創世のアクエリオンEVOL   作:JJ

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第二話 「幕開けの合体」②

アマタの精神が切り替わる。

自らが戦いのための存在へと変化していくと実感……だが、それは全盛期とは程遠い、残骸に過ぎない。

 

(……問題ない、それでも戦える)

 

否定要素をねじ伏せる。ただの■ ■であった、いやそれにも気づかなかったあの頃とは違い、今の自分には『彼女』がくれた思い出がある、自分がある。

その暖かさは偽りだったけど、そこから生まれた自分は偽りではないと信じたい。

だから、いま感じている二つの炎を──自らの居場所をぶちこわした敵への怒りと、ミコノの勇気への共鳴、その二つを身に灯し、叫ぶ。

 

「エレメント二人、調整を頼む!!さあ、派手に行くぜ!!」

 

アマタの意志に、赤き天使が応じる。怒りの炉を燃やし、拳に決意を込め、目の前の敵に鉄槌をくださんと突撃する。

それに対するは紅き収穫者。傲慢なる意志を纏い、天使を排除し、少女を奪わんと斧をなぎ払う。

 

激突寸前の刹那。

赤と紅。両者の交わす視線に込められた意志は極めてシンプルだ。

すなわち、「相手を否定する」。

 

先に届いたのはアブダクターの斧。多大なる質量と加速を乗せ、天使の腰を両断せんと迫る。その攻撃の質はこれまでと比べることすらおこがましい殺意の具現。横に避けようとも後ろに避けようとも、必ず追いついて両断し、防御しようともそれごと断ち切る、そんな攻撃。

 

果たして、EVOLが選んだのは前進。その跳ね上げた脚が斧を弾き、アブダクターをよろめかす。それはほんの一瞬。その一瞬にEVOLは攻撃を叩き込む。

無論、拳の一,二発などと景気の悪いことは言わない。

機械天使の全身をフルに使い、叩き込まれた攻撃は二十。それら全てはすさまじい精密さと威力を込められた破壊の連打。それをもってもアブダクターは止まらない。それどころか、損傷にかまわずに放たれた蹴りがEVOLに当たる。ダメージは大きくないが、それによりEVOLの動きが止まり、その隙に距離をとる。

一瞬にEVOLでそこまでの連続攻撃を為したアマタが異常なら、それらに晒されながらも、致命的なダメージを避け、反撃した敵パイロットも異常といって差し支えない。

 

「チッ!」

 

アマタは仕留めきれなかった事に舌打ちする。

 

(こいつ、底が見えない!)

 

彼が攻めあぐねていた理由がそれだ。この敵が纏う気配は、得体の知れない。攻撃も、防御も、回避も、一瞬ごとに質が高くなっている。自分たちがどんな攻撃をしても、その一瞬後にはそれ以上の攻撃がかえってくると確信できる。

それを為すのは機体の性能でも、パイロットの才能でもない。

パイロットの意志。この敵の精神は異常だ。おそらく、敵であり、自らを殺すかもしれないアクエリオンの事など全く見ていない。ただミコノ・スズシロを手に入れる前の障害程度にしか考えてないだろう。

本来なら即、命取りになるような愚行。それなのにこの敵はその異常な執念を持って、常に自らを向上、いや、新生させていく。

 

         

         ──今のままでは届かない。──

         ──なら、こんな自分はいらない。──

         ──もっと強く。──

         ──より速く、より鋭く、より重く。──

 

そんな不条理を、強引に現実にする。

怪物。アマタはそれ以外に目の前の存在を定義する言葉を知らない。

 

(……だからどうした)

 

敵の異常さを実感しても、アマタは臆さない。

自分の心を確かめ、後悔していない事を確認し、

 

 ──自らの身体に宿りし命の力、オーラを掌握。

 ──それを身体の中で練り込むと同時、身体の隅々まで行き渡らせる。

 

アマタは理解している。アクエリオンとは操縦者の武器でも鎧でもない。これはもう一つの身体。3人のエレメントの存在そのものの延長であることを。

故に、機械天使が使用できるのはエレメント能力のみに留まらない。真に重要なのは操縦者のもつ技術(スキル)。人が人として鍛え上げた技量が、天使をより高みへと押し上げる。

 

 

だから、アマタも自らの技能を使用する。

 

生きとし生けるもの全てには、命の力が宿っている。オーラというそれは、古来は『気』や、『マナ』、と呼ばれていた。かつて堕天翅が人間から摂取していた『プラーナ』も、人類のオーラに特殊な精製を施した物である。

それは無色透明の力。生きている限り『ある』が、それすら気づかれないモノ。

だが、エレメント能力者がもつオーラは、言葉で表現するならば常人とは色が違う。

彼らが持つ能力とは、その色が違うオーラをもって世界に干渉し、世界という巨大なキャンバスに、絵の具をほんの一滴垂らし、本来はあり得ない条理(ルール)を僅かに現実にする、それだけのこと。

