奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「皆さん、訓練でお疲れの中わざわざお集まりいただきありがとうございます。
これから、明日の艦隊編成と作戦について説明させていただきます」
金剛さんとの蟠りが解け全員に支えられていることをはっきりと感じながら雪風は総旗艦時代の経験を活かして説明の導入を始めた。
「おぉ……雪風の奴、慣れているな」
「様になっているわね」
「感慨深い」
「駆逐艦からあそこまで出世するなんて……」
「誰か、cameraは持っていないデスカ?」
あ、ちょっと恥ずかしくなってきました……
先ほどまで意識してこなかったけれども、戦艦や空母、巡洋艦の人たちに温かい目で見られてしまい、途端に恥ずかしくなってしまった。
金剛さんに至っては子供の晴れ姿を見ている親そのものの行動をしている。
「あなたたち……」
『!!?』
「あ」
そんな面々に対して加賀さんの静かながらも鋭い声が向けられた。
「作戦前、それも作戦会議中なのに私語なんて……
随分と良い身分になったわね?
それと雪風に失礼だと思わないの?」
『……はい』
加賀さんのその静かな一喝に全員が素直に従った。
「あ、あの……加賀さん……
私はそんなに気にしていませんですし……
それに恐れ多いので―――」
ただ駆逐艦の私としては戦艦や空母、重巡、軽巡の方々、さらには同じ駆逐艦の皆は畏まれると恐れ多いので止めて貰おうとしたが
「あなたは今、この場における司令塔よ?
却下」
「うぐ……はい……」
加賀さんは私に司令塔としての立場があるとして却下してきた。
「えっと、加賀さん?
私がここにいて良いのでしょうか?
場違いな気が……」
加賀さんは私たち艦娘のやり取りの中、山田さんが自分がここにいていいのかを訊ねてきた。
「必要よ。
後で詳しく話すけど、あなたもここにいてもらうわ」
「あ、はい……」
加賀さんて不知火姉さんみたいな妙な迫力がありますからね……
山田さんが加賀さんに対してびくびくしているのは元々の性格もあるとは思うけれど、加賀さんの妙な威圧感があるのも理由の一つだろう。
「雪風、それでは頼むわ」
「はい!」
加賀さんに促されて私はようやく本題に入った。
「では、最初に明日の作戦の概要についてから説明させていただきます」
私は先ず、作戦の概要について述べることにした。
「明日、我々が向かうのは一週間前に皆さんが最初に立った海域です。
恐らくですが、あの「深海棲艦」の群体は変色海域に変える下準備をしていると思われます」
「だよな~……」
「ここまでが限界だな」
「仕方ないと言えば仕方ないけどもう少し早くに叩きたかったわね」
一週間の間、私たちは待ちに待った。
この間を彼女たちは初めて扱う「IS」という装備に慣れるために使った。
しかし、それは「深海棲艦」の増殖を許してしまう危険性から来る不安が付き纏ってもいた。
そのことは間違いなく私たちを焦らせていた。
しかも最悪なのは私たちや「深海棲艦」の存在を出来るだけ隠すために目立った偵察を行えず、どれだけの敵がいるのか分からない状況でもある。
あるのは私の経験則から来る近海における「深海棲艦」の掃討戦の知識だけだ。
「はい。
ですから、この作戦を一度で成功させる必要があります。
この辺りの海域で生計を立てている人たちの為にも」
「そうね」
「あの旅館とかまさにそうだしね」
私の今の言葉に全員が肯いた。
当然、私達のすべきことの中で最重要課題は「深海棲艦」から人々の命を守ることだ。
しかし、同時に「深海棲艦」によって奪われた海域を取り戻してその海を生活の糧にしている人々の生活を取り戻すことも重要だ。
特にあの海域は観光資源としても、漁獲資源としても重要だ。
それにここで解放しないと何時までも隠し切れない可能性も出てくる。
「では、作戦の内容についてですが……
恐らく、まだ変色海域は出来ていませんので艦載機の性能もそこまで高くないでしょう」
「そうね」
「ええ」
恐らくだが、現時点では敵の戦力は数は兎も角として、個の戦力は整っていない。
変色海域が出ていないことから今なら、直ぐに叩ける状況だ。
