奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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二期が始まりましたね。
一体、どうなっていくのか、楽しみです。


第23話「浜辺の天使」

「ハアハア……!!」

 

 一夏さんの周辺という私の羞恥心に集中砲火を浴びせ続ける危険地帯から逃げる様に、私は少し砂に足を取られたり、サンダルの間に砂が入り少しばかりの痛みと熱が入るけれども、砂浜を走り続けた。

 最近になって気付いたことではあるが、一夏さんの女難の相だけでなく彼自身の自覚なしの女誑しっぷりは私の精神面に対して、何度も大打撃を与え続けている要因になってるのかもしれない。

 

「ちょっと、雪風!」

 

「待ってください、お姉様!」

 

「……!」

 

 そんな私を追いかけて来てくれたのか、シャルロットさんとラウラさんが私を後ろから呼び止めて来た。

 

「……っ!」

 

 その声を耳にして冷静さを多少取り戻した私は未だ恥ずかしくて胸の鼓動が収まっていなかったが足を止めた。

 

「シャルロットさん、ラウラさん……」

 

「ハアハア……!

 もう、どうしたの?」

 

 シャルロットさんは私の突然の逃走に少し呼吸を乱しながらも私のことを気に掛けてくれた。

 それを見て、私は自分の行動に後ろめたさを感じてしまった。

 

「い、いえ……

 その……ごめんなさい……」

 

 ただ恥ずかしい光景を見たからと言って冷静さを失い、心配をかけてしまった挙句、彼女たちを振り回したことに対して私は謝罪した。

 

「……あれ?

 本音さんたちは……?」

 

 ふと確認してみると二人以外は追いかけて来なかったらしい。

 

「三人には待っていてもらってるよ。

 雪風の足の速さと体力には、普段、川神先生に鍛えられている僕たち以外には無理そうだったし……

 と言うよりも、僕たちも結構きつかったし……」

 

「あ、ああ……

 流石はお姉様と言うべきでしょうか……

 軍で多少鍛えられていた私でも危うく見逃しそうになりました……

 流石です……」

 

「そ、それは……

 本当に世話をかけてすみません……」

 

 他の三人が追いかけて来なかった理由を聞いて、私はどれだけ冷静さを失っていたのかを実感させられ益々いたたまれなくなってしまった。

 元軍人であり、元総旗艦、元練習艦であった時から毎日自主訓練を欠かさなかったことや二水戦時代と現在、神通さんの訓練で一般生徒よりも体力があるのは事実だった。

 そう考えると、本音さんたちには待ってもらっていてよかったと感じた。

 それにしても、訓練を受けていない三人どころか、訓練を受けている二人すらも追い付くのが難しいとは勢いのままとは言え情けない一面を晒してしまった。

 

「で、どうしたの?

 あんな風にいきなり走るなんて。

 一体、どうしたらそうなるの?」

 

「うっ……!

 そ、それは……!」

 

 シャルロットさんの追求に私は言葉を詰まらせてしまった。

 今回の騒動の原因はあの一夏さんとセシリアさんと鈴さんの起こしたとても人目のある所ではやるのが信じられないいかがわしい行動によって私の羞恥心が煽られたことによるものだ。

 それを素直に言うべきか私は悩んでしまった。

 

 こ、これは素直に話してもいいんでしょうか……?

 い、いえ、もしかすると、この世界では割とああいった光景はよくあることなのではないでしょうか?

 そもそも、水着にしたって皆さん、多少は緊張していますが、そこまで動揺してませんし、「ビキニ」が主流ですし……

 

 ここ最近の出来事で気付いてしまったが、私が恥ずかしいと思ったことはこの世界ではそこまで深刻なものではなく、私が意識し過ぎているだけだった。

 もし、私が『恥ずかし過ぎて逃げてしまった』と正直に言ってしまえば、薄々私の何かに気付いているシャルロットさんに違和感を抱かせてしまい私の正体が露見する可能性も高い。

 

 い、いえ……

 元々、彼女にはいずれ話すことを決めているんです……!

