奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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艦これ5周年……
そうか……ああ、よかった……
ノベライズ化またしないかな?


第7話「平和な街並み」

「いや~、ゆっきーとここに来るのは入学前以来だね」

 

「そうですね」

 

 何の問題もなく無事放課後を迎え本音さんとラウラさんと共に私たちはこの辺りで最も栄えている商業地に水着を求めて訪れた。

 生憎、相川さんと夜竹さんは部活動が忙しいので来れなかった。

 一般にこういった街並みを「ショッピングモール」と呼ぶらしいけれど、成程確かに百貨店などで買い物をする帝国時代の在り方とは異なり米国式に思える。

 

 こうしてみると、私のいた世界よりもいい所は在りますね……

 

 この平和と繁栄ぶりには私は少々複雑な気持ちになるけれども、「深海棲艦」の影響で給与が上がらないのに物価だけが上がるインフレが悪化したスタグフレーションが何時何処で起きるか分からない私の世界よりも一般の人々が豊かに見える。

 少なくとも、「深海棲艦」による物流の遮断や空襲、上陸の恐怖に怯えないで済むのはいいことだ。

 

 きっとこの世界の私も(・・)……

 そう思ってあの国で戦い続けたんでしょうね……

 

 この世界の私も(・・)恐らく、風の噂で聞こえて来る祖国の復興を耳にしてそう思っていたはずだ。

 物言わぬ鉄の身体でも。

 ただ「女尊男卑」に関しては共に戦っていた人々を知る身としては悔しい思いをしていると思うけれど。

 

「え!?

 布仏はお姉様と二人っきりで買い物に来たことがあるのか!?」

 

 本音さんと私の会話にラウラさんは衝撃を受けたらしい。

 

「フッフ~ン♪

 そうだよ?ゆっきーと私は受験日に知り合ってその日のうちにメアドを交換した仲なんだよ?」

 

「ぬおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉおおおぉおおお!!?

 なんて、羨ましいんだ!!」

 

「ちょっと、本音さん……」

 

「フフフ♪

 いや~、ラウラっちもからかうと楽しいだもん♪」

 

 本音さんが得意げに出会いをでっち上げて自慢した結果、ラウラさんは血の涙を流しそうな勢いで悔しがった。

 その様子を見て私は本音さんを嗜めようとするが、全く本音さんは反省する様子もなかった。

 更識さんと言い、本音さんと言いこの手の仕事の人間はこういった趣味でも持っているのだろうか。

 

 ……今度、布仏さんと愚痴り合いをしましょうか?

 

 恐らく、布仏さんも主人と妹に挟まれて頭を抱えたくなっているだろう。

 

「まあ、ラウラっち。

 よく考えてみなよ?」

 

「なんだ……?」

 

 本音さんは何か思いついたのか、ラウラさんに何か提案しようとしていた。

 私はそれを見て嫌な予感しかしなかった。

 

「その悔しさを今から埋め合わせればいいんだよ?」

 

「……!?」

 

「……はっ!?そうか!!」

 

 案の定、その予想は当たったらしく本音さんはラウラさんを焚き付けて来た。

 それを受けてラウラさんは何か意気込み出した。

 

「何せ今日は……水着を買いに来たんだよ?」

 

「水着……!!」

 

「……!?」

 

 さらに本音さんは全く耳打ちになっていない耳打ちをラウラさんにし出した。

 それを受けてラウラさんにさらに気を増し、私は何よりも「水着」という言葉に悪寒を感じた。

 

「もっと、親睦を深めるいい機会だと思うんだけどな~♪」

 

「……!!」

 

「本音さん……!?

 何を―――!?」

 

 さらに煽る本音さんによりラウラさんの目にぎらついた怪しい光が宿り、これ以上は危険だと私は彼女を止めようとするが

 

「行きましょう!!お姉様!?」

 

「―――えっ!?

 ちょっと、ラウラさん!?何で右腕を掴むんですか!?」

 

 もう冷静さを金繰り捨てているラウラさんに右腕を拘束されてしまった。

 

 マズい……!?

 このままでは身の危険が……!!

 より正確には貞操の危機(・・・・・)が……!!

 

 今のラウラさんの精神状態は危険だ。

 加えて、今回の目的は水着を買うという為、肌の露出がかなり高いという大義名分まである。

 

「うん、いこいこ♪」

 

「て、左腕も!?

 本音さん!?あなたも何を焚き付けているんですか!?」

 

 ラウラさんを煽りながらも自らも便乗して楽しもうと本音さんは私の左腕を拘束した。

 私はそれに抗議しようとしたが

 

「ゆっきー。

 こんなことで恥ずかしがる様じゃおりむーの前でどうするの?」

 

「ぐっ……!?」

 

「それにさっきまでの威勢はどうしたの?

