奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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今回は短いです。
秋イベ……燃料大丈夫かな……
個人的にはリアルでの時間面も不安……


第33話「舞台の表面」

「さてと、一夏たちとは別リーグかしら?」

 

「違ったらいいですね」

 

 私と鈴さんは明らかに収容人数の倍の数の女子生徒でごった返している更衣室の中、モニターに映されるだろう対戦相手の名前を待ちわびた。

 私たちはこの日まで「打倒ボーデヴィッヒさん」を目標にして訓練して来たが、同時に決勝と言う晴れ舞台でお互いの決闘を待ち望んでいる。

 

「そうね……

 と言うか、あんな風にかっこつけたのに初戦で当たるのは格好がつかないどころの問題じゃないし勘弁して欲しいわ」

 

「確かに……

 ちょっと、それは何と言うか……

 恥ずかしいですね」

 

 あの宣戦布告にも近い決勝戦での戦いの約束をしたのにも関わらず同じリーグで戦うのは未だしも、一回戦で当たるのは色々と台無しだ。

 と言ってもこればかりは本当に「運」だ。

 少なくとも、一回戦で一夏さんたちと当たる確率は色々な可能性の中では最も低いはずだ。

 

「そうね。まあ、幸運の女神(・・・・・)にでも頼るしかないわね」

 

「あはは……

 幸運の女神(・・・・・)ですか……」

 

 鈴さんのその冗談に私は苦笑してしまった。

 まだ私が仲間や姉妹たちを失う前、戦果をあげたり、被弾がなかったり、勝ったりした後の補給を受けた際に私は無邪気に『幸運の女神のキスを感じちゃいます!』とはしゃいでいた。

 今となっては「幸運艦」と呼ばれたりするのは色々と自嘲してしまうが、世の中にはこういう場合の「運」に頼ることがあるのも私は理解している。

 ただ複雑な気持ちになるだけだ。

 

「ん?何よ、そんな顔して?」

 

「いえ……努力していてもこればっかりはどうにもならないなと思っただけですよ……」

 

「まあね。

 ま、そもそも外れ引いても力づくで「不幸」なんて言葉をなかったものにすればいいのよ」

 

「鈴さんらしいですね」

 

 まさに豪快な鈴さんらしい言葉に私はクスリと笑ってしまった。

 鈴さんの場合は恐らくだが、相手が多少の奇計奇策を施そうが少し状況的に不利でもゴリ押しで何とかするだろう。

 彼女の爆発力はそれ程までにとんでもないのだから。

 少し頭に血が上りやすいので確りと補佐する必要があるが。

 ただ、「運」を全く言い訳にしないどころか、「不幸」と言う言葉にケンカを売る啖呵はとても清々しいものである。

 

「ふ~ん?

 ま、アタシとしてはアンタが調子を戻してくれたのは嬉しいところよ」

 

「ははは……すいません。

 心配をかけて」

 

 一夏さんと仲直りした翌日から私は本調子を取り戻した。

 どうやら鈴さんもセシリアさんも私のあのよそよそしい態度には違和感を感じていたらしい。

 あれは我ながら迂闊だったと思っている。

 

「私は別にアンタがどんな悩みを抱えていてもあんたがもう大丈夫なら詮索するつもりはないわよ」

 

「……ありがとうございます」

 

 鈴さんは一見すると突き放したかのような言い方をするが、その実、私がこれ以上気負わないようにしているのが感じられた。

 竹を割ったような性格には私も随分と救われる。

 

「とりあえず、何としても優勝するわよ!

 セシリアとの約束もあるし、何よりも先生の手前無様な姿なんて晒せないわ!」

 

 彼女は元々トーナメント自体には負けず嫌いなので意欲を見せていたが、そこにセシリアさんの無念も加わり、さらには自らの師である神通さんの期待を感じてか更なる闘志を燃やしている。

 

「最強の師匠の最強の弟子タッグを思い知らせてやるわよ!」

 

「はい。頑張りましょう!」

 

 どうやら鈴さんは私と組んだことで神通さんの弟子同士と言う共通点を意識しているらしい。

 何よりも彼女は同じ神通さんの弟子である私と共に戦うことを心の底から喜んでくれているらしい。

 そう感じると私も嬉しくて仕方がない。

 

 神通さん、私はもう大丈夫です。

 それをこのトーナメントで証明して見せます!

 

 同時に私は鈴さんと同様に今回のトーナメントを神通さんに見てもらえることを意識している。

 今回の件で私は神通さんに心配をかけてしまった。

 きっと、神通さんのことだから私を信じているのでもう気に掛けていないだろうが、それでも迷いを振り切ったことを彼女に伝えたい。

 それがこのトーナメントにおける私の目標の一つだ。

 

 

「あ、どうやら対戦表が決まったらしいわ」

 

 モニターの画面に変化が現れ更衣室中にざわめき出し一斉に全員のモニターに集中したことで対戦表の組み合わせが決まったことが感覚的にも感じられた。

 そして、同時に更衣室中の生徒たちが時折、モニターから私たちに視線を移しその後すぐにモニターに視線に戻すのを私は感じた。

 それは恐怖、忌避、懇願と言ったものが込められている様にも思えた。

 誰もが私たちと当たりたくないと。

 

「鈴さん、どんな相手に当たろうとも慢心はしないでくださいね」

 

 それを把握して私は鈴さんに周りにも確りと聞こえる様に忠告した(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「当たり前じゃない!

