奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
陸上ボスと水上ボスの複合はやばいでしょ……
こりゃあ、ラスダンで出し惜しみなしで支援艦隊をフル動員しないと無理ですね。
ただポーラと岸波は来てくれたのでうれしいですけど(笑)
びっくりしましたよ、岸波一発目でドロップは
これでようやく、私も一夏と……!
姉さんに頼んだことで手にすることになる「専用機」のことで私は「IS」自体には嫌な感情しかないが高揚している。
「IS学園」入学後、私は一夏と再会することは出来たが、私が想いを伝えようとするが、成長した一夏は整った顔をしており、さらには唯一の男子生徒ということもあり多くの女子生徒たちに言い寄られている。
しかも、その中には代表候補生が一夏の私がいじめを受けていた時に見せた時の様な無自覚な男気に惚れ始め、一夏を慕い始めている。
それに那々姉さんが来るなんて……!!
加えて、私が一夏と一緒にいる時間が減っているのは那々姉さんの影響が強い。
私はあの人の指導を受けたくない。
あの人は私を裏切ったのだ。
さらには最悪なことに一夏は既に私が追いつけない所まで成長しようとしている。
那々姉さんの指導は厳しいらしく、並の人間なら直ぐに音をあげる程らしく、それでも確実に実力が伸びるらしい。
一夏を始めとして、彼女の指導を受けたオルコット、鳳、デュノア、ボーデヴィッヒ、そして、陽知の実力は明らかに群を抜いている。
『あなたが私のことをどう思っていても構いません。
ですけど、これだけは言わせてください。
あなたはそんなことを言う子じゃないはずです』
どうして、あなたは……!!
あの人は私を裏切った。
私を一人にしないと約束しながらも結局は一人にした。
それなのにあの人は今でも私を気に掛けて来る。
あの人と別れてから、一年の間、週に一度は来る手紙を私は読まなかった。
そして、一年ぶりの再会の際にも私が恨み言をぶつけてもあの人はそんなことすら構うことなく、私を優しく諭そうとした。
昔と変わらず、ただ優しく。
あの人の優しさが辛い。
あの人はどうして、あそこまで私を気に掛け続けるのだろうか。
「……あれは?」
そんな風に旅館の玄関まで歩いているとふと気になる人影が見えた。
一夏……?
どうしたんだ?
それは一夏だった。よく見てみると一夏は深々と誰かに頭を下げていた。
一体、誰といるのだろうかと気になり調べてみると
「なっ!?」
その人物を見て私は言葉を失った。
や、陽知だとぉ!?
一夏が頭を下げている人物。
それは陽知だった。
頭を下げられている陽知は何か慌てていた。
ま、まさか……!?
この状況を見て私はとあることが浮かんだ。
告白なのか!?
夜中に男女が二人きり。
この時点で逢引きだということは解かる。
加えて、片方の異性が頭を下げ、もう片方が慌てている。
つまり、これは告白だ。
そう言えば……
一夏は陽知のことを妙に意識していた……
私は普段の学園生活における一夏の陽知に対する姿勢から、一夏が何かしらの感情を抱いていることを知っている。
破壊的な戦闘の仕方や一夏の言う陽知がする目、そして、私も怯んでしまったあの剣幕に対して、一夏は陽知のことが気にかかっていた。
もしかすると、一夏は陽知のことを好いているのではと考えたが、今の状況からそれは的を得ていたらしい。
あ、あの女……!!
自分はさも一夏に興味がないと振る舞っておきながらぁ……!!
陽知は普段から一夏に対して、積極的ではない。
むしろ、一夏のことを異性として意識すらしていない。
それなのにその陽知が一夏から告白を受けていることに憤りを隠せなかった。
そのまま、二人に近付こうとした時だった。
「……本当は篠ノ之博士が羨ましかったのかもしれませんね……
私は」
「……え」
陽知の口から出て来た言葉に私は足を止めてしまった。
「た、束さんが……羨ましかった?」
最初、俺は雪風は昼間の俺との接近のことや一人で海を眺めていることを邪魔されたことに腹を立てているのだと思っていた。
けれども、俺が謝罪の理由を明かすと雪風は妙に俺が考えていることと一致しないことを言い出した。
雪風の口から出て来たその言葉に俺は先ほどまで感じていた違和感が消えた代わりに困惑が生まれてしまった。
「と言うよりも……
束さんと会ったのか!?」
「え……?」
俺は束さんと雪風が会ったことに衝撃を受けてしまい、思わず訊ねてしまった。
確かに束さんはこの旅館に来ている。
だから、束さんを見ることは別に不自然ではない。
でも、雪風の先ほどの発言は二人の性格面から信じられないものだった。
「……?
だって、一夏さん、見たんですよね?
