奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第55話「炎」

「どうした。

 誰か応答しろ」

 

 暴走した軍用機を偶々そこにいたからと言って一応は学生相応の学園関係者までもを巻き込むという形の鎮圧作戦ということに違和感を抱き続け、常に気を張っていたが、その最中に突然、作戦空域全てにいる人間との通信が途絶えた。

 その後、私は五分近くも呼びかけているが誰も応答せずにおり、焦りを面に出さずにはいられなかった。

 

 どうなっている……

 全ての観測機器があの地域だけ観測できずにいるだと?

 一体、何が……

 

 異常なのは通信が不能になっているのが学園の教員が封鎖しているその海域に限定されていると言うことだった。

 もし仮に通信が不可能になったとしても、作戦の状況と参加者の安否を確かめるための手段として衛星を介して情報が入ってくるはずだ。

 なのにそれすらも入ってこない。

 

「束。

 これも貴様のしわざか?」

 

 私は未だに殆ど確実だと感じながらもまだ疑惑の域にしか入っていない今回の「銀の福音」の暴走に関わっているであろう張本人である束にこの事態のことを訊ねた。

 

「え~?

 それは違うよ?と言うか、束さんも「白式」とあのチートちゃんのデータが欲しいから衛星をハッキングして中継しようとしていたのに何も映らなくて非常に退屈してるんだけど?

 ちーちゃん、冤罪だよ?」

 

「ぐっ……」

 

 束のその反応を確認して私は一瞬でこいつが通信障害には絡んでいないことを理解させられた。

 束は嘘を吐かない。

 というよりも噓をつく必要がない。

 秘密主義の一面も強いが、こいつはそれ以上に欲望に忠実だ。

 そして、同時に束が先ほどから自らの知的好奇心を満たそうとしているのにそれが出来ずにいることからこの事態が束でさえどうすることもできないことであるということを理解させられた。

 

 一夏……!

 

 あれ程、偉そうに弟の前で教師面をしていたのにこの状況に対して不安が募っていくだけだった。

 

 頼む……雪風……

 この状況ではお前だけが……!!

 

 そして、私は作戦メンバーの中でこんな状況になっても唯一対処することが出来る可能性がある雪風に心の中で縋った。

 彼女にとってはきっと多くの悲しみがあったと思うが何度も死線をくぐって来たという経験があることから、こういった不測の事態に対応できる冷静さを期待できてしまう。

 それがどれ程までに彼女にとって残酷なことなのかを理解しながらも私は身勝手にそれを望んでしまっている。

 

 すまない……川神……

 

 自らの情けない姿に私は自らを犠牲にしてでも教え子と妹分を守り続けて来た川神との差を大きく感じると共に、彼女にとってはそれこそ命よりも大切な教え子を死地に向かわせた挙句、このような不測の事態を招き、その教え子に縋ることへの身勝手さに嘆いていた。

 その時だった。

 

『織斑先生!!!』

 

「……!!?」

 

 今まで通信が効かずただただ不安と焦りの中にようやく流れて来たその通信に私は耳を即座に傾けた。

 

「オルコットか……!!」

 

 それはオルコットの声だった。

 

 他の通信は……

 無理か……

 

 オルコットの声を耳にして私は他の通信ももしかすると通じるかもしれないと一瞬、期待したがそれは打ち砕かれた。

 

 だが、オルコットが帰還したということは……

 今のところ、作戦は順調ということか……

 

 私はオルコットの通信が可能になったことでどうやら彼女が目的を全うして帰還したということを把握した。

 元々、オルコットは作戦の途中で離脱することが決められていた。

 その彼女が帰ってきたとなるとどうやら、作戦は上手く行っているのだと私は考えていたが

 

「!!?」

 

 それはただの希望的観測に過ぎなかったということを私はオルコットの「IS」を目にして思い知らされた。

 

「どうした!?その恰好は!?」

 

 液晶に映ったオルコットの様子はどう見てもただ事ではなかった。

 オルコットの専用機はよくここまで戻ってくることができたかと思う程に至る所が破損していた。

 その壊れようはまるで大量の爆撃を浴びた様に黒ずんでおり、もし「IS」の絶対防御がなければ間違いなくオルコットの身体は彼女の「IS」の破損箇所の通りに焼け爛れているならばまだよく、身体の何割かを失っていたかもしれないという可能性を物語っていた。

 

『先生……!!

