奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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磯風の発見に驚きました。
え?マジで?またポール・アレン氏?と思ったら、違いました。
既に日米艦発見は完全にポール・アレン氏と言うイメージが定着して困ります。


第44話「平穏の余韻」

「ゆっき~、大丈夫……?」

 

「本音さん……」

 

 私は今、医務室のベッドでいつもは大人しく動揺することのない本音さんに本気で心配されている。

 別に大したけがはなく、多少は髪の毛が乱れていたり頭に小さなたん瘤が出来ている程度だ。

 あの後、私の接射射撃が功を制し「VTシステム」は完全に沈黙し、再び意識を失ったボーデヴィッヒさんを教師陣へと預けた後、私も目立った外傷はないとは言え、念のために医務室に運ばれることになった。

 しかし、「初霜」が今まで経験したこともない損傷を受け、私自身もあれだけの攻撃を喰らったことでそれを見ていた本音さんや鎮圧に赴いていた山田さんには本気で心配をかけてしまったらしく、強制的に今日一日は安静にしていることになってしまった。

 

「全く……アンタも無茶するわね……」

 

 私の隣のベッドで私よりも先に運ばれようやく意識を回復した鈴さんは私のことをからかってきた。

 どうやら、憎まれ口を叩ける分、彼女も大事はないらしい。

 ちなみにこの場にいない篠ノ之さんはと言えば、私がこの場に来るなりに顔を合わせているのが嫌なのか去ってしまった。

 ただあの突入の際にあれだけの元気があったのだから、ある意味では多分大丈夫だろう。

 

 これじゃあ、「IS」の絶対神話に説得力が増してしまいますね……

 

 私は自分を含めた三人が無事であることで「絶対防御」の有効性を証明してしまったと少し複雑な気分だった。

 

「………………」

 

 しかし、そんなことを気にするよりも私は一つ気になってしまっていることがあった。

 それは

 

 ボーデヴィッヒさんは……

 

 私が救出をしていた彼女の安否だった。

 私たちと彼女は別々の部屋で治療を受けることになっていた。

 その為、私は彼女の容態がわからないのだ。

 確かに私は彼女の意識が一度戻る所までは確認が出来た。

 けれども、彼女は再び意識を失ってしまい、本当に無事なのかが確認が取れない。

 ただそれだけが不安だった。

 確かに私は彼女に好意的ではないが今は彼女が心配だ。

 何よりも彼女の本心を知ってから、彼女を死なせたくなかったのだ。

 

「ゆっき~、また思い詰めてるでしょ?」

 

「うっ……」

 

 そんな私の考えを察したのか本音さんは少し、頬を膨らめてきた。

 どうやら、彼女には隠し事は出来ないらしい。

 そして、

 

「……これはお嬢様からの情報だけど……

 あの発動時間だけなら、「VTシステム」の被験者にはそこまで影響がないって」

 

「……!本当ですか……!」

 

 今最も私が知りたかった情報を彼女は教えてくれた。

 更識さんは暗部だ。

 恐らく、彼女は今回の「VTシステム」のような非道な出来事をその仕事上知り得ているのであろう。

 彼女は私が「VTシステム」相手に戦いを挑んだ理由を理解し、直ぐに本音さんにこのことを託したのだろう。

 私は心の底から喜びを感じた。

 

「良かった……」

 

 この喜びは何よりも勝ることだった。

 鈴さんも篠ノ之さんも、そして、ボーデヴィッヒさんも無事だったのだ。

 どんな過程があろうともそれでも誰も死なずに済んだならば、それ以上に喜ぶべきことは無いはずだ。

 

「ちょっと、何よ。

 そんな辛気臭い顔しちゃって」

 

 私がしんみりとしていると鈴さんは少し文句を言いたげになった。

 ただ

 

「いいじゃないですか……

 こういう時位は……」

 

「はあ……?」

 

 今は感傷に浸ること位は許して欲しかった。

 今はそうしていたかったのだ。

 

