奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第105話「異なる輝き」

「失礼しマース!」

 

「ん?」

 

「なっ、誰ですかあなたは!?」

 

 私が旗風に協力を仰いでいると突然、この広間に謎の女性が入ってきた。

 教員たちは動揺している様子であったが、何となくだが私は彼女の正体に察しが付いた。

 

「金剛さん!?」

 

 旗風はその女性の姿を見るなりそう呼んだ。

 やはり、彼女も艦娘だったらしい。

 

「旗風!あなたにも会えるだなんテ!」

 

「はい。金剛さんもその……」

 

「その先はいいネ……

 皆さん、気持ちは同じですかラ」

 

「……そうですね」

 

「………………」

 

 彼女たちは最初、再会の感動に浸っていたが、自分たちがどうしてこの場にいるのかを考えたことでそれに対して言及することを避けて空気が重くなった。

 

 やはり、彼女たちも……

 

 最初、加賀と呼ばれる艦娘は私たちに『「深海棲艦」との戦いはどうなりましたか?』と訊ねられ、その際に各艦娘たちも次々と自分たちが沈んだ海戦について訊ねだした。

 そのことから彼女たちが自分たちの死後、いや、自分たちが沈んだことすら知らなかったことも理解出来た。

 その為、この話題はかなりデリケートだろう。

 

「……失礼。

 あなたも艦娘ということですか?」

 

 私は少し、落ち着いてから二人の重苦しい態度を変える為にも彼女、金剛に対して訊ねた。

 

「Oh……!これは失礼しましタ!

 英国からの帰国子女金剛型戦艦の一番艦金剛デース!

 ヨロシクお願いしマース!」

 

「あ、ああ……

 よろしく」

 

 彼女はかなりハイテンションに自己紹介を兼ねて、質問に答えた。

 今まで束という人間と付き合ってきた私でも信じられないくらいの明るさだ。

 

「金剛さん。どうしてここに?」

 

「加賀にここのPerson in charge(責任者)に話を付けて欲しいと言われたのデース」

 

「何だって?」

 

 旗風が金剛にここに来た理由を訊ねると彼女はどうやら私たち、いや、私と話を付けたいと思ってきたらしい。

 一体、何だろうか。

 

「あなたがここのPerson in chargeですカ?」

 

 彼女は私を見るなりそう訊ねてきた。

 私は周囲に目を配り、他の教員たちの意思を把握してからその答えに答えようとした。

 

「……少なくとも、この場においては発言力と権限が集中しているのは私だ」

 

 他の教員たちの頷きを確認してから私は民主的な意味での責任者であると肯定した。

 少なくとも、この場で指揮権を他の教員たちに託されているのは私だ。

 権限には同時に責任が伴う。

 ならば、私はこの場における責任者だろう。

 

「そうですカ。

 では、今後のことについての話をしまショウ」

 

「今後のこと?」

 

 彼女は私が責任者であることを知るとそう言ってきた。

 恐らく、彼女たちの処遇についてのことだろう。

 

「それなら、安心して欲しい。

 あなた方の処遇は私とこの場にいる全ての教員たちとで何としてでも守ってみせる」

 

 彼女たちもこの世界に突然やって来て困惑しているのだ。

 実際、彼女たちのこの世界での立場は非常に危ういものだ。

 この世界の人間ではないということはどこの国家にも属さないということだ。

 つまりはどの国家の保護対象でもないということでもある。

 

 一夏を実験体にしようとしたのだ……

 この世界の倫理は当てにならないな

 

 一夏にある事情があると言えども、「IS」を起動させた際に「IS委員会」の一部には一夏のことを実験体にしようとしていた動きがあった。

 それは十分、彼女たち艦娘相手にも考えられることだ。

 しかも、性質の悪いことにああいった連中の考えは『複数いるんだから一体ぐらいいいじゃないですか?』と平気で考えていることにある。

 だからこそ、我々が何としてでも守らなくてはならない。

 

「ん?まあ、それもありますガ。

 Main subject(本題)は違いますヨ?」

 

「何?」

 

 しかし、彼女たちの本題は違うらしい。

 

「これからこの海域に現れた「深海棲艦」に対してどう対処するかデス」

 

「何だと!?」

 

 何と彼女たちは自ら率先して今回現れた「深海棲艦」をどうするのかと言ってきた。

 つまりは自ら協力することを積極的に申し出てきたのだ。

 

「どうしたのですカ?」

 

「え……いや、その……いいのか?」

 

「?