 一夏さんが……一夏さんが……!!!』

 

「!?」

 

 その一言に私はまるで頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。

 

 ……落ち着け……今、私が感情的になってどうする……

 

「……落ち着け、オルコット。

 一体、何があったんだ」

 

 私はオルコットの精神状態を見て、大人であり教師という身分があることから、一夏への心配を胸の奥に沈めて、オルコットを落ち着かせようと考えた。

 殆ど中身のない「世界最強」という肩書ではあるが、こういった時に役立てるのならば本望だ。

 

『突然、謎の「IS」を身に纏った集団とそれらが繰り出すビットの大群に襲われて……

 一夏さんがわたくしに『助けを連れて来てくれ』と……!!

 それで……わたくし……!!』

 

「な!!?」

 

 何とか拙い言葉ながらもオルコットの口から出てきた信じられない事実に私は言葉を失った。

 

 馬鹿な!?

 謎の「IS」の集団だと!?

 そんなもの……通信が切れる前に影の一つも見えなかったぞ!?

 

 最早、言い訳にしかならないと思うが常に不測の事態に備えて私は作戦空域にずっと目を光らせていた。

 しかし、その中で私はオルコットの言う『謎のIS』とそれらが使用したとされる『ビットの大群』は確認できなかった。

 

 束か!?

 いや……それならこいつもこんなつまらなそうな顔をしないはずだ……

 

 一瞬、これが束の仕業かと考えそうになったが、当の本人が退屈にしているのを見てそれはないと判断した。

 

 まさか、本当に……!

 

 オルコットの状態と表情からそれが紛れもない事実であることを理解し、本当にその第三勢力がいることを私は認めざるを得なかった。

 

『それで途中で雪風さんたちと出会ったのですが……』

 

「そうか……」

 

 それを聞いて、私は少しだけだが身勝手な安堵感を抱いた。

 雪風たちと遭遇したということは少なくとも、雪風のたちはその敵の存在を把握しているということだ。

 雪風がそこにいる。

 彼女がいるのならば彼女の経験によって撤退を上手くこなせる可能性が高くなったのだ。

 

 よし……

 後は事態を重く見た他の教員の一人と交代して私が前線に出て全員を避難させれば……

 

 雪風一人に任せる訳にいかないと考え、私は自分が出来ることを考えていた時だった。

 

『突然、その話を聞いたら雪風さんが人が変わったように一人で一夏さんのいる場所へと向かってしまったのですわ……!!!』

 

「なんだと!!?」

 

 頼みの綱とも言えた雪風のその行動を知り、私はその淡い希望すらも打ち砕かれてしまった。

 

 雪風が暴走だと!?

 何故だ……一体、どうしたと言うのだ!?

 雪風!?

 

 ◇

 

 あれ……

 俺……生きてる……?

 

 突然訪れた横からの身体への衝撃に俺はあの至近距離で連中の攻撃を受け、そのまま嬲り殺しにされ運が良ければ即死か、悪ければ身体がバラバラになってその痛みにのたうつ腕も脚もないまま苦しんで死ぬかと考えていた。

 しかし、今の俺には先ほどの首を絞めつけられた酸素不足と嘔吐、そして、人を斬ったことへの罪悪感以外には目立った苦痛はなかった。

 

「!?」

 

 俺はどうして、自分が生きていられるのかと理由を探すために顔を上げ目を視界をはっきりさせるとそこにはある人間の後ろ姿があった。

 

