リリカルなのは 銀氷の張り手   作:fukuchan

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3話 始動

 薄暗く、人気のない路地裏に一人の青年が佇んでいる。フレイムヘイズ``銀氷の張り手``カムイその人である。

 

「いくぞ、ティア。」

『久しぶりね~。これを使うのは。』

 

 カムイの掌に白菫色の炎が灯り、野球ボールほどの球体になった。

 

『汝に姿を与えん。』

「汝は燕雀なり。」

 

 フレティアとカムイが詠唱を終えると同時に、球体となっていた炎がはじけ、美しい氷の鳥へと姿を変えた。``銀氷の張り手``独自の自在法、銀の獣である。自身の炎を銀氷と成し、獣の姿を与える。生成された獣は半自動的に行動することができる。カムイを強者たら占めている自在法の一つである。

 

「行け」

 

 カムイが言い放つと同時に生成された無数の小鳥が四方に飛び去る。今回、カムイが獣を放った目的は二つある。一つは無論、ジュエルシードの捜索、もう一つはこの一件に関わっている少女、なのはの監視だ。カムイは自身が作り出した獣と感覚を共有することが可能なのだ。

 

「さて、これで片が付けば楽なんだが・・・・・・。」

 

 カムイの思いとは裏腹に、ジュエルシードの捜索は難航した。存在の力とは一線を画す魔力を探知することができなかったのだ。正確には、探知が非常に困難だった。いかに別種の力であるとはいえ、ある程度の範囲内であるなら感知することができる。しかし、たちが悪いことにジュエルシードは暴走時以外大した力を放っていないのだ。獣を放ってから丸一日が経過しても、手がかりすらつかめていないのはそのためだ。カムイは外界宿が手配したアパートの一室で、思い悩んでいた。

 

『まさかここまで何もつかめないとはね。予想外だったわ。』

「まったくだ、あわよくばいくらか回収するつもりだったんだが。」

『いまいち魔力ってやつの感覚がつかめないのよね。近くまで来ればわかるのに。』

「慣れるまでは仕方ないだろう。しかし、それまでに事態が深刻化しないとも限らないし。」

『この際、仕方ないんじゃないの?今回みたいなケースが今後起こらないとも限らないし。』

「そうだな。不本意ではあるが、接触を図るか。」

 

 カムイは指を鳴らし、一羽を残して、放っていた小鳥を消した。カムイは残った一羽と感覚をより深く共有する。

 

 

 放課後、高町なのははいつものように、仲の良い友人であるアリサ=バニングス、月村すずかと共に帰路についていた。

 

「あんた、最近疲れてるみたいだけど何かあったの?」

「え?」

「え?じゃないわよ。あんた今日も授業中眠そうにしてたじゃない。」

「そうだよ、なのはちゃん。なんだか顔色も悪いし。」

 

 友人二人が心配そうなまなざしをなのはに向ける。

 

「にゃ、にゃははは。心配してくれてありがとう。でも大丈夫なの。最近買ったゲームが面白くってついつい夜更かししちゃって・・・・・・。」

「ふーん。それならいいんだけど、ほどほどにしときなさいよ。」

「にゃはは、ごめんねアリサちゃん。気を付けるの。」

「でも、なのはちゃんがそこまで熱中するなんて、よっぽど面白いんだねそのゲーム。なんていうタイトルなの?」

「にゃ!?え、えっと・・・・・・。パ、パズモンなの!!」

「あー、最近CMやってるあれね。確かに面白いって聞くわね。今度やってみようかしら。」

「私も、興味あるなー。」

「あ、そうだ。今度みんなでやりましょうよ。パズモン。」

「にゃ!?」

「なによ、何かまずいことでもあるの?」

「そ、そんなことないよ。楽しみだなー。あははは。」

(ど、どうしよう。思いついたタイトルを言っちゃったけど持ってないの。お小遣いで買えるといいけど。)

 

彼女たちは気づかない、一羽の透明な小鳥が彼女らを見つめていることに。

 

「やれやれ、嘘をつくのが下手な子だ。」

『可愛げがあっていいじゃない。気に入ったわ、あの子』

「さて、行くとするか。」

『もう行くの?ちょっと早いんじゃ。』

「いや、あの子にちょっとしたお土産を持っていこうと思ってね。」

 

 カムイは微笑みながらデパートに向かうのだった。

 

 

 

「じゃあ、そういうことでいいな?」

「こちら側のことに関わってほしくはありませんでしたが、こうなっては仕方がありません。」

 

 再び翠屋を訪れたカムイはなのはと接触を図ることに関して、士郎に最後の確認を取っていた。士郎は苦い顔をしつつも、了承した。そうこうするうちに、なのはが帰宅した。

 

「ただいまなの。あっ、お兄さんまた来てるんだ。」

 

