奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第53話「蘇る悪夢」

「後少しで戦闘空域よ!!

 みんな!気を引き締めていくわよ!!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

 周囲との通信が途絶えてから三分も経たないうちに恐らく、一夏さん達が「銀の福音」と交戦しているであろう座標まで差し掛かり鈴さんが全員の気持ちを引き締めようとした。

 

「鈴さん。

 念のため、私が先行して威力偵察を行うのはどうですか?」

 

 今、私たちは現場で何が起こっているのか把握できていない。

 もしかするといきなり敵の目の前に突入する可能性があるかもしれない。

 ことは一刻も争う事態ではあるが、やはり出来る限りの情報は集めておきたいと考えて私は自分が先行して様子見をしつつ、もし会敵したのならばそのまま戦闘に入ることを提案した。

 

「却下よ。

 確かにこの状況だから少しでも情報は欲しいけどそもそも通信が使えない状況じゃ偵察の意味も薄れるわ。

 それならいっそ、全員で突入した方が相手の度肝を抜けると思うからいいと思うわ」

 

「……悪くない提案ですね」

 

「でしょ?」

 

 だけれども、この通信が全く使えない状況では偵察の意味が殆どなく、それならば逆に全員で突入する方が敵を攪乱出来ると言う相手が暴走している「軍用機」ではなければ極めて私好みで理に適っている提案を鈴さんは逆にしてきた。

 

「……鈴もだけど雪風も割と……」

 

「言うな、シャルロット……

 そもそも凰は未だしもお姉さまの雄姿は」

 

「はいはい。

 確かに雪風の戦い方を見ていると違和感がないよね?」

 

「二人とも……

 「オープン・チャネル」なんですから丸聞こえですよ?」

 

「ちょっと……!

 『あたしは未だしも』って何よ!?」

 

 念のために通信を「オープン」にして誰かが拾ってくれるのではと期待していたことでシャルロットさんとラウラさんのしていた会話を耳にした私たちは抗議した。

 

「あ、そうだったね」

 

「お姉様!!

 凰と異なりお姉様の勇ましさには優雅さがあります!!

 ですので、問題ありません!!」

 

「わかってますけど……

 ラウラさん……でも、その言われ方は複雑です……」

 

「だから、何であたしは別なのよ!?

 頭にきた!!いずれアンタとは決着付けないとと思っていたけど帰ったらぶん殴ってやる!!」

 

 元軍人。それも生粋の水雷畑である「二水戦」の駆逐艦としては「勇ましい」のは嬉しいけれども、今の意味合い的にはまるで野武士みたいな感じが込められていたので私は女性としては複雑だった。

 

「まあいいわ……

 後少しで突入よ!!

 今度こそ気を引き締めるわよ!!」

 

 鈴さんはラウラさんに貶されたことへの不満が未だに燻っていたがそれでも突入間際となると気持ちを切り替え、それに全員が続いた。

 やはり、こういう状況で一番自分の心情に正直で素直な鈴さんは頼りになる。

 進み続けてこのまま突入しようとした時だった。

 

『誰か、おりませんの!?』

 

「「「!?」」」」 

 

 突然、通信が反応しセシリアさんのまるで助けを求めるかの叫びが聞こえて来た。

 

「セシリア!?」

 

 ようやく入って来た私たち以外からの通信。

 それも今、戦っているであろうセシリアさんからの通信ということもあり鈴さんは即座に喰い付いた。

 

 通信が直った……?

 いえ、ちょっと待ってください……

 それならどうして他の人からの通信が……?

 

 一瞬、私は通信が回復したのではと期待したが、それならば作戦本部や空域と海域を閉鎖している他の教員から一気に状況把握のための連絡が入ってくるはずだ。

 そのことから私は言い様のない不安を感じた。

 

 どうしてセシリアさんの声しか聞こえてこないんですか?

