奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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原作の年代が分からないので第一巻発刊年にさせていただきました。


第93話「絡まる謎」

「『異なる歴史を辿った』だって!?」

 

 那々姉さんの口から出てきた正気の沙汰とは思えない発言にこの場にいる全ての人間が驚愕した。

 

「そうです」

 

「んなあほな!?

 そんなことあり得る訳が……!?」

 

「そうですわ!?

 いくら何でもそれは―――!?」

 

 龍驤さんとセシリアがこの場にいる全員を代表して否定しようとした。

 当たり前だ。

 そもそも『世界が違う』という意味すらも俺たちは理解出来ない。

 そこに説明と称した新しい謎まで言われても余計に混乱するだけだ。

 

「それです」

 

「「え?」」

 

「……?」

 

 しかし、那々姉さんはそんな二人、いや、全員の意思を目にして主張を変えるどころか冷静さを保ちながら何かを指摘しようとした。

 

「今のあなた達の反応こそが今の私の発言に意味を持たせます」

 

『?』

 

 那々姉さんの発言に全員が顔を見合わせた。

 

「皆さんは今、『そんなことは絶対にありえない』と考えましたよね?」

 

「そ、そりゃあそうやろ?

 お前さんの言っていることはあり得んことやろ?」

 

「そうですよ、先生!

 いくら何でも―――」

 

「それこそがあなたたちの共通点なんです」

 

「―――え」

 

「共通点やと?」

 

「そうです」

 

 那々姉さんは俺たちが抱いている『ありえない』という考えを「共通点」だと主張した。

 

「少なくともあなたたちは今私が指摘した様に私の発言が信じられなくて否定しようとしましたよね?

 恐らくですが、「艦娘」や「深海棲艦」の存在に対する認識とは異なって」

 

「何やと?」

 

「……?」

 

「あなたたちの話が進まないのはお互いに自分にとっての当たり前が相手にとっても当たり前だと思ってしまっていることにあります」

 

「え?どういうことだよ那々姉さん?」

 

 那々姉さんは俺たちの話が進まないのはお互いの常識が邪魔をしていると言っているが、意味が分からなかった。

 

「……一夏君。

 あなたは入学当初「IS」の基礎知識を知っていましたか?」

 

「え!?それは、その~……」

 

 那々姉さんに入学当初に「IS」の基礎知識を知っていなかったことを遠回しに言われて俺は焦りを覚えた。

 那々姉さんのお叱りが来ると思っていたからだ。

 

「では、「IS学園」に入学する人間がそれを知らないで入学した場合に授業を理解出来ますか?」

 

「!?そ、それは……」

 

 その言葉で彼女の言いたいことがわかった。

 

「そうです。

 あなたたちの話が進まないのは相手が完全に自分たちの事情を知っていると思っていることにあるんです」

 

 確かに那々姉さんの言う通り、「IS」の知識がないのに「IS学園」に入ることになったが、専門知識を知っている前提で進められる授業の中で俺は混乱してしまった。

 ただ千冬姉の命令と那々姉さんとシャルが来たことで何とか追いつける様になった。

 

「ちょっと待て、神通!

 それやとうちらも最初からそれを踏まえて説明したで!?」

 

 しかし、龍驤さんはそれを考慮して説明したと語った。

 実際、彼女の説明は「艦娘」や「深海棲艦」が何なのかということは分かりやすかった。

 

「はい。実際、私も分かりやすい説明をしてくれていたと思います。

 ですが、それはあくまでもその説明は私たちのいた世界でする説明の仕方になっていました」

 

「あ……!?」

 

 だけど、那々姉さんはその説明の質は評価したが、それでもやり方が間違っていると言った。

 

 

「神通!!

 もしかすると……!!」

 

 今の那々姉さんの指摘で龍驤さんは何かに気付いたらしい。

 

「龍驤さんが指摘された通り、この世界では「艦娘」も「深海棲艦」も一度たりとも姿を現したことがありません。

 つまり、皆さんも「深海棲艦」もこの世界の人々からしてみればついさっき現れたばかりなのです」

 

「え!?」

 

「そうか……!だからか……!」

 

「だから、話が通じなかったのか!?」

 

 那々姉さんの説明を聞き終えて彼女たちは一斉に反応した。

 だけど、彼女たちは兎も角として俺たちは未だに何が起きているのかがわからない。

 

「那々姉さん、あの……」

 

「一夏君。

 大丈夫です。今から順に説明していきますから。

 そうですね。最初はこちらの世界とあちらの世界との決定的な違いを分かりやすく教えます」

 

「あちら?こちら?」

 

 先ほどから那々姉さんの語る『~の世界』という意味が分からない。

 一体、彼女は何を言っているのだろうか。

 

「では、質問します。朝潮、一夏君。

 1929年または昭和4年に起きた最も有名な事件と言えば?」

 

