奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第6話「恥辱」

 なんで雪風とシャルは水着のことでこんなに悩んでいるんだ……?

 

 朝のSHR前。

 今日は何事もなく、時間に余裕がありゆっくりとしていたが朝から浮かない顔をしている雪風とシャルを見かけて俺は二人に声をかけた。

 すると、シャルは水着のことで雪風に相談していたことを打ち明けるが、何故か『緊張しちゃって』と語り雪風はシャルの行動に慌て始めた。

 

 水着……水着……

 そう言えば、臨海学校が近かったよな?

 

 恐らく、二人は臨海学校に持って行く水着のことで何かしらの相談をし合っていたのだろう。

 俺も水着を買うのが面倒臭くて学校の競泳水着で行こうとしたら、鈴とセシリアに猛抗議を受けて今度の日曜日に買いに行くことになった。

 やはり、女子にとってはファッションは大事なものらしい。

 

 でも……それだと『緊張しちゃって』の意味が通らないよな?

 

 女子がファッションに気を遣うのも共感はできないが理解はできる。

 要するに女子からすると服を買うだけではなく、友達とわいわいできる楽しみの機会なのだろう。

 しかし、そうなるとどうして二人は緊張するのだろうか。

 特に雪風にとってはシャルロット以上に致命的らしい。

 

 ……あ。

 女子(・・)って……そう言うことか

 

 ふと俺は女子(・・)ということを意識して閃いた。

 よく考えてみれば、今度の臨海学校で当然ながら男子(・・)は俺だけだ。

 つまりは二人は男の俺がいることで水着姿を見られるのが恥ずかしいのだろう。

 成程、年頃の女の子らしい悩みだ。

 

 よ~し……!

 だったら……!!

 

 俺は二人の悩みを一気に無意味なものにしようと決意した。

 

「大丈夫だ、二人とも。

 俺は別に気にしない」

 

「「はい?」」

 

 二人は俺という同年代の男に見られることを想像して嫌だと感じているのだ。

 だったら、俺がすべきなのは

 

「二人の水着を見ても俺は何も感じないぜ!!」

 

「「……は?」」

 

 そもそも二人が俺に対して見られても何も感じられないと感じればいいのだ。

 

 そうだ。今まで俺は相手に女子としての意識を持たせていたから酷い目に遭っていたんだから、最初からこうするべきだったんだ……!!

 なんでこんな簡単なことに早く気付かなかったんだろうか……!!

 

 今まで俺は相手に恥ずかしさを感じさせていたから酷い目に遭ってきたのだ。

 要するに

 

「二人の事を俺は女として見ていないから、大丈夫だ!」

 

 この女子99.999%の「IS学園」では他の生徒を女子として見なければいいんだ。

 変に意識するから相手も怒るのだろう。

 少なくとも、今回の件では二人の悩みは解決したはずだ。

 俺はその成果を確認しようと二人の顔色を窺おうとした。

 

「「………………」」

 

 ……あれ?

 

 二人の間にあった何かを恥ずかしがる雰囲気はなくなった。

 しかし、二人の顔は無表情になり、今まで在った緊張感に近かった恥ずかしさではなく緊迫感の威圧へとグレードアップしていた。

 

「ふ、フフフ……」

 

「あ、アハハ……」

 

「……!?」

 

 先ほどまで水着関連の恥ずかしさの影響で苦悩していた二人は打って変わって乾いた笑い声をし出した、

 しかし、二人の目は笑ってはいなかった。

 

「ねえ、雪風……

 一応、僕たちって()だよね?」

 

 シャルは横目で雪風に同意を求めるかのようにちらりと見ながらそう言った。

 まるで、俺への非難の様に。

 

「……そうですね。

 私たちは()ですよね?」

 

 すると、いつもはこういう時は事態の収拾を率先して行ってくれる我がクラス一の多少は天然ではあるが、極めて常識人である雪風も同調するかのようにニッコリとした。

 しかし、そのニッコリとした笑顔が妙に恐かった。

 

 あ、あれ……?

