奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
これならなんとか涼月を迎えられます。
雪風の戦友の一人なので嬉しいです。
「来たか……!」
ピットを抜けてアリーナに出るとボーデヴィッヒさんが睨みつけて来た。
それは待ち侘びた仇敵が来たことへの忌々しさと喜びを込めたものだった。
だが、私が感じた敵意は彼女の物だけではなかった。
「………………」
篠ノ之さんもまた私に敵意を向けている。
彼女が私に向けている理由は分かっている。
元々私と彼女は嫌い合っている。
私は彼女の今までの言動に対して嫌悪感を抱き、彼女は私を神通さんの教え子であることや私の戦場仕込みの戦法を嫌っている。
だが、今の私はそれよりも彼女に対してさらに不快感が増している。
あなたも……一夏さんの意思を無視するんですか……っ!!
それは彼女がこの「トーナメント」に参加した動機だった。
私が更識さんから手渡された資料と神通さんの告白を受けて知った彼女の過去から、少なくとも彼女が一夏さんが関わらない限りは「IS」に積極的に関わるどころか、むしろ嫌悪しているのは容易に推測できる。
では、なぜ彼女がこの「トーナメント」に出場したか。
それは「例の噂」が理由だろう。
私は彼女の「恋」にかける情熱に関してはその過程や彼女自身の無自覚さを除けば多少は本物だとは認めていた。
それなりには一夏さんにかける「想い」の絶対値は鈴さんとセシリアさんとも同等だと考えていた。
だが、彼女は「トーナメント」の特権と言う安易な手段に縋った。
仮に私は鈴さんやセシリアさんも「特権」に固執していたのならば私は彼女たちに立ちはだかる壁になるつもりだった。
そのようなふざけた手段によって手にする「恋」など、私は「恋をしていた一人の女」として、そして、「恋に破れた女」として断じて認めるつもりはない。
そんな覚悟のない浅はかな「恋」をどうして認められる。
私はそう、彼女に
私は鈴さんやセシリアさん、そして、篠ノ之さんの「好意」を抱いている相手に積極的に「想い」を成就させようとしている姿にはある程度、羨ましかったのだ。
少なくとも、榛名さんや金剛さんに遠慮して「司令」に想いを伝えようとしなかった私と比べれば彼女たちはまだ勇気があった。
それを篠ノ之さんは自ら捨てたのだ。
どうして、この憤りを隠せる。
これがただの八つ当たりであり、独善であり、勝手な失望だとは理解している。
それでも私は彼女が許せないのだ。
そもそも彼女の過去に私がどれだけ同情しようが手を抜くつもりなどなかったがそれがそんなことを少しでも考えていた自分が『甘かった』とすら思っているほどに私は苛立っている。
ただ一つ問題がある。
流石に二人同時にかかって来られるときついですね……
それは目の前の二人が明らかに私に同時に狙いを定めていることだ。
別に「二対一」の戦いに関しては私は苦戦など生温い圧倒的数による消耗戦で慣れている。
しかし、それはあくまで通常の敵の場合だ。
今、相対している二人の中、ボーデヴィッヒさんに関しては使用する装備の面から少しでも集中を欠くのは命取りだ。
彼女相手に負けるつもりなどないが、それでも彼女の「ワイヤー」と「AIC」は一度でも嵌まれば
十分、脅威に値する。
ただ「一対一」以上の優位にさえ立てば彼女を絶対に倒すつもりだ。
鈴さんに頼むのは……
普通ならば、訓練通りに鈴さんに篠ノ之さんに任せるのが最善だろう。
しかし、それは気が引けるのだ。
恐らく、誰よりもボーデヴィッヒさんにケリを付けたいのは鈴さんだ。
彼女は目の前でのセシリアさんを守れなかった。
その悔しさは私は誰よりもわかってしまう。
だからこそ、私は彼女に篠ノ之さんを任せることが憚られる。
しかし、目の前の二人はかなり感情的だ。
確実に敵意の向かう先にいる私にかかって来るだろう。
そうなるとかなり厳しい状況になるだろう。
「なんか、あいつらあたしを眼中に入れてないわね?」
「そうですね……」
鈴さんは今の状況をそう断じた。
実際、目の前の両者は私を敵視するあまり鈴さんがいることを意識していない。
これは彼女も心外だろう。
相手は私だけではないと言うのに。
「ふ~ん……
ねえ?雪風、ちょっといいかしら?」
「……?なんですか?」
私は今の鈴さんの、ギンバイをする前の陽炎姉さんや黒潮お姉ちゃんみたいな何か悪だくみをしてそうな声音と表情から「プライベート・チャネル」に会話方法を切り替えた。
鈴さんは自分ではあまり頭がよくないと言っているが、それでも要領はいい。
