奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
楽しいぜ!ヒャッハあああああああああああああああああ!!
と言いたい所ですが……やはり、ボス戦のときの相手の声を聞くたびに心が痛い……
あの声はマジでやめて……
「女性しか……使えない……?」
私の明かしたこの世界にとっては当たり前となってしまった彼女にとっての非常識に彼女は信じられないと言う顔をした。
はあ~……まったく、織斑先生も普段はキツイ狼みたいな割には甘いわね~……
「更識」は私で十七代目と言うこともあって、この国の裏の事情や歴史、さらには世間ではあまり出回らない知識を保有している。
私は幼少時から当主として、知識に触れることであらゆる事態に対応できるようにとそう言ったことに触れていたのでそこまで戦前の日本に対して嫌悪感を周囲よりは感じなかったことで雪風ちゃんが「大日本帝国」の人間だと名乗っても驚きはすれど蔑みは感じなかった。
まあ……だからこそ、この世界は雪風ちゃんにとっては辛いことこの上ないと思うのだけどね……
更識の仕事柄とロシアの代表、「IS学園」の生徒会長と言った多くの肩書きを持っていたこともあって、私は幸いにも世間が言う「IS神話」に毒されることなく、冷静に現実を見ることができる。
「IS」の欠点やそこからなぜか生まれた「女尊男卑」については私は鼻で笑ってしまう自信がある。
まったく、難儀なものよね……
「軍人」にしても「暗部」にしても……
「IS」による「女尊男卑」を口にする人間の多くなんてのは実際に「IS」を使用しない人間の方に多い。
仮に操縦者にいたとしても、それは既に染まっていた人間か、スポンサーやバックの団体に女性権利団体がいるような人間だ。
はっきり言えば、実際に「IS」を使う人間、それも「軍」の中にはそう言った考えに染まった人間は少ない。
実際に武器を使う人間じゃないとそれを使うことへの恐ろしさを理解できないのは空しいことだ。
少なくとも、そう言った面においては私は彼女の心中に悲しみを感じている。
実際、自衛隊に所属していた「先輩」も……その考えを嫌っていたしね……
私がまだ一年生の頃に「天才」と呼ばれていて、多少舞い上がっていた頃にそれを憂いた父が知り合いである防衛省の高官の一人に頼み込んで、その人の娘であるこの学園のOBの先輩に私に稽古をつけてもらったことがある。
結果は惨敗だった。
しかも、私はその後に彼女の稽古に一週間、付き合わされて、吐いた。それも何度もだ。
うぅ……思い出しただけで……恐い……
彼女の戦いは恐ろしいなんてレベルじゃない。
いきなり、レーザーで目潰しを仕掛けてくるは、一度最接近して斬り付けた後に再び旋回してきて今度は腕部の大量の砲門による砲撃を休むことなく浴びせてくるわ、今度は再びそれらの攻撃をしてくると思ったら今度は至近距離で慣性の法則でスピードが上昇したと思えるロケット弾をお見舞いしてくるわ。
しかも、それが何度も何度も襲ってくるのだ。
普段の優しそうな性格はどこに行ったと思えるほどの鬼畜だ。
彼女曰く、
『私の訓練を受けた娘たちはこれを一年以上、休みなく立派にやり遂げましたよ?
しかも、あなたより年下なのに』
とのことだが
『そんなことを達成できた人たちがいたら、見てみたいわよ!?』と内心、ツッコんだ。
あの鬼の訓練をやり遂げた人たちがいるのかと私は信じられなかった。
しかも、複数人で。
だけど、私は彼女が苦手であっても彼女のことを尊敬していた。
自衛隊の「IS」部隊に入隊する女性が少しでも「女尊男卑」を口に出したら彼女はすぐに処罰しているらしく、そのため自衛隊における「IS部隊」と他の部署との仲は他の国家よりも致命的に悪くないらしい。
その彼女は現在、中国にいる。
理由としては日本が中国に貸しを作りたいのと、中国の「IS部隊」の面々にあの人の恐ろしさを印象づけておくことが主なことらしく、彼女自身も当初は乗り気ではなかったが『個人的に気にいった娘がいた』とのことで教官を務めてるらしい。
中国の誰か様……ご愁傷様です……
あの鬼の訓練の犠牲者、しかも、マンツーマンに等しいことに私は同情を禁じざるをえなかった。
とりあえずだが、「IS」を使えるから女性は偉いなんて考える人間は頭足らずだ。
しかし、その考えが世界を席巻しているという事実は本当に嘆かわしいことだ。
ま、嫌われ役は慣れてるからいいか……
このことを話すことで私は目の前の彼女に憎まれるだろう。
しかし、私は既に実の妹をただ守りたいがために遠ざけるように邪険に扱っている。
