晴らすと決めたこの信念は、間違っているのだろうか。

 

 いや、世迷言だな。聞き流してくれ。私は、当の昔に後戻りなどせぬと決めているのだ。人の道を外れようと、亡国の旗でこの星を覆い尽くすまで、私は止まる訳にはいかんのだ。

 

 先日、新たな駒を見つけた。あろうことか、この私に銃口を向けた少年だ。ただ、目が死んでいた。何を見たら、ああなってしまうのか、私には理解の出来んことだな。少年は、私の手元で育てようと思う。もう一人の息子として、強きゾイド乗りへと昇華させるつもりだ。

 

 そうだ、以前お前から訊いていた『魔龍』についてだがな。あれは利用できん。場所が遠すぎる。我が大望を成す力は、それに匹敵する『魔獣』に頼る他なかろう。

 心配はいらん。我が信念は硬い。魔獣ごときで狂わされるほど、柔い想いでことを成す訳ではないのだ。

 

 長くなったな。

 私も、お前に会えぬことが心苦しくてならん。今は多くの者を従える身となったが、やはり心から信用できる者はお前しかおらんよ、ダッツ。

 

 我が半生を賭けた大望は、まだ終わる気配を見せん。だが、いつの日か必ず、蛇と短剣の旗を掲げる時が来よう。その時こそ、再びお前と杯を酌み交わし、語らいたいものだな。

 

 では、また会おう。

 

 親愛なるダッツへ、

 生涯の親友、ギンより。

 

 

 

***

 

 

 

 アーバインは不機嫌だった。

 愛機、ブラックカラーのコマンドウルフを進ませながら、酷く憤慨していた。長年相棒として共に賞金稼ぎ稼業に従事してきたコマンドウルフがそんな相方に短く問いかけるように唸るが、アーバインはそれを無視して苦言を吐き出す。

 

「くそっ、何でこんな奴と……」

 

 苦々しく自身の横を歩くセイバータイガーを睨みつける。装備はガイロス帝国でも採用されたアサルトセット。頬の辺りがピンクに染められ、彼のイメージを表している。もっとも、それは“可憐”ではなく毒々しさを隠し持つ陰気なピンクだ。

 

 

 

 時は、数日前まで遡る。

 

 

 

「お断りだ!」

 

 おかわりのコーヒーに手を付けず、机に握り拳を叩きつけながらアーバインは怒鳴りつけた。それを涼しい顔で依頼人――ヒンター・ハルトマンは受け流す。整ったきれいな顔立ちときっちり“七対三”で分けられた頭髪が、アーバインの苛立ちを余計に引き上げる。

 

「ちょっと、せっかくの新鮮な牛乳が台無しでしょ。もうちょっと落ち着けないのかしらこのゴリラは――」

「テメーのことで腹立ってんだよ! 誰がテメーなんかと組むか!」

 

 迷惑そうな口調で言ってくるオカマにアーバインは一層の怒気を籠めて叩きつけた。しかし、オカマはそのくらい分かっていると言いたげに肩を竦めた。

 

「こらえ性の無いゴリラねぇ。賞金稼ぎやってるなら、感情よりも利益を優占しようと思わないのかしら? 昔のことをグチグチ」

「誰が好き好んで自分を弄んだヤロウと手を組むかってんだ! あぁ! スティンガー!」

 

 反射的に噛みついてくるアーバインにオカマ――スティンガーはことさら見せつけるようにため息を吐いた。それが、余計にアーバインをイラつかせる。

 

「こっちこそ、野蛮ゴリラと手を組むってのは願い下げよ。でも、アンタもさっき言ったじゃない。一介の賞金稼ぎ一人じゃ手に余るって。アタシもそこは同意見よ。だったら、いっそ過去を水に流して今回だけ手を組まない? 報酬も弾むそうだし」

「どうやったら水に流せるのか、想像もつかねーよ!」

 

 もやもやと苛立ちが精神を侵し、それを一旦流し捨てるようにアーバインはコーヒーを喉の奥に流し込んだ。先ほどまでは豊かな苦みと香りを楽しむ余裕があったが、今のアーバインにはそれすらできない。

 ヒンター・ハルトマンが提示した依頼は難関だった。ガイロス帝国のある人物の屋敷に先入し、汚職の証拠を掴んでくること。ハルトマンは深く語らなかったが、この件には昨今噂になっているギュンター・プロイツェンの残したシミ――PKが深くかかわって来るそうだ。ガイロス帝国にとって由々しき事態であり、しかし帝国の要人である彼を政府が表だって調査するには証拠が足りない。鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)にその対処が依頼されたのは、そういった極秘の案件が関わっているのだ。