 これって那々姉さんと同じ怒り方じゃないのか……?

 

 俺の知る限り、恐い女の怒り方は三つ。

 一つ目は千冬姉の如く、有無を言わさない鋭利な刃物のようなまさに怒っていると言える怒り方。

 二つ目はあれは世間一般で言う怒っている部類に入るのか不明だけれども、束さんの如く飄々としているけれど狡猾な狂気。

 そして、最後はニッコリとしていながら妙な迫力を込めている那々姉さんの怒り方。

 ぶっちゃけると、感情を爆発させる箒、鈴、セシリアのような怒り方はある程度の身の危険は感じるけれどもそこまでは怖くない。

 けれど、前者三つは恐ろしい。

 何よりも恐怖の深度が違う。

 そして、今、俺の目の前で二人が見せている表情は那々姉さんの怒り方を彷彿とさせる。

 

「雪風、ちょっとさあ……もう恥ずかしいとかどうとか言っている場合じゃないと思うんだけど……」

 

「そうですね……

 これは女の沽券に関わってくることです」

 

「な、なあ……?

 二人とも、どうしたんだよ?」

 

 先程から笑顔であるが、それが逆に恐くなってくる。

 

 俺……

 選択を誤ったか……!?

 

 二人の様子を見て俺は自らの判断が誤りであったことに気付いた。

 

「それじゃあ、シャルロットさん……

 私は放課後に行きます」

 

「うん。わかった。

 僕は日曜日に行くよ、頑張ってね?」

 

「いえいえ、そちらこそ……」

 

「「アハハ……」」

 

 二人はそう言って自分の席へと戻って行った。

 最後まで妙な緊張感が漂っていた。

 俺は呆然としているしかなかった。

 

 

 

「お姉様、どうしたんですか?その顔は……」

 

 席に戻るとラウラさんが出迎えてくれた。

 どうやら、今の私は酷い顔をしているらしい。

 けれども、それは仕方がないことだろう。

 何故ならば

 

 ……いくら何でも、『女として見ていない』は女性に対して失礼でしょうが……!!

 

 一夏さんのあの失言で流石の私も怒っているのだ。

 確かに私は異性である一夏さんに水着姿を見せるのは恥ずかしかった。

 だが、いくら何でも『女として見ていない』というのは酷過ぎるだろう。

 これでも私は女だ。

 任務や軍務に明け暮れて多少女を捨てて来たが、一応は女だ。

 あの一言には正直言って傷つく。

 

 そりゃあ、私も一夏さんの事を年の離れた弟位にしか見ていませんが……

 

 実年齢的に彼は私にとっては年の離れた弟弟子だ。

 こっちが異性として見ていないのだからこういった扱いをされるのは自業自得かもしれない。

 けれども

 

 こっちが恥ずかしがっているのになんか不公平です……!!

 

 こっちが色々と悩んでいたのにああいった言い方をされると悔しくて仕方がない。

 

「ラウラさん。

 今日の放課後、水着を買いに行きますよ」

 

「え!?本当ですか!!」

 

 私がそう言うとラウラさんは目をキラキラと輝かせた。

 

「はい。本当です。

 異論はありますか?」

 

 私は意味のない問いを投げかけると

 

「いえ!!ありません!!

 ぜひ、行きましょう!!はい!!」

 

 ラウラさんは嬉々として肯いた。

 

「そうですか……では、行きますよ」

 

「はい……!!」

 

 これは女の意地をかけた戦いだ。

 それに私は基本的に売られたケンカは買う人間だ。

 

「ゆっきーて、冷静に見えて乗せられやすいよね……」

 

「うん……」

 

「子供なのか、お姉さんなのか……」

 

 本音さんたちが何か言った気がしたが、気にしているつもりはなかった。

 なめられたままでは終われない。




ようやく、自分のトラブルの根底的な過ちに気付いた一夏。
しかし、彼はその過程を間違えたのだ……!!

要するに雪風のはあれです。
お姉さんだから、多少は優位性を持ちたかったて感じです。

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