たとえ、憎まれても守りたいものがあるのならば、いくらでも嫌われ役を引き受けるつもりだ。
と言うか、大好きな妹にすら嫌われているのだ。これ以上、誰かに嫌われることなんて恐くない。
「そう、「IS」はね……
なぜか「女性」しか扱えないの」
更識さんの発言に私は多少の混乱をした。
確かに兵器として燃費や製造面以上の致命的な欠点だが、それはこちら側における「艦娘」である私たちの「艤装」にも言えることなので何とか冷静さを失わずにすんだ。
実際、航空機以外での人間が扱える戦力で深海棲艦に打撃を与えるのは難しく、水上戦力も空母の護衛以外では生産を控えるようになった。
艦娘が「人類の希望」足り得るのはそれが大きな理由だ。
「そ、そうですか……
私のいた世界でも「艦娘」じゃないと使えない兵装もありましたし……
そこは仕方ないのでは……?」
となるべく、彼女たちが後ろめたさを感じないようにこちらの「艤装」の欠点を口に出すが
「ふ~ん……
じゃあ、そちらの世界にもそこから生まれる「選民思想」はあったの?」
「……え?」
更識さんはよくわからないことを訊いてきた。
「何ですか?選民思想?」
私はその響きに不穏なものを感じた。
私の世界の「帝国」でも日本人であることに誇りを感じていた人はいたにはいたが、それは当たり前のことのはずだ。
誇りを持たないのならば、そこに自尊心が生まれず礼儀知らずな人間になるはずだ。
それなのに私は彼女の言い方にひどく嫌な予感がした。
そんな中で更識さんは
「この世界じゃね……制度とか法律で女性が何かと優遇されてるのよ。
そして、制度とか法律の外では女性は男性を何かと見下している……
「IS」を使える女性は偉いという考えが蔓延しているの……」
「はい……?」
とうんざりしたような顔で「身内の恥」と書かれた扇子を広げて何だそれはと言いたくなるような荒唐無稽な言葉を言ってきた。
「「IS」を使えるから偉い……?
何を馬鹿な……」
私は更識さんが言ったことが性質の悪い冗談だと考えた。
私は彼女の言葉が馬鹿らしいと考えて周囲を見回すと
「「「………………」」」
なぜか、三人ともそれを否定せず沈黙していた。
あまりにも馬鹿らしくありえなかった。
「み、みなさん……?
どうして黙っているんですか?」
私は縋るように彼らに言った。
「雪風ちゃん、よく聞いて」
私が彼女の語った言葉を受け入れまいと必死になっていると更識さんは
「「IS」が生まれて十年……
日本を始めとした国家の女性の社会的地位は向上したの……
けれど、それは決してお互いの融和とか男性の思いやりからくるものじゃないの」
「……え?」
女性の社会的地位については多くの社会的権利が私のいた世界ではあの大戦が終わるまでは認められなかったと言うのは「あの人」に聞かされた。
彼によると、私たち艦娘たちが女性の姿をしていたことや深海棲艦の被害による労働人口の減少を防ぐためや列強各国の一種の嫌がらせに等しい新しい人権をある程度認める旨が含まれている「感謝条約」を結んだことで「社会権」や「参政権」、「財産権」、「平等権」が認められたらしい。
簡単に言えば、女性に人権を認めない日本は野蛮国だ。と言うレッテルを被せるためらしい。つまりは深海棲艦によって、ズタボロにされた軍事力の低迷から来る自尊心の傷をごまかしたいがために列強が軍事力とは関係ない人権と言う綺麗事を進める自分たちは素晴らしいと言う気休めが欲しく、軍事的には未だに強大国であり最も大戦の中で英雄的な活躍をした国家である日本を少しでも後進国扱いしたいのが目的だったらしい。
もちろん、条約締結の際には帝国内でも多くの非難があがった。
しかし、その多くの非難もまた的外れのものだった。
『女は炊事洗濯をしていればいい!!』
『女を付け上がらせておけば、めんどくさいことになるぞ!!』
『自由恋愛だと?まったく、けしからん!!』
と言った男のくだらない自尊心からくるものが多かった。
政府の高官の多くはそんな国民のことをどうやって納得させるか非常に悩んでいたらしい。
だけど、そんな男性を黙らせたのは「あの御方」の御言葉であった。
それでようやく、なんとか制度や政策、法的には男女平等にはなったが今までの『女は家で家事だけやっていればいい』と言う考えが世の中には染みついており、精神的には進んでいないのが欠点だ。
しかし、そう言った問題もいずれは時が解決していくことだと私は信じている。
「簡単に言葉で表すとこうかしら?」
彼女は私に向けて扇子の表を広げてきた。
そこに書かれていたのは
「『女尊男卑』……?」
