奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
私はあの子が来るまでの間に、この学園の真の経営者である轡木さんと、表向きはこの学園の生徒会長であると同時にロシアの代表であるがその正体は裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部「更識家」の当主に、彼女のことと彼女がもたらした情報を伝えた。
雪風には当然ながらこの世界における身寄りが存在しない。
それはあの子にとってどれだけ危険なのかと言えば、枚挙できないほどにある。
彼女は専用機らしい「IS」を所持しており、なおかつ「艦娘」と言うどうやらこの世界においても秘匿されるべき「デザイナーズベビー」に相当する存在だ。
これほど研究者や軍部の人間から魅力的に思える存在は無いはずだ。
だからこそ、彼女には不可侵領域であるこのIS学園に生徒として在籍してもらう必要がある。
また、専用機持ちであるために他国からの工作員があの子の秘密に触れる可能性もあり得る。ゆえに更識の力を借りる必要も出てくる。
日本政府が彼女を狙う前に先手として、更識に彼女の保護を依頼していた方がいいと考えてのことだ。
だが、私が2人にあの子のことを説明するとやはりと言うべきか雪風のことについて半信半疑になってしまっている。
そして、あの子が自らを「大日本帝国」と語り出した瞬間に一気に轡木さんは訝しげな目を向け、更識は家柄が家柄だけあって、そこまでは帝国のことを蔑んだりはしてはいないが奇異の目を向けてしまった。
……現代日本人のアレルギーとも言える戦争嫌いを舐めていた……
轡木さんは戦後生まれであり、何よりもメディアが発達していない戦前の日本に対しての評価が一方向からしかされていない世代の人だ。
帝国時代を思わせることに対して不快感を抱いてしまうのは無理もない。
それも思春期の女子が見せた、まるで帝国に忠誠を誓っているかのような振る舞いには異常さを感じるのだろう。
だが、私は一度、ドイツ軍に借りを返すためにドイツ軍の教官を務めていたこともあってか、軍人が祖国に忠誠を誓うのは常識だとも思えてくる。
ドイツもかつての大戦の敗戦国であり、枢軸国であったことから平和主義で日本以上に戦前のことについては敏感だ。
しかし、ドイツにしろどこの国家にしても志願制を採っている国家の軍人は自分の母国の安全やその国家の国民を守るために軍人になっているのだ。
むしろ、軍人に祖国への愛着や忠誠心がない方が不安になってくる。
そう考えると……こいつは堂々としていて感服するな……
変な色眼鏡で見ない限りは雪風の軍人としての姿には現代人の私すら感服を覚える。
彼女の軍人としての姿は女性でありながらも男にも負けない勇ましさを放ちつつも決して荒々しくなく、他者を圧倒するも威圧せず、礼儀の中にも凛としたものがあった。
まさに「威あって猛からず」を体現していた。
我々が帝国軍人と聞くと想像する残虐で冷酷で野蛮なイメージを彷彿するが彼女にはそれがなかった。
私は雪風を見ていて、とある後輩を思い出してしまった。
あいつも普段は大和撫子を思わせる清楚さを醸し出していたが、「IS」を纏った彼女の姿はまさに侍を思わせる少女であった。決して、「女尊男卑」などに染まらないあいつの在り方は、雪風はたまに年頃の少女を思わせているところがあるが纏う雰囲気はまさにあいつにそっくりだ。
だが、それ故に彼女にこの世界における日本軍の扱いを説明するのが苦しくもある。
「……では、織斑先生。
頼みます」
そんな葛藤の中でこの学園の真の経営者である轡木さんが私に雪風への「IS」の説明を促してきた。
「解かりました。
理事長」
私は彼女に対して、内心「すまない」と思いながらも「IS」と「IS」が生まれてからの世界のことについて説明しようと口を開けた。
「「IS」とは正式名称は「インフィニット・ストラトス」と言い、パワードスーツ……
つまりは身体能力を強化する鎧甲冑みたいなものだ」
「鎧甲冑ですか……?」
織斑さんの「IS」の簡単な説明に私はなんとなくだが予想していた「艤装」との類似性が理解できた。
私は「艤装」とほぼ変わりないと思っていたが
「そうだ、元々「IS」は宇宙開発を目的としたもので
地上及び空中を自由に移動し、強力な装備による火力、さらにはシールドエネルギーによるバリアーなどと言った防御機能と機動力から既存の兵器を圧倒する兵器だ」
「………………は?」
私は一瞬、織斑さんの言ったことの意味が解からなかった。
この人は今、何と言った。
宇宙……?空中……?火力……?バリアー……?高機動……?
「なんですか……!?
