奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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何と言うか、雪風は見た目は子どもだけどかなり頭脳派よりの本能派だと思います。


第12話「勝利を求めて」

 初弾を避けて攻撃も行うとは言うだけのことはありますわね

 

 わたくしの「スターライトMK-Ⅲ」による射撃を避けたと同時に射撃を行った小生意気な生徒に私は素直に感心した。

 射撃と言うのは正確に当てるには経験が必要なものだ。

 彼女のは自分が狙いを定め相手の攻撃を避けることのできるギリギリの時間まで粘ってからのものであった。

 

 まあ、それも今のうちですが―――

 

 私が移動を終えてもう一度、獲物に照準を合わせてトリガーを引こうとした瞬間

 

―警告!ー

 

―ドゴン!ー

 

「……え?」

 

 警告音が鳴り

 

―ドーン!ー

 

 間もなく私を爆炎と硝煙が包み込んだ。

 

 

 

「なんであいつは立ちぱなっしだったんだ……?」

 

 俺は「IS」を展開しながらピットで陽知とオルコットの二人の試合の中継を箒と見ていた。

 そして、試合開始と共に両者が同時に射撃を行った後のオルコットの行動に俺は「?」を頭に浮かべた。

 なぜ距離を置いてからオルコットはほとんど棒立ちになったのだろうか。

 初心者の俺でもあれではいい的だと言うことが理解できる。

 そして、案の定、陽知はそれを見逃さずに左腕の銃で狙い撃ちにした。

 

「簡単なことだ。

 オルコットの射撃は横向きの移動に向いていないからだ」

 

「え?ちふ―――じゃなくて、織斑先生?

 なんで、ここに……」

 

 いつの間にか千冬姉がここにいて俺の疑問に答えた。

 

「……初心者の貴様には隣で誰かが解説しなければならんと思ってな。

 安心しろ、後で陽知とオルコットの二人にも付く予定だ。

 贔屓はしないし助言もしない」

 

「な、なるほど……」 

 

 これは心強いことだ。

 はっきり言えば、今の俺はこの一週間の間箒に指導してもらっていたとはいえほぼ剣道の稽古しかしてこなかったからだ。

 「IS」に関しての知識は、いや、むしろ白兵戦以外の知識はないに等しい。

 そこに千冬姉と言う経験と知識の固まりが解説してくれると言うのは「渡りに船」だ。

 

 ん……ちょっと、待て……それだと陽知はどうなるんだ?

 

 千冬姉は確かに陽知とオルコットにも付くと言ってはいたが、確か陽知の試合は今の試合と次の俺との試合で終わりであったはずだ。

 それだと、陽知は千冬姉の解説を受けられないのでは。

 

「お、織斑先生……それだと、陽知には意味がないんじゃ―――」

 

 俺は流石にそれだと不公平だと思って指摘しようとしたが

 

「安心しろ。それなら問題ない」

 

「え?」

 

 千冬姉は『問題ない』と即答した。

 その意味が分からない。

 

「あの千冬さ―――」

 

 箒が気にかかることがあったのか千冬姉に声をかけようとするが

 

「織斑先生だ。馬鹿者」 

 

「す、すみません……」

 

 即座に千冬姉の低い声で注意された。

 この一週間、陽知のおかげで「鉄拳制裁」が少ないとは言えそれでも千冬姉の厳しさと迫力は言葉だけでも効果がある。

 と言うか、気の強い箒でもこれなのに本当に陽知は度胸があり過ぎると思う。

 

「その……織斑先生。

 オルコットの射撃が『向いていない』と言うのはどういう事なんですか?」

 

 箒はどうやら、千冬姉が言った『向いていない』と言う言葉が疑問に思ったらしい。

 俺もそう思っていたことだ。

 二人とも見た所射撃をメインにしているらしいが。

 

「貴様らも見て解る様に陽知もオルコットも同じ射撃型ではあるがそのコンセプトが全く違う。

 特に銃の形状がな」

 

「「銃の形状」……?」

 

 確かに二人の持っている銃は全く違う。

 陽知のは二丁拳銃と言った感じでオルコットのは狙撃銃と言った感じだ。

 

「オルコットのは両手持ちで遠距離戦や突撃には向いている。

 遠距離専用と言っても今の時代、ある程度の連射の利かない銃はないだろう。

 だから、あれはある程度の突撃戦にも使える」

 

「へえ~……」

 

 なるほど。つまりは「前の標的」には強いと言うことか。

 

 ん?ちょっと待て……「前の標的」?

 

「気付いたと言った顔だな……

 よく見ておけ、織斑……

 恐らくだが、今年の新入生の中で最も実力があるのは―――」

 

 俺があることに気づいた瞬間に千冬姉は俺に諭すような顔をしてから

 

「奴だ」

 

 陽知のことを目で捉えながらそう言った。

 

 

 

「ぐっ……!何が―――っ!?」

 

―ドゴンー

 

 直撃を食らった後の衝撃から立ち直った直後に追い打ちをかけられていることに気づき、なんとか今度は回避することができた。

 

 どうして……あんな早さで二発目を……!