 そして、スティンガーの言う通り一人で出来るかと言われれば、アーバインもしばし思考を巡らせなければならない。

 アーバインのゾイド乗りとしての腕前は一流と言っていい。少年時代から手癖の悪い小悪党、さらには腕利きの賞金稼ぎとして鳴らしてきたこともあり、技術も備わっている。それを差し置いても、今回の一件は難しいと判断したのだ。

 

「君たちが嘗ては敵対し、並々ならぬ因縁を持っていることは承知の上だ。だが、私の知る“彼”が推薦した腕利きは君たち二人。私は、君たちならば必ず成し遂げてくれると確信している。ここは私と彼、ひいてはヴォルフ様の顔を立てて、今回ばかりは協力してくれないだろうか」

 

 ヒンターの言葉に、アーバインはもう一度自身の激情を宥める。

 スティンガーと出会ったのは、バンがレイヴンのジェノザウラーに敗れてすぐのことだ。当時のバンの機体――シールドライガーがジークとフィーネの力により不思議な光る繭に包まれ、一切の外部干渉を阻害し続けていた当時。

 スティンガーは盗賊に襲われた哀れな旅人のフリをして近づき、アーバイン達を拘束した。さらに本来の狙いであるオーガノイド――ジークを手にするため灼熱の砂漠のど真ん中でアーバイン達を野晒しにしたのだ。もしもシールドライガーがブレードライガーへと進化するタイミングがあの時でなければ、アーバイン達はスティンガーによって干からびたミイラに変えられていたことだろう。

 それだけのことをした相手と今度は手を組む。考えただけでもはらわたが煮えくり返る思いだった。自身へのメリットや打算を考慮しても、到底容認できることではない。なにより、スティンガーというオカマが信頼できない。

 

「心配しないで、今回は味方として扱ってあげるわ。アイツからの頼みだもの。無下にはしないわよ」

 

 机に肘を立て、組んだ腕に顔を乗せて言ったスティンガーに、アーバインは一層顔を顰めた。だが、他の道が無いのも事実ではあった。アーバイン一人では手に余り、孤高の賞金稼ぎを貫いていたことから手を組むにちょうどいい者もいない。ふと、一年前に共に戦った仲間を思い浮かべるが、頼れる少年は今この大陸(エウロペ)にいない。調子のいい運び屋は、そもそも今回の件では足手まといだ。

 

 熟考し、頭から湯気が噴き出ている気分になるほど普段使わない思考をフル回転させ、たっぷり十分思考したアーバインは、ついに決断する。

 

「………………………………………分かったよ」

 

 この上なく嫌そうに、心底腹が立つのを宥めようとしつつも宥められず、地震の如き唸りで、アーバインは告げた。

 

 

 

***

 

 

 

 コマンドウルフとセイバータイガーを森の中に止め、アーバインとスティンガーは徒歩でその基地に向かう。

 その間、スティンガーとアーバインは無言だった。無駄口を叩く必要もないし、問うこともない。そもそも、一刻も早く離れたかった。ことに、アーバインは。

 

「ねぇ、アンタ少しはアタシとお話しようって気はないのかしら?」

「テメーと話すだけで耳が腐る」

 

 話しかけるな、と言外に訴える。これまで無言だったのだから、作戦終了まで余計な口を利く必要はない。そうアーバインは心底思っているのだが、スティンガーの方はそうでもないらしく、口端を持ち上げ聞いてもない話を切り出した。

 

「アンタ、今回の依頼はどういった経路で聞いたのかしら?」

「……へっ、大方テメーと同じだろうさ」

「やっぱりあいつね。……ねぇ、アンタはアイツをどう見る?」

「ああ?」

「穏やかで暖かで――でも一度吹き荒べば破壊の申し子となりえる。あの子、アンタはどう見る?」

「……いけすかねぇヤロウだ。それと、信用ならねぇ」

 

 スティンガーの話す“あいつ”とは、アーバインも知るあの男だ。

 彼と初めて会った時、アーバインはまだまだ世間をよく知らないただのガキだと見た。その癖、弱点になるだろう少女を連れまわす、甘いガキだと。

 しかも、連れているのは世にも珍しいオーガノイド(金づる)。狙わない理由がない。

 だが、一度ゾイド戦を行って確信した。相手はたかがヘルキャット。そう甘く見ていた己を、アーバインは酷く後悔した。腕に自信はあったし、コマンドウルフの扱いには慣れている。同じ高速戦闘ゾイドならば、性能面で言えば隠密性以外すべて上回っているのだ。

 なのに、アーバインは負けたのだ。かすり傷一つ負わせることも出来ず、そもそもその姿を捉えることすらできない、完敗だった。

 

 そして、敗北したアーバインに対し、彼は言った。

 

『俺のモノを奪うか? だったら、今ここで殺してやるよ』

 

