奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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最近、投稿スピードが落ちている理由……
それは……信長の野〇・〇造にハマっているからです……!
いや、本当にすみません……!
どうして、街造りとか政略とか戦略とか考えるの大好きなんですよ……!


第18話「あるもの」

「ち、千冬姉!?」

 

「お、織斑先生!?」

 

 その声の正体を確かめようと一斉に声の方へと振り向くとその場にいたのはなんと織斑さんだった。

 私たちは彼女の登場に戸惑ってしまった。

 特に一夏さんは実姉であることでさらに酷かった。

 いや、これはまだ序の口だった。

 

「え、えっと……千冬姉……これは……」

 

「何をしているんですか?

 三人とも?」

 

「あわわ……」

 

「!?」

 

「……!?

 那々姉さん!?」

 

「川神先生!?それに山田先生!?」

 

 織斑さんだけではなく、なんと神通さんと山田さんまでこの場にいた。

 神通さんは妙に生温かい目をしており、山田さんは赤面していた。

 まさかの担任全員の登場に一夏さんとシャルロットさんは驚愕したうえに身近な人に今の痴態(?)を見られたことに恥ずかしさを募らせてしまった。

 私はと言うと、彼らと同じく動揺しているにはしているが、彼等とは異なり神通さんの登場により恥ずかしさは感じなかった。

 

 どうして、神通さんが……?

 

 いや、正確には神通さんがこの場にいるということに純粋に疑問を感じて逆に冷静になってしまっていた。

 

「どうしたんですか、雪風?

 そんな顔をして?」

 

「……いえ、その……」

 

 ただその疑問を口に出す勇気は私にはなかった。

 恐らく、私のしようとする質問は割と失礼な気がするのだ。

 軽はずみな質問は時として心ならずも相手を不愉快にさせることを十分、味わったことで何も言えなかったのだ。

 神通さんの出す罰は関しては怖くはないが、神通さんを怒らせることが怖いのだ。

 と言っても、神通さんは相手が気に食わないからと言って身分や立場を利用して私的な報復をするような人ではないが。

 それでも怒られるのが怖いのだ。

 

「ところでデュノア。

 貴様はどうして、水着姿を私の弟に見せつけているのだ?」

 

「えっ!?

 い、いえ、それは……」

 

 織斑さんはシャルロットさんが一夏さんに水着姿をさらしていることを訝しんだ。

 どうやら、学園の外と中では教師の仮面を外しているらしく今のは姉としての質問なのだろう。

 恐らく、弟が色香に惑わないようにと心配しているのだろう。

 よく考えてみなくても今の状況は破廉恥極まるもので。

 

 ……姉弟ってこんな感じなんですね

 

 艦娘には姉妹しかいないことからこの光景はとても新鮮だった。

 

「……で、どうしてこうなっているんだ?」

 

「え……!?」

 

「いや、それは……」

 

「えっと……」

 

 織斑さんの弟に対する愛情故の心配に私たちはこうなったことへの経緯を明かすことを躊躇ってしまった。

 そもそもの発端が今、考えるとかなり大人気ないものであったし、今回の買い物の目的も呆れるようなもので、加えて、シャルロットさんが個室から身を乗り出した理由を説明すれば、シャルロットさんと私の心の中は大破確定だ。

 

「……ん?

 珍しいな、陽知?

 お前までもがそんな反応をするとは?」

 

「えっ!?」

 

 私までもが動揺してしまった事に織斑さんは意外に思ってしまったらしい。

 確かに私がこんな反応を見せるのは彼女にとっては初めてだろう。

 いや、よく考えてみると初めてではない。

 あれはあの二組との合同IS模擬戦の時だった。

 私は一夏さんと山田さんとの衝突の際の事故に動揺してしまっていた。

 けれども、たった一瞬の出来事、それも私はただその場で立っていただけなので、織斑さんの印象に残らなかったのだろう。

 その為、私の反応が珍しく感じてしまったのだろう。

 

「あ、あの……織斑先生……

 これは―――」

 

「……シャルロットさん!?」

 

 言い逃れできないと察してか、シャルロットさんは観念して全てを告白しようとしていた。

 恐らく、彼女は今回の状況の責任を全て自分で背負おうとしているのだろう。

 既に水着姿をさらしていることから自分はどうしようもないと思って、私と一夏さんに非が及ばないようにするつもりだろう。

 そんな彼女を止めようとするも、私は羞恥心に負けて行動できずにいた。

 何と情けない。

 勇気を出せずにいる自分が恨めしかった。

 

「い、いや~!

 実は俺がシャルの水着姿を見たいと思って、それをシャルが恥ずかしくなって雪風に付き合ってもらったんだ……!!

