奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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夏イベ攻略完了……!!
いや~、E-5-2は地獄だった……!!
ここで今回のイベントで資源が初めて万単位を費やしました。
後……今回のランカー報酬に雪風の妖精がいますよね……
長波様の券を考えるとこれはまさか……まさかのまさかですよね……?
いや、ただタフィ3の一人の彼女と関わり合いがかなり大きいからいるだけなのかもしれませんが……
期待していいのか困ったものです。
といって、タフィ3の彼女が実装されるのは雪風好きとしては楽しみですが……!!
目を離せません!!


第30話「愛しさ故に」

「雪風……?どうしたんだよ?」

 

「あ、あれ……?

 どうしたんでしょうね?

 あはは……」

 

 一夏さんに次にお姉ちゃんの話をしようとした私は何故か泣き出してしまって、話が止まってしまった。

 

『ふ~ん。

 あなたが八番艦の雪風ね。

 私は七番艦の初風。あなたの姉よ。よろしく』

 

『あ、初めまして!

 よろしくお願いします!

 佐世保から来た雪風です!

 竣工日は一月二十日。進水日は三月二十四日です!

 同じ佐世保出身の姉妹には十一番艦の磯風がいます!』

 

 私は涙を止めようとお姉ちゃんとの幸せな思い出を思い出そうとした。

 最初に浮かんだのは呉で初めて黒潮お姉ちゃんとお姉ちゃんに出会った時の事だった。

 あの時、私は初めて姉になる人に出会えると期待を感じると共に緊張を感じてはいたが、先に紹介を済ましていた黒潮お姉ちゃんが気さくな人であったからある程度の余裕ができており、とりあえず自己紹介として自分の出身地と竣工日、進水日、そして、妹に磯風がいることをお姉ちゃんに伝えた。

 

『……え?

 私より……生まれたのが先……?』

 

『あ!本当ですね!

 それじゃあ、私の方がお姉さんですね!』

 

『いやいや……

 どう見ても私の方が姉でしょ?

 それに進水日は私の方が先なんだし』

 

『えぇ!?

 でも、私の方が先に生まれ―――』

 

『七番艦はわ・た・し!

 だから、私の方が姉』

 

『―――え、あ、その……ごめんなさい……』

 

『え、ちょっと……

 何もそこまで落ち込まなくても……』

 

 私が竣工日が先であったことを知るとお姉ちゃんは呆気に取られ、私の方が先に生まれた事実が明かされるとそのことで私の方が姉であると主張しだすとお姉ちゃんは進水日のことを持ち出してきた。

 それでも、私が食い下がろうとすると突然お姉ちゃんは先ほどまでの冷静な態度を捨てて、七番艦であることを根拠として姉であることを強調してきた。

 そのことに私は初対面で相手を怒らせてしまったと思い込んで落ち込んでしまった。

 

『こらこら、初風も素直になりぃや?

 初めて妹が出来て嬉しかったんやろ?』

 

『……え?』

 

『なっ!?

 黒潮、そ、それは!』

 

 そんな私たちの様子を見かねて既に先に自己紹介を終えていた黒潮お姉ちゃんがどうしてお姉ちゃんがそこまで「姉」であることに拘るのかを明かし始めた。

 

『雪風。

 初風はなぁ、神戸で唯一生まれた陽炎型なんや。

 だから、姉も妹もいなくて初めてお姉ちゃんも妹も出来ることが嬉しくてたまらんかったやで?』

 

『く、黒潮!!

 だ、黙りなさいよ!?』

 

『………………』

 

 黒潮お姉ちゃんの明かした事実にお姉ちゃんは顔を真っ赤にして狼狽えた。

 その様子を見て私は

 

『えっと……じゃあ、その……

 お姉ちゃん……?』

 

『!?』

 

『お』

 

 自然と嬉しくなってしまいそう呼んでいた。

 初めての妹。

 たったそれだけの理由で私が呉に来ることを楽しみにしてくれていたのだ。

 それが嬉しくて、嬉しくてしょうがなかった。

 

『よかったな~、初風?

 こんな可愛い妹が出来て、その上『お姉ちゃん』とまで呼んでもらえるんやから。

 これじゃあ、どっちが妹が分からへんな?』

 

『なっ!?』

 

 私が素直に妹であることを認め出すと不意を突かれて困っているお姉ちゃんに対して黒潮お姉ちゃんはニヤニヤと煽り出した。

 

『あ、あなたはどうなのよ!?』

 

『え~、うちはえぇで?

 こんな可愛い妹に『お姉ちゃん』と呼んでもらえるのなら大歓迎や。

 ほな、雪風。うちの事は『黒潮お姉ちゃん』と呼んでえな』

 

『!

 はい!黒潮お姉ちゃん!!』

 

『く~、可愛ぇなぁ♪』

 

『くぅ~!!』

 

 黒潮お姉ちゃんはお姉ちゃんをからかいながら、私に自分の事も『お姉ちゃん』と呼ぶことを急かしてきた。

 私はそのことも嬉しくて、素直に黒潮お姉ちゃんのことを『黒潮お姉ちゃん』と呼んだ。

 

『わかったわよ。じゃあ、双子ってことでいいでしょ?

 で、あんたが普段は妹で私がたまに妹をやるわ。

 これでいいでしょ?』

 

『え?』

 

『お?』

 

 お姉ちゃんは少し恥ずかしそうにそう言った。

 

『それで私はあんたのことを『ユキ』と呼ぶことにするわ』

 

『『ユキ』……?』

 

『ほ~?』

 

 お姉ちゃんは続け様に私のことをそう呼ぶことを決めて来た。

 

『なんや~?

