奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
一夏に対する愛情は本物だけど、それ以外の真意が読み取ることができないのが二次創作を作る上で厄介なところなんですよね。
「理事長……本当に申し訳ございません……」
私は本来ならば自分がすべきであったことを更識にさせてしまい、さらには本来ならばこの世界における被害者でもある理事長に頭を下げさせてしまったことに謝罪した。
この世界の歪みを作った張本人の一人であり、彼女の保護を願い出たのは私だったにも関わらず、私は今さらになって臆病風に吹かれて何もできなかった。
一夏……私は姉として最低だ……
私は一夏の姉でいることに恥を感じた。
普段は偉そうにしておきながら、いざ自分の罪の重さを認識させられたら何も言えずじまい、私は自らの弱さに悔しさを感じた。
一度は罪を告白しようとした……だけど、しなかった……
自分に言い訳をするかのように私は心の中で呟いた。
私は「白騎士事件」の真相を一度は明かそうとも思った。
しかし、私は怖くなってしまった。
事件の真相が知られれば私はともかくとして、一夏の身にも害が及ぶ。
もしかすると、その一夏にすら私は軽蔑されるのかもしれないし拒絶されるのかもしれない。
そもそも私が生きて来れたのは一夏がいたからこそだ。
だから、せめて一夏には「IS」とは無関係でいて欲しかった。
だから、「モンド・グロッソ」以外では、決してあいつに「IS」との関わりを持たせまいとしていた。
「織斑先生。
頭を上げなさい。
私の頭一つで彼女の失望が少しでも薄くなるのならば、本望だ……」
「理事長……」
そんな私を理事長は責めることもせずに何の悲痛さも感じていないようにそう言い
「それに私はむしろ、彼女を紹介してくれたことに感謝しているよ」
満足気に続けてきた。
「あのような真っ直ぐに優しい娘は今では珍しいだろう。
それに……彼女はそれを大人になっても忘れていなかった……
それはとても眩しいものだよ」
雪風のことを語る理事長は本当に嬉しそうだった。
彼の語る若者の若さと情熱を嬉しく思うと言うのは、それらを見て元気を分けてもらうと言う感情によるものと大人になっていく中でどこか失ってしまう真っ直ぐさを失わずにいる雪風の強さに対する嬉しさなのだろう。
「若者を見て、喜べるのは年寄りの特権ですな。
あっはははははははは」
「……そうですね」
だが、私はそのことで再び己の卑小さを認識させられた。
雪風の見知らぬ世界に来たと言うのに毅然とした姿勢で現実に向き合い、平和を害する者に怒りを感じ、間違っていることに間違っていると堂々と言える。
それに比べて、私はどうだ。
確かに両親には恵まれなかったのかもしれない。
けれども、多くの人々を危険な目に遭わせる事件を引き起こし、その後に最愛の弟すらも危険な目に遭わせ、その弟に自分たちの過ちによる責任を背負わせようとしている。
「でも……雪風さんの泣いた理由もわかります……」
真耶はあの娘、いや、彼女の涙の理由を考えた上で苦しそうに言った。
私は彼女の本当の年齢を知ったこととは別に彼女を二度と子ども扱いできないだろう。
『世の中には……
守りたいのに……
力を持っているのに……
守れない人もいるんです……!!』
彼女が泣き叫びながら口に出した言葉の中に秘めた感情は平和の中でしか生きたことのない人間には解からないことだ。
彼女の生きてきた道にはきっと、そう言ったことが多くあったのだろう。
「「平和」ってなんなんでしょうね……」
真耶が不意に呟いた。
「それは私にもわからんよ……
戦後の復興の中で生きてきた私にも……」
真耶の問いに答えたのは理事長だった。
戦後の平和教育と戦争の悲惨さを親に教えられながら育った彼すらも雪風との出会いで「平和」の意味を模索しだした。
もちろん、戦争などない方がいいに決まっている。
しかし、ただ腐敗していく秩序の中で己の耳障りのいい言葉と現実だけを選び辛い現実を見ないのは果たしてそれは「平和」なのだろうか。
『平和を尊い』と言いながら、その「平和」の中における都合のいい現実しか見ないでいることが本当に正しいことなのだろうか。
だが、どれだけ現実から目を逸らしても仮に一夏以外の男性のIS適合者が続出するか、それとも「IS」と同等かそれ以上の戦力を男性も使える様になった時にどうなるか。
それは今までの「歪み」が大きければ大きいほどとんでもないことになるだろう。
一度虐げられた者はそれを忘れずに戦いを挑むし、特権で甘い汁を吸っていた者はそれらを捨てられない。
そして、それは大きな惨禍を招く。
『少なくとも私は今の平和のままじゃいけないと思いますね』
雪風が纏う雰囲気を同じように纏っていた彼女は恐らく私と互角かそれ以上の「IS操縦者」でありながらも「IS」による特権を嫌った。