 あんなにやる気だったのに?」

 

「そ、それは……!」

 

 一夏さんのことを見返そうと躍起になっていたことを持ち出されて私は二の句が継げなかった。

 私はこの場に来るまで「水着」とはどういったものなのかということをすっかり忘れていた。

 

「安心してください……!!

 お姉様……!!」

 

「ラウラさん……?」

 

 本音さんの天使のような悪魔の指摘の後に全く安心が出来そうにないラウラさんが何かを言おうとしてきた。

 

「お姉様ならば、たとえどの様なものを着ても、天使、いいえ、女神のような美しさを放つはずです!!」

 

「あなたは盲目過ぎませんか!!?」

 

 彼女の私への崇拝ぶりに頭が痛くなりつつあった。

 よく考えてみなくても、織斑さんだけの時もこの片鱗はあった。

 織斑さんの時は教官という立場もあったが、私と彼女の間にはそういった関係がないこともあって歯止めをかけるものが存在しない。

 しかも、彼女の場合は本音さんの様な確信犯ではないことが厄介だ。

 

「フッフフフフ……

 ゆっきー、覚悟~♪」

 

「さあ、行きましょうお姉様!!」

 

「い、いやあああああああああああああああぁぁあああ!!?」

 

 二人の何処にそんな力があるのか、いや、気迫に呑まれ私は成すべくもなく連行された。

 

 こんなの絶対におかしいです……!!?

 

 

 

「一夏!?

 なんでシャルロットと買い物をすることになったのよ!?」

 

「そうですわ!?」

 

「い、いや……

 そ、それは……」

 

 朝の雪風とシャルの件を除いて平穏無事に終わった今日の授業であったが、今こうして俺は二人に捕まっている。

 俺が二人に捕まっているのはシャルにさっき『一夏、今度の日曜日に付き合ってね』と言われたのを二人に見られたのが理由だ。

 

 箒とも最近、ギクシャクしているし……

 はあ~……

 

 箒に至っては最近ギクシャクして話しかけようと逃げられるがこのことで睨まれた。

 箒も恐らく、一か月前に自分が雪風に言った言葉の意味を理解して自己嫌悪に駆られているのだろう。

 

「い、いや、だって……」

 

 俺は二人の勢いに圧されるが

 

 あのままだとシャルに殺されそうだったし……

 

 シャルの迫力に圧されたのが事実だ。

 あの時のシャルは断ったら何をされるか分からない程に恐かった。

 と言うよりも、最初、大人しいシャルが那々姉さんの訓練に付いて行けるか不安だったけれど、たった三日で慣れた挙句本人は

 

『久しぶりだよ。あんなに真摯に向き合ってくれる大人の人は』

 

 と慕いだしている。

 余程、父親に引き取られてから愛情に飢えていたのか、あのしごきを受けることが嬉しそうになっている。

 そして、何よりもさっき、気付いた。

 シャルは雪風とは別ベクトルで那々姉さんと似ている。

 怒り方が静かで怒らせると生命の危機を感じさせる。

 恐らく、雪風と並んで同学年では怒らせてはならない生徒だと思う。

 

「何よ?」

 

「弁解は一応、訊いてあげますわ」

 

「べ、弁解って……

 俺、そんな悪いことしたか!?」

 

 二人は俺を責める。

 おかしい。

 そもそも朝から俺は雪風とシャルに下心を感じさせないように注意していた。

 しかし、その結果二人を怒らせてしまった。

 何故だ。何処で選択肢を間違えた。

 少なくとも、入学初日に箒の着替え姿を見てしまったり、山田先生の胸に触ったり、雪風をお姫様抱っこをするようなことは今回はしていない。

 今まで、こういった行動の結果、痛い目に遭ってきたのだから今回は最善であったはずだ。

 

 

 

「少しは気が晴れたかな?」

 

 鈴とセシリアに絡まれている一夏を見て僕は胸がスカッとした気分だった。

 僕は二人と篠ノ之さんが近くにいることに気付きながら、一夏に日曜日の約束を取り付けた。

 その理由は二つある。

 一つ目は単純に今朝の事で女としての沽券を傷付けられたことへの意趣返しだ。

 『女として見ていない』と言われたのは裏を変えせば、『女としての魅力が皆無』と言われたも同然だ。

 これで怒らない方が無理だ。

 

 でも、「女尊男卑」の社会でこう言える一夏もすごいよね……

 

 今の時流でそんなことを言ったら、即座に言いがかりをつけられて社会的に消される。

 そう考えると一夏はすごいのかもしれない。

 

 それに少しは馴れておかないとね……

 

 もう一つの理由は一夏と水着を買いに行くことで少しは本番に備えておきたいからだ。

 雪風には悪いけど、これは抜け駆けだ。

 

 あと少しは一夏に恥ずかしさを感じてもらわないとなんか不公平だし……

 

 それと悔しかったのも大きい。

 

 あ、そうだ……いいこと考えた……!




何か、ラウラさんが変態淑女化しているのは気のせいでしょうか?

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