 あはははは……!!」

 

「―――え?」

 

「何……?」

 

「い、一夏さん!?」

 

「ふえええええええええ!?」

 

 シャルロットさんが全ての責任を負うとした時だった。

 突然、一夏さんが彼女の声に自分の声を被せて事実ではないことを口に出した。

 その言動に私とシャルロットさんは困惑し、織斑さんは怪訝そうにし、山田さんは混乱しだした。

 どうやら、山田さんだけ真に受けたようだ。

 

「一夏さん……あなた……」

 

 彼はシャルロットさんや私に恥をかかせないために自ら、泥をかぶるために嘘を吐いたのだ。

 

「いいって……

 それによくわからないけど、月曜日の件で二人を傷付けたし……

 これでチャラな……?」

 

「そ、それは……」

 

 どうやら、彼は私たちを庇うためだけではなく、月曜日のあの件を彼なりに気にしての行動だったらしい。

 彼は変な所で律儀だ。

 私としては先程の女性の件で十分、彼には助けられたので既に気にしていないどころか恩しかないのにもかかわらず彼はそれを恩を着せるつもりもなく、躊躇いもなく今の行動に移ったらしい。

 私と一夏さんが織斑さん達に聞こえないように会話していると

 

「はあ~……

 お前は……まあ、いい……

 他人の目があるところではそういったことは大きな声で言うなよ?」

 

 一夏さんの発言を受けて織斑さんは怒ることなくただ呆れるだけだった。

 

 あれ……絶対に嘘だと気付いてますよね……?

 

 その織斑さんの様子を見て私は彼女が弟の真意をわかったうえで呆れているのを感じてしまった。

 呆れの理由も一夏さんのその自己犠牲的な精神を窘めての物なのだろう。

 

「えっと……千冬姉……ごめん」

 

「全くだ、馬鹿者」

 

 ……()()()()()らしいですね

 

 そんなこの二人の姉弟の様子を目にして私は微笑ましく感じると同時に私の「お姉ちゃん」を思い出してしまった。

 「お姉ちゃん」もこんな風に私に対して呆れながら注意することは多くあった。

 やはり、「お姉ちゃん」というのは古今東西共通でこんな風なものなのだろう。

 

 これが本来のこの二人なんですね……

 

 学園で公私混同を避けるためか、織斑さんは一夏さんに対して必要以上に厳格過ぎる一面ばかりを見ているが、あれは学園という場所における彼女の仮面なのだろう。

 彼女は彼女なりに一夏さんを大切にしているのを私は改めて感じてしまった。

 

「……先輩。

 少し、いいですか?」

 

「ん?どうした、川神?」

 

 そんな姉弟のやり取りを目にして神通さんは全く動ずることなく普通に話しかけた。

 

 ……あ、そうですね……

 神通さんは十年近くも二人と一緒にいるんですし……

 

 まるで見慣れたかのように受け流し自然と姉弟のいる環境に溶け込む神通さんの姿に私は神通さんもまたこの世界の人間の一人だということを感じて不思議な気分になった。

 神通さんはこの姉弟を始めとした多くのこの世界の人々と繋がりがある。

 そうなると、自然と溶け込むのも当たり前なのだと感じてしまった。

 

「……雪風をお借りしてもいいでしょうか?」

 

「「「「え?」」」」

 

「何……?」

 

 唐突に神通さんは私のことを借りたいと言ってきたのだ。

 その様子に織斑さんを除く私たち全員は呆気に取られてしまった。

 

「……どういうことだ?川神?」

 

 神通さんのその頼みごとに織斑さんは少し戸惑っていた。

 

「……いえ。ただ、教え子と買い物がしたいだけです」

 

「……え」

 

 神通さんが何を考えているのか分からないけれども、嘘偽りのない本心を語っているように感じてしまった。

 けれども、彼女がどうしてそのようなことを言うのかが理解できなかった。

 一体、彼女は何を思ってそう言ったのだろうか。

 

「……そうか。

 だが、そのことに関しては一夏とデュノアに訊ねる方が筋だと私は思うがな」

 

「え?」

 

「お、俺達……?」

 

 そんな神通さんに対して織斑さんは神通さんの言わんとしていることを理解してか、少し納得気な表情をしてから神通さんに一夏さんとシャルロットさんに訊ねる様に促した。

 

「……そうですね。

 一夏君、デュノアさん。

 ……大変、失礼ですが雪風と一緒に買い物をさせてくれませんか?」

 

 ……買い物?

 

 織斑さんに言われるままに神通さんは二人に訊ねた。

 同時に彼女が明言した「買い物」と言う単語に私は混乱してしまった。

 

「そ、それは……」

 

「………………」

 

 一夏さんは少し悩んでいる様であったが

 

「……わかりました。先生。

 雪風、行ってあげて?」

 

「……え」

 

「……シャル?」

 

 シャルロットさんも織斑さんのように神通さんの真意を汲み取ったらしく、私に頼み込んで来た。

 私は彼女が何故そう言ったのかが理解できなかった。

 一体、織斑さんとシャルロットさんは何を感じてそう言ったのだろう。

 

「……ありがとうございます。

 デュノアさん」

 

「え!?じ―――!?」

 

 神通さんはシャルロットさんの返事を受けて心の底から喜びに満ちた声をあげて、深々と頭を下げた。

 私はその姿を目にして衝撃を受けて思わず、彼女の艦娘としての名前を出しそうになるが、寸でのところで呑み込むことが出来た。

 それ程までに今の彼女の行動は衝撃過ぎたのだ。

 

「雪風。

 では、行きますよ」

 

「え?

 あ、はい……!

 えっと、お二人とも、失礼します!」

 

「お、おう……」

 

「うん。楽しんできてね?」

 

 そのまま、訳が分からないままに彼女の後ろについて行くことになった。

 一体、神通さんは何を思ってこんな行動に出たのだろうか。


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