奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第90話「晴れぬ謎」

「一体、それはどういうことですの……?」

 

 武蔵さんの口から出てきた自分たちがまるで『人間ではない』と答えているも同然の答えに俺たちは衝撃を受けた。

 

「……武蔵、ここはうちに任せや」

 

「龍驤?」

 

 俺たちが困っていると突然、龍驤と呼ばれていたまとめ役の様な人が話に割って入ってきた。

 

「君たちの世代の艦娘じゃこれは知らんことや。

 だから、ここは古株のうちに任せや」

 

「……?」

 

 龍驤さんは仕方なそうにしていた。

 

「……わかった。

 後は頼む」

 

「おう!」

 

 武蔵さんは少し困りながら龍驤さんに役割を交代した。

 

「すまんなぁ~武蔵はうちらの中では新顔なんや。

 だから、こういうのには慣れておらんのや」

 

「え?」

 

 龍驤さんは慣れていないと言ったがあれだけ堂々としていた武蔵さんのことを『新顔』と言うのには俺には疑問に感じられた。

 

 というか、この人たちの年功序列てどうなってんだ?

 

 一見すると、先ほどの大人びた面々や豪快さを見せていた武蔵さんではなくこの少し中学3年生位の龍驤さんがまとめ役をこなすなどこの人たちの力関係がよくわからない。

 一体、どうなっているのだろうか。

 

「あ~、その様子だと色々と話さんといかんなぁ~……」

 

「え、えっと……

 すみません」

 

 俺が困惑を表に出すとそれを見て龍驤さんは仕方なそうにしたのでそれに申し訳なさを感じて謝ってしまった。

 

「いいんや。気にせずとも。

 君、名前は?」

 

「え?織斑 一夏ですけど……」

 

「そうか……で、そこの子達は?」

 

「えっと……中国の代表候補生の凰 鈴音です」

 

「イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ」

 

「ドイツの代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒです」

 

「……ん?

 どうやら、色々とこっちも説明してもらわなきゃいかんことがある様やな。

 まあ、それは後や。よろしう。

 うちは龍驤型一番艦軽空母の龍驤や」

 

「え……」

 

「軽空母……?」

 

「それに一番艦……?」

 

 龍驤さんはまるでコミュニケーションの模範とも言える自己紹介を済ませてきた。

 その際に三人の肩書きを聞いて妙な感じになりながらもそれを一旦置いてくれたようだ。

 しかし、それ以上に俺たちの方が大きな謎が生まれてしまった。

 

「……あの……その……こう言っては失礼だと承知しておりますが……

 その言い方ですとまるであなた方はその……製造物の様に聞こえてしまいますが……?」

 

「お、おい!?」

 

「ちょっと、セシリア!?」

 

 ラウラの質問に続いて出てきたセシリアの言葉を選ばない質問に俺と鈴は慌てた。

 確かに少し番号的な肩書きがあったが、相手を物扱いする発言は失礼だし、そんなまたしてもありえないことがあるのかと思ってしまったのだ。

 

「まあ、あながち間違ってはおらんなぁ」

 

「「「え」」」

 

「!」

 

 しかし、龍驤さんは気を悪くすることもなくさらには否定することもなかった。

 

「あ、あの~……それは一体、どういうことですの?」

 

 セシリアは自らがした質問なのに龍驤さんの答えに理解が追い付いていなかった。

 

「あ~、成る程。

 そこは仕方ないなぁ」

 

 龍驤さんはその反応に対して仕方なさそうに笑った。

 もしかするとこの人は大物なのかもしれない。

 後、何処か俺たちの態度に対して慣れている様にも感じられた。

 

「先ず言わせてもらうとうちらは人間じゃないけど人間というべきかな?」

 

「はあ?」

 

 龍驤さんははっきりと『自分たちが人間ではない』と言いながらも次に矛盾している形の『人間でもある』と言った。

 その要領を得ない発言に俺たちは混乱した。

 

