奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「山城は無事かしら……」
「赤城さん……飛龍……」
「瑞鶴……」
「千代田……」
この場にいる中で最も年上に思える女性の中で特に大人びている三人の女性が何処か心配と悲しみをたたえた表情を見せていた。
「熊野。青葉は無事?」
「はい。古鷹さんのお陰で無事でしたわ。
きっとあの戦いも生き残っているはずですわ」
「そう……よかった……」
「利根姉さんも無事かしら……」
「大丈夫だろう。
利根はああ見えて中々しぶとい。
だが、私もみんなの気持ちは分かる。
特にああ見えて羽黒辺りが無茶をしそうで不安だ……」
「そうね……
私も高雄姉さんが無事だったのか不安だわ」
「すまない。鳥海……
お前の姉妹のことを……」
「……いいえ。むしろ、私のことを気にかけないで自分の姉妹のことは心配してあげて那智」
「すまん……」
そんな四人の後に続いて、同じような雰囲気を漂わせている彼女たちよりも少し年下に見えるグループが話し始めた。
どうやら彼女たちもまた先ほどの彼女たちと同じような気持ちを抱いているらしい。
「空母や重巡の人たちも心配しているか……」
「当たり前だクマ。
それに球磨達だって同じクマ……」
「うぅ……私……長女なのに……妹たちを……」
「あ、阿賀野ちゃん!気を確りして!!」
すると、先ほどの集団よりもさらに下の年齢に思えるグループが同じ様に誰かを心配している節を見せていた。
眼帯を付けた口調が男口調の人と、口調が余りにも特徴的な二人は何処か気構えており、長髪の黒髪の人は何処か泣きそうになっており明るい茶髪をした何処か山田先生ぽい人がそれを慰めていた。
「みんな、姉妹艦がいないうちが言うても説得力がないのは承知の上やが、先ずは落ち着け。
特にこの場には駆逐艦もおる。無理を言うてると思うが確りせなあかん」
そんな後悔や悲しみ、不安、心配が立ち込めている空気の中、最も小柄な部類に入るツインテールの女の子が妙な貫録を醸し出しながらそう言った。
「龍驤さん……」
「すみません」
「そうですよね……弱気になってはいけませんよね」
「せや!みんな頑張れ!」
奇妙なことにこの中で小柄な部類に入っている龍驤と呼ばれている少女の激励に全員が顔を上げた。
俺はそれに驚くしかなかった。
「うむ。その通りだ」
「そうね、良かったわ」
その龍驤と呼ばれる人の激を聞いて全員に平静さが戻ると、褐色で白髪の眼鏡をかけた大柄の人と、この中でもまさに大人の女といった雰囲気を漂わせている女性が納得した表情をした。
「なんや?
二人は心配しとらんかったのか?」
龍驤と呼ばれた人は意外そうだった。
「まあね。
長門のことだし何だかんだで生き残ってそうな感じがするのよ。
それに彼女、気丈だし最後まで気張ると思うわ」
「私も陸奥と同じだな。
大和のことだ。私がいなくとも最後まで美しく在り続けたと思うからな。
妹の私が信じてやれなくて誰が信じると言うのだ。
それに信濃とは会ったことがないがせめてものの姉としてやれることとしてあいつを信じてやりたいのだ」
二人は全員に向かって誰か、いや、どうやら彼女たちの姉妹らしい人物を信じているとはっきりと言った。
「……そうね。ありがとう。陸奥、武蔵。
大切なことを思い出せてくれたわ。
私が信じてあげなくて誰が山城を信じてあげられるのかしら……
あの子は私と違って連合艦隊の旗艦を務めたのだからきっと大丈夫」
「扶桑……」
「扶桑さん……」
二人のそんな姿勢に今まで最も暗い印象を見せていた扶桑と呼ばれる長い長髪の儚い女性が立ち直りを見せた。
どうやら口調や見た目に反してあの扶桑と呼ばれている女の人は芯のある人かもしれない。
様子を見てみると彼女の影響か先ほどまで暗かった雰囲気が明るくなっている。
「皐月、若葉、朝潮、照月。すまんなぁ。
うちらがこんなんで」
場の空気が明るくなると龍驤という女の人はこの場でも最も歳が下らしい中学生位のグループたちにそう言った。
「うんうん!僕は大丈夫だよ!」
「ああ、こちらも問題ない」
「はい!大丈夫です!!」
「えっと、大丈夫です!!」
すると、黄色に近い金髪の子が最初に元気に返事をし、次に何処か仕事人らしさを見せる茶髪の子がそれに続き、黒髪の長髪の気真面目そうな子、最後にあの中で一番大人びた外見なのに少し幼さが垣間見られる栗色の女の子が大丈夫だと言った。
どうやら、こちらは年齢に反してかなりメンタルが強いらしい。
それはいいけど……
俺は目の前の彼女たちの事情に何かしらの余裕が生まれたことは、特に中学生位の子達が元気になったことは他人ながら良かった。
だけど
誰だよ……あんたら……
彼女たちとは初対面の人どころかいきなり現れた彼女たちの存在に俺、いや、俺たちにとっては一刻も早くこの状況の説明が欲しかった。
今、分かっていることは彼女たちが山田先生たちを助けてくれた。つまりは味方だということだけだ。
誰もが生存を半ば諦めていた先生たちをまるで特撮ヒーローの様に突然現れて助けたのが彼女たちだったらしい。
というか、全員が「IS」持ちって……どういうことだよ……
彼女たちが全員数が限られている「IS」を所持しているということが信じられなかった。
しかも、その中には明らかに中学生ぐらいの子供まで含まれいてる。
普通に考えてあり得ないことだった。
「ちょ、ちょっと一夏……これはどういうことよ……」
「俺が知りたい……」
この状況に鈴は戸惑いを見せて内緒話の様に話をした。
仕方ない……このままじゃ何も進展がない……
俺は意を決して彼女たちに声を掛けてみようと思った。
「あ、あの~……」
俺はもう何が何やら分からないでいるが、この状況を少しでも打開しようと思って勇気を出して目の前の彼女たちに声を掛けてみた。
すると
「何だ、少年?