その化け物クラスの兵器は……!?」
私はあまりの規格外の「IS」の性能に驚愕せずにいられず、大声をあげてしまった。
「IS」はどうやら、空中戦を主体とした機体らしいがそれは「あの戦い」を経験した私にとってはとんでもないことである。
艦娘である私でさえ解かることだが、水上を高機動で移動するよりも空を高機動で移動した方が圧倒的に速い。
それにあの戦いで我々が苦しめられたのは深海棲艦の圧倒的な物量に加えて、水中や水上だけでなく空中から襲いかかる敵の搭載機にもあった。
あの大和さんでさえ、帝国海軍の航空戦力の援護があってもあの絶望的な空からの数の暴力で敗北したのだ。嫌でも空を自由に飛び回る敵の強さは理解できる。
そして、何よりも「IS」の一機分の性能がこれだ。なんなのだ、一体。
たった一機でその性能なんて……まるで……
私はその性能からあの「化け物」を思い出してしまった。
私の目の前で何度も何度も仲間を沈めてゆき、私の最後の作戦においては大和さんや多くの僚艦、さらには私の妹の生命を奪った、基本的に憎しみなんか抱かない私が憎いと思ったあの「悪魔」を。
「ど、どうしたんですか……?そんな声をあげて……」
「あ……」
私の叫びに部屋の人間は再び困惑してしまった。
しまった……どうしても……あいつのことを思い出すと……
感情的になってしまったことを恥じながらも私はあの「悪魔」のことを思い出す度に決して消えない憎しみを感じてしまった。
仮にあいつが再び目の前に現れることになったのならば、私は敵わないことを知りながらもなりふり構わずに戦いを挑むことになるのだろう。
私の目の前でまるで見せつけるかの如く、守るはずだった僚艦や護衛対象を嬉々とした表情で沈めていったあの「海の化け物」を目前にして冷静さを保っていられる自信がない。
大丈夫……もうあの「化け物」は長門さんや榛名さんたちが……
あの化け物は大和さんや私たち、最後の「華の二水戦」、さらには帝国海軍の主力部隊とハワイに残っていた米軍の残存部隊との戦いを終えてから傷を負いながらも長距離を移動し、別動隊相手の最後の砦として立ちはだかったらしい。
そして、別動隊を負傷しながらも相手取り、榛名さんたちを含めた多くの面々を中破させたが最後は長門さんに引導を渡されたらしい。
私は自分に「あいつはいない」、「もう大丈夫だ」と言い聞かせると
「すいません……どうしても、昔のことを思い出して……」
自分は「大丈夫だ」と伝えた。
「そうか……
まあ、続けるとしよう。
「IS」はその高過ぎる性能から軍事転用するとなると問題になることから、それを規制する「アラスカ条約」を締結し、当時「IS」を唯一保持していた日本にその共有と情報開示が求められ
同時に研究機関として、この「IS学園」が創設されたのだ」
私が落ち着いたのを確認すると織斑さんはそう言った。
確かに私のいた世界でも「軍縮条約」はあった。
強過ぎる力は周囲の国家を刺激し警戒させてしまうことは多くある。
実際、帝国の近代化も当時の欧米列強のアジアの植民地化を警戒してのものだったし、私たち艦娘が海外に派遣されたのも奪還されたばかりのアメリカや幸か不幸か深海棲艦によって弱体化した列強の支配から独立した東南アジア諸国の再植民地化を狙う旧欧州列強を刺激しないためのものだったりしたのだ。
また、艦娘の小型化された火力や機動力から人間同士の戦争に使われることを恐れて日本に軍縮もしくは艦娘の使用禁止を呼び掛ける条約も結ばされたが。
どこも同じなんですね……
私は納得した。
と言うか、こればかりは仕方ないと思えても来る。
また、同時に
「そうですか……しかし、そんな「IS」を使わないといけないなんて……
こちらの世界もそれだけの脅威が存在するんですね……」
「IS」のあまりの規格外過ぎる、一機あるだけで艦隊戦をできるんじゃないのかと思える性能から考えられる敵の強大さに私は呆気に取られてそう呟くと
「……え?」
「……は?」
「……ん?」
「……?」
再びよくわからない困惑の声があがってしまった。
「え、なんですか?」
私は彼女らがどうしてこのような反応をするのか解からなかった。
しかし、私はここで気づくべきだった。
それは気づいてはいけないことだったと言うことに。
「IS」の性能はぶっちゃけると量産型は深海棲艦で言うと、ヲ級クラスだと思えてきます。人型ならばバリア張れると思いますし(アニこれ描写的に……アニこれ描写的に……アニ……これ……)。それでも、量産型でボスクラスとタメ張れる時点で十分だとは思いますが。
ただし、原作でパイロットの練度の低さや作中で相対するのが同じ「IS」ばかりなので、何がすごいのか解かりにくいと思います。
そこを考えるとパイロットは艦これ>ISだと思えます。
実際に死ぬかもしれない艦これ世界の住民と防御面に特化しすぎて慢心しがちな「IS」世界の人間を比べるのが間違いだと思えますが。