だが、能力者のオーラは色がある故に認識しやすく、認識しやすい故に操作しやすい。オーラとは生命そのものであるから、それを身体に行き渡らせると言うことは、身体の機能をより活発化させるということだ。

ネオ・ディーバの一部のエリートのみが可能なこの技術は、これまでの戦闘でもアクエリアの性能を底上げしていた。

だが、アマタはそこから一歩先の領域に達している。                                        

  ──第一位階(・・・・)気動(きどう)に移行完了。

  ──第二位階(・・・・)へと移行開始。

  ──オーラの流れを完全に掌握。

  ──流れそのものに干渉。

  ──より無駄なく、効率的に流れを変える。

  ──それだけに留まらない。

  ──オーラを身体の内側だけでなく、外側にも流す。

  ──全身を覆うように、生命の力を纏い、より密度を高める。

  ──第二位階、纏意(まとい)に移行完了。

 

第二位階、纏意。

オーラの流れをより効率的にすると同時、身体の奥底に存在するオーラを強引に外側へと流れさせ、鎧のように纏わせ、半物質化することで安定させるオーラ制御における第二位階。

その効果は単純な防御力向上に留まらず、オーラによる強化の負担をある程度緩和することで、気動時以上の身体能力強化を可能とする。また、この位階に達すればオーラを『固める』ことで打撃をより重くすることもできる。

その技術を、アクエリオンが行えばどうなるか。

 

「フッ!!」

 

その踏み込みは震脚。世界を震わせる天使の脚が生み出す加速は莫大。故に、そこから打ち出されし拳は、

 

ガッッッ!!

 

避けることも防ぐことも許さぬ神速にして必殺。鈍い音を発し、紅き収穫者の右腕が宙を舞う。

だが、それを見たアマタに浮かぶのは、仕留められなかった驚愕。

 

(嘘だろ……今のを避けた!?)

 

今の突きは敵の胸元を突き破るはずであった。にも関わらず現実は予想を裏切り、未だ敵は活動を続ける。

驚愕は一瞬。一撃で仕留められないのなら、攻撃を続ければいい。

繰り出されるは戦闘始めの攻防と立場を逆にした打撃の嵐。片腕を失ったアブダクターでは為す術もなく飲み込まれるのみ。

その道理を、目の前の敵は無理矢理ねじ伏せる。

 

EVOLの両拳が、アブダクターの片腕に阻まれる。

EVOLの蹴りが、アブダクターの脚に阻まれる。

肘が、膝が、頭突きが、その他人間が素手で行えるありとあらゆる暴力を天使の身で行っても、目の前の敵は倒れない。

攻撃の全てが完璧に防がれている、訳ではない(・・・・・)。むしろ、それだったらどれだけ良いか。

EVOLの攻撃は、アブダクターの装甲を確実に削り、内部の操縦者にも意識を失うほどの衝撃を与えている。目で見るまでもなく、攻撃の手応えがそのことを教えてくれる。

だが、収穫者の動きはそのダメージを感じさせないどころか、より鋭くなっている。

目前の獣は、自らの傷すらも自分を新生させる糧として利用している。

 

(いや、それだけじゃない……こいつとこの機体、まさか!?)

 

超強化されているはずのアクエリオンと渡り合うのに、精神論だけでは不足。現実に渡り合うためには、現実的な力がいる。その源に、アマタは心当たりがあった。

 

(もし、そうだったら、長期戦は不利!!いや、それ以上(・・・・)の可能性もある!!)

 

焦燥がアマタを焦がす。傍目から見れば一方的に攻めているのは自分たちにもかかわらず、彼が感じるのは今まさに死神の鎌を首筋に押し当てられているかの恐怖。刻一刻と強まる重圧が、実際のダメージ以上にアマタを苛む。

 

 

 

そして、さらに状況は悪い方向に傾く。

 

「!?上空に次元ゲート反応、人型アブダクター、来ます!!数、三!!」

「増援か!?」

 

上空より飛来したアブダクター三機は、色は緑で、頭部の角や翼型スラスターを備えていない。

 それらは手に構えた銃器を、地上で戦う二機(・・)に向け、

 

「ちょ……」

「やばっ!!」

 

轟音。

 

二機が後退したのは同時。その一瞬後にビームの連射がなぎ払われる。

 

「おいおい、巻き添え関係なしッてかァ!?」

 

三機の内、二機が空中からEVOLに銃口を向けて牽制し、残りの一機が紅い機体の左腕を掴み、宙づりにする。

 

「……?」

 

その行動の意図が分からず、アマタは首をかしげる。

その疑問にかまわず、二機の銃撃がEVOLを襲う。

 

「!!」

 

ビームの嵐は、前に構えたEVOLの両腕にすいこまれるかのように阻まれ、一切の影響を与えない。

それは纏意による防御力と、アマタの極限まで鍛えられた技術によって為された技。

 

(……増援の方は気配が遠い(・・)?人が操ってるのは確かだけど、あそこにはいない?遠隔操縦か?でも、そうだったとしても)

 

銃撃全てを二本の腕で防ぐという魔技を為しても、それはこちらの有利を意味しない。

二機の絶え間ない銃撃は、EVOLをその場に縫いつけ、移動を許さない。こちらの遠距離攻撃は頭部にある光学兵器があるが、こちらは牽制用の意味合いが強く、威力は期待できない。

 

(……なら!!)