 

 それは聞こえて来るのはセシリアさんの声だけだったことだ。

 しかもそのセシリアさんの声は切羽詰まったなどという表現がとっくのとうに過ぎている声音でありただことではないその様子に不安を感じた。

 

「ねえ……

 あれって……」

 

「ん?どうしたシャルロッ―――

 !?」

 

「なっ!?」

 

 そんな中、シャルロットさんは何かに気付いたのか戸惑いがちに私たちに指摘するような言葉を投げかけて来た。

 その彼女の言葉を受けて私はシャルロットさんが何故幽霊を見るかのような反応をしてどうしてセシリアさんの声だけが通信に入って来たのかを知ることになった。

 

「っ!?」

 

「はあはあ……!!!」

 

「セシリア!?」

 

 セシリアさんが突然私たちの下に飛び込んで来た。

 セシリアさんが私たちと通信が出来た理由。

 それは至って簡単だった。

 ただ彼女が私たちの傍まで来たことで通信が生きている範囲に入って来ただけだったのだ。

 

「セシリア!?

 ちょっと、どうしたのよアンタ!?」

 

「鈴さん……」

 

 鈴さんは今の彼女の様子を見て衝撃を受けていた。

 いや、鈴さんだけじゃない。

 この場にいる全員が彼女の今の状態を見て困惑している。

 今、彼女の「IS」は装甲が黒ずみボロボロになっており交戦の末に追い詰められたことを否応なしにも理解させられる。

 何よりも私たちが焦りを感じたのは今のセシリアさんの精神状態だった。

 

「一夏さんが……!!!一夏さんが……!!!」

 

「!?」

 

「一夏に何かあったの!?」

 

 セシリアさんはしきりに一夏さんの名前を叫び続け、彼に何かあったことを伝えようとしてきた。

 彼女の様子から私たちは最悪の想定をしてしまった。

 

 いえ……!

 まだそう決まったわけでは……!!

 

「……セシリアさん。

 落ち着いて下さい。

 一体何があったんですか?」

 

 私は自分までも動揺すればますますセシリアさんが恐慌状態に陥り、話すことが出来なくなると考え中華民国時代に部下の娘たちにした時のように彼女に静かに訊いた。

 セシリアさんは助けを求めていた。

 もし彼が死んだりすれば間違いなく彼女は冷静さを捨てて仇討と称して闇雲に突撃しているはずだ。

 少なくとも、妹たちを殺された私はそういうことが多くあった。

 だから、一夏さんは間違いなく生きているはずだ。

 

「……いきなり所属不明の「IS」が介入してきて私たちと「銀の福音」に攻撃してきたのですわ……」

 

「え……」

 

「な、何よ、それ!?」

 

「所属不明って!?」

 

「馬鹿な!?」

 

 セシリアさんの何とか落ち着きを取り戻して吐き出したその言葉に誰もが耳を疑った。

 この海域は封鎖されているはずだ。

 そんな場所に突如として謎の「IS」集団が入って来るとはにわかには信じられない。

 

 いえ……

 セシリアさんの被害状況から十分あり得ますね……

 もしや、この通信状態も……!

 

 けれどもセシリアさんは嘘を吐いていないだろう。

 彼女の「IS」や精神状態からそれが事実なのは間違いないだろう。

 もしかすると、この通信が最悪な状況はその謎の集団が関わっているのかもしれない。

 

「それで一夏さんが……「銀の福音」の搭乗者を見殺しに出来ないと言って……

 わたくしには外に出て助けを求めろと言って……」

 

「!?」

 

「何ですって!?」

 

「マズいね……」

 

「ああ」

 

 そして、彼女がこの場にいる理由が明かされた。

 彼はこの通信が満足に使えない状況でこの異変を誰かに伝えるのに高機動状態のセシリアさんが向いてると判断したのだろう。

 恐らく、同時にそれは彼女を逃がすためでもあるはずだ。

 私たちはさらに不安と焦りを募らせた。

 この作戦は私たちだけではなく一夏さんも長期戦を想定していない。

 仮に私たちが逃したとしても相手を消耗させれば外にいる教員が対処してそのまま確保するという方法をとっていたからだ。

 加えて一夏さんは「零落白夜」を一度使っている。

 それはつまりエネルギー残量が少ないことを意味している。

 そんな状況でエネルギーが切れれば一夏さんは嬲り殺しだ。

 