私があの人を罵っているのを?」
「えっ!?」
雪風の更なる暴露は衝撃的過ぎた。
今、雪風はとてつもないことを言ったのだ。
あの束さんに噛みついたと。
この「IS」が絶対とされる社会において、その生みの親である篠ノ之束相手に雪風は喧嘩を売ったと言うのだ。
そんなことが出来るのは世界で千冬姉か、那々姉さん位だ。
「IS」に携わる人間としては信じられないことだ。
い、いや……雪風ならやるか……
しかし、よく考えてみなくても雪風ならやりかねないことだ。
そもそも、雪風は千冬姉相手に真っ正面から物申していた。
雪風にそれ位は普通なのだろう。
「『えっ』て……
見てたんですよね?どうして、そんな反応をしているんですか?」
「そ、それは……」
俺の反応を雪風は訝しみだした。
困ったことになった。
どうやら、俺の言っていた昼間の件と雪風の言う昼間の件は全くの別の事だった。
それなのに俺は誤解したまま俺はさも知ったかぶりをして雪風に『見た』と言ってしまったのだ。
俺……
また、雪風が本当に触れて欲しくないことに踏み込んでしまったのか……?
俺は焦りを感じた。
俺は雪風が一人で夜の海を眺めていたのは雪風が辛いことや嫌なことがあったからだと考えていた。
実際、それ自体は当たっていたが、それを招いた理由が全く違っていたのだ。
雪風はどうやら、昼間に束さんと出会い、その際に彼女に反発してしまったらしい。
しかも、その動機は雪風曰く『束さんが羨ましかったから』らしい。
ただ、俺からすると束さんの天才ぶりに雪風が憧れを抱くとは到底考えられない。
となると、考えられるのは
「あの目」の理由……
雪風の過去に関することなのか……?
雪風が死闘の際に見せる「あの目」に関わることかもしれないのだ。
あの悲しみがそのまま怒りとなったかの様に思わせる目。
あのラウラがセシリアを殺しかけた後の夜に俺が雪風にその理由を訊ねると雪風は底知れない悲しみを顔をしていた。
そう、今の様に。
俺は今さらになって今の雪風が微かにそれを漂わせていることに気付いてしまった。
「ゆ、雪風……!
その……ごめん……!!」
「?あの、ですから、私は気にしてませんよ?」
俺は雪風が触れて欲しくないであろう古傷に誤解とは言え、何も知らないのに土足で踏み込もうとしてしまったことに謝った。
けれども、雪風は俺の謝罪が先ほどと同じことに対するものだと思ってしまい、そのまま俺を許そうとしてしまっている。
「雪風!違うんだ!!」
「……?
『違う』……?……何がですか?」
俺は居た堪れなくなり考えるよりも先に言葉で出てしまった。
この状況では黙って雪風の言葉を聞いていた方が雪風も俺も傷つかないで済むのが正解だと頭では理解しても、良心の呵責が原因なのか俺は本当のことを話してしまっていた。
「俺はお前がその……
恥ずかしがって逃げたことに対して謝っていただけなんだ……!
で、『見た』って言うのはお前が一人で海を眺めていたのを『見た』ことに関してのことだと思っていたんだ!!
だから、その……勘違いして、そのまま謝って、お前が辛そうな理由を知らないのに俺はさも知っているかのように答えたんだ……
本当にごめん!!」
「えっ!?」
俺は早とちりで雪風の踏み込んでほしくないであろう過去に土足で入ろうとした。
あの時、雪風を泣かせてしまったというのに俺は同じことを性懲りもなくやろうとしたのだ。
そのことに俺は自分が許せず、このまま黙っていればいいのに本当のことを話してしまった。
雪風が傷付くのをお構いなしに。
……謝罪って……もしかすると、独り善がりなのかもしれないな……
自分の自責の念に耐えられないで謝ったことに俺はそう感じた。
もし俺がもう少し強ければ嘘を吐いてでも黙っていられた。
それなのに俺はそれが出来なかった。
「………………」
雪風は俺のことを悲しそうに見つめていた。
それはきっと、昼間に束さんとの間で何かしらのトラブルが生じ、雪風を悲しませた何かがあったのだろう。
あの束さんのことだ。
あり得ない話じゃない。
それなのに俺は覚悟もないのに首を突っ込んでしまった。
「一夏さん……」
雪風はふと何かを考え込むかのような顔をして、その後、俺に向かい合った。
「……ではお詫びとして私の話を聞いてくれますか?」
「……え」
そのまま雪風は仕方なさそうにしながらも優しさが含まれる表情をしてそう言った。
「雪風の話を……?」
「はい」
私はお互いの誤解が原因で知られてしまった昼間の篠ノ之博士との諍いにもならないことについて明かそうと思った。
そして、同時に少しだけ嘘を吐いて、私自身のことを明かそうと思った。
それは目の前の一夏さんが罪悪感で苦しめられるのを少しでもいいから和らげたいのと私自身が誰かにあの悲しみを打ち明けることで楽になりたいと思ってのことだった。
「……昼間の事なんですが、私篠ノ之博士に対して、『どうして妹さんのことをほったらかしにしていたのか?』と訊ねたんです」
「?箒のことか?」
「はい」
