リリカルなのは 銀氷の張り手   作:fukuchan

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この作品は灼眼のシャナとのクロス物です。シャナ側の主要人物は基本的に登場させません。設定だけだと思ってください。

本作は独自解釈、オリジナル設定を多分に含みます。多少の矛盾には目をつぶっていただけたら幸いです。


1話 銀氷の張り手

 世の中には知らないほうが幸せなことがある。例えば、この世界の本当のこと。この世の、歩いては行けない隣の世界『紅世』からやってくる``徒``彼らは欲望の赴くままに行動し、人を食らう。

 

 食われたものは存在そのものが消失し、いなかったことになる。な、知らないほうがいいだろ?「死」が認知されない、正確には「人生」がなかったことになる。これ以上に残酷な死に方があるというのなら、ぜひともご教授願いたいものだ。だけど、そんなに怯える必要はない。「徒」に出会うことなんて一生に一度あるかないか。たいていの人間は無いまま平和に一生を終える。

 

 もし出会ってしまったらどうするのかって?申し訳ないがその時は自身の不幸を呪うしかない。最も、普通の人間は「徒」にであったと認識することすらできないわけだが。

 

だけど、偶にいるんだよ。紅世のことを認識できる人間が。そういうやつは大抵「紅世」がらみの厄介ごとに巻き込まれ、何かを失っている。目の前で家族や友人、知人が次々と炎に姿を変え、食らわれる様はトラウマものだ。そんな理不尽な目にあったやつがなにを考えるか。答えは簡単。「復讐」だ。

 

しかし、いくら「徒」を認識できようと所詮は何の力もない人間。この世の者ならざる怪物を相手にできるわけもなし。大抵の奴はそこで己の無力さを嘆き、呪う。そうすると、声が聞こえてくるんだ。

「力がほしくないか?」ってな。そうしてこう答えるわけだ。

「寄越せ、あいつらを殺せるのなら何だってしてやる。」

おめでとう、晴れて人外の仲間入りだ。

 

 存在の力の消失による矛盾から発生する「世界の歪み」それは、現世、紅世ともに歓迎すべからざるものであるらしい。この歪みが限界に達すると二つの世界はバランスを失い、崩壊してしまう。

「紅世の徒」は基本的に欲望に忠実な自己中野郎なのだが、向こうも一枚岩ではない。同胞の暴挙を良しとしない連中もいるのだ。そういう連中は「徒」に恨みを抱く人間を探し出し、契約し、力を与える。暴走した同胞を討滅するための力を。そうして、契約した者は、人という枠を超えた存在「フレイムヘイズ」となるわけだ。

 

さて、長々と語ってきたが、俺が言いたいことはたった一つ。一時の感情に身を任せても碌なことにはならないということだ。実体験者が言うのだから間違いない。もう何百年生きたのかわからなくなってしまったが、年長者の言葉には従っておくものだ。おっと、もう時間が来たようだ。では、因果の交叉路でまた会うとしようか。

 

フレイムヘイズ 『銀氷の張り手』の手記より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 チューリッヒに位置する外界宿総本部。その一室に二人のフレイムヘイズがたたずんでいた。一人は``虚の色森`` ハルファスのフレイムヘイズ『愁夢の吹き手』にして、外界宿の統括者、ドレル・クーベリック。フレイムヘイズにしては珍しく、白髪の老人であった。対照的に、もう一人のフレイムヘイズは十代後半か、二十代前半といった風貌だ。中肉中背、黒目黒髪。顔はいたって平凡なものだ。しかし、猛者特有の威厳を感じさせていた。彼は``深淵の晶`` フレティアのフレイムヘイズ『銀氷の張り手』カムイ。見た目こそ年若いが、大戦を生き抜いた歴戦の猛者である。

 

 

