奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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遂に雪風の季節限定グラ来たああああああああああああああああああああ!!!
待っていたぞ、この時を……!!我が世の春が来たああああああああああああああ(今、夏だけど)
しかし、まさかのスク水とは……でも、おかしい。
スク水なのにむしろ清楚さを感じる。
どっちにしても雪風は美少女。いいね?


第72話「勇気」

「っ……!」

 

 背後から次々と飛来してくる砲撃の直撃を避けるために狙いが付かないように蛇行を行いながら逃げ続けているが、その分距離が縮まり砲撃の間隔の幅が短くなっている。

 

 水上部隊だけならなんとかなりますが……

 

 けれども、それはまだ大した問題ではなかった。

 水の抵抗を受けない「IS」ならば距離が縮まっても隙を見て一気に距離を離すことが可能だ。

 問題なのはもう一つの部隊の存在なのだ。

 

 随分と近く聞こえてきましたね……

 

 私の耳にあの機体の構造の何処から出してくるのかわからない忌々しい音が次第に大きくなって聞こえてくる。

 そう。水上部隊から逃れるようと隙を窺おうにもその隙を見つけ出す時間が私たちに残されていないのだ。

 

 ()()……()()()……

 

 味方と共に逃げる私に迫ってくるこの音が大嫌いだ。

 この音が聞こえてくる度に私は助けようとした命を奪われる。

 

 大丈夫です……

 必ず……必ず何処かに活路があるはずです……!!

 

 こういった状況に何度も陥りながらも私は何度も生き残って来れた。

 なら、諦めたりしなければ何処かにその道に続く入口が存在するということだ。

 後はその入口を今度こそは友達と一緒にくぐり抜けるだけだ。

 

 簡単なことです……

 そう簡単なことのはずです……

 

 あんなに否定したかった「奇跡」や「幸運」に縋る様に私は生還すること簡単なことだと自分に言い聞かせる様にした。

 それが決して簡単なことじゃないことを承知の上にも拘らずだ。

 

「……雪風……

 もう……いいよ……」

 

 そんなとき、私の耳元に怯えが含まれている声が聞こえてきた。

 

「……何を言っているんですか……

 シャルロットさん……」

 

 私は回避し続けながら彼女が何を考えてそんなことを言っているのか理解しているのに、否定したくて確かめた。

 

「……もう、あのビットが近づいて来ているよ……

 ……あの砲撃も……それに雪風の「シールドエネルギー」もそろそろ……

 だから、僕の「エネルギー・パック」を使って……君だけでも―――」

 

 彼女がそれを言い切ろうとした瞬間

 

ふざけるなっ!!!

 

「―――!!?」

 

 それ以上そんな言葉を聞きたくなくて大声で遮った。

 

「雪風……?」

 

「まだあなたは生きているんですよ!?

 それにあれだけ『生きたい』って言っていたのに今更生きるのを諦めるんですか!!?

 そんなお願いは絶対に願い下げです!!!

 それにそんな震えた声で言われて誰が置いていけるものですか!!?」

 

 自分を犠牲にしてでも私を助けようとする彼女の意思を私は否定した。

 第一、私はシャルロットさんの『生きたい』と思って欲しくて彼女の友達になったのだ。

 なのにそんな友達を見捨てる様なことをしてたまるか。

 おまけにシャルロットさんは怖がっている。

 死ぬのが嫌なはずだ。

 そんな相手を見捨てるなど私には出来ない。

 

「「エネルギー・パック」なんかよりも「ガルム」を貸してください!!」

 

「……うん……」

 

 私は失った機銃の代わりに「ガルム」を貸すように言った。

 連射の利く「ガルム」ならば焼け石に水とはいえある程度の敵機の迎撃が出来る。

 だけど、私はシャルロットさんの言葉を拒絶したくてそう言うしかなかった。

 

「くっ……」

 

「雪風……?」

 

 私は何時の間にか泣いていた。

 

 ああ……

 そうです……どうして……みんなこんな風にしてくれなかったんですか……?