「ですが、「変色海域」が生まれていないということは私たちも一個艦隊しか出れないのも事実です」
「う……」
「まあ、そうなるよな……」
「何とかなるけど、やっぱり数が多い敵ってのは厄介だ」
しかし、こちらにとっても不幸なことにこちらも「連合艦隊」の編成は不可能だ。
もし、多人数でいけば計器に謎の支障が生じて敵の巣に辿り着くのは不可能だ。
未だにどうしてこうなるのかは分かっていないんですよね……
この大人数で攻略が不可能な理由は未だに分かっていない。
そのことから、あの作戦の後の世界ではミサイル等で対処する様にはしていたがそれでも巣が広がるのを遅らせることしか出来ず、艦娘や艦隊が出てある程度の目算で戦力を配分しないのが苦しいところだ。
加えて、何時も軍の人間や一部の艦娘が先だって行う偵察も行えないのも痛い。
「ですので、今回は対空能力と対潜能力が高い面々を中心に編成していきます」
「……!」
「対空だけじゃなくて、対潜も?」
「はい」
私は明日の作戦で要とする戦力配分を打ち明けた。
「私の経験上、一番怖いのは潜水艦です。
たとえ、いないかもしれない状況でも必ずいると思って行動した方がいいと思います」
「ユッキー……」
「ああ」
「確かに……」
確かにまだこの中に潜水艦を見たという人はいない。
しかし、私は何度も潜水艦に沈められた仲間や護衛対象、味方を見せられた。
何処にいないのか分からないのが潜水艦の脅威だ。
そのことから比較的対潜能力の高い艦娘が一人でもいることが求められる。
それに対して、金剛さんを始めとした面々も納得してくれている。
「では、先ずは明日の作戦の旗艦を発表します」
『!』
私の発言に全員が注目した。
やはり、「旗艦」という言葉は余りにも大きい。
「旗艦は扶桑さんです」
「私……?」
「扶桑が?」
「意外な人選ね」
私が旗艦に扶桑さんを推したことに周囲は意外に感じている様子だった。
「雪風」
「はい」
「別に不満や異論はないけれど理由は明確に説明しておいた方がいいわ」
「うむ。私からもお願いする。
火力としては私と陸奥、航行速度では金剛の方が上だ。
その中で航空戦艦である扶桑が選ばれた理由はしておいた方がいい」
「わかりました。加賀さん、武蔵さん」
この中で機動部隊の重鎮と言える立場の加賀さんと戦艦組の中では最強戦力と言っても過言ではない武蔵さんからこの人選による混乱を鎮める様に促された。
「扶桑さんを選んだ理由は扶桑さんには砲撃戦以外にも幅広い役割をして頂きたいと考えているからです」
「幅広い役割……?」
「はい」
私はかいつまんで扶桑さんを旗艦に望んだ理由を打ち明けた。
「扶桑さんはこの中で大型艦として唯一対潜戦闘もこなせます。
その為、残りの空母の二人には対艦・対空に専念してもらう為に彼女が適任だと考えたからです」
私が扶桑さんを選んだのは限られたこの面々の中でも対潜・対空・対艦を全てこなせる航空戦艦だからだ。
やはり、目立った偵察等を行えないこの状況では潜水艦の存在を警戒しつつ、戦艦とも渡り合えるのは彼女位しかいないだろう。
「扶桑さん。やっていただけますか?」
私は扶桑さんに頭を下げた。
戦艦として、潜水艦の相手を理由に選ばれたのは不本意だろう。
けれども、これが今、この状況で選べる最善の方法なのだ。
軽空母が龍驤さんだけしか居らず、その彼女が不在の中で火力と対潜戦闘を行えるのは彼女だけだ。
彼女しかいないのだ。
「……雪風」
「はい」
私の懇願に対して、彼女は静かに声を掛けた。
「その役目、喜んで受けるわ」
「……!ありがとうございます!」
「ええ。伊勢と日向に負けないところを見せてあげるわ」
彼女は私の頼みを引き受けてくれた。
その姿には伊勢型戦艦の前身であるという自負と、後進に負けていられないという普段通りの彼女の姿があった。
「では、次に空母のお二人ですが、加賀さんと翔鶴さんのお二人にお願いします」
「え!?蒼龍さんではなくて私!?」
「……わかったわ」
空母の二人を明かすと加賀さんはそれを冷静に受け止めたが、翔鶴さんは同じ南雲機動部隊であった蒼龍さんではなく自分が選ばれたことが寝耳に水だったらしい。
「蒼龍さん」
「分かっているわ。そういうことね」
「……?
