奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「いいか、更識。
はっきり言えば、お前のやっていることは俺たちへの裏切りだ」
「……っ!」
「天龍さん!?」
ただその後に天龍さんは私のしていることが『裏切り』であることをはっきりと突き付けた。
「布仏。
これは誰かにこいつが言ってやらなきゃいけないことだ。
そうしないとこいつはこいつを許せなくなる」
「……そ、それは……」
「……大丈夫よ、虚ちゃん。
ありがとう」
「お嬢様……」
私を庇おうとした虚ちゃんに対して、天龍さんは私の事を誰かが非難しなければ余計に私が自分を許せないと制止した。
彼女の言葉が私にとって待ち望んでいたものであったことから私自身も虚ちゃんを止めた。
「これだけは言っておくぞ。
俺は未だしも、いいや、俺たち艦娘はお前のその行動にことさら怒りを向けもしないし、呆れたりもするつもりない。
だが、お前の妹の代わりに戦場に向かうことになる誰かとその誰かを愛する人間は決してそうじゃない」
「……!
はい……」
天龍さんが指摘してくれた事実。
恐らく、天龍さんたち艦娘からしてみれば、私のしていることは気にも留めないことなのだろう。
それは彼女たちの善性によるところが大きい。
彼女たちは誰かが戦わなくて済む様に自らの身を戦場へと投じる。
仮に怒りを抱くとしてもその時は恐らく、戦っている自分たちのその行いをそれが当たり前だとこの世界の人々が傲り高ぶった時だろう。
だから、私の行いに対しては本懐であると思い、怒りを抱かないのだろう。
しかし、それでも天龍さんは私が簪ちゃんを守ることで犠牲となる人間とその人を愛する人間の嘆きを言及してきた。
そう。私のやろうとしていることは妹の代わりに誰かを生贄にすることも同然なのだ。
そして、私のことをそれ誰かを愛する人間は当然ながら憎むだろう。
「……いいか、更識。
お前が耐えられるのならそれでいい。
だがな、その責任をお前は確りと理解しなきゃならない時が来る」
「……はい」
言われなくても理解していた。
いや、理解していたつもりだった。
今までは更識の家の中での話だったから、私一人が犠牲になっていれば良かったのだ。
しかし、今はそうじゃない。
今は日本どころか、人類そのものに関わる出来事になってしまったのだ。
「……それと、雪風にはお前がちゃんと話してやれ」
「え……」
天龍さんは私に雪風ちゃんに自分の口でこのことを伝える様に言ってきた。
「……雪風は……この世界で初めて出来たダチであるお前が隠し事をしていたことに対して憎んだりしない。
あいつ自身がお前と同じ様な願いを持っていたからな」
「……同じ……願い……?」
雪風ちゃんは私を憎まない理由。
それは艦娘だからという理由ではなく、彼女が私と同じ願いを持っていたからだと言ってきた。
「……あいつも姉妹を守りたいと願っていた」
「!?」
その私と同じ願いを聞いて、私は胸が締め付けられると共にそれが過去の言葉となっていることにどうしようもない悲しみを感じた。
私と同じ様にかつては愛する存在がいてそれを守りたいと願っていた。
しかし、その願いを貫くことは出来なかった。
「……そんなあいつがお前を否定するわけがない。
むしろ、あいつは後押しすると思うぜ?
何よりもお前は俺たち、艦娘と違って人間だ。
俺たちは生まれた時から全員が戦わなきゃならねぇんだ。
だが、人間のお前たちは姉妹の中、一人が戦うならそれで十分だろ?
むしろ、守りたいと願う奴を好き好んで危険な場所に向かわせる様な奴だったらそっちの方が俺らからすれば失望する。
何しろ俺も姉だからな?龍驤が言う資格がないって言うのはそういうことだ。
だろ?龍驤?」
「そういうこと。
ま、うちには相方の鳳翔がいたけどね。
それでも姉妹のいないうちには気持ちがわかるとか気軽に言えないよ。
だから、資格がないってこと」
「私は……」
天龍さんは最後に雪風ちゃんが私が本当のことを伝えても彼女が私を責めることはなく、むしろ、積極的にそれに協力することを告げてきた。
同時に彼女は艦娘の強い義務感と誇り、そして悲しい在り方を決して人間に当てはめるつもりはないと言ってきた。
龍驤さんが呆れた理由は分からなかったが、それでもどうやら私の判断を責めているつもりはなかったらしい。
それでも、私は自分の卑怯な一面が嫌だった。
「……あとな。
これだけは言っておく。
妹がどんな結論や判断を下してもお前は全部受け止めろ。
お前は既にそれを止める方法も時間を失くしちまってる。
覚悟は出来ていたが、お前は向き合えなかったからな」
「……え」
しかし、天龍さんは不吉な言葉を言ってきた。
「……結果は変わらねぇかもしれない。
だが、ちゃんと向き合え。
意味は変わるかもしれないからな」
「それはどういう……?」
「天龍さん?」
天龍さんの言葉の意味がわからなかった。
けれども、それは私が既に取り返しのつかないことをしてしまったことを暗示している様にも感じた。
ただ彼女は「向き合え」とだけ重ねるだけだった。