 

アマタは自らの能力を発動。EVOLの機体が宙に浮かび、両腕でビームを防ぎながら距離を詰めようとする。

対する二機は後退。一定の距離を保ち銃撃する。

 

「クソ!!」

 

アマタが歯噛みしたその瞬間。

 

「!!」

 

不意の悪寒にアマタはEVOLを後退させると同時、紅いアブダクターが拘束に構わず砲撃する。

直撃は避けたが、バランスを崩し地面に着地。

チャンスとばかりに二機の銃撃が再開。両腕で弾くものの、EVOLは再び地面に縫いつけられる。

互いに攻め手をかいた均衡。

その危うい均衡は、いつ崩れてもおかしくはない。三機目の増援が銃撃に参加すれば、押し切られる可能性もある。それ以前に、紅い機体が戦場に復帰したら、この状態では為す術もない。

 

「このままじゃ、やばい!!」

「私の力を使って!!」

 

先ほどまで常識外れの攻防に目を回しながらも調整していた女性エレメントの通信ウインドウが瞬いたかと思うと、アマタの横に彼女の全身像が浮かぶ。ホログラム通信だ。

 

「どうすればいい!?」

 

操縦桿を握るアマタの手に、少女の掌が重ね合わされる。アマタはホログラムにあり得ないはずの感触や体温を感じる。

 

「私の能力なら吹き飛ばせる。だからキミはあいつらを殴るみたいに……」

「了解!!」

 

今まで両腕で防御していたのを左腕のみに変更。右腕で空中の敵に向けて掌底を繰り出す。

そこから発せられたのは少女の能力である不可視の衝撃。

凄まじいエネルギーは大気を燃やしながら進み、銃撃していたアブダクター二機を一瞬で物言わぬ人形としたばかりか、残りの二機も飲み込まんとする。

自らの想像を遙かに超えた力に、少女が息をのむ気配が伝わる。

 

だが、

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

「な……」

 

拘束から逃れた紅い機体が、斧を片腕で振るう。それだけで衝撃波はかき消された。

紅い機体はそのまま地上に降りると、EVOLに襲いかかる。緑の機体も紅い機体にかまわずEVOLを狙撃する。

連携などはなから考えていない動き。それ故に読みづらく、ジワジワとEVOLを追い詰める。

アマタも必死に躱すが、そこから反撃できない。

 

(あのレベルの攻撃をかき消すか!?どうする……)

 

必死に攻撃を避けながら、高速で思考する。少女のエレメント能力を考察し、よりよい形を模索する。

 

(……これだ!)

 

アマタは少女に問いかける。

 

「オイ、今のやつ、またできるか!?」

「かき消されたの見てなかったの!?だいたい、ここまで接近されちゃ、振りかぶってる間にやられちゃう!!」

「違う!!放つんじゃない、拳に纏わせて、殴ってぶつけるんだ!!できるか!?」

「……やってみる!!」

 

アクエリオンの右拳が赤く光る。衝撃の力がそこに留まり、凝縮される。

 

「……行くぞ!!」

 

赤い巨人は上空からのビームを紙一重で躱し、一歩踏み込んで拳を放つ。

紅い巨人は片腕の不利を、遠心力でカバーした斧の一閃を放つ。

 

拳と斧が激突すると同時、拳にためた衝撃力が放出される。高密度に凝縮されたそれは、

 

  バギン!!

 

斧を砕き、それだけに留まらず、

 

 ドゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

アブダクターの身体を吹き飛ばした。

 

緑の機体は銃撃を止め、紅い機体のそばに降りる。

 

「終わったか……」

 

アマタは息をつく。紅い機体は装甲やスラスターのあちこちが砕けているだけではなく、間接が壊れたのか右脚から火花や煙を上げている。かろうじて動いているが、これ以上の戦闘は無理だろう。そして敵が緑の機体一機だけなら負けることはない。

相手も自分たちの敗北を理解しているのだろう、緑の機体は紅い機体を抱え、上昇しようとして、

 

 ズガッ!!

 

紅い機体の左腕が、自らを抱えていた仲間の胸を貫通した。

 

「……え?」

 

驚愕に息が止まる。紅い獣はこちらの驚きなど意に介さず、左腕の力のみで動かない味方の両腕をむしり取る。その左腕を強引に自らの肩にねじり込み、

 

 バギバギ、バギン!!