カムイの姿を認めたなのははカムイに近寄る。

 

「カムイさん、かむさこんにちはなの。今日もお父さんにお話を聞きに来たの?」

「こんにちは、なのはちゃん。君のお父さんはいい腕をしているからね、参考になるよ。そうだ、今日は君にお土産を持ってきたんだ。」

 

カムイは手に持っていた袋をなのはに手渡す。

 

「わあ!ありがとうございます。なんだろう。」

「部屋に戻って開けてごらん。喜んでもらえると思うよ。」

「はいなの!」

 

そういうや否やなのはは瞬く間に部屋に戻ってしまった。

 

「すみません、娘のために。」

「いや、こちらの都合に付き合ってもらうんだ。ちょっとしたお礼だよ。じゃ、またくるよ。」

 

カムイは静かに立ち上がり、翠屋を後にした。

 

 

 

 お土産をもらったなのはは上機嫌で自室のドアを開けた。

 

「ユーノ君、ただいまなの!」

「おかえり、なのは。なんだかうれしそうにしているけれど、いいことでもあったの?」

「うん、お父さんの知り合いの人からお土産をもらったの。」

「それはよかったね、一体なにをもらったんだい?」

「今から開けるの。」

 

なのははウキウキしながら包み紙を開く。

 

「これって!!」

 

なのはが思わず声を上げる。お土産の中身は一本のゲームソフトだった。「パズル&モンスター」通称「パズモン」巷で大流行しているゲームだ。

 

「ゲームソフトか。よかったね、なのは。」

 

ユーノがなのはに声をかけるが、返事がない。怪訝に思ったユーノはさらに問いかける。

 

「どうしたんだい、なのは。」

「あっ、何でもないの。ちょうど欲しいなって思ってたソフトだったから。ビックリしちゃっただけ。」

「そうなんだ!よかったじゃないか。」

「うん!早速やってみよっと。」

 

なのはは箱を開け、ソフトを取り出す。

 

「あれ?紙が入ってる。何だろう」

 

箱の中にはゲームの説明書とは別に、一枚の紙が入っていた。なのはが紙を手に取った瞬間、紙に文字が浮かび上がってきた。なのはは驚き、飛び上がりそうになってしまった。

 

 「ユ、ユーノ君!これって・・・・・・」

 「何らかの魔法だろうね。気を付けて、なのは」

 「えっと、``あなたの使う不思議な力について話が聞きたい。今夜海鳴り公園まで来られたし``」

 「ど、どうしよう、ユーノ君。」

 「不思議な力っていうのは間違いなく魔法のことだろうね。相手が何者かわからないけど、少なくとも僕たちが魔法を使えるってことは知られてるみたいだね。君のお父さんの知り合いの人からもらったって言ってたよね。その人はどんな人?魔力は感じた?」

「カムイさんっていうお兄ちゃんと同じか、少し年上くらいの男の人なの。魔力は・・・・・・感じなかったと思う。」

「うーん、魔力を感じなかったってことは、その人は無関係なのかな。いや、魔力を隠してた可能性もあるし。だめだ、断定するには情報が少なすぎる。なのは、危険かもしれないけど、行くしかないと思う。相手が何者であれ、この状況はまずい。」

「わかったの。ユーノ君がそういうのなら、そうするの」

「念のため、いつでもセットアップできるようにしておいてね。・・・・・・ごめん、また危険なことに巻き込んでしまったね。」

「気にしないで、私がやりたくてやってるんだもん。」

「ありがとう、なのは。そういってもらえると助かるよ。」

 

 

 

 夜。なのははこっそりと家を抜け出し(桃子以外の家族にはバレているが)、公園に 向かう。今までにも何度かこうして家を抜け出したことはあったが、今日はいつもとは違った緊張

感が彼女を支配していた。目的地が近くなるにつれて、緊張感は高まっていった。

 

「なのは、準備はいい?」

「う、うん。いつでもセットアップできるの。大丈夫だよね、レイジングハート?」

『Of course. Do’nt worry, I protect you.』(もちろんです。安心してください、あなたの身は私がお守りします)

「ありがとう、レイジングハート。」

「なのは、行くよ。」

「うん」

 

 なのはは意を決し、公園に足を踏み入れる。周囲を警戒しながら、少しづつ歩を進める。

 

「こんばんは、なのはちゃん。お土産は喜んでもらえたかな?」

「にゃ!?だ、誰なの!?」

「ああ、ごめんよ。驚かせるつもりはなかったんだけど。」

 

 公園に植えてある樹の裏から、一人の青年が姿を現した。

 

「カムイさん?」

「やあ、なのはちゃん。さっきぶりだね」

 

 青年、カムイは翠屋で会った時と同じように、極々自然に声をかけてきた。

 




少し遅くなってしまいましたが、第三話です。やっと自在法を使わすることができました。

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