 急にお姉ちゃんぶりおって?』

 

『う、うるさい!

 で、あなたはどうなのよ!?

 嫌ならここで『嫌』っていいなさいよ!』

 

 ただでさえ気恥ずかしいことだったことに加えて、黒潮お姉ちゃんに乗せられたことが悔しかったのかお姉ちゃんは私に詰め寄って来た。

 それを見た私は少し戸惑ってしまったけれど

 

『嬉しいです!』

 

『え……』

 

『とっても嬉しいです!!

 お姉ちゃん!!』

 

『っう~……!!』

 

 ただただ嬉しくてその事だけを伝えた。

 誰よりも私が妹になることを待ち望んでくれた姉の気持ちを知って彼女のそのかけがえのない贈り物を私は受け取った。

 

「おかしいですね……?

 あれ……なんで……止まらないんでしょうね……?」

 

「雪風……お前……」

 

 司令や磯風、金剛さんたちとお茶会を初めてした時と同じくらい幸せな思い出の筈なのに何故かそれを語ろうとするとさらに涙が溢れてしまって話が続かなかった。

 

『はあ~……仕方ないわね。

 ほら、ユキ。私の半分あげるからそんな顔しないの』

 

『あんたもお姉ちゃんになるんだからしっかりしなさい』

 

『ユキ……!!

 大丈夫だったの!?よかった……』

 

『いい加減にしなさい!!

 比叡さんがあんたをどんな気持ちで生かしたのかわからないの!?』

 

『ユキ……今は泣きなさい……

 でも、あなたは生き残るのよ……?もう妹がいなくなるのは嫌よ……』

 

『不知火!!

 いい加減にしなさいよ!!

 雪風は八番艦なのよ!?それに今は黒潮や時津風がいなくなってからそんなに日が経っていないわ!!』

 

 呉の鎮守府で私が泣きそうになるとすぐにそれを止めようと慰めてくれたこと。

 黒潮お姉ちゃんが十五駆に移籍した後、天津風や時津風が来ることに既に私には磯風がいるのにお姉ちゃんにも『姉らしくしろ』と言われた事。

 ソロモンの戦いで多くの艦娘が大型艦・小型艦の種別関係なく戦死し続け泊地にて留守をしていた出撃した艦娘の姉妹艦たちはその生還を祈り続けた中、私が帰還するとお姉ちゃんは普段の冷静さをかなぐり捨てて私が多少の被弾以外の傷を得ていないことに安堵してくれたこと。

 そのソロモンの戦いで佐世保生まれの私にとっては神通さんと並んで敬愛していた艦娘であった金剛さんの妹である比叡さんを守れず、塞ぎ込んでいた私を叱咤したこと(私と同じ様に白露ちゃんや時雨ちゃんも泣いていた)。

 あの「ダンピール」という地獄から生還後、目の前で為す術もなく護衛すべきだった輸送船団とそれに乗る人々を助けられず、「二水戦」時代の同期であった朝潮ちゃんや荒潮ちゃんや特に仲の良かった妹であり相棒とも言えた時津風を失い茫然自失となっていた私に自らも悲しくて辛かったはずなのに、私には生き残って欲しいと言ってくれたこと。

 ネームシップであった陽炎姉さんだけでなく、上の姉である黒潮お姉ちゃんや親潮姉さんたちを一気に失ったことで厳しくならざるを得なかった不知火さんが繰り上げで三女の立場になった私に厳しくし始めたことに、自分も黒潮お姉ちゃんや時津風を失ってまだ立ち直れていないのに私を庇ってくれたこと。

 嬉しかったこと。楽しかったこと。悲しかったこと。辛かったこと。

 もう私の意思とは関係なくお姉ちゃんとの思い出がまるで堰を切ったかのように蘇り続けた。

 

 ……あ、そうか……

 私……こんなにもお姉ちゃんのことが大好きだったんだ…

 

 大好きなお姉ちゃんとの思い出の筈なのに思い出すと幸せだったことだけではなく、辛かったことまでも思い出してしまうのはお姉ちゃんとの全ての思い出が私にとってはかけがえのない大切なものであり、そして、それは私にとってはお姉ちゃんがどれだけ大切な人であることを物語っている証拠でもあった。

 私が辛いことがあっても記憶を何時までも忘れるという薬に逃げなかった理由。

 それはお姉ちゃんとの思い出が全て私にとっては大切なものだったからだ。

 

『じゃあ、行ってくるわね。

 ユキ』

 

 そして、最後に浮かんだのは彼女との離別だった。

 人間としては当たり前の筈の別れ。

 何時かは時が癒してくれる筈の傷。

 それなのに何十年も経っているのに私のそれは癒えない。

 幸せだった思い出を思い出しても、いや、思い出そうとする度に失ってしまったことへの悲しみも蘇り、決して解放されない。

 それを私はようやく理解してしまった。

 

「お姉……ちゃん……」

 

「雪風……?」

 

 事情を知らない人間が居るというのに自分から語ろうとした筈なのにそれすら果たすことが出来ないでいる。

 それどころかなるべく、怪しまれないようにしようとしながら、それすらも出来なくなっている。

 何とか涙を止めようとするが無理だった。

 幸せな思い出の筈なのに、大好きな人の話なのに笑顔になれなかった。


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