 

今度は自らの右脚をパージした後、奪い取った右腕を脚部にねじ込んだ。

 

「バ、バケモノ……」

 

少女がうめく。

紅い怪物は、素手のまま天使に躍りかかる。その動きは満身創痍である状態も、仮初めの腕と脚である不利も一切感じ無いどころか、これまでの動きを凌駕する鋭さを持っていた。

 

「畜生ッ!!」

 

アマタは知っている。獣が一番危険なのは体調が万全の時ではない。死を目前にするまで追い詰められたときなのだと。その時に出す力は、本来の実力を軽く凌駕する。

 

いったん空中に回避。距離をとり、一撃離脱戦法に移行しようとするも、紅い機体はスラスターが万全ではない状態で上昇。EVOLに追いつく。

 

「なっ……!!」

 

 

赤い天使と紅い怪物が激突する。力負けしたのは天使の方だ。よろめいた天使を、無数の打撃が襲う。

 

「グッ……!」

 

咄嗟に後退したが、何発か食らった。

怪物は追撃せんと迫る。天使も迎撃のため拳を振るう。

両者激突の寸前────────

 

  現実を幻視が浸食した。

 

「何だ、これ?」

 

アマタは突如目の前に広がった光景に困惑する。それはスクリーンの異常などではない。そもそも、その光景はスクリーンを通しているのではない。アマタとミコノは何処か現実感のないその世界に生身で浮かんでいた。横を見ればエレメント二人も同じように漂っている。

 

「『絶望予知』だ……」

「カイエンだっけ、知っているのか?これ」

「俺のエレメント能力だ。未来に起きる不吉な出来事を、不定期に脳内でビジョンとして予知する。だが、なんでそれが他人にも……」

「合体の影響で能力が強くなってるんでしょ、それよりも、一体何が起こるの?」

 

四人は足元を見る。そこでは血のように赤い空の下、黒衣を纏った集団が墓場で列をなしていた。

 

「葬列……?」

「違う、アレ見て!!」

 

少女が指さしたのは集団の向かう先。そこは小高い丘になっており、一組の男女が背を向けていた。

二人の服装は黒衣の集団よりも異様。闇を凝縮させたような黒いタキシードとウェディングドレス。

 

「結婚、式……?」

「喪服の結婚式だとでも言うのか!?」

 

丘の二人に目をこらす。

新婦が振り向く。

 

「嘘……なんで私がいるの!?」

 

黒いドレスに身を包んでいたのは間違いなくミコノ・スズシロ。だがその表情には感情どころか、一切生気が感じられない。あれに比べれば、まだ人形の方が生気を感じさせるだろう。

 

「相手の男は誰だァァァァァァッ!!姿を見せろォォォォォォォォ!!」

 

カイエンが激昂して叫ぶ。

その叫びに応えたわけではないだろうが、ゆっくりと新郎が振り向いた。

 

──紅い髪に金色の目──

──自信に満ちた口元──

──鍛え上げられた肉体は、見る者全てに獣のイメージを抱かせる──

 

「誰だ……?」

 

オマエハダレダ?

オレハシッテイル?

シラナイノニシッテイル?

 

突然、幻想の世界が、アマタ達へと重圧をかける。

 

──これは運命。

──定められし大きな流れ。

──故に、か弱き人よ、従え。

 

それは世界の決定。人がどう抵抗しようとも変えられない結末。幻想はその事実を持って人を取り込もうとして、

 

「……黙れェェェェェェェェェェェェェッ!!」

 

アマタの叫びにはじき飛ばされた。

 

「運命なんて見えない!!大きな流れなんて分からない!!形すらないモノで、この俺を、アマタ・ソラを、縛るんじゃねえェェェェェェェェェェェェェッ!!」

 

それは彼が持つ、最後の矜恃であり、憤怒であり、嘆き。

その叫びが幻想を壊し、現実へと回帰する。

 

 

天使と獣の交錯は一瞬。両者の勝敗は、後ろに吹っ飛ばされたEVOLとそれを追撃するアブダクターを見れば一目瞭然。

 

「グゥゥゥゥゥッ!!」

 

アマタは衝撃に歯を食いしばる。

どうやら、自分たちがビジョンを見ている間、現実では一秒もたっていなかったらしい。

 

紅い怪物の連打が迫る。EVOLも応じるが、獣の攻撃は防御をかいくぐり、確実に損傷を天使に刻む。

EVOLががむしゃらに拳を突き出す。怪物はその拳を楽々と避け、カウンターの蹴りを繰り出す。

それこそがアマタの狙い。蹴りの勢いに逆らわず、あえて身をゆだねて吹き飛ばされることで距離をとる。

 

「が、あああああああ!!」

 

舌を噛みそうになる振動の中、必死で機体を立て直し、転がりながら立ち上がる。

アブダクターは追わない。無理に追って反撃を食らう敗北のリスクよりも、相手が隙を見せた際に勝負を決めることにしたのか。

 