どういうことですか?」
私は念のために蒼龍さんに一言言おうと思っていたが、彼女は理解してくれていた様子だった。
「翔鶴さんには加賀さんと蒼龍さんとの連携に慣れて頂きます」
「!」
今回の空母二人の組み合わせは南雲機動部隊ではなかった翔鶴さんに少しでも二人との連携が出来る様になって欲しく選ばせてもらった。
今、この世界にいる面々で空母は五人、熊野さんが換装すれば六人であるが、それでも足りない。
そうなると龍驤さんの帰還を待つまではこの五人で回していかなければならない。
翔鶴さんの実力は決して二人には劣らないが、それでも今のうちに二人との共闘になれてもらうしかない。
「……翔鶴。
私と一緒じゃ不満かしら?」
「!」
加賀さんは困惑している翔鶴さんにそう問いかけた。
それは最高の殺し文句と言っても過言ではないかと私は感じた。
「いいえ!
勿体ないお言葉です。
瑞鶴がこの場に―――いえ、そうでもなくても今の言葉を聞いたら羨ましがると思います」
「そう……なら、決定ね。
蒼龍。今回は―――」
「はい。その時が来るまで待っています!」
空母組の二人はこれで決まった。
きっと翔鶴さんを含めた南雲機動部隊より後の後輩たちにとって今の加賀さんの言葉は感動に値するだろう。
それ程、彼女たちの存在は伝説同然なのだ。
「では、次は巡洋艦の方々です」
「来たか」
「どうなるんだろ?」
「だが、今回の件を考えると重巡はなさそうだな……」
「対潜は航巡の熊野か筑摩以外はからっきしだしね」
私が巡洋艦の番を告げると途端に軽巡と重巡の面々は対照的な反応をした。
確かに軽巡と異なり重巡は航巡である筑摩さんと熊野さんを除くと潜水艦は苦手だ。
実際、私も今回の人選で最も悩んだところだった。
しかし、私は敢えてある人を選んだ。
「鳥海さん、お願いします」
『え……
えぇええええええええええええええええええええええ!!!?』
「わ、私!?」
「はい」
私が選んだのは鳥海さんだ。
この人選に全員が驚愕を受けた。
当たり前だ。
今までの中で鳥海さんは対空・対潜に優れている訳ではない。
「今の編成だと仮に姫や鬼に匹敵する敵戦力がいた場合に火力不足で取り逃がす可能性があります。
鳥海さんに火力という面から選ばせていただきました。」
「うぅむ……」
「確かに……」
「万全と言っても……」
「私たちが仕留めきれない可能性も残っているわね……」
この火力不足と言っても翔鶴さんと扶桑さん、加賀さんがいれば何とかなりそうではあるが、念には念をだ。
となると火力の勝る重巡の中でも、夜戦においては古鷹さんと同等で実績と経験がある鳥海さんが適役だろう。
「わかったわ。
任せて」
「ありがとうございます」
自らの力を発揮できる、そして、期待されているということから彼女のやる気は高まった。
「それでは、最後に駆逐艦のお二人ですが―――」
『ゴクン』
私のその発言に駆逐艦の全員が固唾を呑んだ。
私もであるが、何だかんだで駆逐艦は血気盛んだ。
その為、気になってしまうのだ。
「皐月ちゃんと朝潮ちゃんのお二人にお任せします」
「うん!わかったよ!」
「任せてください!」
「納得の人選ね」
「そうだね!」
私が選んだのは皐月ちゃんと朝潮ちゃんだ。
この二人は潜水艦相手に滅法強いだけでなく、対空戦闘もこなせる艦隊護衛の玄人だ。
この二人がいることで鳥海さんを選ぶことも出来たのだ。
「うぅ……私場違いな気が……」
全員が作戦のことでやる気を出し意気込んでいると艦隊編成やその役割を知らない山田さんは少し自嘲気味に言った。
「何を言っているんですか、山田さん。
あなたにも役割があるんですよ?」
「え?」
しかし、彼女には彼女の役割があるのだ。