奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第1章「人類の脅威のいない世界」
第1話「目覚め」


「う~ん……ここは……?」

 

 私が目を覚ますとそこはどこかの格納庫だった。

 

「……潮の音が聞こえない?」

 

 私は頭部にある電探を周囲の様子をうかがうと同時に艦娘として、多少強化されている聴覚で周囲を確認してみたが周囲からは私にとっては日常茶飯事で常に離れることがない潮の響が全く耳に入ってこなかった。

 

「あれ?」

 

 そして、私はそこであることに気づき驚くことになった

 

「……なんで、こんなによく聴こえるんですか?

 それにここは……」

 

 それは中華民国の旗艦として任務をしていくうちに「不死身(不本意な異名だが)」と呼ばれ続けた私でも老朽化と言う時の流れに敵わず、性能が落ちた私の索敵能力がかつての現役時代、いや、それ以上に上がっているのだ。

 確かに私は目と反射神経が良いことで有名で電探はそこまで優れていない。けれど、それでも私は艦娘としての当然の索敵能力は平均に至っている。

 艦娘としての私は集中すれば、それこそ人間を超えた五感を有している。

 だけど、今の私は前線を退いてから日に日に衰えていった身体能力でも、かつて、多くの戦友である艦娘と海の上を駆け巡ってきたときでもなく、それ以上に優れた索敵能力を有している。

 

「まさか……改修を……?」

 

 私は一瞬、艦としての役目を終えた私のことを中華民国軍ないしは帝国軍が施した何らかの施術でこれほどの回復が為されたと考えてみた。

 そして、そうなると私には新たな艤装が施されていると考えて身体を確認してみた。

 

「……これは、また変わった艤装ですね」

 

 私が目にしたのは今まで見たことのない艤装だった。と言うよりも艤装とは本来軍艦を模したものが多いのだが、この艤装は妙に鎧甲冑のように見える気がする。それになぜかこれは海上戦闘を主にする艤装ではない気がする。

 しかし、見覚えのあるにはある兵装も幾つかは存在していた。

 まず、頭に触れてみるとそこには「あの人」に「雪風のその電探は可愛いな」と言われて、それが原因で餌付けと称されてお菓子をよくもらうことになった丸みを帯びた二つの電探と私の高い生存率の理由となった測距義が存在した。

 しかし、火器については私が使用していたものとは異なるものばかりだった。

 まず、私の艤装は背中に魚雷発射管を背負い、連装砲を肩からカバンのように提げているものだ。

 今、私が展開している火器は両腕部に固定されているものだった。それぞれ、連装砲を左腕に、単装砲を右腕に装着されていた。

 そして、私たち駆逐艦の最大の武器とも言える魚雷発射管は後背部に収納されているが展開すると左右の両脇部にそれぞれ三連装が現れる型になっている。

 これは、この兵装は「彼女」のものだった。

 私と同じ傷を負っていた彼女の。

 私の戦友の1人で最後に私の前から消えてしまった「彼女」の。

 また、艦娘の擬装としては妙なのは脚部までに兵装が施されているところもだ。

 

「……これは一体」

 

 私は「彼女」のことを思い出してしまって気が落ち込んでしまった。

 私は元々、19人いる陽炎型駆逐艦の姉妹の中では明るい性格ではあった。と言うよりも私たち姉妹は基本的に明るく、子どもっぽい性格が多かった。

 だけど、多くの別れを経験したことや中華民国では旗艦と言う責任ある立場にいることで多少は威厳を持てと言われたことで子どもっぽいところは隠していく必要があった。

 本当の私は誰よりも泣き虫な一面が多い。

 ようやく私は特に仲の良かった第十六駆逐隊や第十七駆逐隊の面々や他の陽炎型の姉妹、第二水雷戦隊、そして、最後の作戦を共にした戦友たちの下へゆけると思っていたら自分は生きている。

 見えないけど、どこかの陸地の格納庫と新型と思われる艤装、そして、自らに施された改修に私は困惑し、あの暴風雨で受けた致命傷がありながらも生存していることに虚しさを感じた。

 

「あはは……なんで……この幸運を……

 他の娘たちに……分けられなかったんでしょうね……?」

 

 私はまた生き残ってしまった。

 軍艦として戦場で散ることはなかったのかもしれない。

 けれど、艦としてはあの損傷は致命傷だったはずだ。

 

「「奇跡」なんか……!!

 誰も救えないんじゃ……!意味がないのに……!!」

 

 恐らく、私は何らかの奇跡的な処置で生き残ってしまったのかもしれない。

 私は久しぶりに泣いた。

 生き残るたびに私は泣いた。

 私が泣いたのは最後に私と同じように他の同型艦を失いながらも生き残った彼女の胸で泣いて以来だった。

 だけど、私にはその悲しみに暮れる暇もないらしい。

 

「……誰か、近づいてくる」

 

 私はこの格納庫に近づいてくる者に気づき、すぐに涙を拭って気構えた。

 数はどうやら2人ほどらしい。

 この格納庫に来て、私のことを改修したとなると相手は恐らく軍の将校の可能性は高い。

 軍属の身としてはやはり、相手への敬意を忘れない方がいいだろう。

 私は背筋を伸ばして件の人物たちが格納庫の扉を開けるのを確認すると

 

「中華民国海軍訓練艦、雪風です!

 この度の改修に感謝申し上げます!」

 

 と一応は相手が善意で私のことを助けてくれたことには変わらないことから改修を施してくれたことに感謝の旨を敬礼をしながら伝えようとした。




 雪風のISは雪風の最後の戦友である彼女の艤装を模したものです。
 雪風と並んで風評被害(しかも、確たる証拠もない)が激しい彼女でありますが、雪風が救う艦に対して彼女は守る艦だと思います。
 後、理由としては雪風の艤装はISに向かない気がしたのでISにしても違和感のない彼女の艤装をISに模してみました。

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