奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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二度目の推薦とお気に入り1000超えありがとうございます!
三色団子中毒さんと読者の皆様方のためにこれからも頑張っていきます!

アーケードに雪風きましたね。
笑顔がやっぱり眩しいです。
あと、意外に背丈が高くて驚きました。


第3話「正しい反骨」

「もう一つは体罰のやり方です」

 

 私は気に食わなかったもう一つの理由を口に出した。

 周囲はざわついており私のことを生意気だと思っている目もあちらこちらにも見える。

 それもそのはずだ。

 何せ私はこの世界において絶対的な存在である「IS」に関わる者にとってはその中でも「権威」と言えるものに噛みついているのだ。

 それも実際の年齢はともかくとして、外見は自分たちと同じ新入生が歯向かっているのだ。

 反発は必至だろう。

 護衛任務を受け持つ身としては目立つべきではないとは思うが、水雷屋としての意地が私にもある。

 

「私としては三回目はともかくとして、四回目においては織斑さんも席に戻る意思はあったのですから口頭注意だけで十分だと思っています」

 

―ざわざわー

 

 また私の発言にクラスがざわついた。

 実際、私自身もこれはかなりの不躾な発言だと自覚している。

 だが、それを解っていても私は止まるわけにいかない。

 

「……貴様、中々肝が据わっているな」

 

 織斑さんは周囲と私に対する態度を変えないために高圧的な態度を崩さない。

 しかし、これは仕方がない。

 世間一般におけるこの人はどうやらこう言った認識なのだ。

 

「私はどんな相手にも言いたいことは言います。

 それが人としての最大の礼儀だと思っていますから」

 

 たとえ相手が首相であろうと、総統だろうと、大統領であろうと、参謀部であろうと、「司令」だろうと、神通さんであろうと私は相手にとっても自分たちにとっても理に適わないことあれば直言するつもりだ。

 軍人は命令には従うが同時に少しでも戦局を良くするために努力しなくてはならない。

 そうしなければ、現場や現実を理解しない政治家や参謀部の独り善がりの絵空事に付き合わされて戦局は悪化していくからだ。

 実際、戦後に一度だけ会談したドイツの重巡から

 

『あの時は危うく、国民の人気取りのためだけに戦線を拡大させられそうになったわ』

 

 と当時の愚痴を漏らされたこともあったし、私たちにとっての悪夢であるミッドウェーもそんな感じだった。

 だから、時に軍人には処罰覚悟で上申するべき時もあるのだ。

 いや、軍人だけではない。

 これは全ての公僕にも言えることだ。

 そうじゃなければ、口先だけの煽動政治家が国民を煽って国家を傾ける。

 実際、私は「感謝条約」があるとは言え艦娘を利用して覇権を握ろうとしていた輩を政治に絡むのは不本意だが軍事的顧問として度々諫めていた。

 おかげで中華民国でも帝国でも国民には私の存在は賛否両論で『いつまでも居座る古い遺物』とも中傷されていたし終いには『税金泥棒』とも『死ぬのが怖くなった臆病者』とも言われたが。

 だが、私一人の中傷で「深海棲艦」などに対する貴重な戦力を割いたり人類同士の仲間割れをせずに済んだのだからいいだろう。

 そもそも死ぬのが怖かったら艤装を解体してとっとと退役している。

 「臆病者」については「水雷屋」としてイラついたが。

 そんな中で生きてきたことから私は言うべきことはずかずかと言う人間となった。

 多少厚かましいとは自覚しているが。

 

「『人としての礼儀』か……なら、貴様は私のやり方に不満があるのか?」

 

 と彼女が恐らく演技を多少入れながら訊いてきたので

 

「はい、あります」

 

「いっ……!?」

 

―ざわざわー

 

 きっぱりと即答した。

 すると、織斑さんの弟さんを初めとして全ての生徒が度肝を抜かされたようだった。

 

「私は鉄拳制裁そのものは否定するつもりはありません。

 私が否定したいのはせめて制裁するにしても素手(・・)でやるべきだと言うことです」

 

「………………」

 

「え?」

 