彼女の提案は聞く価値があると思っているので耳を傾けようとした。
「篠ノ之の方はあたしに任せてもらえないかしら?」
「え!?」
彼女は意外な提案をして来た。
「……いいんですか?」
私は彼女に念のために訊ねた。
それは私も彼女と同じ「守れなかった」ことへの後悔を感じている身だからだ。
そして、何よりもそれを「抑える」ことの難しさを私は何度も味わっているのも大きな理由だ。
「まあ、あたしも本当はボーデヴィッヒに対して、今にでも殴りかかりたい気分よ。
でも、あたしとアイツじゃ相性最悪じゃない」
「……それは……」
彼女の判断は正しい。
鈴さんの「甲龍」はボーデヴィッヒさんと「一対一」と戦うには「初霜」よりも厳しい。
「AIC」は空間そのものに作用することから「衝撃砲」相手には天敵に等しい上に連射が効かない「衝撃砲」では数でそれを補うことも出来ない。
相性は最悪なのは事実だ。
「それにさ……
あたし、あっちの方にも用があんのよ」
「……え?」
鈴さんは篠ノ之さんの方を見ながらそう言った。
彼女のその決意は固そうに思えた。
これはどうやら素直にその好意を受け取っておくべきだろう。
「……わかりました。
では、篠ノ之さんの方は鈴さんにお任せします。
頼みますよ」
「ええ、任せといて。
あんたの方も負けないでよね?」
鈴さんは笑顔で明らかにこんな約束に意味がないと理解しながらも私にそう言って来た。
「それに関しては絶対に大丈夫です」
だから、私は何時ものようにそう言った。
「……OK。
じゃあ、初っ端からやるわよ?」
「……はい」
鈴さんは表情を繕わないで私に悪だくみを今にもしそうないたずらっ子のような笑みを深めた。
それを理解して、私は彼女の考えを察した。
私と鈴さんが目配せをし終えてから三十秒ぐらいが経った後の事だった。
―試合開始―
その合図とともに私は鈴さんがいる方向とは真逆の方向へと斜め前に向かった。
そして、当然のことながら目の前の二人は私に一斉に襲い掛かって来た。
「フン……!」
「ぐっ……!」
私はそれを見て両者の間に単装砲で砲撃をした。
ただ当然ながら外れたが。
ボーデヴィッヒさんはそんな私の牽制を物ともせずに私を追いかけ続けようとし、篠ノ之さんは進路上に着弾したことで一瞬だけだが、脚が止まった。
たった一瞬だけだったが。
「ナイス!」
しかし、
「なっ―――!?がっ!!?」
鈴さんはそれを待ってたと言わんばかりに「衝撃砲」を篠ノ之さんへ発射し、それを篠ノ之さんはもろに受けた。
どうやら、鈴さんの狙い通りだったらしい。
「箒……!」
箒に鈴の「衝撃砲」が直撃したことに雪風と鈴を応援しているにも拘わらず俺は声を出してしまった。
「一夏。気持ちは分かるけど、落ち着いて」
「あ、ああ……すまん……」
同じ更衣室で出番が来るまで一緒に待機しているシャルロットに窘められて俺は落ち着くことが出来た。
「打倒ラウラ」で一致団結した俺達だったが、まさかそのラウラのペアが箒だとは思いもせず俺は動揺している。
あの時、俺が断ったからか……?
あのシャルロットとペアを組むことになった日、箒は俺にペアを組むことを提案して来たが、俺はシャルロットとの先約があるので断らざるをえなかった。
もしかすると、それが原因なのかもしれない。
あいつ……ちゃんと、友達はいるのか?
俺はその瞬間、とあることが頭に過ぎった。
確か、このトーナメントのペアは自主的にペアを組まなければ抽選になるはずだ。
となると、箒はペアを組む相手がいなかったのではないだろうか。
少なくとも、あいつがラウラと自ら進んで組むような人間じゃないのは確かだ。
俺が箒を心配している時だった。
「でも、雪風と凰さんはすごいよ。
今ので、完全に「一対一」に持って行ったんだから」
シャルロットの言う通り、この試合は雪風がラウラを、鈴が箒を相手にするようになった。
先ず、雪風は斜め上に移動することで両者との間の距離に
そして、その僅かな隙を鈴は見逃さずに砲撃で立ち止まった箒に背後から「衝撃砲」を浴びせて、それぞれの「一対一」の状況を作り出したのだ。
「問題はこれからだね……」
「ああ……」
シャルロットの言う通り、勝負はこれからだ。
雪風はきっとラウラ相手に上手く立ち回るだろう。
しかし、それでも一回でも躓くと危険なのは変わらない。
となると、この勝負の行く末を決めるのは鈴だ。
セイラムが……予想よりもクトゥルフだとぉ……!!?
うわ、恥ずかしい……!あんな考察しまくったのに……(笑)