私はあの時、荒れてしまった直接の原因を話した。
私は妹を蔑ろにしていたあの人の行動とそれに対して何の引け目すら感じていなかったことが許せなかったのだ。
「いや、確かにあの人は昔からそうだけど……
どうして、お前はそんなことを?」
「……それは……」
一夏さんは篠ノ之さんの事情を詳しいことまで知らない。
だから、私の篠ノ之博士に対する感情が理解できないのだろう。
私は「重要人物保護プログラム」のことを話すべきかと一瞬悩んだが、それを止めた。
一般人である彼に機密情報を話すのはお門違いだと思ったからだ。
あくまでも、私は個人的な理由で自分の心情を明かそうとしているのだ。
それに対して、公のことを明かすわけにはいかないだろう。
「……私が姉であり、妹だからです」
「……え!?」
説明になっていない説明で私はこの場を乗り切ろうと決めた。
「雪風て兄弟がいたのか?」
「……はい」
一夏さんは私に姉妹がいたことに素直に驚いている様だった。
「あ、もしかすると、前に『お姉さんと言う者は』て言うのは……?」
「はい。
私の姉が少し厳しい方だったので」
一夏さんは以前、飛行訓練の際に姉である織斑さんの厳しさに少しだけ落ち込んでいた時があった。
その時に私が不知火姉さんのことを持ち出して、彼を慰めたのだが、どうやらその時のことを思い出したらしい。
「そうだったのか。
雪風のお姉さんてことはかなり厳しいのか?」
「あの……
どうして、私のお姉さんだから厳しいということになるんですか?」
「あ、えっと、ごめん……」
「冗談ですよ。気にしないでください」
一夏さんの質問に対して私は少しばかり意地悪をしてしまった。
それと不知火姉さんが厳しかったのは事実だ。
「それに実際、姉さんは厳しい方でしたし」
私はこのままでは話が進まないと思い、一瞬、不知火姉さんの名前を出しそうになったが、全てを話すわけにはいかないので無難に『姉さん』と名残惜しいがその呼び方をした。
「やっぱり、厳しい人なんだ。
千冬姉と同じくらい厳しいのか?」
同じ姉を持つ者同士という共通点から気になってしまったのか、一夏さんは興味津々に訊いて来た。
その質問に私は、
「織斑先生から情け容赦をなくして、私が泣きそうになっても厳しさを貫く程度には厳しい方でした」
「……え?」
素直に答えた。
一夏さんはそれを聞いてしばらく理解が追いつかなかったらしい。
「ゆ、雪風が泣きそうに……え?
き、厳しくて?」
「はい。
厳し過ぎて、姉さんの前では泣けなくて隠れてよく泣いてました」
どうやら、一夏さんは『私が泣きそうになった』という事実が信じられなかったらしい。
だが、それは紛れもない事実だ。
不知火姉さんは陽炎姉さんが戦死した後は私のことを泣きそうになる程、いや、半分泣いていても手心を加えることはなかった。
私がたまに無意識に同情を誘いそうになってもそんな手は通用しないとお構いなしにさらに厳しくしてきた。
そんな人だった。
お陰で何回、自室で独り泣きしていたことだろう。
「なあ……
それって、虐待とか、DVとかじゃないよな……?」
一夏さんは不知火姉さんの話を聞いて私が虐待を受けていたのではないかと本気で心配しだした。
無理もない話だ。
一夏さんの姉弟と私たち姉妹では生まれ育った環境どころか世界が違う。
私は生まれた時から軍、それも「深海棲艦」という謎の敵と戦い、何時命を落とすか分からない世界で生きて来た。
だから、不知火姉さんの厳しさの理由も理解できないのだろう。
そして、彼女の厳しさの中にある愛情も、そして、彼女の悲しみも考えることが出来ないのも無理はない。
「……いいえ。
姉さんは他の姉妹に憎まれ役をさせまいとしてくれていたんです」
「憎まれ役……?」
私は不知火姉さんの優しさを知らないで誤解されて欲しくなくて彼女の本質を明かした。
「どうして、そんなことを?」
一夏さんは私の言っている意味が分からなかったようだ。
「……詳しいことはまだ言えません。
でも、これだけは本当です。
沢山いた私たち姉妹の中で彼女は私たちのことを厳しくしなければいけない立場だったんです」
「それって、どういうことだよ……?
それに……沢山?そんなに雪風の姉妹ていたのか?」
「……はい」
本当のことを全て話せるわけではないのではぐらかすしかなかったが、やはり、彼にとっては意味不明な説明になってしまったようであるが彼は私に多くの姉妹がいたことに興味を持ったらしい。
「これから、私の大切な家族の話をしてもいいですか?」
「……雪風?」
だけど、私はもう切なさを悲しさに耐えられず愛する姉妹たちへの想いを誰かに打ち明けたくて仕方がなかった。
そうしなければ、耐えられないと思ったからだ。
「……わかった。
俺でよければ、訊かせてくれ」
そんな私のワガママに一夏さんは付き合ってくれるようだった。
「ありがとうございます。
じゃあ、先ずは一番上の姉から話させてもらいます」
愛しさに包まれながら、私は陽炎姉さんのことから話そうと決めた。