創世のアクエリオンEVOL   作:JJ

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第三話 「聖天使学園」①

アマタ・ソラは夢を見る──

 

それは、死にながら生き続けている今と、死を振りまきながら生きていた過去の間の、一瞬の輝き。

 

その頃、彼の側にはある女性がいた。

彼女は完全で、何一つ欠けていなかったけど、どうしようもなく不完全で、どうしようもなく欠けていて、つまりは彼と同じだった。

だけど彼女は、彼を『人間』にしてくれた。だから彼は決めた。自分は彼女と共に歩こうと。彼は信じた。自分たち二人は共にあると。

だが、彼女は──

 

 

 

 

「……知らない天井だ……」

「起きたか。調子はどうだ?」

「……いやな夢を見た、最悪だ……」

「ほう、どんな夢だ?」

「……人に言うべきことじゃない。特に……」

 

アマタは現状を確認する。今彼の身体は、ベッドに横たわっている。

ベッドが位置するのはおそらく病室であろう真っ白い部屋の中央。

そして、その部屋には──

 

「現役の軍人さんがしっかり俺の身の回りを固めている、この状況じゃあな」

 

六人の、硝煙の匂いが染みついたがたいのいい男がベッドを囲み、アマタに注目していた。全員腰に拳銃を下げている。もしアマタが少しでも妙な真似をすれば、即座にそれらが火を噴くだろう。

 

(それに……)

 

先ほどまでアマタと会話していた男は、その輪から一歩離れた場所で壁にもたれていた。サイボーグ手術の跡が生々しいその男の立ち振る舞いは、隠そうとしても隠しきれない強者の気配をアマタに感じさせる。

 

(……わかる。この人の強さはサイボーグだからじゃない。それ以前の、人間として鍛え上げられた強さだ)

 

彼の力量は、アマタを囲んでいる兵士全員よりも確実に上だ。潜ってきた修羅場は、並大抵のものではないだろう。

自らの状態を確認。拘束などはされてないが、身体が重い。機械天使を操縦してからの疲労はまだ抜けきってない。

 

「俺の名は、ドナール・ダンテス。悪いが質問は受け付けない。動けるなら来い」

「……了解」

 

アマタは立ち上がり、部屋を出ようとするドナールを追いかける。ここからどう行動するにしても、情報は必要だ。

 

 

 

「……と、言うわけで連れてこられた先はどう考えても機密たくさんな軍事施設。ここまで晒した以上オレ逃がす気まったくないな」

「……なにブツブツ言ってる?」

 

 アマタが連れてこられたのは薄暗く、広大な部屋。アマタは知らないが、ここは聖天使学園の司令室だ。

そこにいるのはアマタ、ドナールと彼らにつきそう六人の兵士。それに加え、彼らが入室する前から部屋にいたシスターに、恰幅の良い老齢の軍人の二人だ。

 

「よく来てくれた、アマタ・ソラ君。私はネオ・ディーバ司令、聖天使学園学園長の」

「能書きはいい。前口上も説明も必要ない。ここがネオ・ディーバってことがわかれば意識がぶっ飛ぶ前の状況からだいたい推察できる。これからの展開もな」

 

 アマタは傲岸不遜な態度を作り、柔和な表情を浮かべた学園長の声を遮る。

 

「一つ聞く。俺と一緒に、ミコノとかいう女性もここに収容したはずだ。そいつを、交渉材料にする予定は(・・・・・・・・・・)あるか(・・・)?」

 

禍々しい気配が充満する。アマタは指一本すら動かさず、ただ殺気を漏らすだけでこの場の支配権を完全に掌握した。

学園長は理解する。自分がこれから少しでも失敗すれば、目の前の少年はこの部屋にいる人間全てを一瞬で物言わぬ人形にするだろう。

額ににじむ冷たい汗もぬぐわず、毅然と告げる。

 

「そんなことはしない。彼女は私たちのスポンサーでもあるスズシロ家の令嬢で、優秀なパイロットであるカイエン・スズシロの妹で、そして何より私たちが護るべき民間人だ。それを人質にするなど恥知らずなことはしない」