 むしろ、ここは素直に言うべきでしょう……!!

 

 私は逆にシャルロットさんに自らの秘密を打ち明ける約束をしていたことを思い出し、もし彼女がここで違和感を抱くようであるのならば、それでもいいと思った。

 

「えっと……

 その……恥ずかしくって……」

 

「……え?ああ、成程……

 そういうことか……」

 

 あ、あれ?

 納得してくれるんですか?

 少し、考え過ぎだったでしょうか?

 

 しかし、私の予想とは裏腹にシャルロットさんは納得しこれ以上のことを訊いて来なかった。

 私はそのことに対して安堵したが

 

「……?

 何故、恥ずかしかったのですか?」

 

「え!?」

 

 何とラウラさんが本気で私が恥ずかしさを抱いていた理由が分からなかったらしい。

 

 そ、そう言えば……

 ラウラさんもあの時は動揺してませんでした……!?

 

 今、思い出したことであったが、ラウラさんはセシリアさんが『オイルを塗る』ことを頼み出した時には私と同じ様な反応をして恥ずかしさを見せていなかった。

 それを私は彼女もセシリアさんの言っている意味が分からないだけかと思い込んでいた。

 しかし、それは違った。

 よく考えてみなくても、ラウラさんは鈴さんの肩車の時点で全く動じていなかった。

 ラウラさんはあれらの光景に対して、特段恥ずかしく思っていた訳じゃなかったのだ。

 

 同性とは言え……私と裸で同衾する人です……

 あれぐらい、どうってこともないのかもしれません。

 

 ラウラさんは外の世界を知らないことや実年齢からくる知識不足や精神面の年齢から性的なことへの羞恥心がそこまで育っていないのだ。

 だから、私と違って、あの光景を見てオイルの実態を目にしても動揺しなかったのだ。

 何よりも私に対して、本音さんやクラリッサさんにそそのかされたとは言え、全裸で私と寝ることに抵抗感がなかったり、積極的に風呂場で裸の付き合いを求めているのがその証拠だ。

 いや、もしかすると、今回のことを鑑みれば彼女の場合は仮令私が男性であろうとお構いなしな気もして来た。

 

 マズいです……

 シャルロットさんはこれ以上追求してこないと思いますが……

 ラウラさんに説明するとなると、私の心が……!!

 

 最早、私の秘密と言う問題よりも今回の一夏さん関連のことを一から冷静に説明するというある種の拷問に等しいことをしなくてはならない事実を目にして私の心が強く揺れた。

 こんなところに思わぬ伏兵が来るとは思いもしなかった。

 

 で、ですが……

 ラウラさんの()()()()()、ここで彼女の情操教育を怠るのは……!

 

 しかし、ここで私が自己保身に走ってラウラさんに世間の常識を教えることを怠るのは彼女に『お姉様』と一応は慕われてる身としては逃げるべきではないだろう。

 

 し、仕方ありません……

 ちょっと、勇気がないので……ここは感じた事だけを……

 

「え、えっとですね……

 ラウラさん、私が恥ずかしかったのは……その……

 ()()()()があんな風に肌の露出が激しかったりするのに密着したり、それどころか直接肌と肌を合わせる状態を目にしたからなんですよ……?」

 

「……?

 そうなのですか?」

 

 私は意を決したが、多少表現を抑えながら率直な感想を漏らすのみで終わり、ラウラさんもそこまで理解できていなかった。

 流石に一から全て教えるのは無理だった。

 そんなことをすれば、顔から火が出てしまうだろう。

 ただ少しずつラウラさんにはこういったことはこれから教えていくべきだろう。

 そうだ。それでいいはずだ。

 と、私がラウラさんのこれからのことを考えている時だった。

 

「では、お姉様と私とならば問題ないということですね!!」

 

「えっ!?」

 

「ちょ、ラウラ!?」

 

 しかし、事態は思ったこととは違った方向に向かおうとしていた。

 

「実はオルコットと織斑のあの光景を目にして、ああいった親睦の深め方もあるのかと衝撃を受けていたのです……!!