 我が帝国海軍にも鉄拳制裁はあった。

 嘆かわしいことに「精神注入棒」などと言うふざけた代物もあった。

 別に私は鉄拳制裁そのものは軍の規律を正すものとしては迅速に役に立つもので必要だとは思うがそれはあくまでも自分の拳によるものであるべきだと主張したい。

 鉄拳制裁で済む問題などは精神の弛みが問題であって略奪や虐殺を処罰する場合の軍規違反とは異なるものだ。

 軍規違反は厳重処罰すべきではあるが規律の乱れは上官の器量に問題があるのだから。

 

「自分の手を痛めないやり方では一方的なものになってしまいます。

 私はそれを心配しています」

 

 私が鉄拳制裁を嫌う理由は鉄拳制裁がイジメに繋がると思っているからだ。

 やむを得ずする場合でも私は自分も苦痛を感じる方を選ぶ。

 そもそも、自分が痛みを感じないやり方でどうして相手の精神を正すことができるのだろうか。

 制裁と言うのは鉄槌ではなくあくまでも教育だ。

 相手の心に何も響かない教育に何の価値がある。

 

「……つまりは貴様は『相手の痛みを少しでも自分でも感じろ』と私に言いたいのか?」

 

 織斑さんは上辺だけは私に敵意を向けながら訊ねてきた。

 彼女も中々の役者だ。

 彼女はきっと私が目の前に私が立った時点で私が何を言わんとしているのか大体察していたのだろう。

 

「はい、何せここは「IS学園」であるのでそれこそ肝に銘じておくべきだと私は考えます」

 

「……なんだと?」

 

 私のその発言に周囲は静まり返った。

 

「「IS」は世界最強の兵器(・・)です。

 既存のあらゆる兵器(・・)を超えているのは火力・機動力・制圧力もありますが、最大の強みは圧倒的な防御力(・・・)です」

 

 私はこの三週間で覚えた「IS」の最大の特徴を簡潔に述べた。

 

「その通りだ。

 よく事前の勉強ができている証拠だ」

 

 織斑さんは私の「IS」についての説明をそう褒めた。

 これは恐らくだが本心だろう。

 

「ありがとうございます。

 しかし、私はそれこそ危険だと思っています」

 

「……なんだと?」

 

―ひそひそー

 

 そのまま私は「IS」最大の長所を最大の危うさだと口に出した。

 辺りが訝しめに私を見るが当然だろう。

 普通、生命維持に関わる防御力を危険だなんて考えるなんて普通は考えないだろう。

 だが、それでも私は言う。

 

「「IS」は「シールドエネルギー」や「絶対防御」によって痛みを感じないで相手をほとんど一方的に殴れます。

 人は自分になんの報復もなければ一方的に相手を殴ってしまう弱さがあります」

 

 私は「IS」の危険性を断言した。

 この世界の現状や歴史を見れば、いや、私の世界でもそう言ったことは数多くあった。

 「心」は強さもあれば弱さもある。

 ならば、私は「心」を大事にしたい。

 例えば、武士の持つ「刀」なんて結局は「人斬り包丁」でしかない。

 だが、持ち手が誇りを持って扱えばそれは「人斬り包丁」ではなくて「刀」となる。

 何よりもそれは私たち艦娘たちがそれを一番知っている。

 私たちの持っている兵装ははっきり言えば兵器でしかない。

 それでも私たちは「心」を持ってそれらを守りたいもののために振るってきた。

 時に本当は「深海棲艦」すらも助けたいと考えていた暁型の末女がいた。

 姉妹や戦友たちを奪われた私からすれば「深海棲艦」は憎むべき相手にしか思えないし、あの「悪魔」だけはどうあっても許せないし、相手が対話もできない「深海棲艦」だからそれは理想論でしかないとも思っているが、それでも彼女の「心」の在り方は正しいとも思っている。

 そんな彼女だからこそ、その兵装を使う資格があると今の私は考えている。

 結局のところ、いつの時代でも戦い方が変わってもそれこそが「力」を扱う者に求められるものだと考えている。

 

「だからこそ、私は少々強引ですが織斑先生の制裁のやり方はそう言ったことに繋がりかねないと思い意見させてもらいました。

 以上を以て私の意見は終わります」

 