「ハア、ハア……」

 

アマタは必死で呼吸を整える。

 

「アマタくん、大丈夫!?」

「……これぐらい、全然平気だ」

 

額に汗を浮かばせながらも、アマタの心は折れない。

 

「でも、少しきついかな?」

「……あのアブダクター、アマタ君の動きを読んでるみたい」

「事実そうなんだよ。戦いが長引くって事は、それだけ相手を理解するって、こと……」

 

アマタの意識に、なにかが引っかかる。戦いにおいて素人であるはずのミコノの言葉に、重要な鍵の気配を感じる。

 

「悪い、ミコノ、もう一回言って」

「え?ええっと、『あのアブダクター、アマタ君の動きを読んでるみたい』」

()の動き……」

 

(何が引っかかっている……?あいつがこれまでの俺の戦い方から動きを予想しているのはわかっているのに……)

 

アマタの思考がフル回転する。まずは敵についての考察。

 

(損害、大。機動性、未だ良好。武器はないが、素手でも十分な攻撃力。下手に小さな損害を与えてもかまわず突っ込んでくる……)

 

続いて、自分たちの現状把握。

 

(機械天使、アクエリオン。武装は素手の体術と牽制用ビーム、それと衝撃力。これは遠距離から放つのは隙が大きいし、近距離で当てるのは近づかなきゃいけない……違う、引っかかってるのはそこじゃない……)

 

思考がより高速で回転する。

 

(アイツが俺の動きを読んでるのは経験からだ。未来予測や読心のエレメント能力を使っている訳じゃない……こっちの機体は三人のエレメントが操縦している。俺がメインだけど、残りの二人はいろいろな調整を……俺以外のエレメント(・・・・・・・・・)?)

 

思考のパズルが埋まる。逆転への布石を見つける。

 

「ミコノ、お手柄だ!!」

「ええっ!?」

「作戦がある!!聞いてくれ!!」

 

  …………。

 

 

「いいね、その作戦、乗った!!」

 

ゼシカ・ウォンは声を上げる。この作戦の要である彼女は、自らの責任にも物怖じせずやると言い切った。

 

「無茶だ……」

 

一方、カイエンはうめく。アマタが語った策は、一か八かというよりも無謀だ。だがその一方で優れた兵士でもある彼は、このままでは敗北することも理解していた。

 

「無茶でも何でもやるの!!それに……」

 

ゼシカの脳裏に浮かぶのはゼドのコックピットにいる二人。

無力でもあきらめたくないと吼えた少女と、それに応え、自分たちですら飲み込まれそうになった絶望の幻視を振り払った少年。

 

「あそこまでかっこつけられちゃね……正規エレメントの私たちが尻込むわけにゃいかんでしょ!」

「く……おい、アマタとか言ったな!!」

 

カイエンが怒鳴る。

 

「失敗して、ミコノに怪我でも負わせたら許さんぞ!!」

「気にするのそっち?それと、そっちの……」

 

アマタの視線がゼシカへと移り、僅かに言いよどむ。ゼシカは、彼が自分の名を知らないのに気がついた。

 

「私の名は、ゼシカ・ウォン!!何?」

 

アマタが口を開く。

 

「ゼシカ、この作戦はそっちが肝だ。だから……信じる」

「『失敗するな』じゃなくて?」

「おまえはさっき、俺を信じて能力の使い方を変えた。だからオレもおまえを信じる。それだけさ」

「あっそ、ずいぶん人が良いね」

「おまえほどじゃない」

 

思わず、両者に笑みがこぼれる。そして同時に口を開く。

 

「俺(私)はおまえ(キミ)を信じる。だから、おまえ(キミ)は自分を信じてくれ(ね)」

 

ホログラム通信で軽く拳をあわし、勝利のための賭を開始する。

 

 

 

ミスラ・グニスのコックピット内部。

カグラ・デムリは興奮状態だった。

 

「見つけたぜェェェェェェェェェェェェェッ!!糞女ァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

彼が見ているのは機械天使ではない。その内部にいる黒髪のイグラー、臭いにおいの元だ。

 

「ククッ、やあぁっと見つけたぜ!!」

 

長い間探していた存在が目前にあるという事実は彼を昂ぶらせ、全ての感覚を鋭敏にする。機械天使の動きを読んだのも慣れ以上に、この理由が大きい。

だが、今まで受けたダメージは如何ともしがたい。一発ある程度重い攻撃を喰らえば、機体は耐えられないだろう。故に、今にも飛びかかりたい衝動を抑え、決定的な隙を探しているのだが……

 

「動いた!!」

 

機械天使の右腕に不可視の衝撃波が凝縮されると同時、脚を前後に広く構え、身体を前に軽く傾ける。ただひたすらに突進するための構えだ。

 

「……相打ち狙いか」

 