 お姉様、是非やりましょう!!」

 

 や、やってしまいました……!

 同性同士ならば問題ないという誤った意味を伝えてしまいました……!!

 それにこれは磯風が料理を閃いて振る舞おうとしている時のものと同じものです……!!

 

 照りつく真夏の日差しの中、私は悪寒を感じた。

 ラウラさんは私の「異性」という言葉から、私の恥ずかしさを感じた理由を履き違えてしまったうえに、セシリアさんのオイル騒動を見て、何かしらの電流が走ってしまったらしく、親睦を深めたい私に同じことを迫ってきてしまった。

 

「さあ、お姉様!

 行きましょう!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいラウラさん!?」

 

「ラウラ、落ち着いて!?」

 

 私の抱いた恥ずかしさの意味を履き違えたラウラさんは自らの欲望のままに突っ走ろうとしていた。

 シャルロットさんは私のことを気遣ってラウラさんを止めようとするが、今のラウラさんを止めるのは無理な気がしてきた。

 磯風の時と同じで。

 打つ手なしかと諦めかけた時だった。

 

「あれ?

 雪風に、シャルに、ラウラ?

 どうしたんだよ、こんなところで」

 

「「「え?」」」

 

 突然、少なくともこの「IS学園」では絶対に持ち主が誰であるのかを聞き間違えることのないであろう声がしてきた。

 

「い、一夏さん!?」

 

「え!?どうして、ここに!?」

 

「先ほどまであちらにいたはずだが?」

 

 何とそこには一夏さんがいた。

 何故、彼がこんな所に来ているのだろうか。

 

 

 

 鈴と競争していて溺れた鈴を背負って休憩場に運ぼうとした後に他の女子が集まり出し、流石に子ども扱いされたことか溺れたということがばれるのが恥ずかしったのかわからないが鈴は俺の背中から降りてそのまま何処かへと去り、そのまま浜辺を散策しようとしていた矢先に俺は雪風とシャル、ラウラの三人を見かけて、つい声をかけてしまった。

 すると、雪風とシャルは動揺し出した。

 ラウラは普通なのにどうしたんだろうか。

 

「い、いや……

 ちょっと、鈴と競争していたら鈴が溺れてな」

 

 取り敢えず、俺は訊かれたことを答えようと考えなしに率直にここにいる理由を答えた。

 

「え!?

 鈴さんは大丈夫なんですか!?」

 

「うおっ!?」

 

「ちょ、雪風!?」

 

「お姉様!?」

 

 鈴が溺れたという事実を説明した途端、雪風は血相を変えて俺に飛びつくかのように近づき、今にも身体が密着しそうな状況になりながらも俺のことを見上げて来た。

 普段の落ち着きが全く見られないその行動に俺だけではなく、シャルもラウラも驚いていた。

 

「い、いや……

 一応、自分で歩いて行ったから、大丈夫だぞ?」

 

 またもや女子の身体が水着と言う普段と異なり肌の露出が大きい服なのに密着しそうになり、緊張してしまうが鈴が無事であることを俺は伝えた。

 鈴と言い、セシリアと言い海に来てから俺の理性が試される出来事ばかりで多少はもう慣れたかと思ったが(と言っても、鈴の場合は昔からの付き合いなので慣れてしまっていたが)、それでも水着の女性がこうも肌に触れそうになるギリギリに来るのは結構恥ずかしい。

 

「そうなんですか?

 本当に大丈夫なんですか?」

 

「……うっ!?