 安全が保障されている世界でも……

 こう思えるんですね……

 

 きっと、この世界では「死」と言うものは遠い存在なのだろう。

 少なくとも私の周囲のこの世界の人間でそれを知っているのはセシリアさんかシャルロットさん、立場上経験しているであろう更識さん位だろう。

 そんな世界でありながら、生命の価値が変わらないでいてくれたのは嬉しく感じるのだ。

 

『生命に価値も無価値もあるか!!』

 

 と言ったけれども、私はそれでも生命はただそこにあるだけで大切なものだと感じている。

 いや、そもそも価値の有無や軽重を考えること自体が浅はかなことなのかもしれない。

 私は改めてその尊さを知ることが出来た。

 

「それと……

 初霜のことなんだけど……」

 

「あ……」

 

 私がようやく安堵の中に浸れたと思っている時であった。

 本音さんはもう一つ私が気にしていることを持ち出した。

 私はボーデヴィッヒさんを救うために「初霜」に無茶をさせてしまった。

 初霜ちゃんの名前を持つ機体を破損させた。

 それは仕方がなかったこととは言え、私にとっては心苦しいことであった。

 きっと、立場が逆ならば初霜ちゃんも同じことをしたと思う。

 けれど、それでも私は罪悪感を抱いてしまう。

 私はせめて「初霜」が復旧可能かどうかは知っておきたかった。

 

「お嬢様の話だと武装の方は改修が必要だけど、他は大丈夫だって」

 

「……本当ですか!」

 

 それを聞いて私は喜んだ。

 私は「初霜」に無茶をさせた張本人だ。

 その私がそのことで喜ぶのはお門違いかもしれない。

 だけど、今は喜びたかった。

 

「ちょっと~。

 何、二人で話を進ませてんのよ?

 と言うか、あんたよく来れたわね?」

 

 先程から私たちが構わないことに腹を立てたのか鈴さんは腹を立て始めると共に私のベッドの近くで先ほどから座りながら私の膝に顔を乗せている本音さんがこの場にいることを指摘しだした。

 彼女の言っていることは確かに理がある。

 今、ほとんどの生徒は恐らく教室などで待機を指示されているだろう。

 そんな中で代表候補生でもない本音さんがこの場にいて見舞いに来ているのは驚くことだろう。

 

「リンリン、細かいことを気にしてたら若いうちからしわが出来ちゃうよ~」

 

「大きなお世話よ!

 と言うか、そのニックネームはやめなさいって言ってるでしょうが!?」

 

「わ~、リンリンが怒った~

 ゆっきー、ヘルプ~」

 

「ほ、本音さん……」

 

 しかし、そんな鈴さんの疑問を本音さんは何時もの態度をすることで乗り切った。

 とても微笑ましいのだけれども、たまに本音さんはこれを計算ずくでやっているのではないかと思えてしまう。

 彼女のこの態度は周囲に敵意や疑念を抱かせないためのものとすら思えてしまうのだ。

 もしかすると、楯無さんが一見、抜けているように思える本音さんをどうして一組に配置したのは彼女の気質を理解してのことなのかもしれない。

 彼女の気質もそうだけど、彼女は普段の態度から考えられない程に聡い時がある。

 加えて、彼女のゆるふわな雰囲気の影響で素性がばれる心配もない。

 これ程、連絡員として向いている人間はいない気がする。

 ただ、書類仕事は絶対に向いていないと思うけど。

 と鈴さんが興奮して本音さんがからかっていて医務室が騒がしくなっている時だった。

 

「なんですの……?

 この騒ぎは?」

 

「あ、セシリアさん」

 

「セシリア?」

 

 見舞いに来たのか、セシリアさんが医務室に顔を出してきた。

 

「あら?