「ならいい」

 

殺気が消える。アマタの表情は変わらないが、少なくとも会話する気にはなったようだ。

 

「簡潔にすまそう。そっちの要求は?まあ、予想はつくが」

「なら、話は早い。アマタ・ソラ君、機械天使、アクエリオンのパイロットになる気はないか?」

「……予想通り、か。どうせ、断っても機密保持がなんちゃらとかで軟禁だろ?命令と変わりあるのか?」

「頼む!!」

 

学園長は頭を下げる。その身体からは、民間人を戦場に連れ出す無念さがにじむ。

 

「先ほど民間人を人質にしないと言った私が、都合の良い言葉を言ってるのは理解している!だがアブダクターの襲撃は質も量も増している!!これまでの体制では足りない!!機械天使の未知の力を解放したばかりか、それを完璧に使いこなしたキミの力が必要なんだ!!」

「……別に良い」

 

 アマタの態度が変わる。

 

「俺にとって戦う事なんて全く負担じゃない。機械天使だろうが何だろうが問題にもならない」

「……戦って、くれるのか?」

「ええ、人類を守る守護者というのなら報酬も期待できるのでしょう?なら、断る理由はない」

「……すまない」

「謝罪はいい。ただ、少し条件がある」

「条件……?」

「ええ、と言っても簡単なこと」

 

 

 

 

 

 

一方、ミコノ・スズシロは、地上の学園にいた。

聖天使学園に連行された後、エレメント能力の有無を含む様々な検査を受け、その結果が出るまで学園を案内されているのだ。

検査の結果はわかっている。『エレメント能力無し』だ。彼女のコンプレックスであるその事実が、以前ほど自分の心を軋ませないことにミコノは気づいてた。その理由が、アマタにあることも。

 

(……アマタ君は、こんな私でも、自分に誇れって言ってくれた)

 

その言葉は、今まで蹲ってたミコノにとって、ほんの僅かな、だけど確かな救い。

 

(……私には能力はない。勉強も運動も、秀でたところはない。でも、だからといって、なにもしちゃいけない訳じゃない!!)

 

それは当たり前の、だけど大切なこと。それを知ることで、ミコノ・スズシロは再び前を向ける。

彼女は肩の力を抜き、前を歩いている少女に声をかける。

 

「案内ありがとうございます、MIXさん」

「別に良いのよ。委員長として、当然のことをしたまでだし」

 

MIXと名乗ったその女性は、緩く三つ編みをした金髪をサイドテーブルにし、赤いアンダーリムの眼鏡が特徴的な青い目を持つ白人系の女の子だ。

一軍クラスの委員長を務めているらしく、ネオ・ディーバやエレメント候補生について説明する姿からは、確かな知性を感じさせる。

 

「教室に着いたわ。覚悟はいい(・・・・・)?」

「え?」

 

僅かに緊張し、MIXが教室への扉を開ける、その瞬間

 

「「「「「きゃーーーーーーーーー!!!!!!!!!」」」」」

「!?」

 

凄まじい歓声がミコノを出迎えた。

 

「あの子が男女機合体をした子!?」

「カイエン様の妹って本当!?」

「いいなぁ、私もカイエン様と合体したぁい」

「私は、むしろあの子と合体……」

 

やいのやいの。

民族衣装を着ている子もいれば、最新のワンピースを着ている子もいるが、カイエンのような硬い雰囲気を持つのは少ない。普通に街にいそうな女子達だ。そんな女の子が全員目をランランと輝かせているのは壮観である。

 

「MIXさん、これって……」

「当然でしょう?さっきも言ったように男子と女子は聖なる壁、『ベルリン』によってさえぎられてるの。男子の触れあいが全くない分、あなたの男女機合体に興味を持ってるわ。……全く、選ばれし乙女としての自覚に欠けてるわ。男子なんて汚れた存在なのに」

「は、はは……」

 