 何がデス?」

 

 余りにもあっさりと協力してくれるという善意の発言に私は耳を疑った。

 とてもありがたいことなのだが、それでもこれから我々がしていくのは戦闘、つまりは命のやり取りだ。

 それなのに彼女はそれを即決した。

 

「あなた方にとってはこの世界は言わば赤の他人の世界のはずだ。

 それなのにどうしてこうまで助けようとしてくれるのだ?」

 

 今、彼女たちはこの世界に来たばかりだ。

 それなのに彼女たちは助けてくれると言ってくれた。

 しかも、それを然も当たり前の様に。

 

「So that`s it(成る程).

 あなたがそう感じるのは理解出来マース。

 But,これは私たちにとっては当たり前のことデース」

 

「……それは艦娘としての在り方か?」

 

 金剛は想像通り、『それが自分たちにとって当たり前のことだ』と返してきた。

 しかし、それならば私は止めて欲しかった。

 もし彼女たちが『ただ自分たちが艦娘だから』という理由だけならば悲し過ぎる。

 何よりも私はそれをラウラのことで身を以て体験させられている。

 ラウラは『ISを使う為に造られた』という存在として生まれ、そのことで自らの存在意義に悩まされてきた。

 その様な自らがそうであると決められた生き方でそうやって決めて欲しくないのだ。

 

「当たっているとも言えますし、外れているとも言えマス」

 

「……?」

 

 金剛は私の問いに肯定も否定もしなかった。

 どうやら、彼女は艦娘としての意味もあって、これからの戦いに身を投じるつもりらしいが、どうやらそれだけではないらしいが、どうやらそれだけではないらしい。

 

「私たちはこの世界の人たちに私たちのいた世界の人たちと同じ悲しみを感じて欲しくないだけデス」

 

『!?』

 

 金剛の明かした真意にこの場にいる束以外の全ての人間が衝撃を受けた。

 彼女の、いや、彼女たちの総意は余りにも眩し過ぎるものだった。

 いくら何でも高潔過ぎないだろうか。

 

「たったそれだけのことでか……?」

 

「Yes!

 でも、私はそれだけじゃアリマセン!」

 

「?」

 

 けれども、彼女はそれだけが理由ではないらしい。

 

「きっと、提督もそう望むはずデース!」

 

「提督……?

 一体、それは誰のことだ?」

 

 金剛は誇らしくそう言った。

 

「提督は私にとっては世界で……いいえ、全ての中で一番大切な人デース!!」

 

「え!?」

 

 金剛は非常に嬉しそうに聞いているこちら側の方が恥ずかしくなるような宣言をした。

 一番大切な人。

 それはつまり、

 

「あなたの……恋人ということですか?」

 

 彼女にとっての想い人かそれに相当する存在だということだろう。

 

「Oh……それだったら、とってもHappyなことでしたが厳密には違いマース」

 

「そ、それはすまないことを訊いた……

 申し訳ない」

 

「Don't mind!

 仮令、私の想いが叶わずともあの人が、いえ、あの人たちが幸せになってくれているのならば大丈夫デース!!」

 

「?」

 

 どうやら、件の「提督」との恋は叶わずに終わってしまったらしい。

 そのことに酷なことを言い方をしてしまったと把握した私は直ぐに謝罪をした。

 しかし、彼女はそのことを気にしないどころか、その人物が幸福であるのならばそれでいいとすら言ってきた。

 しかも、彼女はその想い人と結ばれた誰かのことの幸せも祈っている。

 

 ……そういうことか……

 

 きっと、この人は自分の恋が叶わずとも相手が幸せであるのならばそれでいいと思える人で、恋敵のことすら信じている。

 まさに純粋な愛だ。

 

 すごい人だ……

 

 私は感嘆するしかなかった。

 雪風や川神を見ていて彼女たちのその高潔な精神に驚かされてきたが、この金剛と言う艦娘はその中でも群を抜いている気がする。

 

 一夏を巡る彼奴らも見習ってほしいところだ……

 

 別に他人に譲れとは言わないまでも少しぐらいはこの金剛の様に相手の幸せを素直に願えるぐらいの余裕を一夏たちを好いている女子たちには持って欲しいところだ。

 

「それ程までに……その「提督」という人間があなたに与えた影響は大きいということか?」

 

「That's not all(それだけじゃありまセン)!

 勿論、提督の存在も大きいですがそれ以外に私たちと共にあり続けた帝国海軍の人々との出会いの影響もありマス!

