奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
私は今月の2-5、3-5が終わってからやろうと思います。
山雲と朝雲、最上のレベルが50まで行き、満潮の改二までいく時間稼ぎにはなると思います。
また、冬イベはエンガノ岬とサマール沖海戦もあり得るので瑞鳳、野分、愛宕もレベリングしようと思ってます。
とりあえず、皆さんの健闘を祈っています。
「どうしたんだ、川神。
こんなに遅くに訊ねて来るなんてお前にしては珍しいな」
「そうですね。
確かに私は出撃前の時以外はあまり夜は出歩きませんからね」
「……それは
「……はい。よくわかりましたね」
「……『出撃』と言う言葉が出たからだ。
少なくとも、私が知る限りお前がそんなことをする必要性は全く感じられないし、している姿は見たことがない」
「……………」
先輩の言う通り、これは川神那々としての記憶ではない。
そして、先輩が口に出した私が見回りをしなかったことも合っている。
そもそも、「IS」の出撃前に不安になった私が指導を受け持った女性は一人もいなかったのだ。
だが、それは彼女たちが勇敢なのではなかった。
彼女たちは
理由としては「IS」での搭乗者の死亡事故が今までにおいてなかったからだ。
当然、起動実験中の際に事故が起きた事例は存在している。その中には私があの大会で名誉を傷付けてしまった彼女もいるが、それくらいだ。
そのため、どうしても「IS」の搭乗者の大半は「死への恐怖」を知らないのだ。
だから、私はこの世界ではあまり見回りをしない。
したとしても、『教官は心配性』と言われるだけだった。
「……なあ、川神。
一つ訊きたいのだが、お前は本当に
「……と言いますと?」
先輩は唐突にとても哲学的な問いを投げかけて来た。
「お前は「神通」の生まれ変わりを名乗っている。
加えて、お前は雪風に『神通』と呼ばれていることを否定せず、彼女のことを弟子として愛している。
それは自分を……
先輩は私にとって心苦しい質問をぶつけた。
そう。私は雪風以外にとっては「川神那々」だ。
「……お前は……川神那々であることを否定しているのか?」
「………………」
先輩は続け様に核心を突いた。
先輩はこう言いたいのだ。
『お前は神通と川神那々のどちらなのか?』
と。
余りにも選ぶことの難しい選択肢だ。
確かにこれは彼女の言う通りだ。
私は前世は神通でも、現世は川神那々だ。
普通ならば別人と言うことになるだろう。
彼女からすれば、後輩にしてもう一人の親友である私が別人になったと言われでもすれば哀しいことだろう。
「……フフフ」
「……?
何がおかしい」
だけど、私はその問いが嬉しく感じてしまった。
先輩は私がふざけているのかと思ったのか、顔を顰めた。
でも、私は
「ありがとうございます。
先輩」
「なんだと……?」
彼女がその問いを投げかけてくれたことに対して、私は彼女らしい不器用な信頼がそこにあるのに気付いたのだ。
「あなたはこう思ったのでしょう?
初めて、出会った時に……いえ、あなたと友人になった時の私が川神那々だったのか?
それとも神通だったのか?と」
彼女は不安なのだ。
今まで自分の友人であった人間がいなくなってしまったのではないかと。
今となっては懐かしいですね……
私は先輩と出会った時を思い出した。
あれは私が十三歳の時だった。
私と彼女は同じ中学校や篠ノ之流の道場に通っていたが、最初はそこまで親しくなかった。
むしろ、私が仲が良かったのは一夏君や箒ちゃんの方だった。
当時の先輩は殆ど孤児同然であったことからよく周囲から蔑まれたり、捨てられっ子として嘲りを受けていた。
加えて、先輩は見た目が良かったことから同じ学年や一つ上の学年の同性からもやっかみを受けていた。
また、当然ながら彼女に恋愛感情を持つ異性もいたがそれが全て純愛的なものとは限らなかった。
そんな中でも彼女は決して逆境に負けなかった。
そんなある日のことだった。
所謂、中学校の不良の中でもかなり素行の悪い不良が先輩に振られたことに逆恨みし、自分の不良仲間や後輩、さらには高校生や挙句の果てには暴走族すらも動員し彼女を潰そうとしてきた。
しかも、卑劣なことに一夏君のことを狙って。
彼らは自分の仲間を使って一夏君の跡をつけて何時でも手を出せると彼女を自分たちのアジトにまで来るように脅迫したのだ。
当然、このままであれば彼らの目論見通りだったであろう。
そう、私さえいなければ。
『すみません。あなたたちはわざわざ小学生と女子中学生相手に何をしているんですか?』
ちょうど、一夏君と箒ちゃんの稽古をつけた後に街で買い物をしていた時に妙につけられている気配を感じた私は一夏君をつけていた不良の一人を使ってつけていた不良全員を誘き出してお話をしてもらって彼らの企てを引き出し、一夏君達を家に帰して即座に彼等のアジトへと向かった。
その後、先輩に一夏君を保護したことを伝えて二人で不良達を一掃した。
『……貴様、なぜ助けたのだ……?』
不良たちを全て黙らせた後に彼女は少し威嚇しながらそう言った。
『いえ。可愛い弟と妹みたいな子に危害を加えられそうになったのと、その弟みたいな子のお姉さんが貞操の危機を迎えそうになったので助けに入っただけですよ?