 あ、ああ……大丈夫だ」

 

 鈴が無事なのを知ると雪風は手を胸の前で握りしめ懸命に上目遣いで見上げて来た。

 その仕草に俺はセシリアとは違う意味の緊張を感じてしまった。

 何と言うか、あれだ。

 本人は意図していないと思うが、雪風の屈託のない真面目な性格やさらには他人のことを本気で心配する優しさが作用してか、純粋に守ってあげたくなる暖かいオーラが漂っている。

 

 しょ、小動物と言うよりも……

 天使じゃね……?

 

 よく、雪風のことを小動物みたいで可愛いという女子がいるが、俺にはむしろ、天使に見えてしまう。

 

 あ、危ねぇ……

 水着のブラがヒラヒラ系で良かった……

 

 幸い、俺が目のやり場に未だに困らないで済んでいるのは雪風の水着が胸元が見えないタイプだったからだ。

 実の所、雪風の今の姿勢は男にはかなり悪い。

 雪風は腕を前に出し、脇をしめていることから胸が自然と寄せられている状態になっている。

 では、何故同じ様な胸を見せないタイプのタンキニ系を着ていた鈴を肩車したりして、俺が緊張しないでいられたかと言えば、本人の前では絶対に言えないが、鈴の胸がなかったからだ。

 しかし、雪風の場合は年相応にあるのがわかる。

 だから、フリルがなかったら、雪風の天使みたいな上目遣いと胸元で俺は恥ずかしさでアウトだった。

 と言うよりも下心を抱いてはいけない相手に抱くという罪悪感が俺を襲っていただろう。

 ありがとう、ヒラヒラ。

 フォーエバーヒラヒラ。

 

「と、ところで……雪風、そのな……」

 

「……?」

 

 流石に何時までもこんな至近距離でいられると俺の身が持たないのとこれ以上、雪風をそういった風に見ると罪悪感でヤバくなると思って離れて欲しいと頼もうとしたが、

 

「あ、織斑君だ

 ……?あれ、陽知さん?」

 

「うわっ!?陽知さん、大胆!?」

 

「陽知さんも何か、織斑君にしてもらおうとしているのかな!?」

 

「……え?」

 

「……!?」

 

 再び、女子生徒たちが集まり出し、先ほどの鈴やセシリアの言い争いを見ていた女子もいたことで雪風までもが俺に何かを頼んでいると誤解し始めた。

 

「い、いや……

 別にそういう訳じゃないぞ?

 なあ、雪風―――。

 ―――ん?」

 

「………………」

 

 このままではまたもや女子たちが押し寄せて来ると考えたが、幸い、雪風は鈴やセシリアと違って何も頼んでいないことから雪風にも誤解を解く協力をしてもらおうとした時だった。

 雪風の様子がおかしかった。

 

「お、おい?

 どうしたんだ?」

 

 雪風は一度、女子たちがいる方に顔を向け、その後俺の方へと顔を向け、そのまま今度は視線を下へと下ろし、ゆっくりと再び俺の方へと顔を戻した。

 その後、目を大きく見開くと同時に目を泳がせ、瞬きを何回も繰り返し顔が真っ赤になり身体中が震え出した。

 

「きゃ―――」

 

「きゃ……?」

 

「―――きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

「て、うわっ!?」

 

 雪風は前に俺が抱えて飛んで窓を抜けた時にした年相応の乙女チックな悲鳴をあげながら、全力でその場から逃げ出すかのように何処かへと去って行ってしまった。

 

「あ~!?

 また!?」

 

「お姉様、待ってください!?」

 

 その雪風を追って、シャルとラウラが追いかけて行った。

 

 ……何だったんだ……?

 

 その雪風の行動を見て、俺は呆然とするしかなかった。




なお、一夏の鈴への発言は割と原作通りです。……鈴ェ……
せめて、一夏もそっちじゃなくて、「幼馴染だから」の部分を強調すればよかったのに……

ちなみに雪風がどうして、こんな反応をしたのかは次々回で説明させて頂きます。

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