奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第3話「暗い暗い」

『織斑。

 布仏はどうやら、格納庫に向かっているらしい』

 

「格納庫だって?」

 

 のほほんさんを尾行しているラウラはある程度の距離を歩んでからのほほんさんの目的地を推測したのか、彼女が格納庫に向かっていることを報告してきた。

 

 マジかよ……

 本当にラウラの言っていることが合っている気がしてきたぞ……

 

 ラウラの報告通り、本当に格納庫に向かっているとなると、ラウラののほほんさんがいじめを受けているかもしれないという考えの信憑性は高まっている。

 この時間帯の格納庫は人目に付きにくい。

 いじめを陰でやるには持って来いの場所だ。

 

 まさか、この学園で『校舎裏に来い』的なことが起きるとは

 

 この学園では珍しく開放されている屋上。

 屋上と校舎裏はよく学園生活において特別な場面に使われるものらしい。

 と言っても、それは告白とかのロマンチックなものであるらしいが。

 しかし、現実はこれだ。

 そんなロマンチックなものではなく、人間の汚い所の吹き溜まりの様な場面に使われる。

 

 何とかしないとな

 

 こんな人目に付かないいじめる側にとってあまりにも有利な場所。

 加えて、最悪なことにのほほんさんは普段の人柄とラウラの評、そして、雪風の友達というだけあって彼女は周囲を心配させまいとする優しさがある。

 

 いじめられている側にとってはありがた迷惑になったとしても……!!

 

 中には助けることに対して、大きなお世話だと迷惑に感じる人間もいるだろう。

 鈴や箒がいじめられた時と違って相手が一発で引き下がることが稀でもしかすると、それがきっかけで余計に陰湿なものに変わるかもしれない。

 それでも周囲に心配をかけさせまいとする人間が助けを求めずにいるなんてあってはならないと思う。

 

「ラウラ。様子はどうだ?」

 

「ああ。どうやら、入口付近で戸惑っているらしい」

 

「……本当だ」

 

 ようやく、ラウラと合流して俺はのほほんさんの様子を訊ねた。

 するとラウラの言う通り、のほほんさんは格納庫の前で佇んでいる。

 その表情には緊張が読み取れた。

 

 いつもと違うな……

 

 格納庫の前で佇んでいるのほほんさんはどこか思い悩んでいる様に見える。

 確かにいつもと違って、のほほんさんは暗そうだった。

 あんな風に思い詰める表情は初めて見た。

 いつもの朗らかさが消えていた。

 

 ラウラの言う通りだな……

 

 教室では分からないが、あの笑顔がどこか無理していたものと考えると心が痛くなる。

 

「あ!?」

 

「?

 どうした?」

 

 ふとある事を思い出した。

 

「思い出した……

 先週の阿賀野さんたちの歓迎会の時にのほほんさんは来てなかったんだ」

 

「!

 そう言えば……」

 

 

 先週、のほほんさんは珍しく阿賀野さんと照月さんの歓迎会という彼女が如何にも好みそうなイベントに来なかった。

 この時点で彼女が普段と違うことは気付くべきだったのかもしれない。

 

「……どうやら、いじめか、それと同等の問題を抱えていそうだな……」

 

 ラウラも俺の言葉を受けて自分の仮説に対して信憑性を増したらしい。

 よく考えなくても、のほほんさんは新しい友人を歓迎する場に来ないと言うのは不自然だった。

 

「だが、まだ決定的な証拠では……」

 

「そうだな」

 

 ラウラは焦りを感じながらもまだ決定的な証拠がないことを言及した。

 ラウラの言う通り、まだのほほんさんがいじめを受けているという明らかな証拠がない。

 あるのはそれがありそうだ。という程度のものだ。

 

「あ、入って行くぞ」

 

「……よし!