「「え?」」

 

 那々姉さんは俺と朝潮と呼ばれる子に向かってそう質問した。

 いきなり、世界史の問題を出されるとは思わず俺は困惑するが

 

「えっと、それは―――」

 

「はい。それは―――」

 

 千冬姉に楽をさせてあげたいと考えて入試勉強に励んでいた俺は何があったのか覚えていた。

 同時に朝潮は自信満々だった。どうやら彼女も見た目通り優等生らしい。

 

「―――「世界大恐慌」があった年だ」

 

「―――「深海棲艦」が初めて姿を現した年です」

 

『え?』

 

 俺たちの異なる解答に那々姉さんや龍驤さんを含めた何人かを除いて呆然となった。

 

「は?「深海棲艦」が現れたって……

 しかも1929年……?え?」

 

 朝潮の答えに俺は混乱した。

 1929年。

 それは人類史にとって最も悲惨な戦争の原因の一つとなった「世界大恐慌」が起きた年だ。

 少なくとも日本史でも世界史でも共通して習うほどに有名な出来事というよりも常識だ。

 それなのに彼女は『「深海棲艦」が初めて姿を現した年』と躊躇なく答えた。

 

「それはこちらの台詞です。

 「世界大恐慌」とは何でしょうか?

 確かに1929年に「深海棲艦」が現れたことで海路がズタズタにされたことで世界経済は大混乱しました。

 それによって多くの人命も失われた痛ましいことではありますが……」

 

 ……どういうことだ?

 

 朝潮は真剣にそう答えた。

 その表情には深い哀悼の念が込められており、彼女が嘘を吐いているとは到底思えない。

 しかし、だからこそ彼女の発言を受け入れられない。

 

「……そういうことか……」

 

「?」

 

 龍驤さんは少し目を瞑って宙を仰いだ。

 それは何か負けを認めているかのような感じに見えた。

 

「みんな、落ち着いてくれや。

 どうやらうちら「深海棲艦」のいない世界に来てもうたらしい」

 

「……それは分かっています。

 ですからどういう意味なんですか?」

 

 龍驤さんは理解しているが、結局は那々姉さんと同じ事を言っていることで仲間に説明が付かないらしい。

 

「……そうやなぁ~……

 えっと、君。一夏君やっけ?

 今、()()()()()や?」

 

「え!?()()?」

 

 龍驤さんの問いに俺は耳を疑った。

 何故この人はこの()()()()()に昭和を基準に訊ねたのだろうか。

 

「……そうか……その様子だと……そういうことか……」

 

「え……」

 

 俺の反応を見て龍驤さんは寂しそうな顔をした。

 

「龍驤さん……?」

 

「……そうか……今は……ちゃうのか……」

 

「あのどういう……?」

 

 龍驤さんのそのただならない様子に彼女の仲間だけでなく俺たちも心配になってしまった。

 

「すまん、質問を変える。

 今は西暦の何年や?」

 

「え?それは―――」

 

 龍驤さんの口から出てきた聞き方を変えてきた質問に俺は

 

「―――2022年だけど」

 

 今年が2022年であることを答えるだけだった。

 

『!?』

 

「え?」

 

 俺の答えに彼女たちはまたしても衝撃を受けたらしい。

 

「そうか……80年近くも経ってるんか……」

 

「え……」

 

 龍驤さんは俺の言葉に納得気にそう呟いた。

 

「80年って……どういうことですの?」

 

 龍驤さんのその呟きに対してセシリアは訊ねた。

 

「それはな―――」

 

 龍驤さんが答えようとした時だった。

 

「待て、龍驤。

 その質問には私が答える」

 

「え?」

 

「―――武蔵?」

 

 武蔵さんが突然割って入ってきた。

 彼女は少し苦笑いしていた。

 

「こう言った場合、全員で答え合わせをした方が理解が早まるだろう?

 お前では其処が上手く行かないよ、賢すぎる」

 

「……そうやな」

 

「?」

 

 武蔵さんは龍驤さんにそう言って役割を交代することを告げた。

 しかし、賢過ぎるとはどういう意味だろう。

 

「な、なんですの……一体?」

 

 二人のやり取りに俺たちは彼女たちが何やら核心に迫っていることは理解出来た。

 しかし、先ほどから那々姉さんの質問から出てきた常識を超えた答え、龍驤さんの口から出てきた『昭和』という年号。

 それらから感じさせられる何か得体の知れない発言に俺たちは身構えてしまった。

 

「先ずは両者共、落ち着いてくれ」

 

 武蔵さんは俺たちだけでなく、自分の仲間にそう言い聞かせた。

 

「……どうやら、我々は少なくともこの時代でいう80年前の過去の存在らしい」

 

「……はあ!?」

 

 またしても荒唐無稽な言葉が出てきて叫ぶしかなかった。


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