奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第55話「戦わない戦い方」

「皆さん、大変恐縮ですが本日は私が指揮を取らせていただきます」

 

「頼むわね」

 

「お願いね」

 

「頼むわよ」

 

「わくわくしてきたっぽい!」

 

 作戦二日目。

 昨日の作戦で山田さんや扶桑さんのお陰で主力を叩き終えたこの海域における掃討線を行うことになった。

 というよりも、正確には安全が確保されているのかの確認であるが。

 選ばれた面々としては金剛さん、蒼龍さん、千歳さん、古鷹さん、叢雲ちゃん、夕立ちゃんという攻撃面と経験に秀でた面々だ。

 この面々ならば万が一にも不覚を取る様なことはないだろう。

 

「あの雪風さん……その……」

 

 私の後ろで申し訳なさそうに山田さんが声をかけてきた。

 

「……山田さん。大丈夫です。

 今回は見ているだけで十分です」

 

「で、ですけど……」

 

 今回、彼女に来てもらったのは指揮を取ってもらう為ではない。

 彼女にはただ見ていてもらうためだ。

 

 それでも、彼女は苦しんでしまうんでしょうが……

 

 彼女に負担をかけない為に指揮を取らせないつもりだが、それでもここにるだけで彼女の心には罪悪感募るだろう。

 自分だけ戦わないでいる。

 たったそれだけでも責任感が強く、優しい彼女は自分を追い詰めてしまうだろう。

 彼女はそう言う人だ。

 

「……山田さん、見て慣れてもらうのも戦いの在り方です。

 そこから手に出来た情報は必ず役に立つはずです。

 それに私はこれでもこの世界に来る前は訓練艦を務めました。

 その点には自信があります。見取り稽古みたいな感覚で見ていてください」

 

「は、はい……」

 

 私は彼女が後ろめたさを持たない様にこれが一種の見取り稽古であると告げた。

 そもそも、山田さんは提督してはまだ真っ新なのだから知識と経験がないのも同然だ。

 昨日は感覚を覚えてもらうものであったが、今度は見ることで最低限、知識だけを身に付けてもらうつもりだ。

 戦いは見るだけで戦術眼が培われる。

 

「それにあなたがここにいるだけで私達にとっては十分過ぎる程に助かっています」

 

「え?それは……」

 

 それに彼女は勘違いしているようだが、彼女はここにいるだけで私達を助けてくれている。

 

「私達と違って、あなたにはこの世界における肩書があります」

 

「!」

 

 それは彼女がこの世界の人間で尚且つ、「IS学園」の教師であることだ。

 

「私達がこの旅館や周辺の住民と交渉しても何かしらの不信感を与えてしまいます。

 だけど、山田さんがいてくれるだけで私達は疑いの目を少しだけでも向けられるのを防げます。

 本当にありがとうございます」

 

「そ、そんな……私は……」

 

 私は本心から彼女がここにいてくれることへの感謝をした。

 私達はこの世界にとっては部外者だ。

 そんな中、彼女を含めた人々が間に立ってくれる。

 それだけで戦うことに集中できるのだ。

 

「That's right!」

 

「雪風の言う通りです」

 

「私達が戦える状況を作ってくれるだけで大きな助けになります」

 

「戦場で戦うことや指揮を取ることが戦いじゃありません」

 

「ま、少なくても戦わせてくれるだけで本当に助かるわ」

 

「ぽい!」

 

「皆さん……」

 

 私が山田さんがいるだけでどれだけ助かるかについて金剛さんたちも続いてくれた。

 そう。彼女たちの言う通り、ただ戦うだけが「深海棲艦」に勝利する方法ではない。

 それぞれが出来ることをしていく。

 それだけで大きな力となり、私達を勝利に導いてくれる。

 今はそれだけで十分過ぎる。

 私達が戦うしかない今の状況では戦える状況を維持してくれるだけで助かる。

 それがあるのとないのとでは天と地の差がある。

 仮令、百の力があっても、それを十分に活かせないのではそれはただの宝の持ち腐れだ。

 

 ですから、そんな風に自分を卑下しないでください……

 

 彼女にとって下手な慰めは逆効果だ。

 彼女は献身的だからこそ、誰かの役に立ちたいと思える。

 それ故に自分が役に立たないと思い込むと自分を卑下してしまう。

 だからこそ、彼女にはいるだけで価値があることを伝えなくてはならない。

 

 ちょっと、危ない宗教にはまらないか不安ですが……

 

 精神力はあるにはあるが、それでも他人を疑うことを知らない誠実さから自分を認めてくれる誰かへの義理の為に動いてしまいそうな不安定さはある。

 そのことから、宗教関連の指導者に騙されないか不安でもある。

 

 少なくても、依存することはないので大丈夫だとは思いますが……

 

 ただ彼女の場合は盲目的に自分が信じる正義に酔うことはないので破滅的な方向には向かわないとは思うが。

 彼女にとって必要なのは決して彼女が非力でも無力でもないことを自覚させることだ。

 それだけで彼女は間違った方向には向かわないだろう。

 

「……ありがとうございます。

 こんな私でも―――」

 

 彼女は励まされたことで感謝しようとするが

 

「NO!

 そんな言い方はいけマセン!」

 

「え……」

 

 金剛さんは彼女の言葉を遮った。

 

「今の様に『自分なんか……』という言葉はNOデース!

 あなたにしか、出来ないことがあるのですから、Be Proud!」

 

 金剛さんが彼女を窘めた理由。

 それは彼女が無意識のうちに自分を貶める言葉を言ったからだ。

 『私なんかでも役に立つ』。

 これは一見すると謙虚な言葉であるが、自分のことを卑下しているのだ。

 例えば、よく挨拶やお礼の品を贈る際に『つまらないものですが』と言うのと同じ様なものだ。

 自分を卑下するという事は時として、謙虚を通り越して失礼に値するのだ。

 つまりは

 

「扶桑を含めた昨日、共に戦ってくれたComrades(戦友)に失礼デース!」

 

「!?」

 

 彼女のその言葉は昨日、彼女を認めてくれた扶桑さん達への侮辱に繋がるということだ。

 そう。自分を大切にしないということは自分を大切にしてくれる誰かを傷付けることにもなるのだ。

 

 ……私が他人のことを偉そうに言える立場ではありませんが……

 

 その筆頭とも言える私が山田さんに偉そうにあれこれ言える身分ではないが。

 

「すみません。

 ありがとうございます」

 

 金剛さんの意思を受け取り、山田さんは少しだけ何かを振り払い、気合を入れ直した。

 

「ユッキ―!

 お任せしマース!」

 

「……はい!」

 

 山田さんを励ますことが出来たことを確認すると金剛さんは私に任せると言ってきた。

 金剛さんの顔はどこかワクワクしてる様にも思えた。

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