顔が引きつるミコノに、女子が一人、集団から抜け出して近づく。

褐色の肌の、三つ編みの黒髪にドリームキャッチャーを飾る、エキゾチックな女の子だ。

 

「あなた、カイエン様の妹ってホント?」

「え、ええ」

「いいなぁ、ねぇ、カイエン様って家ではどんな風なの?」

「ごめんなさい、私は離れて暮らしてたから……」

「残念……あっと、私の名は、サザンカ・ビアンカ。よろしく」

「彼女は私と同じ、一軍のレギュラーメンバーよ。腕は確かで、ネオ・ランディアの戦いにも参加してたわ」

「まあ、途中退場しちゃったけどね。ああーーもしかしたらカイエン様と合体できてたかもしれないのに……でもどうせ合体するならシュレード様とも一緒の時の方が……やっぱシュレード×カイエンのカップルは王道よね!!」

 

どうやらカイエンはここではタレント人気を持っているらしい。堅物なイメージが大きいミコノには意外だ。

 

「あの、シュレード様って……」

「男子どころか、聖天使学園学園最強のエレメントよ。ただ、あまり訓練にもいらっしゃらないの」

「男子……?カップル……?」

 

ミコノは改めてサザンカを見て、身もだえしているのを確認。結論を出す。

 

(この子、腐ってるゥゥゥゥゥゥゥゥ!?それに近くでうなずいてる人たちは何!?一人は何故か紙袋かぶってるし!!その後ろの席は緑の猫の人形が座ってるし!!)

 

どうやらエレメントは個性豊かな人材がそろってるらしい。

 

「ふいー。ってかなんの騒ぎ!?」

 

背後で誰かが異様な風景に驚愕している。見れば、背後の扉からゼシカ・ウォンが入ってきた。

それはいいのだが。

 

「えっと……ゼシカさん?その服……?」

「ああ、一軍になると私服が許されるのよ。この服は私のお気に入り」

「……お気に入り?」

 

ミコノはゼシカの服装を改めて見る。

──上半身。水着のように胸部前面を覆うタイプの服のみ。しかも胸元には大きな穴、背中はほぼ露わになっている。

──下半身。ホットパンツ。ただし大胆なスリット有り。

見たところ、下着を履いてるようには思えないデザインだ。

 

(……痴女?)

 

「ちょっと、ミコノだっけ?何か失礼なこと考えてない?」

「いえいえ」

 

頭を振って否定する。いらぬトラブルは呼び込みたくない。

MIXも声をかける。

 

「それにしても、ゼシカ。もう消毒は終わったの?あと三日ぐらい消毒してもいいんじゃない?」

「いや、消毒じゃないから。検査だから」

「男子の穢れが移ってるかもしれないのよ!!塩酸で消毒してもいいくらいだわ!!」

「MIXの中でどれだけ男は汚れてるのよ……」

 

ゼシカが呆れた表情を作る。どうやらMIXの男子嫌いは今に始まったことではないらしい。

 

「ああ、そうそう。ミコノに聞きたいことあったんだ」

「?何です?」

「あのアマタっての、彼氏?どこで会ったの?」

「ちっ違います!!ただ、あの街で会っただけです!!」

「たまたま、ね……」

 

猫を思わせる目が、興味ありげに細められる。

 

「ま、いっか。ひょっとしたらまた会えるかもだし」

「……うらやましいです……」

「うん?」

 

ゼシカが訝しげな表情になる。

ミコノにとって、エレメント能力がないことよりも、あの少年と二度と会うことがないという事実の方が、心が痛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

聖天使学園地下施設にて──

 

「アマタ・ソラの能力は『飛翔』です。自身の周囲に斥力の力場を創り、宙に浮かび上がる……力場を制御することで高度や進行方向、スピードを制御できます」

 

スオミ・コネピが検査によって得られたデータを学園長とドナールに読み上げていた。

 

「……確かに珍しい能力だが、それだけではグイゼ・ストーンが壊された説明にはならない」

「ええ、それにカイエンの報告では彼は素手で銃弾を弾いたのでしょう?それは彼の能力では不可能です」

「……覚えてるか?さっきの感情変動の計測の時」

「ええ……」

 