そもそも警察を呼ばれたら最も困るのはあなたではないのですか?』
ただ単に私は私の守りたいものがあったから味方しただけだ。
当然、義憤もあった。
しかし、それよりも前者が上回っただけのことだったのだ。
それに私は一夏君に先輩がアルバイトをしていたことを聞いていたことから大事にするのは彼女にとっては苦しいことだと思って介入したのだ。
『……くっ……!!』
先輩はかなり悔しそうだった。
実際、先輩が素の実力を出せばあの程度の数だけの不良ならば赤子の手をひねるようなものだった。
私自身、彼らはただ暴力を振るうことに躊躇がないだけの今の「女尊男卑主義者」と変わらないと今では感じている。
『あなたは何をそんなにイライラしているんですか?』
『……何?』
その時の彼女の他人の手を取ることに対して否定的な姿を見て私は放っておけなくなってしまった。
あの時の私は彼女を気に掛けた動機の理由はわからなかった。
ただ『彼女を放っておけない』と思っただけだった。
今となっては私はあの時の彼女が「コロンバンガラ」の前の雪風と無意識に重なって見えたのだろう。
記憶が戻っていなかったと言え、私は生まれてからずっと何かを忘れているようなもやもやしたような感覚に駆られていたのだ。
『今のあなたはまるで自分だけで何もかもできて当たり前だと本気で思い込んでいるように見えますよ?
そんな姿勢では―――』
私は彼女に
『―――今回のようなことがまた起きて今度は一夏君を失う時が来ますよ?』
『……!?貴様、何が言いたい!?』
大切な者を失うことを示唆した。
それを聞いた直後、先輩は今までただ相手を拒絶する姿勢から私に敵意を向けて来た。
どうやら、彼女にとってそれだけは触れて欲しくないことだったらしい。
『あなたは確かに強いです。
ですが、それはあなた自身だけを守れる程度の物でしかないと言うことです。
このままいけば必ずあなたいずれ後悔するだけで―――』
私は胸に感じた危惧を彼女にぶつけた。
しかし、それは彼女にとっては
『……!?何も知らん貴様が言うな!!!』
上から目線の言葉でしか感じられなかったものであったらしい。
『―――グッ!』
激昂した彼女に私は思いっ切り左頬を殴られ私は地に伏した。
『ハアハア……あ……』
彼女は興奮が少し覚めてから自らがした行動に呆然としていた。
あの頃の先輩は確かに荒れていたが、それでも暴力は自衛のみにしか振るわなかった。
彼女はあの頃から高圧的であったが何だかんだで「力の在り方」を弁えていたのだ。
そして、その恐ろしさを。
それなのにその自分が感情に流されるままに暴力を振るってしまったことに衝撃と自己嫌悪を覚えたのだ。
でも、その時私は
『怖いんですね……?
あなたは……』
『……!?』
彼女がいつも付けていた鎧が剥がれたことを目にして安堵した。
『それはあなたが正常な証ですよ……?』
『……な、何だと?』
あの時、私は強がり過ぎていた彼女を危惧していると同時に彼女が初めて恐怖を顔に出したのを私は理由は分からなかったけれど嬉しかった。
彼女は常に自制していたのだ。
それは他者よりも圧倒的に強過ぎる自分を恐れての事だったのだ。
そして、同時に彼女は常に本当は力を振るいたいと言う衝動に駆られていた。
だが、自分が動けば何かを壊してしまうとずっと怖がっていたのだ。
誰よりも力を持っているが故に苦悩している人間。
それが織斑千冬だったのだ。
もう一人の先輩のように無邪気になれる訳でもなく、彼女は人として生きようと努力し続けていたのだ。
だからこそ、彼女は一夏君やボーデヴィッヒさんのことを愛しているのだ。
自らが壊すのではなく、育てることができた大切な宝物として。
しかし、それでも当時の彼女は限界だったのだ。
『……どうですか、先輩?