 布仏さんが先にいるとは……出遅れてしまったでしょうか?」

 

 セシリアさんは本音さんが自分より早くいたことを不思議がった。

 やはり、先程まで一般生徒はしばらくは教室にいることを指示されていたらしい。

 

「この様子ですと、どうやら心配する必要はありませんわね」

 

 今、本音さんにからかわれてムキになっている鈴さんを目にしてセシリアさんも私と同じ様な感想を抱いたらしい。

 

「……雪風さん、鈴さん……

 お二人とも、お礼を述べさせていただきます。

 ありがとうございます」

 

「セシリアさん……」

 

「……やめてよね……

 雪風ならともかく、あたしはお礼を言われるほど、頑張っていないんだから……」

 

「……鈴さん……」

 

 私はセシリアさんと鈴さんのやり取りを目にして今回の一連の騒動がどれだけの爪痕を残したのかを改めて痛感させられた。

 私自身は既にこれ以上、ボーデヴィッヒさんを責めるつもりもないし、彼女には更生して欲しいとすら感じている。

 けれど、それは私の心の中で感じたことや彼女の抱えていた苦しみの一端を知ることが出来たからこそ思えたことだ。

 鈴さんやセシリアさん、篠ノ之さん、そして、一夏さんと言った直接的な被害者は当然ながら、他の生徒たちが彼女を許し受け容れるとは考えられない。

 セシリアさんの時とは別の問題なのだ。

 

 でも……私は……

 

 私は彼女を助けてしまった。

 だったら、その拾った生命には生きていて欲しいのだ。

 それがどれだけ彼女にとって茨の路なのかは理解している。

 それでも、独善であろうが私は彼女には出来る限り生きて欲しい。

 と私が暗く沈みこもうとした時だった。

 

「そうですか……でも、鈴さん?

 もう少し、淑女らしい振る舞いされたらいかかですか?

 ここは医務室なのですから?」

 

「あんたも余計なお世話よ……

 と言うか、アンタもそう言っているけど、大体三週間前にアンタだって医務室なのに騒いでいたじゃない?

 自称レディは言うことは違うわね」

 

「何ですって~!」

 

「何?やる気?」

 

 セシリアさんなりに鈴さんへの気遣いを見せた結果、売り言葉に買い言葉で再び激突が始まろうとしていた。

 それを見て私は

 

「フフフ……」

 

 色々と抱えていることがありながらつい笑ってしまった。

 

「ちょっと!雪風!?アンタ、何笑ってんのよ!?」

 

「雪風さん、何がおかしいのですか?」

 

 私が笑ったことに腹を立てたのか、二人が文句を言ってきた。

 ただそれを見て私はさらに喜びが増しただけだった。

 

「いえ……少し、この平和な空気がいいだけですよ……」

 

「はあ?」

 

「雪風さん……?」

 

「ゆっきー……」

 

 馬鹿をやれることが私にとっては嬉しいことなのだ。

 何度も何度も感じるが私は嬉しいのだ。

 人生は出会いと別れの繰り返しだ。

 当然、何人にも別れは来る。

 それを知り何度も別れの苦しみを経験しながらも私は出会いを尊び、友人を得られることは幸せなのだ。

 私はこれをささやかだけど、とても大切な幸運だと考えている。

 きっと何時か再び別れが来るのかもしれないのに。

 だから、出会いを求めることや喜ぶことは愚かなのかもしれない。

 それでも私は今、幸運だと感じている。

 幸福の中にいる時だった。

 

「雪風」

 

「あ……」

 

 私はここで一つ付けなくてはいけないケジメがあった。

 それは私にとっては気にしていないことではあるが、話し合わなくてはならないことだから。




遂に冬イベ……
今度はちゃんとした大規模であることを希望します。
秋イベは完全に中規模の皮被った大規模でしたし。
絶対に冬イベは大規模を超えたなんかですよ。

後……録画したラスアン見たら……
誰だこのハクノ!?と正直感じましたが、どうなっていくかが楽しみです。
少し、ハクノが人類悪化しないか不安ですが(笑)

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