 

 シャルロットさんの死への恐怖が私を引き止めた。

 その結果、彼女を見捨てることになんて出来なくなった。

 

『時雨。白露。雪風。

 あなた達は逃げて』

 

『雪風、天津風、初風。じゃあね……』

 

『天津風を一人にしないでやってくれ……

 姉さん』

 

 どうして、私に一言『置いていかないで』と誰も言ってくれなかったんですか……!!!

 

 私が助けることが出来なかった人たちは最期の瞬間まで他人を優先してその恐怖を表に出さなかった。

 

 舞風みたいに泣いて助けを求めてくれれば……

 置いていけなかったのに……!!

 

 野分に聞かされた舞風の最期は死に対する恐怖で野分に助けを求める声ばかりしか存在しなかった。

 野分も「横須賀の野分」と呼ばれるほどに多くの戦いを生き抜いてきたが、同時に私と同じで「幸運」の名前を恨めしく思っていた。

 特に舞風を失った後の彼女は自分を責めるばかりで目を離すと自傷行為に走る程に不安定な状態で姉妹全員で支えていた。

 でも、私と野分は違った。

 

 あんなにも近かったのに……手を握っていたのに……

 

 野分は舞風と距離が離れた所にいて舞風が嬲り殺しにされるのを聞くことしか出来なかった。

 どうやっても野分には舞風の近くに行く方法も助ける手段も存在しなかった。

 だけど、私は連れて帰る途中だった。

 なのに私は手を離してしまった。

 比叡さんの時は嘘を吐かれ、時津風には諦められ、磯風の時は託されてしまった。

 全員、気丈に振舞っていた。

 恐怖を私に見せないで私を不安にさせない為に優しさを振りまいて。

 

「二度と……離しません……」

 

「え……」

 

 自分が死ぬことになっても今度こそはこの手を離さない。

 それが何時の間にか、言葉になって口から出てしまった。

 もう私にはそうやって自分に言い聞かせるしかないのだ。

 

「……ねえ、雪風?

 本当の君って……どんな子だったの?」

 

 私が後悔と焦燥に駆られているとシャルロットさんはそんな風に尋ねてきた。

 

「シャルロットさん……?

 本当のって……どういう意味ですか?」

 

 質問の意図が掴めず私は訊ね返した。

 『本当の私』。

 それが何を意味し、どうして今それを聞くのかが理解が出来なかった。

 

「鈴が言ってたよね?

 君には……もっと似合う笑顔があるって……

 それって……今の雪風と……昔の君は違うって……ことだよね……」

 

「!?」

 

 彼女は鈴さんのあの追求からそう考えたらしい。

 

「それにさ……

 今の君の様子……明らかに辛そうだよ……?」

 

「あ……」

 

 シャルロットさんは今の私の余裕のなさを指摘した。

 『二度と』と私は言ってしまった。

 そのことから彼女は理解してしまったのだろう。

 

「!?

 っ……!!」

 

「ぐっ……!」

 

 シャルロットさんの発言に気を取られながらもすぐに注意を目の前に戻し私は何とか砲撃を避けることが出来た。

 

「……雪風。

 お願いだから訊かせてよ……

 君のこと……」

 

「え……」

 

 敵の砲撃の真っ只中にいるのにシャルロットさんは私にそう頼んだ。

 

「……僕は……一夏や君のお陰で『生きたい』って思えた……

 いや、思い出すことが出来たんだ……

 あんなに嘘だらけで自分が嫌なのに……本当のことを話す勇気もなかった僕に……

 君たちは勇気をくれたんだ……」

 

「それは……」

 

 シャルロットさんは「シャルル・デュノア」を名乗っていた時のことを言ってきた。

 あの時のシャルロットさんの心は死んでいた。

 そこから助け出したのは私と一夏さんだと彼女は言った。

 