エレメント能力は大抵感情に直結している。故に先ほど、様々な映像を見せることで感情変動を計測しようとしたのだが、

 

「どんな画像を見ても毛の先すらも反応しない。こんなのシュレードや『アイツ』以来だぞ」

「……つまり、彼はその二人と同じような過去を持っているということでしょうか……?」

「ああ、あのレベルまで能力を使いこなすやつなんて、聖天使学園(ここ)の一軍でも、五人もいないぞ。才能云々の問題じゃない、過去に能力を徹底的に研ぎ澄ます必要があった状況にいたと考える方が自然だ。それに……」

 

ドナールはモニターの一つを見る。そこに映されているアマタの鍛え上げられた身体。普段は長袖と長ズボンに隠されているそれには、普通に生活していれば間違ってもつかない疵痕があちこちに刻まれていた。

 

「……一番古い物が、十四、五年ほど前につけられた物、ですか……」

「あいつ、データによれば十六歳だろ?幼稚園に通うような年に、どんな環境で育ってたんだ……?」

 

アマタの謎は多い。一番の問題は彼が提示した『条件』だ。一つは『過去を詮索しない』という、まあ納得できるものだったが、もう一つの条件は理解も納得もできないものだった。ドナールは、アマタが『条件』を提示した際の会話を回想する。

 

 

 

『おいおい、そんな条件簡単に飲めるわけ無いだろう』

『別に黙認してくれさえすればいい。誰にも迷惑はかけない』

 

ドナールの苦情にも、アマタは眉一つ動かさない。

 

『それで実戦で足引っ張ったら困るんだよ』

『心配ない。不安なら確かめるか(・・・・・)?』

『何を……!!』

 

 ドナールから怒気が漏れる。

 

『よせ、ドナール。……わかった。特例だが、認めよう』

『学園長、よろしいのですか!?』

『似たような前例にシュレードもいる。だが、それ以外は……』

『わかってる、文句はない』

 

 

 ……

 

「……あいつ、一体何者だ……?」

 

ドナールに疑念が浮かぶ。彼を迎え入れて良いのか。かつての自らの悲劇よりも、悪い事が起きるのではないか。

 

「ドナール?聞いていますか?」

「っスマン!!」

 

スオミが、非難がましい目つきになる。

 

「まあ、機械天使の真の名を知っていた貴方なら、聞かなくても問題はないだろうけど?」

「……オレも、あの形態のことは知らなかった」

 

今まで黙ってた学園長が口を開く。

 

「だからこそ、私たちは知らねばならない。あの少年の奥底を。それが全ての鍵になる」

 

彼らの視線の先、強化ガラスの窓の下ではアマタが物々しいベッドに寝かされていた。

これから始まるのは精神解析。精神探査のエレメントを解析し、応用したヘッドギアにより、被験者を催眠状態にして、深層心理を読み取る。

 

「サイコレベル2000へと沈降!!」

「さあて、鬼が出るか、蛇が出るか……」

 

ゴクリとつばを飲み込む音が響く。

アマタの口から、か細い声が漏れる。

 

「ああ、ああああああ……何で」

 

アマタの口から漏れる言葉は幼い。幼少時の記憶が刺激されているのだろう。

 

「……う、あああああああああああああああああああ!!!!!!!どうして!?なんでぇぇっぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!」

 

悲鳴が響き渡る。それは聞くモノ全てに猛烈な拒否感情を抱かせる悲痛な叫び。同時にモニターの精神波形が無茶苦茶な数値を示す。

 

「実験中止!!早く止めろ!!」

 

学園長の声が響くと同時、装置の電源が落とされ、悲鳴が止む。

スオミが医者に問う。

 

「一体、何が起こったの!?」

「……おそらく、あまりにも深い精神的外傷(トラウマ)を刺激してまったのかと。……医者として、同じ事をまた行うのは賛成しかねます」

 