「あの……もう少し分かりやすく……」

 

 セシリアはこの場にいる全員を代表して理解できる説明を求めた。

 

「あ~、要するにうちらは人間とは違う形で生まれて不思議な力を持っとるけど、艤装をつけてなきゃ人間とほぼ変わりがないし簡単に死ぬ。

 割と普通の人間やろ?」

 

「……え?」

 

「ぎ、「艤装」……?」

 

 そのざっくりとした答えの中に出てきた「艤装」という言葉に俺たちは益々混乱した。

 

「あ~、「艤装」てのはうちのこの巻物や履き物、あとはあっちの娘たちが着けてたごっつい機関やら砲塔のことや」

 

「え……?」

 

「それって……」

 

 龍驤さんは「IS」の武装を「艤装」と言ってきた。

 それどころか、彼女がいきなり手に出した全く装備には見えない巻物すらも「装備」だと言ってきた。

 

「あの……それって「IS」じゃあ?」

 

 鈴は恐る恐る彼女に確かめた。

 

「「IS」……?

 何やそれ?」

 

「えっ!?」

 

 だけど返ってきたのはまるでそれを知らないと言わんばかりの発言だった。

 「IS」を知らない。

 それは現代的にあり得ないことだ。

 既に「白騎士事件」における「IS」の登場から世界ではその存在を知られている。

 しかも、彼女はそれに近いものを持っている。

 全く理解が出来ない。

 

「あ~、わかった。わかった。

 そんな顔はせんでぇえ。

 後で話してもらうから」

 

「え?はい……」

 

 しかし、龍驤さんはまたしても説明は不要だと言ってきた。

 大雑把と言うべきか、度量が広いというか分からない人だ。

 

「まあ、要するにうちらはある意味では人間が作ることによって生まれて、戦闘能力はあるけど、何だかんだで人間と変わらない生き物といったことや」

 

「………………」

 

 「戦闘能力」……?

 何でそんなものを?

 

 龍驤さんの説明に俺たちは困ってしまった。

 言っていることが荒唐無稽なこともあるが、ただ生まれてきただけなのに「戦闘能力」があるということ、そして、何よりも彼女が笑っていることが信じられなかった。

 

「……あなた、いえ、あなたたちは造られた生命だというのに……どうして、笑っていられるのですか?」

 

「ら、ラウラ……?」

 

 ラウラは何か悩む様に彼女が笑っている理由を訊ねた。

 その顔はまるで何かに救いを求めている様な顔だった。

 

「……ん?まあ、確かに人間の人たちの中にはたまにうちらのことを「化け物」とか「兵器」とか、「消耗品」扱いする人も多かったな」

 

「「「「!!?」」」」

 

 龍驤さんは少し悲しそうにした。

 彼女たちの詳しい事情はよく分からない。

 でも、少なくとも彼女が語った彼女たちへの人に対して言うべきではない暴言に対しては他人ながらも憤りを感じた。

 

「だけどそれがどうしたんや?」

 

「え……?」

 

 だけど、そんな俺の憤りに反して酷いことを言われているはずの彼女はたった一言で済ませた。

 

「え?……いや……そんな風に言われているのにどうして……」

 

 質問をした張本人であるラウラは信じられない様子であった。

 というよりもこの場にいる全員が信じられなかった。

 

「簡単なことや。

 うちらはうちらやからや!」

 

「え……」

 

 龍驤さんは屈託のない笑顔で返した。

 

「確かに生まれがちっとばかし普通の人とちゃうがそれでもうちらには心がある!

 たったそれだけで人と大して変わらへん!

 それにそれを理解してくれる人も仰山おった!!

 それで十分やないか?」

 

「………………」

 

 ラウラは呆気に取られていた。

 俺や鈴やセシリアも彼女たちが何者かわからないが彼女のその姿が真っ直ぐに思えた。

 その時、俺はある事を感じた。

 

 那々姉さんと雪風に似ている……?