「だから……今度は僕が……

 雪風のことを……助けたいんだ……」

 

「……!」

 

 シャルロットさんは私を『助けたい』と言ってきた。

 今度は私に抱えている秘密を教えて欲しいと彼女は言ってきたのだ。

 

「……」

 

 一瞬、私は果たして自らの過去を話していいのかと悩んでしまった。

 私の秘密は彼女にとっては信憑性のないものだ。

 むしろ、ここで話したとして逆に彼女の誠実さを裏切ることになってしまうのではないかと考えしまったのだ。

 

「……わかりました。

 では……本当のことを話します……」

 

 だけど私はその悩みを抱えながらも話すことを決めた。

 彼女は私を『助けたい』と言ってくれた。

 そんな彼女の優しさに私は嘘で応えたくないのだ。

 

「まず最初に……私の年齢ですがあなた方よりも十歳は上です」

 

「……いきなり衝撃的だね……」

 

「……驚かないんですか?」

 

「……何となくだけど、雪風って落ち着いているからね……」

 

「……少し傷付きました」

 

「ごめん……」

 

 最初に私は比較的に受け入れてもらえそうな実年齢を明かしたが、シャルロットさんは衝撃を受けたようだが否定せず難無く受け入れた。

 

「……っ!

 次にですが……私は「艦娘」と呼ばれる戦うためにあれらの敵と戦うために造られた存在です」

 

 攻撃を避けながら私は今度は自分が「艦娘」と呼ばれる生まれながらにして戦う存在であることを明かした。

 

「そうなんだ……」

 

 シャルロットさんはまたしても否定しようとしなかった。

 もしかすると、ラウラさんの様に最初から「IS」に乗る為に造られた人間もいるのだから、割とこういった話もあるかもしれない。

 

「信じるんですか?」

 

「……うん。

 雪風の強さとか考えると納得しちゃうよ……」

 

「私の実力は()()()()と日ごろの訓練の賜物です」

 

 確かに「艦娘」は普通の人間よりも信じられない程耐久力や瞬発力、反応速度、再生力があるが私の戦闘における力は神通さんと日頃の訓練の成果だと私は主張した。

 

「……()()()()?」

 

「あ」

 

 私はうっかりと神通さんの艦娘としての名前を出してしまっていた。

 

 

「……川神先生の……その……「艦娘」としての名前ですよ」

 

「えっ!?川神先生もそうなの!?」

 

 一瞬、躊躇したがこれ以上、隠し事をしたくなかったことや変に誤魔化すと逆にまずいと考えて私は神通さんも「艦娘」であることを明かした。

 

「はい」

 

「えっと……じゃあ、川神先生も……その……」

 

 シャルロットさんは遠慮がちに訊ねてきた。

 無理もないことだ。

 他人の出生を聞いたり探ったりすることは避けるべきことだ。

 それにこの件に関して他ならない彼女が最も理解していることだ。

 

「いえ……()()()()()()()()は……紛れもなく「川神 那々」という一人の人間ですよ」

 

 でも、神通さんは私と違う。

 神通さんには私と違って実の親がいる。

 つまり、彼女は間違いなく人間だ。

 

「それどういうこと?

 それに……『この世界』……?」

 

「………………」

 

 シャルロットさんは私の言った事実の意味が理解できていなかった。

 これを理解しろと言うことこそ無茶なことだ。

 また、彼女は同時に私の発した『この世界』と言う言葉も気になったらしい。

 私は今からこの明らかに科学的にも技術的にもあり得ない話をするのか迷ってしまった。

 

「シャルロットさん……

 信じてもらえないと思いますが……今から話すことも紛れもない事実です」

 

「雪風?」

 

 でも、私はこれ以上隠し事をしたくないと思って彼女に話すことを決めた。

 

「私は……違う世界から来たんです」


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