「……わかりました。

 その所属不明の部隊のことを少しでも教えてください……」

 

 この作戦は失敗だ。

 そう判断した私はセシリアさんから例の部隊を訊き一夏の救出とその後の撤退戦を考えようとした。

 「銀の福音」に関してはあちらは出力の高さから私たちが一夏さんを救出する際のどさくさに紛れて自らの速さで離脱することが可能だろう。

 ただそれでも当初の目的が達成できないというのは無念だ。

 けれども、一夏さんが生きているのならばなんとかなる。

 生きていれば失敗など軽いものだ。

 

「わかりましたわ……

 その……信じられないと思うのですが……」

 

「?」

 

 セシリアさんは歯切れの悪い様子を見せた。

 一体、どうしたのだろうか。

 

「相手はまるでわたくしの「ブルー・ティアーズ」のようなビット兵器を百基近くも繰り出してきたのですわ……」

 

「え……」

 

「「「……え?」」」

 

 その言葉を聞いた私は頭を金づちで叩かれたような衝撃を受けた。

 

「ちょっと、セシリア……

 百て……」

 

「いくら何でもありえないよ……」

 

「何かと誤認したのではないのか?」

 

「本当ですわ!?

 本当にそれ位の数で襲ってきたのですわ!?」

 

 三人はセシリアさんの証言に懐疑的な姿勢を見せ、セシリアさんは必死に自分が本当のことを言っていることを訴えた。

 

「……セシリアさん……他には……特徴はありましたか……?」

 

「雪風?」

 

「お姉様?」

 

 けれども私は頭がふらふらと思考がおぼつかず、心臓がドクンドクンと強く脈打ち、呼吸が荒くなっているのを感じて言い知れぬ不安を少しでも拭い去りたいと願って私の方こそがセシリアさんに縋るように訊ねた。

 

 違います……

 そんなことがある訳が……

 

 セシリアさんが出したその絶望的な物量に私はこの世界にいる筈の存在を想像しそれがただの私の妄想であって欲しいと願っていた。

 

 きっとそうです……

 例の「無人機」を送り込んで来た人間が作った新型の筈です……

 

 ただ敵の数が百基ということだけで私は何を考えているのだろうか。

 そんなことは当たり前の筈だ。

 古今東西、数こそが戦いの全てと言わているのだ。

 数が多いのは当たり前のことだ。

 きっとそういった設計で創られた亡国の兵器の筈だ。

 私はそう思うことで冷静さを保とうとした。

 

「そうでしたわね……

 あと……()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

「え……」

 

 その言葉で私の頭にピシりと何かが割れるような音がした気がした。

 

「雪風の砲撃音て……あんたねぇ……」

 

「そうだよ?

 いくら何でもおかし過ぎるよ」

 

「全くだ。お姉様のあの勇壮な砲撃がそんなテロリスト紛いの連中と同じだとは……」

 

「ですから、本当なのですわ!?

 あと、もう一つあり得なかったのは―――」

 

 嫌だ。聞きたくない。そんなことはあり得ない。あってはいけない。もう嫌だ。聞きたくない。お願いだから。

これ以上、言わないで。怖い。止めて。

 

「―――妙に()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですわ」

 

「はあ?何よ、それ?

 幽霊にでも襲われたって言うの―――」

 

「嘘です!!!!」

 

「―――!!?」

 

「「「!!?」」」

 

 私はセシリアさんのその言葉を遮るように叫んだ。

 

「ちょっと!?雪風!?」

 

 そのまま私は何も考えることをせずただ前に向かった。

 

 嘘です……だって、ここはあの世界とは違うんです……!!

 

 私はセシリアさんの言葉を否定し続けた。

 でも、同時に

 

 二度と奪われてたまるものですかぁ……!!!

 

 それが本当であったらと考えると奪われることを許せずただただ走り続けた。




百戦錬磨の雪風が冷静さを失った理由としては
もう会うことがないと思っていた深海棲艦に出くわしたことと彼女たちに再び誰かを奪われることへの恐怖が生まれたからです。
例えるのならば、某メト〇イドで倒したはずのリ〇リーに再びサ〇スが出会って動揺したのと同じです。
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