 私が言いたいことは終わった。

 少々、大袈裟かもしれないがそれでも「IS」による暴力も「出席簿」による暴力も結局は同じだと私は考えている。

 だが、もう二つ私にはすべきことがある。

 

「皆さん、貴重な授業の時間を潰して申し訳ございません」

 

「え……?」

 

―ざわざわー

 

 クラスの生徒たちに深々と頭を下げて謝罪した。

 どんな理由や正当性があっても私のしたことは個人の欲によるものだ。

 それで迷惑がかかったのならば、どんな相手であろうと謝罪すべきだと私は考えている。

 

「では、織斑先生……どうぞ」

 

「なっ……!?」

 

―ざわざわー

 

 そして、そのまま私は織斑さんに対して頭を下げて殴られる体勢に入った。

 

「どう言うつもりだ、陽知」

 

 今度は本気で驚きながら私に対して低い声で訊いてきた。

 それに対して私は

 

「どんな理由があるにしろ私は自分の目的のためだけに授業の時間を費やし、さらには教師に対して失礼な発言を吐きました。

 それは十分、処罰に値する行為です」

 

 と罰を乞いた。

 私はけじめをつけることを信条としている。

 よく『正義のためならば犯罪をしてもいいんだ』なんて主張する人間がいるが、私から言わせてもらえばそんな人間は「正義」を騙る「臆病者」だ。

 どんなに「綺麗事」で言い繕っても「蛮行」は「蛮行」に過ぎず、「犯罪」は「犯罪」に過ぎない。

 昔、ロシアの文豪の書いた小説にそんな思想を抱いた青年が犯罪を犯して罪悪感に苦しめられて女性によって救われると言ったものがあった。

 だが、現実はその青年よりも卑劣な罪に向き合おうともしない卑怯者や臆病者だらけだ。

 少なくとも私はそんな人間になりたくない。

 だから、けじめはつけたい。

 

「お、おい……いくらなんでも……」

 

 織斑さんの弟さんは私を庇おうとした。

 元々は彼の行動がこうなる原因を作ったのだから気にかかるのだろう。

 だが、私は

 

「お気持ちは嬉しいですが先ほども言いましたが

 これは私の勝手な行動であって、あなたは関係ありません。

 ですので、お気になさらずに」

 

 と「自分のため」と強調して彼が気に病まないようにした。

 

「だ、だけど……」

 

 それでも彼は引き下がらない。

 

 なるほど……嫌いではありませんが「お人好し」ですね……

 これは面倒です……

 

 私は彼の人柄を断じた後、織斑さんがとっとと鉄拳制裁をしてくれないかと待っていると

 

「そうか陽知」

 

「はい」

 

 とようやく織斑さんが私に声をかけて来た

 

「ち、千冬姉、待ってくれ―――」

 

―ゴチン!ー

 

「……っう!?」

 

「織斑先生と呼べ、馬鹿者」

 

「は、はい……」

 

 再び織斑さんの弟さんが動転していたと言え口を滑らせてしまい、今度は素手(・・)による制裁を喰らった。

 そして、私は今度は自分の番だと考えていたが

 

「陽知、今度からは時間を使うなよ。

 私からは以上だ」

 

「……はい……て、え?」

 

 それを聞いた瞬間、私は戸惑いを隠せなかった。

 と言うよりも私以外のクラスの人間も驚きの色を隠せずにいた。

 

「私は『言うことはきけ』とは言ったが、同時に『逆らってもいい』とも言った。

 席に着け、二人とも」

 

 彼女は私に制裁を科さない理由を口に出してそのまま授業に入る様に促した。

 

 

 

 納得がいかないから……逆らうか……

 

 教師でありながら私は生徒に諭されると言う情けない姿を晒しながらもどこか充足感に包まれていた。

 教師が生徒から学ぶ。まさか、教育ドラマのような展開に新学期初日から立たされるとは。

 

 「神通」と言ったか……彼女の師も相当、大変だったろうな……

 

 更識から聞かされた雪風の師匠も、相当教え甲斐もあっただろうしきっと自らの教え子である彼女のことを誇りに思っていたに違いない。

 

 一夏がいることで公私の分別を付けようと必要以上に根を詰めていたのかもしれないな……

 