この世界の平和は歪んでいる。
この秩序を作った愚かな人間の一人である私ですらそう思っている。
しかし、それでも彼女は
『……でも、私は「平和」を守ります。
それが自衛官としての私の誓いです』
そう言った。
彼女は軍隊を持たないと言う理想の中で国と平和を守る現実の力である自衛隊の指揮官を父に持ち、たとえ「IS」が無くても「平和」を守ろうと自衛隊員になることを目指してきた彼女もまたその歪みに気づいていた。
しかし、今の彼女は自衛官ではない。
『私はただこの静かな故郷の海を守りたいだけですよ』
最強のIS操縦者の一人である彼女もまた「IS」によって人生を狂わされた一人だ。
元々は自衛隊の女性隊員を目指していたが、そのあまりの高すぎるIS適正によって彼女は普通の自衛官になることができなかった。
そして、元自衛官である彼女がどれだけ「IS特権」や「女尊男卑」を否定しても多くの人間は「シビリアン・コントロール」を盾に彼女の政治的で思想的な発言を弾劾するか、彼女の発言を黙殺するだろう。
「雪風を
私はせめて、この世界で雪風が絶望しないように私が唯一、尊敬したISの操縦者である彼女に会わせたいと思った。
「彼女か……」
理事長もどうやら、彼女のことに関しては思うことがあったらしい。
「確かに……
世界最強と言われる私の一つ下の後輩である「もう一人の世界最強」と呼ばれたIS操縦者だ。
普段は本当に虫も殺さないと言える程、たおやかであるがその本質はまさに武人とも言えるほど芯がある人間だ。
だが、彼女は世界最強の一人でありながらも在学中に「IS」の脆さを知っていた希有な女性でもあった。
いや、正確には彼女が度々口に出していたのは「ISを操る人間」の弱さだった。
『……どうしたんですか?
ほら、早く立ち上がりなさい』
在学中に「IS」の性能の高さから自衛隊の人々や男性を侮辱するような言葉を発した新入生、それも代表候補生の人間を圧倒し、なおかつ長時間もわざと戦いを引き延ばして相手のシールドエネルギーを限界まで削りながらも彼女はわざと相手に痛みを与えるやり方で攻撃し続けた。
その姿に学園や政府の多くの人間が震え上がったのは覚えている。
『所詮、「IS」を身に纏っても肝心の操縦者が弱ければ意味がありません。
そのことをお忘れなきように』
彼女のその言葉は未だに耳に残っている。
実際、彼女に痛めつけられた人間の中で再起可能だった人間はほとんどいない。
なぜならば、彼女の「IS」の試合は最早、スポーツですまないからだ。相手が吐くまで、いや、吐いても彼女は試合を続行させる。
そんな彼女のことを人々はその戦いぶりから
「「鬼の華武者」ですか……」
そう呼んだ。
彼女の空中よりも地面すれすれをまるで滑空するような素早い動きや苛烈な攻撃手段、「IS」展開時の両腰にロケット弾と日本刀の近接武装、大量の砲門が備わった籠手の様な装備と言う出で立ち、そして、そのどこか芸術の領域までに高められながらも苛烈な戦いぶりから人々はそう彼女のことを恐れた。
「よし、これで大体は回ったわね」
「は、はあ……」
私は彼女に手を引かれるままに学園中を案内された。
普段、彼女たちが講義を受けているであろう講堂(こちらでは「教室」と呼ばれているらしい。そう言ったことから、ここは本当に学校のようだ)や、食事を行う食堂、「IS」をまとっての模擬戦を行うアリーナなどの施設を案内させてもらった。
「あの……」
「なに、雪風ちゃん?」
更識さんに訊ねたいことがあって私は彼女に声をかけた。
彼女は私よりも年下だと把握しても相変わらず私のことを「ちゃん」付で呼んでくる。
「先程、あなたは織斑さんに自分が私のことを預かると言いましたが……
それは本当ですか?」
彼女と織斑さんとの会話で推測できる私の処遇について私は真偽を確かめた。
私としては一介の生徒の代表である彼女がどうしてあの場にいたのかすらも疑問であった。
しかし、彼女の扇子を即座に変えているであろう器用さと技術、得体の知れない私のことをまるで挑発するように見せてその実は最も話題が進みやすくしたそのさり気ない態度に私は彼女をただ者じゃないと認識を改めなくてはならないことになった。
「そうよ。
まあ、詳しいことは生徒会室に着いてから話すわね?」
彼女は私の疑問には答えるつもりではあるが、それは部屋に着いてからであると告げた。
今は……彼女に従うしかありませんね……
織斑さんや山田さんが信頼して話した人物なのだ。
となると、彼女は今後の私の身の振りに大きく関わる人物であり、彼女はそう言った職に関わっている可能性もある。
それに……彼女の
彼女は自分が裏の顔を持つことを遠回しに告げた。
私も幼い時から戦場に身を置いてはいたけれど、この年齢の少女が
きっと、この人も色々と何かを背負っているんでしょうね……
「さて、着いたわ」