あまり耳慣れない言葉だった。
「そ。そう言う考えがこの世界じゃ当たり前になっているのよ」
私は彼女の言ってる意味がわからなかった。
「なんですか……それ……
『男尊女卑』じゃなくて……?」
少なくとも私のいた世界ではありえなさ過ぎることだ。
悲しいことに私のいた世界でも男女差別はあった。
「感謝条約」締結後の精神的な遅れもそうであったが、戦時中にもその風潮はあった。
私たち、艦娘が深海棲艦に対する有効的な戦力であることに歯痒く感じた軍の中央部の人間は多くいた。
そして、そんな本人たちは前線に立ちもしないのに、護衛任務や私たちの護衛なしの出撃を見栄のためだけに行い多くの兵士を犠牲にした。
私はそんな男のくだらない面子が大嫌いだった。
確かに多くの将兵は私たちが女性なのに戦っていることに嫌悪感を抱いていた。
けれども、その多くは自分たちが背負えない戦いの分まで見た目が少女であった私たちに背負わせることへの無力感からくるものだった。
だから、私は彼らの女を見下さない男としての優しさによる矜持が大好きでもあったし逆にそう言った矜持ではない虚栄心を嫌っていた。
しかし、彼女が言ったのは私たちの世界では真逆の男女差別だ。
これは理解に苦しむことだ。
「一番いい例は……轡木さんよ?」
「え……?」
更識さんは轡木さんのことをかなり不躾ながら例え話に使ってきた。
「更識さん!?
ちょっと……それは……」
山田さんはそれを失礼だと止めようとするが
「……いや、山田先生。
これでいい」
と轡木さん本人がそれを止める手振りをしてきた。
「く、轡木さん……」
「……更識君。続けてくれ」
轡木さんは自分にとって、不名誉なことになるであろう会話が始まるのにも関わらず、話を続けるように言った。
「……わかりました。すみません。
雪風ちゃん、この「IS学園」の
轡木さんの意思を汲んだ更識さんは彼の意思を無駄にしまいと説明を続けた。
「……奥さんがですか?」
私はそれについては衝撃を受けたには受けたがそれはある意味、好意的なものからくるものだ。
私の世界でもようやく女性の社会進出が進展し始めており、日本軍の中には女性の軍人も現れており、特に航空機の操縦者も最近になって出てきていたが、やはり、やっかみも強い。
この世界では国際的施設の長が女性と言うのは、男女平等が進んでいる証拠なのではないかと一瞬考えたが
「あら?狼狽しないのね?」
「予想外」と書かれた扇子を広げて更識さんは私の反応に驚いていた。
「ええ……私の世界でも労働力の減少で女性の社会進出がある程度、進んだので……
その……大きな「進展」だとは思いましたが……」
私は素直に轡木さんの奥さんが「IS学園」の表の経営者であることへの感想を述べた。
私の生きた世界にも明治には海外留学をした女性の学者もいたし、婦人学校に入学していた教養人もいた。
しかし、やはり「男尊女卑」や「女はこうあるべし」と言う風潮もあったので、素直に女性がここまでの社会的地位を得られるまでに至ったことについては大きな「進歩」と言いたかったが
「違うんですね?」
更識さんの先程の反応や気になった「女尊男卑」と言う言葉から私は嫌な予感がしたが私は訊ねた。
「雪風さん、一言言っておくが……
私は決して、妻が経営者として学園の長として劣っているとは思っていない」
と私の問いに対して轡木さんは何の恨み言もなく呆気らかんと答えた。
……立派な人ですね。
轡木さんの地位への執着のなさに私はただただ感心した。
これほどの人が表向きの長ではないと言うのならば、一体どのような基準でこの人に不満を抱いたのかが私には理解できない。
「ええ……学園長も実際、教育の場の長としては何の問題もない人よ。
だけど、それを踏まえても轡木さんの方が経営者としては適格なの」
更識さんはまるで遠回しにこの謎の人事に対する答えを告げるかの様にそう言った。
「……もしかすると、くだらない偏見が理由ですか?」
私は腹の底から湧いてくる苛立ちをグッと抑えながらも頭に過ぎった答えが合っているかを訊ねた。
すると、更識さんは呼吸を少し整えてから
「そう……
「IS学園」の学園長は「IS」を操縦することのできる存在である女性が相応しい……
と言うのが、この人事の理由よ。
他にも女性へのご機嫌取りのために女性は社会的に色々と優遇されているわ」
とあまりにもふざけた人事の理由とこの世界のおかしすぎる答えを彼女は口に出した。
「ふっ―――」
今回は雪風の世界における人権についても出しました。
そもそも、人権がどうとかで騒がれ始めたのて本当にこの百年間における出来事なんですよね。