 と言うか、アタシは誰が相手であろうと全力で叩きのめすつもりよ!!

 それがアタシのポリシーなんだから!」

 

「……奇遇ですね。

 それは私もです」

 

 その私の一見すると余計なお世話な言葉を受けて鈴さんは私の予想通り全力を出すことを大声で(・・・)公言した。

 その結果、更衣室中の殆どの生徒たちは一瞬にして戦意を喪失しだした。

 どうやら私の目論見通りだ。

 彼女たちは私たちと当たりたくないのは先ほどの態度を見れば明らかだったので、私はそれを利用して彼女たちが期待しているであろう勝算を上げる条件を予め潰しておいた。

 きっと、彼女たちの何名かは私たちとの実力差が大きく開いていることを理解していることからこそ、私たちが油断することを期待していただろう。

 なので、私は鈴さんになるべく大きな声で『慢心するな』と伝え、彼女たちの抱く希望的観測をそもそもそれ自体が幻想であることとした。

 戦いは始まる前から既に始まっているのだ。

 当然、相手が自棄になるかもしれないが、そんな冷静さを欠いた相手ならば逆に与しやすいものだ。

 

「あ、対戦相手が決まったらしいわね」

 

鈴さんがそう言ったので私は一夏さん達と初戦で当たらないことを祈りつつ顔を上げてモニター画面を見て対戦相手を確認した。

 その結果

 

「……!」

 

「……外れどころか、大当たり(・・・・)ね」

 

 モニターに映し出された私たちの対戦相手の名前を受けて私は高揚感を感じるとともに衝撃を受けてしまった。

 私たちの初戦の相手の一人は目当ての人物であるが、もう一人の対戦相手は予想外過ぎたのだ。

 

 

 

「……これも運命の巡り合わせですかね……」

 

「ああ……そうだな……」

 

 私と先輩は注目の一年生の部の第一試合の組み合わせを目にして運命には作為的な意思があるのじゃないのかと疑ってしまった。

 私と先輩は来賓の方々のすぐ傍にいる。

 恐らく、これは緊急時の時に「世界最強」と称される私たちを使うことを考えての配置をしているのだろう。

 

「まさか「ブリュンヒルデ」と「もう一人の世界最強」の弟子対決なんて……」

 

「これは素晴らしい」

 

「中々、白熱した試合になりそうです」

 

 来賓の方々はドイツの代表候補生と中国の代表候補生がぶつかることで事前情報でこの対戦カードの表向きの(・・・・)意味を理解してか楽しそうにしていた。

 

 まさか……私の教え子二人と先輩の教え子……

 そして、箒ちゃんが初戦で当たるとは思いもしませんでした……

 

 そう。

 なんと雪風たちはいきなりボーデヴィッヒさんと激突することになったのだ。

 

「これは……荒れるな……」

 

「はい」

 

 先輩の一言はそれ以外に例えようがないほどに単刀直入だった。

 どう転んでもこの試合は荒れる。

 いや、荒れない方がおかしい。

 

「よりによって、因縁深い四人が当たるとはな……」

 

「そうですね……」

 

 既に雪風とボーデヴィッヒさんとの衝突は何度も聞かされている。

 加えて、今回雪風と鈴さんはオルコットさんの敵討ちに燃えている。

 そして、

 

「篠ノ之博士の妹もいますね」

 

「なんて豪華な組み合わせ……」

 

「見ごたえがあります」

 

 箒ちゃん……

 

 箒ちゃんは雪風に対して対抗心を抱いており、鈴音さんは無人機襲撃の際の箒ちゃんの言動に関して良い感情を持っていない。

 恐らく、あの子がボーデヴィッヒさんと組んだのはペアを組む相手がいないことによる抽選だろう。

 

 これも私の責任ですね……

 

 本来ならば、ボーデヴィッヒさんみたいな人間を彼女は嫌うはずだ。

 しかし、そんな彼女がボーデヴィッヒさんと組んでいるのはきっと一夏君以外の人間に心を許そうとしないからだろう。

 そして、それは紛れもなく私の「裏切り」が原因だ。

 

「先輩、あなたは自分のことを未熟と思っているようですが……

 それは私もですよ……」

 

「………………」

 

 先輩は「師」として、私は「家族」として未熟だった。

 私は先輩の「公」よりも「私」を優先できるところが少しだけだが羨ましかった。

 あの時、私がもう少し自分の「情」を優先していれば箒ちゃんを傷付けずにすんだ。

 それだけが私の心残りだ。

 

「ところで「陽知」とは誰ですか?」

 

「さあ?初めて聞く名前だわ」

 

「「代表候補生」でもないし、あまり注目する生徒じゃないでしょう」

 

 そして、もう一人の第一試合の選手である雪風にようやく来賓の方々は注目しだした。

 どうやら、まだ公式戦でその実力を見せていないことから雪風のことはあまり知られていないようだ。

 

 雪風……

 あなたの決意を私はここで見守ります

 

 きっと彼女も私にその「決意」を見せるだろう。

 私はこの場で彼女の戦いを通して見せる「決意」を受け止めるつもりだ。

 私は箒ちゃんのことを後悔しながらも同時に雪風の「強さ」と鈴音さんの「成長」を見届けたいとも思っている。

 

 我ながら……浅ましいですね……

 

 自らが仕出かした過ちと自らが確かめたい輝きの双方がこれからぶつかる。




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