私が目の前の少女が背負うものを案じていると、どうやら彼女の執務室らしい生徒会室に辿り着いたらしい、
それと、驚いたことだがこの世界では横文字は左から読むらしい。
ある程度、英語やロシア語を読める私でも流石に祖国の文字が左から読むことには難儀しそうだ。
―コンコン―
「虚ちゃん、ただいま~。
お客さん込みで帰って来たわよ」
彼女は扉をノックすると同時に部屋の中にいるらしい人物に声をかけて扉を開けた。
すると、そこには
「おかえりなさいませ、お嬢様」
と眼鏡をかけた理知的な更識さんと同年代らしきこの学園の生徒の少女がいた。
「そちらの方は?」
私のことを確認すると彼女は更識さんに訊ねてきた。
「あ、この子はこれからうちで預かることになった雪風ちゃんよ。
ちょっと、訳あり」
「……なるほど。
初めまして、雪風さん。
生徒会会計を務めている布仏 虚と申します。
今後、よろしくお願いします」
と彼女は見かけから感じられるほど礼儀正しく私に自己紹介を兼ねて挨拶をしてきた。
それを見て、私は
「あ、はい。
中華民国所属訓練艦及び元帝国海軍陽炎型駆逐艦八番艦の雪風です。
これからよろしくお願いいたします」
と反射的に自分の軍の所属と経歴を込めた自己紹介をしてしまった。
「……中華民国?帝国海軍?駆逐艦?八番艦?」
「………………あ」
うっかりしていた。
またもや、私の名乗りが原因で初対面の人を困惑させてしまった。
このままではまたこちらの世界の常識を一から説明しなくてはならない事態に陥ってしまった。
「あー、はいはい。
詳しいことは私が後で説明するから、今は雪風ちゃんにこれからのことを説明するのが先よ」
と再び話が平行線を辿らないように更識さんがまずは私に説明をする配慮を示してくれた。
「……すみません」
私は彼女の配慮に助かったと思い感謝すると同時にこれからの自己紹介について色々と考えていく重要さを噛み締めた。
「いいのよ……
虚ちゃん、この子のことは私が後で説明するから
それでいいわよね?」
更識さんが布仏さんに確認を取ると
「解かりました。
どうやら、込み入った事情のようですのでお気になさらず」
布仏さんは更識さんを不満を覚えるのではなく信頼を示して了承した。
「……そう、ありがとう」
そんな布仏さんに更識さんは笑顔と感謝で返した。
彼女たちの間には大きな信頼関係があることが窺がえる。
まるで……あの2人みたいですね
私は2人の関係と第一印象から陽炎型の長女と次女の2人を思い出した。
2人は陽炎型の姉妹の中では私の所属していた第十六駆逐隊と並んであの「華の二水戦」に所属していた10人いた陽炎型の姉妹でもあった。
明るく人たらしで楽天家で誰よりも仲間思いで姉妹から最も慕われた長女と陽炎型の中では一番冷静だが怒らせると一番恐くもあった武闘派であるが陽炎型の「誇り」を体現した次女は性格はほぼ真逆であったが、陽炎型の中で「最強の2人組」と言えば、紛れもなくあの2人だった。
目の前の多少明るさが似ている更識さんと理知的で冷静な感じのする布仏さんのお互いの信頼関係はそんな2人を思い出した。
「じゃあ、雪風ちゃん。
まずは私の裏の顔から説明させてもらうわね」
更識さんは先ず、自分がいかなる立場の人間であるのかを話そうとしてきた。
「わかりました。
お願いします」
私はそれを聞こうと思った。
彼女が何者かを聞くのは今後の生活の中で重要なことになり、彼女に世話になる身としては彼女に迷惑を掛けないですむ範疇を理解できるはずだからだ。
そして、彼女は何かを企むかのようにニヤッとしてから
「そう……
じゃあ、遠慮なく話すわね。
私は「更識」と言う家の当主なの」
そう言った。
「……え!?
その年齢で一つの家の当主なんですか!?」
彼女の明かした身の上に自分のことを棚上げして私は驚愕した。
「……それ、あなたが言っちゃう?」
と私の反応を見ていると更識さんはしてやったりとした表情でどこか楽しそうだった。
よく見ると扇子に「大成功」と書かれていた。
「……さっきのお返しですか」
私は苦笑いを浮かべながらそう言った。
どうやら、彼女も「年齢」のことに関しては私とは違う意味での相手を驚かせるネタを用意していたらしい。
あと、これは先程の私の実年齢に対する意趣返しらしいことも窺がえる。
彼女は時津風並に悪戯好きであるらしい。
「ま、本題はここからよ。
いい?雪風ちゃん、「更識」の仕事は―――」
彼女はお調子者らしい口ぶりをしながら話の主旨に入ろうとしていた。
だが、
「対暗部……」
「……!?」
その眼は笑っていなかった。
「つまりは対スパイ・工作員・諜報部隊相手に対する暗部をしているのよ?」
その眼は
しかし、どこか覚悟の据わっていた眼であった。
銀英伝読んでいるとどうしてもIS世界の軍人たちもかなり不遇な目に遭ってると思わざるを得ないんですよね。