 私は一夏に普段から厳しく接しているがそれが担任と生徒と言う関係になったことで無意識にさらに厳しくしてしまったのかもしれない。

 

 それに……よく考えてみれば、私はいい気になっていたかもしれないな……

 

 情けないことではあるが私は誰にも叱られることもなく育ってきた。

 もちろん、自分たち姉弟しかいないことで己を律してきたつもりだった。

 だけど、それが自分に絶対的な自信を持たせ過ぎたのかもしれないし「ブリュンヒルデ」と言う肩書きのおかげで反抗者もいなくなってしまった。

 これではお山の大将だ。

 

 いや……あいつだけは違ったな……

 

 川神だけは違った。

 あいつは当時、荒れていた私相手に唯一文句を言ってきた人間だった。

 家族もいて生活に不自由しない川神に私は『お前に何が解る』と言う嫉妬の気持ちを込めて反発していた。

 ある時、しつこくてむかついたので殴ろうとしたら逆に殴られてそのまま私も殴り返してそのまま殴り合いになった。

 その後に引き分けで終わりお互いに疲れた後にあいつが言ったのは

 

『どうですか、先輩?

 お互いに全力をかけての殴り合いは?

 色々と吐き出せてすっきりしませんか?』

 

 だった。

 あんなどう見ても清楚なお嬢様然な女子が普通言うこととは誰も思わないだろう。

 まるで青春ドラマみたいな馴れ初めだった。

 それからあいつはまるで「おかん」みたいに私に一々、小言を漏らしてきた。

 だけどなぜか安心できた。

 ただ束に対する暴力に関しては

 

『篠ノ之先輩はああ言った人なので仕方ありません』

 

 と許容していたが。

 さすがの川神でも束に対しては普通の人間の接し方はできないと踏んでいたのだろう。

 そもそも束からは『精神主義の根性論女』と罵られ、川神は『自分の中で物事を完結ばかりしている人』と言い返すなどまさにあの二人は水と油の関係だった。

 

 そう言えば……川神の奴、雪風の名前を訊いた瞬間に『陽炎型八番艦の雪風ですか?』とか珍しく動揺していたな……

 あいつはミリオタではなかったはずだが……

 

 私は三週間前の通信における川神の様子を思い出していると

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

「あ、えっと……」

 

「わからない所があったら訊いてくださいね。

 なにせ私は先生ですから」

 

 どうやら一夏が授業についていけてないようだ。

 それについては私も贔屓目なしに仕方ないと思っている。

 なにせ一夏はこれまで「IS」に関わらないようにこの私自身がしてきたからだ。

 そもそも一夏が「IS」に関わったのは一か月前からなのだ。

 それをたった一か月で全部覚えろなんて無茶は流石の私でも言うつもりはない。

 ただ雪風は三週間でほとんど覚えたが、あれと比べるのでは酷だろう。

 だが

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

「ほとんど全部わかりません」

 

 は?

 

 一夏はよく解らないことを口に出した。

 今、あいつは何て言った。

 私は弟の情けない発言に耳を疑いながら周囲の確認をしているとほとんどの人間が口をあんぐりしていた。

 と言うか、さっき遠回しに擁護した雪風すらも信じられないものを目にしているような表情を浮かべているぞ。

 

 まさか……こいつ……

 

 そんな中で私は勇気を振り絞って一夏に

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

 なるべくなら当たって欲しくない予想を訊ねた。

 一夏は姉の私から見ても勉強はできる方だ。

 何せ、こいつは私に苦労をかけさせまいとまさに苦学生を地でいく「姉泣かせ」だ。

 多少、私生活で抜けているところがあるがそれでも私のようなきつい性格よりも圧倒的にマシだろう。

 ゆえに信じたくはないが、こういったことしか考えられないのだ。

 すると、一夏は躊躇いなく

 

「古い電話帳だと間違えて捨てました」

 

―ゴツン!!ー

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

 

 そう言った。

 大体予想できていたとは言えふざけたことを抜かしたので私は殴った。

 今回の鉄拳制裁には姉としての感情が混ざっていると自分でも自覚はしているが私は後悔していない。

 私は多少、やけになって雪風の方を見て確認すると雪風も目を閉じながら『当然です』と肯きながら黙認していた。

 体罰に不服で一夏に対して同情的な雪風すらもあの反応だぞ。

 