少し殴り合いをしませんか?』
『……はあ?』
私は彼女に教えたかった。
世界はそんなにも簡単に壊れるものじゃないと。
そして、自分よりも弱いものじゃないということも。
だから、それを彼女に証明したかったのだ。
『私はそんな簡単に
『なっ!?グッ……!!
貴様ぁ……!!』
私は先ほどのお返しとばかりに彼女のことを殴り、それを受けて彼女は自然と殴り返した。
その後のことはあまり覚えていない。
『貴様ぁ……!
いい加減、倒れろ!!』
『そちらの方こそ……!!』
ただ殴って、殴られ、殴り返す。
終いには最早、負けず嫌いでただ相手に勝ちたい。
負けたくない。
ただの意地の張り合いになった。
そして、それは私たちが互いに立てなくなるまで続いた。
『どうですか、先輩?
お互いに全力をかけての殴り合いは?
色々とすっきりしませんか?』
仰向けになりながらも私は痛む体を押して上半身を起こして彼女にそう言った。
その時、彼女は信じられない者を目にしているような顔をしていた。
それは自分が全力を出しても壊れないものが在ったと言うことに対するものと全力を出したのに私が恐怖しなかったことへの驚きだった。
そして、あの日から私たちは友人となった。
「……大丈夫ですよ。先輩。
私は変わってなどいません」
「……どういうことだ?」
私は彼女と友になった時の私と今の私が変わらないことを伝えた。
「簡単なことです。
川神那々も神通も名前が違うだけで両方とも私と言うだけです」
「……何?」
私が出した自らの存在への答え。
それはどちらも本物であると言うことだ。
しかし、だからと言ってその両者が別人であると言う訳ではない。
ただ一つだけ私があの時と今では異なることがあるが。
それは
「ただあの時の私は神通としての記憶を失っていました……」
「記憶を……?」
神通としての記憶をはっきりと覚えていなかったことだけだった。
あの頃の私は常に何かを忘れているようなモヤモヤした気持ちに感覚に陥っていた。
何かをする度に何時か、何処かで感じたことのあるような懐かしい気持ちに浸り、時々、なぜか切ない気持ちになる時もあった。
物心が付いてからその正体がわからないままその感覚に包まれながら私は生きて来た。
「……父や母に申し訳ないのかもしれませんが……
私は既にあの頃には「川神那々」と言う名前の「神通」だったのかもしれません……」
「……川神……」
私が敬愛し慕っている両親に対して唯一罪悪感があるとすれば、私が純粋な彼らの娘と強く言えないことだ。
私の人格は元々、神通そのものだったのだ。
記憶を失っていても川神那々は神通だったのだ。
それが私にとって最も心苦しいことだ。
「……ですから、あなたが危惧しているようなことではありませんよ」
神通と川神那々は決して別人でも別人格でもない。
ただかつての名と今の名であるだけだ。
「そして、今回はその記憶が戻った時のことであなたに訊きたいことがあります」
「……何?」
私が彼女の友人のままであることを告げると私はそろそろ本題に入ろうと思った。
「私の記憶が戻ったのは……
「白騎士事件」の事件の時でした」
「……何だと?」
私が記憶を取り戻したのはあの世界が変わった日だった。
あの時、一夏君と箒ちゃんを連れて避難していたが、突如一気に記憶が戻ったことで頭痛に似た症状が訪れた後、自分が誰なのかを思い出し、そして今まで胸に抱いていた空虚感が満たされた。
しかし、私は自らの記憶が本物であることを雪風が来るまで確信できなかったのも事実だ。同時にあの頃からある疑惑を抱いて生きてもいた。
「そして、私が知りたいのは……確認しなければならないのは―――」
私が覚悟したこと。
それは親友である先輩を疑うことだった。
「―――あの事件の真相です。
「……!!?」
あの日からずっと感じていた違和感。
それを私は打ち明けた。
ここで神通さんと千冬さんの関係を清算したかったのでかなりの寄り道になってしまったと今更後悔しています。
とりあえず、次々話でトーナメントの導入部になります。
本当にすみません。