 ヘルキャットのコックピットに残っている少女には聞こえぬよう、しかし底冷えした声音で彼は言った。その声に、一切の容赦はなかった。

 アーバインとて、十代から賞金稼ぎとして生きてきた。それなりの修羅場を抜けて来てはいたし、何度も命の危機に直面してきた。……今、こうして手を組んだスティンガーに対しても、命の危機を感じたことがあるほどに。

 そんなアーバインだからこそ、敏感に感じ取れたのだ。目の前に立つ少年――ローレンジ・コーヴが持つ、殺伐とした空気に。本気で、一切の感情を押し殺して殺人を実行できる心胆をアーバインは感じ、恐れたのだ。

 

 

 

「いけすかねぇし、信用ならねぇ。この業界だ。信用置ける奴と置けない奴の線引きはしっかりしとく。ま、信用なんて端から期待しねぇ。そうだろ」

 

 賞金稼ぎの仕事は(クライアント)の信用の上で成り立つ。腕が信じられなければ、そもそも仕事を依頼すらされない。だから仕事の上での信用が最も重要で、逆に同業者との間ではいつ裏切られるともしれない。所詮は利害の上で成り立つ協力しかないのだから。

 気に入らないし、二度と顔も見たくない相手だが、そこだけは同じだとアーバインは感じていた。

 

「そうねぇ。ま、アンタの言う通りよ。ゴリラのくせして頭は回るみたいね。メッテルニヒと大違い」

「とても褒められた気分じゃねぇな。あと、ゴリラはやめろ。――ムンベイのヤロウ」

 

 スティンガーの余計なひと言にアーバインは苦言を吐き出す。エリュシオンで再会して以来、スティンガーがアーバインを呼ぶときは『ゴリラ』に統一されている。これは、スティンガーとの初対面でムンベイがアーバインをそう呼び捨てたのが由来なのだが、余計なことを言う――商売上の――相方に対し小声で毒吐く。

 

「でもね、貸し借りってのは、アタシたちの間でも重要と思わない?」

「貸し借り? 奴に弱みでも握られてんのか?」

「別に、そういう訳じゃないわ。でも、アイツに借りがあるのは事実。それに、アイツほど利用し合って利益の出る相方はいなかった」

 

 スティンガーは、昔を懐かしむようにポツリと言った。

 アーバインはその言葉に思わず耳を疑った。アーバインにムンベイ、ルドルフを甚振り、共にルドルフが持つ皇帝の証を奪おうとした仲間すら切り捨て、そんな冷酷非道の賞金稼ぎで名が通っているスティンガーの言葉とは思えない。

 

「らしくないな。俺たちにあんな仕打ちを見せてくれたお前が、ヤロウに借りだぁ? まるで人が違うみてーだ」

「賞金稼ぎってのは利用しあって、お互いに利を得てこの世界を生きてんの。でも、ルールを踏み外したらダメでしょう? よほどの腕が無い限り、より上の賞金稼ぎから狙われるのがオチよ。だったら、多少なりとも貸し借りはしっかりしとかないとねぇ」

「テメーに賞金稼ぎがどうこう語られるのは癪だな。そんなもん無視してるからこその釣り人(フィッシャーマン)だと思ってたぜ」

 

 アーバインの言葉に、スティンガーは返さなかった。代わりに、向かう先を指差す。

 

「着いたわね。あそこよ」

「……ガイロス帝国の重鎮――マグネン殿のお屋敷、か」

 

 

 

***

 

 

 

 マグネンの屋敷は、嘗てプロイツェンがデスザウラーを復活させるべく作り上げた研究所の跡地のほど近くに築かれていた。

 プロイツェンの研究跡や、彼の個人的な物品が幾つか保管されていることもあり、本来なら政府からの調査が綿密に行われる場所である。だが、ここの管理の役を手にしたマグネンは表向き善良な政治家の一人。裏ではプロイツェンに通じていたという噂があるものの、結局それは噂でしかないのだ。目立った証拠も挙がっておらず、彼がここを管理することにおかしな点はない。

 

 見張りは数人ほど。その少ない見張りを、アーバインは巧妙に掻い潜って先入する。

 元が軍事施設だったこともあり、内部は複雑に入り組んでいた。事前にスティンガーから貰った施設内の地図もほとんど役立たずだ。そもそも、デスザウラーが復活した際に一度崩壊を起こしており、施設はほぼ全壊だったとか。役に立たないのも当たり前である。

 

 ――だが、巧妙に隠された()()()()だけは、崩れずに残っている。

 

 アーバインは見張りの目を掻い潜り、少しずつその地点へと接近する。ふと、以前もこうして誰かのアジトに忍び込んだことを思い出す。バンを囮役にし、盗賊のアジトに潜り込んだ時だ。状況はまるで違うが、再び先入役を担うことになったのは、それがアーバインの役どころだからだろうか。いずれ、またこうして誰かのアジトか基地かに忍び込むことになるのだろう。それも、何度も……。