学園長らは顔を見合わす。

アマタ・ソラが抱えるモノは、思った以上に根が深いことだけは間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテア界──

もし仮に、ヴェーガの住民がその世界を認識したならば、誰もがこのように表現するだろう。

「信じられない。こんな世界に、生物が存在できるとは思えない」と。

それは惑星すべてを覆うプレートや、地下深くまで続く多層構造の構想都市から一切の暖かみを感じないからーーという訳ではない。

それ以前の問題として、世界自体が死にかけている。

いや、その表現は正確ではない。死にかけているという表現は、本来は健康であるはずの存在にのみ使用できる。そもそもこのアルテア界は、生まれた瞬間からいかなる祝福も受けず、死にかけていたこの状態こそが正当だった。

 

そんなアルテアの中心たるメインタワーの司令室で、一人の男が報告を受けていた。

 

「今回の作戦で次元ゲートを開いたことで一部ブロックの電力供給が途絶えました。現在、復旧作業を進めています」

「……それで結果は採集ゼロか、ひどいものだな……」

 

報告を受けた男はあまりの惨状に精悍な顔を曇らせ、ため息をつく。

彼こそがイズモ・カムロギ。すべてを見渡す荒鷲のごとき理性の目を持つ、現状このアルテアの最高指導者である。

 

「しかし、収穫もありました。ノーマル・グニスの遠隔操縦や、ミスラ・グニスの実戦データは記録できましたし、何よりも……」

 

報告していた男の視線が、モニターに、より正確に言うならばそれに映されているモノに注がれる。

 

「機械天使の真の力……そのデータがとれただけでも、かなりの成果です。ジン様ならデータさえあれば、あのすさまじい性能に対抗できる方法を考案なさるでしょう」

「すさまじい性能、か……それだけに見えるのか?」

 

イズモの口元が、僅かにゆがむ。

 

「?どのような意味でしょうか?」

 

イズモは答えず、男を下がらせ、再び戦闘記録を見る。

 

彼が重視していたのは、機械天使そのものだけでなく、これまで戦線に出てこなかったであろうパイロット。

なるほど確かに機械天使、アクエリオンの力はすさまじい。あの力は、これまでロー・グニスと交戦していた際の性能が児戯に思えるほどだ。

だが、それだけだ。どのような力を持とうが、グニスタイプもアクエリオンも本質はパイロットの延長。即ち、真に勝敗を決するのはパイロットの戦闘能力、そのものだ。

そして記録を見る限りカグラのコンディションは過去最高。機体になれていなかったとはいえ、カグラが負けるとは思えない。

なにせカグラの本質は獣。理屈を無視し、本能で人を狩る。あらゆる戦士がたどり着きたいと願う無想の境地へと、彼は生まれながらにして到達している。たとえ相手がどれほどの力をふるおうが、それがまっとうなヒトである限りカグラにとっては獲物にすぎず、確実に狩られるだろう。

そんな存在に対抗できるのは、数千、数万の内の一人という言葉ではとても表せない、彼と同等の異常性を持つパイロットのみ。

どのように異常かはわからないが、確実にあのパイロットは自分たちの脅威となるだろう。

 

「ヴェーガの切り札か?だが……」

 

イズモの視線が、一枚の画像に移る。

そこには機械天使が黄金の翼を生やしていた。

 

「翼、そして飛行能力、か……まさかな」

 

脳裏に浮かんだ可能性を否定する。もし仮にそうだとしても、彼が進む道は揺るがない。なぜなら彼は咎人。犠牲にしてしまったモノのために止まることなど許されないのだから。

 

 

 

 

そして、 メインタワー近くの神殿の最上階。

その中心にある結晶の棺で、『それ』は眠っていた。

その人物は美しく、おぞましい。

性別すらも定かでない『それ』が持つのは粘ついた妄念のみ。

その思いのみで存在している『それ』は、間違いなくヒトではありえない。

『それ』は無意識に自らの──────が目覚めたのを感じていた。

故に、目覚めの日は近い─────。

 

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