機械天使の損傷はこちらに比べて軽い。お互いに一撃を食らわせてもあちらはまだ動けるだろう。こちらが突進を躱そうとしても、スラスターが万全でない状態の今では無防備な側面や背面をぶち抜かれるのがオチだ。

 

「……だが、甘ェんだよ!!」

 

残った全てのスラスターに点火。自分も突進のための構えをとる。

 

「…………………………!!」

 

両者が動いたのは同時。凄まじい速さを持つ両者は、一瞬で距離をゼロにし、激突────────

 

「今だァ!!」

 

その寸前、ミスラ・グニスのスラスターが向きを変え、機体を強引に旋回させる。無茶に方向を変えたスラスターの大半が破損するが、構わない。機械天使は無防備な側面を晒している。

 

「これで!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

意識の外からの一撃。加速に乗ったその貫手は、機械天使の装甲を貫くーーー

その攻撃が届く前に、天使の()がミスラ・グニスを迎撃した。

 

 グガッッッ!!

 

天使の放った蹴りが、ミスラ・グニスをよろめかせる。

 

「ガアァァァァッ!?」

(馬鹿な……フェイントの気配なんて無かった!!間違いなく突進に全てをかけていた!!読み違えるはずがねぇ!!)

 

驚愕と混乱で動きが止まる。その瞬間、

 

 ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

衝撃の力を纏った右拳が、ミスラ・グニスを上空へ打ち上げた。

 

 

アマタはフェイントをかけたのではない。彼は全力で突進し、それが躱されることを予測していた。フェイントを仕込んでいても、それがアマタの動きである限り、敵は間違いなく見破ってきただろう。

そう、アマタの動きなら。アマタは突進が躱された瞬間、機体のメインコントロールをゼシカに移したのだ。彼女はこの三人で、一番ヘッドとして戦闘した時間が短い。故に、戦闘データの蓄積も比較的少なく、動きを予知されにくい。

無論、危険な賭だ。予測していたとはいえ、突進が躱された状態から機体を動かし、攻撃を当てられる保証はないし、相手が対応してこないとも限らない。その他にも失敗する要因はあっただろう。

だが、ゼシカの持つ意志と、これまで積み重ねてきた訓練と実戦経験は、それら全てをねじ伏せる。

そしてその結果、紅い怪物は衝撃力をまともに食らい、天を舞った。

 

だが。

 

「嘘!?まだ動くの!?」

 

 紅いアブダクターは砕かれる寸前になりながらも、僅かに残ったスラスターで姿勢制御。EVOLに取り付こうとする。

 

「何、あれ!?」

 

紅い機体から赤黒い光が漏れ出る。それは理屈以前の恐怖を見る物全てに与える。

もはや目の前の怪物は何をしても止まらない。

 

「どうする!?」

「俺に任せろ!!みんなが掴んだチャンス、無駄にはしない!!」

 

 その瞬間、EVOLに翼が生えた。それはアマタが持つ飛翔の力。その力を全力で振り絞ると同時、

 

「今此所に、我が意志を宣言する!!」

 

アマタの声が、戦場全てに響き渡る。

 

「我が翼は最速の証。この世全てのモノは我に追いつけない。

 故に、如何なる過去も、定められし運命も我を縛ることあたわず。

 我はただ、今を永遠に飛び続けるのみ────」

 

アマタが唱えるそれは自己暗示にして祝詞。自分が斯く在りたいという願い。その願いをアマタのエレメント能力が現実に反映し、天使の力が増幅させる。

 

「必殺──!!」

 

 それらが為すは奇跡の顕現。その前には物理法則など何の意味も待たず、不条理がそのまま現実となる。

 

天翔(テンショウ)翼閃乱舞(ヨクセンランブ)!!」

 

 その瞬間、EVOLの身体が閃光と化す。その光は紅いアブダクターを打ち上げ、より上空に吹き飛ばし、

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!」

 

咆吼と共に、閃光と化したEVOLが四方八方からアブダクターを貫く。

そして、

 

「……これで!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

一際強い閃光が、アブダクターを貫き、そのまま止まらない。一瞬で大気圏外まで到達する。『運命の三つ星』とも呼ばれる衛星軌道上の岩石群の中でもひときわ大きい三つの岩石の内の一つに激突。

 

                    ─天翔翼閃乱舞─

                 ──FlYING WING DANCE──

「……やりすぎたか」

 

運命の三つ星から地上を見れば、紅いアブダクターは胴体のみをかろうじて残して、ピクリとも動かない。いや、よく見ればまだかすかに動いている。

 

「まだ動くか……?」

「見て、次元ゲートがまた開いた!!」

 

紅い機体の上空に、花のような文様が浮かぶ。あれこそが異世界からの門、次元ゲート。そこから収穫者達はこの世界へと降り立つ。

そこから光の筋が伸び、アブダクターに当たる。すると機体は引き寄せられるかのように次元ゲートをくぐり、その姿を隠す。そしてゲートも消えた。

 