 彼らに誇れる自分であり続けたい、そして、私たち自身が人々の涙を止めたいという自らの意思で動いているのデス!」

 

「……!」

 

 金剛は穏やかなも確かな強さを持ってそう答えた。

 そして、その背後に私はとても大きなものを感じた。

 

 愛と誇りか……

 この人たちの根底は……

 

 他者を想う気持ちと自らがそう在りたいと思える心。

 そして、それら全てを繋いでいるであろう彼女たちを支え、共に戦い続けた人。

 何という大きなものだろうか。

 

 羨ましいな……

 

 同時に私はそうも感じた。

 「艦娘」と名前に「娘」が付き、彼女たちが女性しかいないことから全員が女性だろう。

 女しか使えない「IS」。

 女しかいない「艦娘」。

 双方とも同じ様な共通点があり、常人とは異なる力があるのは同じだ。

 だけど、どうしてこうも違ってしまったのだろう。

 

『ふざけるな!!』

 

『「IS」が使えるから偉い?

 それのどこが偉いんですか!?』

 

『自分たちが一度たりとも戦場で死ぬことへの恐怖を感じたことない人間が力を持っているだけで威張るな!!』

 

『世の中には……守りたいのに……力を持っているのに……

 守れない人もいるんです……!!』

 

 以前、雪風はこう言ってこの世界の「女尊男卑」を悔しがった。

 その歪みを作り出してしまった一人として悔やみ、同時に悲しくなってしまった。

 

「ふ~ん?

 君たちって人間じゃないのにどうしてそう思えるの?」

 

「?」

 

「束!?」

 

 そんな金剛の優しと善良さに対して、束はこいつにとっての当たり前の感覚でそう質問した。

 

「What do you mean?

 艦娘が人を助けてはいけないのですカ?」

 

 金剛は束の意地の悪い質問に対して怒りも悲しみなどといった不快感を見せることなく、『どうしてそんな質問をするのか?』と不思議そうにしていた。

 川神ですら不快感を感じる束相手に泰然としているのは本当に器の大きい人だ。

 

「だって、君たちって厳密に人間とは違うんでしょ?

 それなのにどうしてそんな風に助けようとするの?」

 

 束はただ単に不思議に思ったらしい。

 ああ、そうだ。

 こいつにとっては艦娘の在り方は信じられないのだろう。

 艦娘という人間とは異なる存在が何の見返りもなしに他者を助ける。

 それはこいつにとっては特に信じられないことだろう。

 

「そうですネ。

 私も最初は意味もなかったデス」

 

「……金剛さん」

 

 金剛は束のその質問に対して助けたことに対して何の気持ちもなかったという。

 

「But,だからいいのデス」

 

「?」

 

 だけど、金剛は次にそう断言した。

 

「あの時、私たちは助けたいから助けただけデス。

 And,それを今でも持ち続けていマス。

 たったそれだけでいいのデス」

 

「何それ……理由になってないんだけど……」

 

 金剛は自分が誰かを助けることに理由などない。

 ただ助けたいから助けた。

 たったそれだけなのだ。

 とそう言いきった。

 でも、確かにそれだけでいいのかもしれない。

 

「束。お前の負けだな」

 

「ちーちゃん……?」

 

 私はこれ以上束の不毛な議論が続かない様に事実を突きつけた。

 

 きっと……お前には奇跡でも起きない限りは一生、いや、永遠にわからないことなんだよ……束……

 

 私は初めて親友にして同類に対して親しみや苛立ちではなく憐れみという感情を向けた。

 自分と同類以外を他人と思えない束にとっては艦娘の心は理解出来ない。

 

 私には一夏がいてくれた……

 そして、親がいなかった……

 たったそれだけなのにこんなにも違うとはな……

 

 親と言う者がいなくて寂しさや嫉妬は感じたことはあった。

 でも、今は束と言うそこだけが違う同類を見て私はそれで良かったと感じた。

 きっと束と同じ環境で育っていれば、私は束と同じで周囲との違いに絶望して他者と分かり合うことを諦めていただろう。

 何よりも私には一夏という守るべき存在がいたのも大きい。

 束にはそれがいなかった。

 

 束……貴様は気付いていないが本当は川神のことを貴様は……

 

 何よりも束と私の川神への感情の違いもそれが理由だ。

 私は人間に向き合うことに憧れ、束は諦めていた。

 そんな中で前世の記憶があるとはいえ、肉体的にはただの人間である川神の存在は私たちにとっては大きなものだ。

 私からすれば、『自分が決して特別じゃないんだ』と気付かされて、自然と孤独感が消えていた。

 逆に束からすれば、諦めていたはずの存在が今更になって急に現れて、それが奴を苛立たせているのだろう。

 

 馬鹿だな……お前は……

 

 自らが間違っていたと素直に少しでも認めれば束も楽になっていた。

 だけど、それすら忘れている。

 本当に馬鹿で哀れな親友だとしか言えない。

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