 

 以前忍びこんだ時は、盗賊団が奪って行ったという『ガフキー・カハール熱』の特効薬を取り戻すためだった。あの時は、病に侵された子どもたちを見て見ぬ振りが出来なかったからだ。

 

 ……嘗ての、今は亡き妹の姿に重ねて……。

 

 奴も、妹を連れている。不器用ながら、彼女をどうにか真っ当に生きさせてやろうと必死になっている。一年前の再会で、それは目に見えて理解できた。

 奴を気に入らないと思うのは、嘗て助けることのできなかった自分への嫉妬なのか。助けられなかった自分と、現在進行形で守ろうとする奴との……。

 

 関係の無い話だ。あの一件でのことは、傍から見れば完全に無償の善意での行動だった。普段は報酬の無い依頼など引き受けないし、報酬を要求するのは当たり前だ。今思い返すことに意味などない。

 今回は依頼者(クライアント)がいて、報酬が用意されていて、自分の知り合いが関わっていることはない。

 

 だが、気にかかることが一つあった。さっきまでのスティンガーとの会話がやけに気にかかった。

 スティンガーは“借り”があるから引き受け、彼の誘いに乗ったと語った。本当にそれだけか? 俺たちを危機に追いつめた極悪非道の賞金稼ぎ。それが、たった一人に対しての“借り”だけで真っ当な任務を引き受けたりするだろうか。

 

 ――いや、考え過ぎだ。

 

 アーバインはそこまでの思考を投げ捨てる。余計なことに脳を使用しては、いざという時の対処が出来ない。

 

 そして、アーバインの前に地下へと続く道が示された。

 

 

 

 

 

 

 地下室は、研究資料と作戦計画が山と積まれていた。

 眼帯に内蔵されたライトを照らし、突然の明かりに目を慣らしながらアーバインは資料に目を通す。一年前、それ以上昔から行われてきただろうプロイツェンが頂点へ向かうための計画が記された記録。直接的でないにしろ、それを示唆する資料だ。

 また、デスザウラーに関するものも多く残されている。研究者の血と涙の結晶――とでも言えば聞こえはいいが、所詮は破壊の化身『破滅の魔獣』を生み出す狂信的研究記録だ。中にはジェノザウラーにな関するものもあり、アーバインが目を見張るそれもあった。

 

「ジェノザウラーの強化計画……へっ、現実じゃなくて心底安心するな」

 

 強化プランの一つだろう。光学兵器を反射するクリアコーティング装甲で身を包んだ“ホロテックカスタム”。マグネッサーウィングを装備し、上空からの強襲を意識した“ルーパーカスタム”。長射程ライフル四門に鋏と盾を一体化させた新装備を施した“重武装(スーパー)カスタム。可動式の増加装甲を纏い、全体的にスリムで丸みを帯びた“フレイムカスタム”。

 研究資料は、ゾイドだけに及ばず南エウロペに点在する古代遺跡の調査記録もあった。ふと、それを見るとバンたちに土産として持って行ってやろうかという想いが湧き上がる。だが、これは帝国の物だ。勝手に持ち出して犯罪者扱いは御免だ。

 

 それらは全てプロイツェンが残したものだが、いくつかはプロイツェン没後に作られたであろうものが残されてもいた。

 それは、遥か北方暗黒(ニクス)大陸の地域データ。並びに、そこでの調査をPKが行ったというもの。そして、マグネンにそのための陽動を任せる有無が記されている計画書だ。

 アーバインは持参したカメラで写真に収め、にやりと笑みを浮かべた。

 

「こいつか。馬鹿な奴だ。こんな物を残して、罪が露呈するのを考えてなかったってか?」

「考えていたさ。だが、皆こうして捕まったのだよ。なぁネズミよ」

 

 アーバインの呟きに応えるセリフが吐き出され、アーバインは瞬時に拳銃を引き抜きながら振り返る。安全装置も素早く外しており、いつでも発砲できた。

 地下室に照明が灯る。それまで資料に目を奪われていた所為か、地下室の全容が以外にも広いことにアーバインは今更ながら気づく。だが、それに目を奪われると同時にある一つの事実に目が行った。

 

 アーバインの眼前にはガイロス帝国重鎮の一人、マグネンがいる。その背後には武装した兵士たち。そして――

 

「スティンガー……」

「ごめんなさ~い。こっちのが、報酬がいいんですもの。賞金稼ぎだもの、そーゆーものでしょ♪」

 

 顎の下に人差し指を当て、気持ち悪い笑みを浮かべるスティンガー。

 再び裏切られたことを察したアーバインは、ニヒルで壮絶な笑みを顔に張り付けた。

 


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