「終わったのか……」

「ああ、俺達の勝ちだ」

 

アマタの言葉が、この戦いの結末であった。

 

 

 

 

「ミコノ、ありがとう」

 

戦闘が終わり、EVOLはネオ・ランディアに帰還。三機のベクターマシンに分離し、各々離れて着陸していた。

アマタとミコノを乗せたベクターゼドが降りたのも、ネオ・ランディアの一角。機能停止したアブダクターのそばだ。

 

「え?」

「あの時のミコノの言葉がきっかけで勝てた。礼を言うのは当然だろう?」

「そんな、アマタ君なら私の言葉なんか無くても、自力で……」

「それはどうだろう」

 

ミコノの言葉を遮ったアマタの目は、

 

「どちらにせよ、おまえの言葉がきっかけになったのは事実だ。そして、戦場に『もしも』はない。

 ……これ、自分に誇っても良いと思うぞ?」

 

とても優しい目をしていて、ミコノは自分の頬が熱くなるのを感じーー

 

プシュッという音と共に、機体上部のハッチが開いた。

 

「大丈夫か!?」

 

見れば、カイエンが見下ろしている。

 

「ああ、少し体がだるいが、動ける」

「おまえには聞いてない!ミコノ、怪我はないか!?」

「……あっさり言い切られると、それはそれで清々しいな」

 

言いながらもアマタはミコノを押し上げ、続いて自分も外に出る。

 

「ふう……」

 

アマタは二人に背を向け、軽く息を吐く。

 

「おい」

 

カイエンがアマタに声をかける。アマタが振り向くと、カイエンが握手でもするかのように左腕を差し出している。アマタもそれに応じ、左腕を伸ばす。両者の手が互いを掴むと同時、

 

「……!!」

 

カイエンの左腕がアマタのそれを引っ張る。たたらを踏んだアマタの腹にカイエンの右拳が迫り──

 

 バシイッ!!

 

肉が肉を討つ音が響く。

カイエンが忌々しげにうめく。

 

「……気づいていたか……」

 

カイエンの拳は、アマタの右の掌に受け止められていた。

 

「そりゃ、あんだけ殺気だしてりゃ気づく。今から攻撃しますよって全身でシャウトしてるみたいだったぜ?」

 

アマタは呆れたように呟く。

 

「よっと」

 

軽い調子でカイエンの腕を払い、ベクターから飛び降りる。

そんな彼に、至近距離から金属音と共に銃口が突きつけられる。数は三。ついさっきまで救出活動をしていた軍人のうち、三人がアマタに銃器を突きつけていた。おそらくベクターマシンの陰に隠れていたのだろう。

 

(……ま、気づいてたけど。あのカイエンってやつみたいに殺気出してなかったから、次の行動を確かめるために降りたんだ)

 

「で、何の真似?一応俺巻き込まれただけの一般市民で?少なくともこんな風にいきなり殴られたりする心当たりはないんですけど?」

「そうだよ、カイエン!!アマタ君は私を助けてくれたんだよ!?それに、アブダクターを倒したのだって……」

「無駄にさえずるな!!こいつは機密である機械天使に乗り込んだだけじゃない、未知の機能まで解放した!!逃がすわけにはいかない!!」

「ああ、そうかよ」

 

アマタの顔に、先ほどまでの暖かみはない。あるのは、

 

「おまえの言葉は嘘っぽい。怒りの理由はミコノ絡みか?ま、国際組織のネオ・ディーバに睨まれて、逃げ切れるはずもないし、行くのはいいよ。でもさ、」

 

凄絶な笑み。自らを遮るモノ全てを粉砕するという意志。

 

「連行されるのは趣味じゃない。てめぇら全員ぶっ飛ばした後でゆっくりお邪魔させてもらう」

 

その宣告と同時、殺気が渦を巻く。

 

「……ッ!!」

 

兵士が殺気に反応する。殺すつもりはない。手足を撃って動けなくするだけだ。

だが。

 

「遅い」

 

アマタは呟きと共に、肘打ちを自らを囲んでいた兵士の一人の鳩尾に見舞う。

打ち込まれた兵士は声も上げず、地に倒れ伏す。

アマタは確認すらしない。包囲網に開いた穴から脱出。体を反転させ、残り二人も刈り取ろうとし、

 

「……ッ!!」

 

能力を発動。ただし実行されるは飛翔ではなく浮遊。蹴りの体勢から宙に浮き、強引に後退。その一瞬後、銃声と共に、アマタの脚が存在してた地面に小さな穴が開く。

 

「かわされた!?」

 

ベクターマシン上からの射撃を回避されたカイエンが驚愕する。

 

「くそっ!!」

 

カイエンは地上へ飛び降りる。アマタの能力では一瞬でここまで上がってくるだろうし、ここに留まればミコノを巻き込む可能性がある。それなら、支援を受けやすくした方がましだ。

 

「いい覚悟してるな」

 