「後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ。

 いいな」

 

 三週間で訓練と一緒に中学レベルのこちら側の歴史や公民の勉強も同時にこなして、なおかつ参考書の主要な部分もちゃんと理解した雪風を見てきたことで私はさらに情けなく感じたので、かなり厳し目なノルマを課して尻を蹴っ飛ばした。

 流石に『雪風を見習え』とは言わんし、『雪風を基準にしろ』とも言わん。

 雪風も雪風で過酷な世界で生きてきたことでああ言ったことができるのだから。

 と言うよりも彼女の年齢は私よりも上だ。

 それに人間なんてものは決して平等ではないのだから。

 私は『努力すれば、必ず報われる』なんて無責任に言うような理想主義者じゃない。

 才能と努力など言うのははっきり言えば掛け算に過ぎない。

 才能が100に対して努力1ならば100の成果を得られるが、才能が30に対して努力が1ならば30の成果しか得られないのだ。

 しかし、それでもある程度の努力で後者は前者にいつかは勝る。

 今、この場においては雪風は人生経験もあって前者が才能100に加えて努力が10になったようなものだ。

 それに対して実技はともかくとして知識においては一夏は「IS」に関しては才能1で努力1の状態だ。

 だが、それでも一夏の理解力ならこの一か月である程度のことはできただろう。

 と言うか、本来は一夏も雪風も同じくらい危険な立場にいるのだ。

 

「い、いや……一週間であの分厚さはちょっと……」

 

 と一夏が未練がましく言ってきたので

 

「やれと言ってる」

 

「……はい。やります」

 

 いつも以上に厳し目におどしに近い形で了承させた。

 そもそも一夏は高い偏差値の高校受験をなんとかパスできる程度には努力しているのだし、ほとんど推薦に近い(いや、言葉は悪いがむしろ「裏口入学」の方が圧倒的に近いが)やり方で「IS学園」に入学したことあるから他の教科に向ける努力を「IS」に向けてもよかったはずだ。

 

 いや、ここでクラス全体にも示しておくべきか……

 

 そして、そのままさっき、雪風に言われてしまったが一夏だけでなくクラス全体に対して

 

「さっき、陽知も言っていたが「IS」は強力な兵器だ。

 そう言ったものを深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。

 そうしないための基礎知識や訓練だ。

 理解ができなくても覚えろ。そして、守れ。規則とはそう言うものだ」

 

 そう言い聞かせるように言った。

 言い終えるとクラスの半分は素直に受け取り、クラスの半分は雪風に嫉妬の目を向けていた。

 内心、私は溜め息を漏らしたくなった。

 肝心の一夏はと言えば、納得はしてはいるがどこか不満そうな顔をしていた。

 

 仕方ないか……こいつも自分の意思でここにいるわけではないのだから……

 

「……貴様、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

 私は過去の自分への憤りと一夏への同情、そして、弟に対する罪悪感を込めながら

 

「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。

 それすら放棄するなら、まず人であることをやめることだな」

 

 自嘲も含めて私は一夏に『現実を直視しろ』と言った。

 せめて、弟には私のような愚かな人間にはなって欲しくない。

 本当は雪風や川神のような人間が言うべきことなのかもしれないが。

 

「………………」

 

 一夏を見てみると、どうやら私に恥をかかせまいと思ってくれているのだろう。

 だが、姉としては嬉しく思うべきなのだが同時に私はこの真っ直ぐな弟に対して居た堪れない気持ちが強かった。

 結局のところ、私もこの弟がいてくれたことで生きて来られたのだから。

 何よりも私は自ら人であることをやめた落伍者なのだから。

 そんな私を救ってくれていたのが一夏なのだから。

 

 今は……これでいいか……

 

 どんな理由にせよ一夏のやる気に火がついてくれたのはこれから一夏のためになるだろう。

 ただ今はそれだけで満足だ。




春イベ……基地系の多さが半端なかったですね……

この作品での雪風は中華民国では元帥クラスの存在です。
多分、旗艦てそれぐらいの立場だと思うんですよね。

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