「雪……風……」

 

 それは雪風だった。

 雪風はまるでそれが当たり前だと言わんばかりに海面に足をつけ俺がいた敵の集団の方へと身体を向けていた。

 

 そうか……雪風が……

 

 

 あの時、俺が受けた衝撃。

 それは俺が攻撃されそうになった時に雪風は咄嗟に「瞬時加速」を使って庇ったことによるものだったのだ。

 

「雪風、悪い……

 助かっ―――」

 

 今まで鈴やセシリアたち友だちを助けられたことはあったが自分自身が助けてもらったことに情けなさを感じるが、それでも助けられたことへの感謝を感じて俺は雪風に声をかけようとした。

 

「―――!!?」

 

 けれども雪風の背中越しに見える景色を見た瞬間に俺はその先の言葉を出せなくなってしまった。

 

 何だよ……あれ……

 

 そこにあったのは海の上にも拘わらず燃え続けている炎と立ち上る煙があった。

 そして、それらを囲むように撒き散らされた装甲と肉塊、青色の液体、そして、焼け焦げたり、身体の一部がなくなっているのに俺たち、いや、雪風のことを忌々しそうに見ている三人の女だった。

 それ以外の海上にいた影は全てそれ以外のものに変わっていた。

 

「おえっ……!!」

 

 その余りの現実離れした惨状に俺は耐えられず忘れかけていた吐き気が再燃してそのまま吐いた。

 

「はあはあ……

 雪風……お前、まさか……」

 

 俺は目の前の炎とその周囲の惨状が何が原因で生まれ、そして、それが誰によるものなのかを理解して恐る恐る目の前の人物に訊ねてしまった。

 

 ……やっちまったのか……?

 

 その言葉を口に出す勇気が俺にはなかった。

 でも明らかにこの現状を作れたのは雪風だけだ。

 つまり、それは雪風がやってしまったということだ。

 

 俺が……雪風に……

 

 同時に雪風にこんなことをさせてしまったのは俺がドジを踏んでしまったからであるということも理解させられた。

 雪風は俺が殺されると考えて咄嗟に相手を攻撃し、相手にあそこまでの重傷を負わせてしまった。

 

 俺が弱いせいで……

 

 自分を守るために雪風に人を傷付けさせてしまったことへの罪悪感が俺の頭を巡った。

 

 そうだ……

 何か言わないと……

 

 この優しい子が他人をあんな目に遭わせてしまった。

 そのことに雪風は恐らく悲しみを抱いているはずだ。

 俺はそう考えて、せめて何か言わないと思った。

 

()()……

 奪うつもりですか……」

 

 雪風はまるで地獄の底から湧いて出て来るような冷たい炎の様な声でそう言った。

 

 

「雪風……?」

 

 その想像とは異なる雪風のその声と言葉に俺は戸惑ってしまった。

 

「……一夏さん、ここから早く離れてください」

 

「……え」

 

 雪風はまるで機械の様に感情のこもらない声で俺にそう言ってきた。

 

「私は……彼らを殲滅します……!!!」

 

「!?」

 

 そして、雪風の口から信じられない言葉が出て来た。

 

「殲滅って……おい!!」

 

 それが意味することは雪風はさっきの攻撃、いや、今も明確な殺意を奴らに対して抱いていると言うことに他ならなかった。

 

「雪風!!待っ―――!!!」

 

 俺はこのままだと雪風が何処かへと行ってしまう気がして手を伸ばして止めようとした。

 

「―――くっ!!?」

 

 しかし、俺の手が雪風の身体に触れる前に雪風は既に目の前の三人へと飛んで行ってしまった。

 俺はそれを追おうとしたが

 

「っ……!!

 クソっ……!!」

 

 再びビットが集まり出し、「シールドエネルギー」を殆どなくした俺は避けることで精一杯だった。

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