ベクターマシンから離れたアマタが半身で構えながら声をかける。

 

「エレメント相手は久しぶりだ。それもネオ・ディーバ所属、か……そこらの野良より強いんだろ?」

「ふざけた口を……!!」

 

怒声と共に拳銃を乱射。二人の兵士も各々の銃を撃つが、

 

「無駄だ」

 

呆れたような呟きと共に、銃弾全てが弾き落とされる。

 

「生身で、能力も使わずに銃弾を防ぐだと……」

「さっきアクエリオンでやったろ?ま、纏意で身体硬くしねえと身体ぶっ壊れちゃうけどな」

「何を言って……」

 

理解できない発言に(・・・・・・・・・)、カイエンが眉をひそめる。一方、アマタも訝しげな表情をし、

 

「いや、だからオマエも纏意ぐらいはできるだろ?」

「さっきから、何訳の分からんことを……」

 

両者の持つ知識は大きく断絶していた。カイエンは自分たちの行っているオーラ操作にこれ以上の領域がある事を知らず、アマタは世界最高峰のエレメント集団であるネオ・ディーバがオーラに疎いなどと夢にも思わない。これが何を意味しているかを彼らが知るのはもっと後の話───

 

(纏意の存在を知らない?てっきりネオ・ディーバ所属のエレメントなら、俺とは違ってまともな方法で(・・・・・・・)第二位階以上に至ってると思ってたんだが……今まで戦った野良エレメントほとんどが気動位階程度だったのは運が良かったからじゃないのか?)

「ま、いいか」

 

 アマタは内心の疑問を意識の外に放る。

 

「それならそれで戦いようはあるだろ?悪いが、手はぬかない。行くぞ!!」

 

アマタは能力を発動。宙に浮かび上がり、滞空する。カイエンらも銃器を構え、突撃に備える。両者が攻撃行動を実行しようとし──

 

両者の間の空間を、不可視の衝撃が横断した。

 

「もうやめなよ!!」

 

アブダクターの影から、ゼシカが走り寄る。

 

「カイエン、頭に血ぃ登りすぎ!!さすがにやばいって!!」

「こいつは素人じゃない、確実に戦闘経験がある!!」

「そうだとしても、彼がいなくちゃ私たちは負けていた!!連れて行くにしても、礼儀は尽くすべきよ!!」

「くっ……」

 

カイエンが渋々と銃口をおろす。

 

「アマタも、これでかんべんして」

「……わかった」

 

アマタも能力を解除し、構えを解き、

 

「……!?」

 

一瞬でゼシカの側に駆ける。

 

「だから言ったんだ……!!」

 

カイエンが銃を再度構えるが、アマタのほうが速い。拳が振るわれ───

 

何か固いものが粉砕される音が響く。

 

アマタの拳は、ゼシカの頭上に降ってきた、アブダクターの部品を粉砕した。

ゼシカが放った衝撃波の影響で降ってきたのだろう部品のサイズは煉瓦二個ほど。もし無防備なゼシカに当たれば大怪我ではすまなかったかもしれない。

 

「く……」

 

アマタの意識がとぎれる。

機械天使の操縦は、精神と肉体に多大な負荷をかける。初搭乗したアマタが今まで意識を繋げていたのが異常だ。だが、それでも鎮静しようとした状態からの急激な意識の集中は彼に意識を手放させるほどの負担だった。

 

(私をかばって……)

 

見ればアマタは倒れそうになりながらも身体を動かそうとしている。

 

「ととっと」

 

 

ゼシカはアマタを支える。倒れないように、これ以上、彼に負担をかけないために。

 

 

(やべ……受け身とらないと……)

 

混濁した思考の中、アマタは思う。まだ安全と決まった訳ではない、意識を失うわけにはいかない。

だが、身体は重い。意志に忠実なはずの身体は、どんなに命令を下しても僅かにしか動かない。

 

不意に、暖かい感触がアマタを包む。

その感触は、彼にある女性を思い起こさせる。

 

(違う、彼女じゃない、そもそも彼女は俺が……)

 

一瞬、アマタの心に痛みが走る。その痛みは彼の精神にかかってる負担以上に、心をきしませ、

 

(だけど、暖かい……)

 

彼を包む体温が、精神を癒す。アマタはその心地よい感触に、身を任せることにした。

 

 

 

 

少年少女の出会いは運命か、はたまた偶然か。

兎にも角にも役者は集まり始めた。

これより始まるは、世界を揺るがす、恋あり、友情あり、出会いありの大活劇。

演ずるは各々、何かが欠けた役者達。

その結末は、まだ誰も知らず───

 

 

 

 

───────────────

次回予告byゼシカ

《あの日出会った男の子は……》

《とても頼もしい翼を持っていたけど》

《それ以上に、どんな時でも》

《泣いているかのように必死に見えた》

《次回、創世のアクエリオンEVOL、『聖天使学園』》

 

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