訊きたいことがあるのならば出来る限りのことを答えよう」
「え、えぇ……それは、その……ありがとうございます……」
「そう萎縮するな。
この状況ではむしろ我々の方こそが世話になりそうなのだからな!
はっはははははははは!!!」
「武蔵」と呼ばれた褐色肌の眼鏡をかけた姐御という言葉がまさに似合いそうなそのお姉さんは豪快に俺の萎縮した態度を笑い飛ばした。
どうやら、この人は見かけ以上に豪快なのだろう。
「む、武蔵さん。
あなたのその態度も彼らを萎縮させている原因では?」
「む~、確かにそうだな鳥海。
もしここにいるのが大和ならば気配りが出来そうであるし、摩耶ならば打ち解けそうだがな~……
すまんな少年よ。これも私の性分だ。はっははは!!!」
「あ、はい……」
俺が武蔵(?)さんの妙な迫力に圧されているとそんな彼女にもう一人眼鏡をかけている『鳥海』と呼ばれる変わったセーラー服を着ているお姉さんにフォローを入れられた。
すると武蔵さんは相変わらずの態度で詫びを入れてきた。
その名前からまるで武蔵坊弁慶をまさに女性にした様な女傑と思えた。
千冬姉とは違うベクトルで強そうだった。
「えっとですね……その……
あなた達と雪風はどういう関係なんですか?」
俺が最初に気になったこと。
それは彼女たちが雪風のことを知っているようなことだった。
今、この場にはいないが、加賀と呼ばれた女の人と叢雲と夕立という女の子はここに来た瞬間に雪風が何処にいるのかを訊ね、まだ帰還していないことを知ると山田先生と共に雪風を助けに向かった。
この人たちは……雪風を知っているのか?
わかったことで新たに生まれた疑問だった。
この人たちはあの敵との戦いに慣れていた……
それって雪風と同じってことだよな……
加えて、先生たちの報告によると彼女たちはあの謎の敵との戦いに慣れていたらしい。
それは雪風と同じようにも思える。
もしかすると、この人はたちは……いや、雪風も……
まだ色々とはっきりしないことだらけだが、雪風を含めた彼女たちが何者であるのか少しだけ分かってきた気がした。
「ほう?少年、まさか雪風の勇名を知らないのか?」
「勇名?」
武蔵さんは意外そうな顔をし出した。
「ああ、何せあいつはあの小さな体に見合わず我々戦艦や空母に劣らない実力、いや、それ以上の活躍をしていた駆逐艦だ。
名前を知らぬ者はいまい」
戦艦や空母……?
それに駆逐艦……?
武蔵さんは雪風のことをまるで彼女が歴戦の勇士を語る様に言ったが、それ以上に俺は「戦艦」や「空母」といった兵器の名前を口に出した。
ただ「駆逐艦」というものが何なのかは分からないが。
「……「戦艦」……「空母」……?」
「そして、「駆逐艦」……」
「まさか!?」
「え……?」
俺がその言葉の意味が分からないでいると鈴とセシリア、ラウラの三人が何かに気付いたらしく驚愕していた。
「すみません!!
もしかすると、あなた方の装備は軍艦と同じ火力と防御力を持っているんですか!?」
「ラウラ?」
ラウラは突然目の前の彼女にそう質問した。
その声には明らかな動揺が見られた。
「?
「艦娘」ならば当たり前だろう?
そうではなくては「深海棲艦」とは戦えん」
「!?」
「「艦娘」……?「深海棲艦」……?」
武蔵さんは意外そうな顔をしてきた。
しかし、それ以上に再び新たな言葉として「深海棲艦」という用語まで出てきた。
「……もしかすると、我々を襲ってきたのは……」
「……その様子だと知らんらしいな。
恐らくはそれだ。その連中が「深海棲艦」だ」
ラウラの新たな疑問に武蔵さんは少しだけ言葉を詰まらせたが、直ぐに俺たちを襲ってきた存在が彼女たちの言う「深海棲艦」だと語った。
何だ……一体、何が起きているんだ?
色々と訳が分からないことだらけで頭が混乱してきた。
どうやら鈴たちは俺の知らない何かを知っているらしい。
でもそれが何を意味しているのかが俺には分からない。
「では、「艦娘」とは……?」
ラウラは今度は戸惑い気味に訊ねた。
そういえばこの人はあの敵以外に「艦娘」という言葉を出してきた。
一体、それは何だろうか。
「?それも知らないのか?
「艦娘」というのは我々のことだ」
「え……」
武蔵さんは少し困った顔をしてラウラの質問に答えた。
「……すみません。
こう言ってはどうかと思いますが……
あなた方は人間なのですか?」
「え!?」
「ラウラ!?」
「それ、どういう意味だよ!?」
唐突にラウラはとんでもない言葉をぶつけた。
『人間なのか?』。それは要するに目の前の彼女たちが『人間ではない』と言っているも同然だ。
それはいくら何でも非現実的過ぎるだろうし、失礼だ。
「……そう言われると難しいところだな」
「え……」
だが、そんなラウラの質問に対して武蔵さんは少し困ったように答えるだけであった。
それはつまり自分が、いや、自分たちが人間ではないと言っているも同然だった。