「日本に行ってくれないだろうか。」

ドレル・クーベリックが唐突発した、全くもって予想外の一言に『銀氷張り手』カムイは呆気にとられた。

「どうした。具合でも悪いのか?」

そんなカムイを怪訝に思い、ドレスが尋ねる。

「いや、なんでもない。少し驚いただけだ。」

「ふむ、まあいい。それで、引き受けてくれるかね?」

『なんでまた日本なのよ。あの辺りは比較的平和でしょ?』

 

契約者たる紅世の王``深淵の晶`` フレティアが腕輪型神器「グラキエス」から声を発する。

『確かにここ数十年、あのエリアで大きな事件は起きていないわ。だけど、一週間くらい前に向こうの外界宿から妙な情報が入ってきたのよ。』

ドレルの契約者、``虚の色森``ハルファスがステッキ型の神器「ブンシュルルーテ」から話す。

 

 「なるほど。で、その奇妙な情報ってのは?」

「なんでも、宝具のような、しかし宝具では無い物を観測したそうだ。」

『なにそれ、わけわかんないんだけど。』

フレティアは憤慨したように言い放つ。カムイも言葉こそ発さなかったが、パートナーに同意するように軽くうなずいて見せた。

「気持ちはわかる。私も実物を見るまでは半信半疑だったからね。」

ドレルはそういうと、机の引き出しから小さな布袋を取り出した。

「これが実物さ。君の意見を聞きたい。」

ドレルは布袋から中身を取り出し、掌に載せる。それは青く輝くひし形の宝石のようなものだった。

 

『カムイ、これ・・・・・・。』

「ああ、妙だな。確かにこの宝石からは宝具に近しい力を感じる。だが、存在の力じゃない。」

「やはり、そう思うか。」

「俺は自在師じゃないから、詳しいことはわからないけどな。」

ドレルは宝石を袋にしまうと、カムイに握らせる。

「俺に、これを調査して来いってか?」

『正解よ~。』

「それと回収だね。幸い、まだ徒は確認されていない。奴らが来る前に決着をつけたい。」

 

 カムイはぶぜんとした表情でドレルを見据える。

 

「事情は分かった。だが、わざわざ俺たちが出向くようなことなのか?日本にいる連中を使えばいいじゃないか。」

「すでに『弔詩の詠み手』に依頼したよ。しかし、断られてしまってね。」

『ま、あの戦闘狂がこんな依頼を受けるわけないわよね。』

フレティアはそっけなく言い放つ。

 

「断られることは想定の内だったよ。しかし、この石を調べてもらうことはできた。」

「それで?」

カムイは先を促す。

「ふむ、この石にはどうやら願いを曲がった形でかなえる力があるらしい。」

「面倒な願望器もあったもんだな。」

「まったく。しかもこの石の力はひどく不安定らしくてな。外部から何らかの力を注入されると暴走するらしい。」

『なるほど、それで私たちが呼ばれたのね。』

「臭い物にはなんとやらってか。」

「言い方は少々乱暴だが、そういうことだ。頼まれてくれるかね?」

 

正直なところ、カムイは断りたかった。しかし、カムイはドレルに対して借りがあった。これは返済のチャンスであり、ドレルもそのつもりでカムイを呼び出していた。

 

「・・・・・・これでチャラだからな。」

カムイは恨みがましそうにドレルをにらむ。

「はて?何のことやらわからないが、引き受けてくれるというのならそうしようじゃないか。」

ドレルはとぼけたように言う。

 

「はあ、あんたいい性格してるよ。流石は若き御老体だ。」

「協力、感謝するよ。ああ、現地の外界宿に話は通してある。詳しいことはそちらで聞いてくれ。」

ドレルは人のいい笑みを浮かべ、カムイを見送った。

 




お楽しみいただけたでしょうか。一話あたりの文字数は今後多くできるよう努力します。
また、作者のもう一つの作品『飛天の剣』はリメイクし、投稿しなおそうと思っています。

感想、ご意見などいただけたら幸いです
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