 

 それは彼女のその在り方が何処か那々姉さんと雪風に似ている気がしたのだ。

 この真っ直ぐさがどうしても二人に似ていてしょうがなかった。

 ただそれ程までに彼女の在り方が強く感じられたのだ。

 

「君の過去にも何かあったとしても『自分は自分や!』と思って胸を張るんや!

 『生きてるんや!!』と返すだけで十分なんや」

 

「!!?」

 

「……ラウラ?」

 

 龍驤さんはラウラに対して何処か優しそうに言い、ラウラはその言葉に驚愕した。

 どうしたと言うのだろうか。

 

「それはお姉様が……」

 

「え……」

 

「ん?どうやらいいことを言ってくれる姉分を持っとるらしいな。

 大切にせんとあかんで?」

 

 ラウラが動揺しているのはどうやら雪風が彼女に対して言ったことと同じ事を龍驤さんが言ったことに対してらしい。

 やはり、何処か彼女は雪風に似ているのかもしれない。

 

 もしかすると……

 

「すみません。雪風のことなんですけど……」

 

 俺は改めて彼女たちと雪風との関係を訊こうと思った。

 

「ん?雪風もこっちにいるんやったな!」

 

「……はい」

 

 どうやら、彼女たちと雪風は面識があるらしい。

 『こっち』という言葉が多少気になってしまったがそれ以上に彼女たちと雪風のことが気になってしまった。

 

「ん~、すまんなぁ。

 うちはそこまで雪風と関わりがあった訳ではないで。

 この中だと翔鶴や朝潮、阿賀野が詳しいかな?」

 

「はい。あの子は特に南太平洋で初風と一緒に私と瑞鶴を護衛してくれました」

 

「はい!雪風は「二水戦」でも1、2を争う実力のある子でした。

 あの戦いも生還したのは流石と言うべきです」

 

「う~……やっぱり「呉の雪風」て程だからすごいよね……

 私、あんまり活かし切れなかったけど……」

 

「あ、阿賀野さん確りしてください!?」

 

「……「南太平洋」?」

 

「「二水戦」……?」

 

「それに「呉の雪風」?」

 

 龍驤さんに言われて「翔鶴」と呼ばれた銀髪の大人びたお姉さんと「朝潮」と呼ばれた中学生ぐらいの委員長体質の女の子、そして、黒髪の少し俺らよりも年上に思えるお姉さんは少し落ち込みながら雪風のことを語った。

 しかし、またしても「南太平洋」やら、「二水戦」、「呉の雪風」といった聞きなれない言葉が出てきて俺らは混乱した。

 

「あの……初風とはお姉様の戦友なのですか?」

 

「ラウラ、戦友ってどういうことだ?」

 

 ラウラは俺たちとは異なり何かを感じ取ったらしく「初風」という人の名前に興味を持ったらしい。

 それどころか、「戦友」という言葉さえ出てきた。

 

「ん?もしかすると、君の「お姉様」てのは雪風のこと?」

 

「はい」

 

「ふ~ん。雪風もよく慕われてるなぁ」

 

 龍驤さんはあっさりとラウラの「お姉様」という雪風への呼称を受け入れた。

 

「で、初風のことやっけ?」

 

「はい。どんな人なんですか?」

 

 ラウラはどうしても気になったらしい。

 いや、実は俺たちも気になっていた。

 どうして雪風がああまで戦うことに悲壮感を見せるのか。

 その理由が少しでもわかるのなら今回のことで知りたかったのだ。

 

「初風はな。

 雪風の一つ上の姉や」

 

「え……」

 

「!?」

 

『お姉……ちゃん……』

 

 初風と呼ばれる人。

 その人と雪風の関係を耳にした瞬間、あの夜の彼女の涙を思い出した。

 そして、雪風がどういった人物で、どういった人生を辿ってきたのかその一端を知ってしまった。




話が進まない。
やっぱり、雪風の場合大人の落ち着いた千冬さんと山田先生が相手だったのがでかかった……

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