 入口からこっそり覗くぞ」

 

「ああ」

 

 俺たちが段々とのほほんさんがいじめを受けているのではと不安になっていくと遂に彼女が動いた。

 それを見て、俺たちは彼女を追いかけた。

 

「しっかし、本当に誰もいないな」

 

「ああ。

 何せ訓練をしている人間は出払っているからな」

 

「あぁ……成る程」

 

 ラウラの発言通り、ここがどうしていじめの現場(仮)として使われるのか現実味を帯びてきた。

 よく考えれば、この学園の生徒たちは放課後、部活動に精を出すか、「IS」の訓練を行うかが大半だ。

 そうなると、HRが終わってから一時間が経てば、自然と無人状態になる。

 

「それに整備室じゃないからなここは……」

 

「うむ」

 

 加えて、ここはあくまでも格納庫だ。

 ある程度の工具は揃っているが、それでも整備室と比べると技術者や研究者志望の生徒も出払っている。

 だから、無人状態に拍車がかかる。

 

「でも、流石に監視カメラがあるのにそんなことをするのか?」

 

 ただ、ラウラは否定材料を持ってきた。

 確かに彼女の言う通り、ここは「IS」を格納すると言う国家機密の山だ。

 当然、セキュリティとしてはカメラはある。

 そんなところでいじめなどすれば間違いなく証拠は残る。

 

「いや、そこなんだよ。

 いじめが厄介なのは」

 

「何?」

 

 俺は彼女にいじめの厄介さを説明しようとした。

 

「いじめをする奴なんて大体、陰湿でずる賢ったりするかとびっきりの馬鹿のどちらかだ。

 だけど、この二つに共通しているのはバレることなんてないていう楽観的な考え方だ」

 

「!?

 そうなのか!?」

 

「……ああ」

 

 箒や鈴をいじめてた人間はどちらかというとガキ大将気質の馬鹿が多かった。

 しかし、世の中にはバレない様に狡猾で陰湿な手段を使う奴らもいる。

 よくニュースとかで後で問題になるパターンの奴らだ。

 だが、その二つに共通しているのはバレないと高を括っていることが多い。

 

「それに言っちゃ悪いが、俺の中学でも教師の何人かは見てみないふりをしていた人間もいたさ。

 だから、いじめの主犯格てのは大体被害者を黙らせたりすれば大丈夫だと思ってるんだ。

 たとえ、カメラがあるとしても気付かないが、それを使わなければ問題に感じないんだよ」

 

「何て狡猾なのだ!!」

 

 箒の場合は学校の外だったから教師が介入するのは無理だったが、鈴の時は教師がその場にいたのにそれを理解したうえで彼女をいじめていた連中がいた。

 厄介事は避けたい。

 そんな大人たちを少し見てきたからこそ、千冬姉や那々姉さんを尊敬している理由もその一つだ。

 だから、いじめっ子というのは、先ず被害者の声を封じることを狙う。

 そうすれば、大丈夫だと偽りの安心感を得られるからだ。

 

「だから、俺達がすべきなのは何時でも反撃できるぞっていう意思表示だと思うんだ」

 

「所謂、抑止力だな。

 そうか……軍隊でも新兵いじめはあったが、そんなものか」

 

 ラウラは何処か黄昏ている表情を浮かべた。

 どうやら、彼女にも思い当たる節があるらしい。

 

 艦娘はどうだったんだろうな?

 

 ふと俺は艦娘の人たちがどうだったのか気になってしまった。

 見た限り、あれ程善良で仲間想いな彼女たちにはそう言った面がなさそうだ。

 

 ……なかったら……

 本当に人間じゃないな……

 

 俺はそう思った。

 人間の負の一面でもあるそれらが彼女たちになかったとすれば、本当に彼女たちがいい意味で人間離れしている。

 それは単純にいいことだと思う。

 

「む……!

 織斑、布仏が誰かに近付いていくぞ」

 

「おう……!

 ん?あれは……?」

 

 ラウラの報告通りのほほんさんが誰かに近付いて行った。

 一体、その人物は何者だろうか。

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