 

 わたくしは理解できなかった。

 あの最初の撃ち合いは互いに避け外した。

 その後に二発目を撃つにはある程度の間が必要とされているはずだ。

 もちろん、持っている得物が違うことからその時間にはタイムラグがあるが。

 それなのに彼女はわたくしの予想していた時間よりも早く、わたくしに避ける間も与えずに二発目を撃ってきた。

 しかも、それは直撃した。

 

「くっ……!」

 

 悔しさと屈辱を噛み締めてわたくしはこのまま彼女にされるがままの状況を打開するために「スターライトMK-Ⅲ」を構えて応戦しようとした。

 初撃でエネルギーの三割は持っていかれた。

 これ以上の失態は許されない。

 

―ドゴン!ー

 

「なっ……!?」

 

 しかし、彼女はそれを許さずに距離を詰めつつ右手で射撃しわたくしが避けると今度は左手を構えつつわたくしの右側に回り込んだ。

 先程よりも弾速、いや、弾丸の到達時間が縮まっている。

 これは危険だ。

 

 これでは……反撃ができませんわ……!

 

 彼女はわたくしの利き腕である右側ばかりに移動している。

 そして、わたくしが照準を合わせようと身体を回すと

 

―ドゴン!ー

 

「きゃっ!」

 

 彼女の右手の銃から既に冷却が済んだらしく再び弾丸が発射されて寸でのところでわたくしは避けるしかなかった。

 

 先程の二発目の早さは……やはり、もう片方の……

 

 だが、これでようやく先手を取られた理由の一つには確信が持てた。

 彼女があんなにも早く二発目を撃てたのは単純に彼女の二丁拳銃とも言える銃の持ち方が最大の理由だろう。

 彼女はただ左右の銃を交互に撃つことで連射しているだけである。

 

 でも……それでもあの早さで……直撃は……

 

 しかし、それだけではあの正確な射撃には納得がいかない。

 わたくしたちは初弾を互いに外した後に移動したのだ。

 そして、絶好の立ち位置を得てからわたくしが「スターライトMK-Ⅲ」を構えた直後にあの一撃が来たのだ。

 

―ドゴン!ー

 

 さっきから……右ばっかり(・・・・・)……!

 

 彼女はわたくしの利き手である右にばかり回り込んでわたくしの射撃体勢の死角に回り、わたくしがそれを解決しようと身体の向きを変えるとすかさず射撃を行う。

 わたくしの「スターライトMK-Ⅲ」は両手持ちのライフルだ。 

 どうしても利き手側には死角が生じる。

 

利き手(・・・)……?」

 

 その時、わたくしはなぜかその言葉が気にかかった。

 

 まさか……!?

 

 些細な事からわたくしは彼女のあの正確な射撃の正体を理解してしまった。

 

 解って……いや、読んでいた(・・・・・)と言いますの!?

 わたくしの移動地点を!?

 

 彼女は最初の応酬の後に向かい合ってから射撃体勢に入ったのではない。

 向かい合う以前に銃をわたくしに、いや、わたくしがいるであろう場所にある程度構えていたのだ。

 その後は実際にわたくしを目にしてからの目測による調整を行えばいい。

 

 わたくしの「利き手」からわたくしの移動場所を割り出したと言いますの……!?

 

 彼女がわたくしの移動場所を予測した材料はただ一つ。

 わたくしの「利き手」であった。

 わたくしは「利き手」の死角に彼女を入れないように右に移動していた。

 わたくしの一連の行動を彼女は予測していたのだ。

 

「このままじゃ、すましませんわ!!」

 

 敵にしてやられた。

 その屈辱に私は声を荒げた。

 このままやられ放題など堪ったものではない。

 

『だからと言って、男の人を見下していいことにはなりません……!!』

 

 何も知らない人間がそんな言葉を吐くな。

 お母様もあの情けないお父様すらもいなくなってから、オルコット家の財産を狙いに来たハゲワシや財産目当てに近づいて来たアリのような男たちを知らないから彼女はそんな事を言えるのだ。

 

『「あの人」のことまでばかになんてさせません……!!』

 

 これ程までに強い女性である彼女がそう言う男なんているはずなどないはずだ。

 

「さあ、踊りなさい!!

 わたくし、セシリア・オルコットと「ブルー・ティア―ズ」の奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

 

 わたくしは「ブルー・ティアーズ」最大の特徴でもあり武器であるビット兵器を展開した。

 彼女がわたくしの攻撃を読んで撃ってくるのならば読む暇さえも与えなければいい。

 「ブルー・ティアーズ」によるオールレンジ攻撃ならば可能だ。

 

 これだけの攻撃を避けれるはずが……!

 

 自分に言い聞かせるようにビットを操作した。

 

 

 

「これは……!」

 

―キュンー

 

「……!こっちもですか!」

 

―キュンー

 

―キュンー

 

―キュンー

 

 囲まれましたか……

 

 彼女の「IS」から四つほどの部分が外れたと思った直後にそれらが独立して私に一斉に接近したと直後、一基が射撃を開始しそれを避けた直後他の三基が射撃を開始し、私を包囲した。

資料に書かれている「特殊装備」とはこれのことらしい。

 これで先ほどまでのように彼女の死角に回り込んで砲撃する戦い方ができなくなった。

 

 まるで……艦載機のようですね

 

 それらの特殊装備を見て思ったことは空母や航空戦艦、航巡に配備されている艦載機であった。

 

「そこですわ!」

 

―キュインッ!ー

 

「……!」

 

 私が特殊装備による包囲から脱出しようと突破しようとした瞬間、彼女のライフルからの射撃が来たので私は即座に回避した。

 それぞれの特殊装備は動きながらも私を包囲し続けている。

 

 水上機にないあの速さに本体からの射撃……

 さしずめ、艦戦や艦爆、艦攻を積める航巡といった感じですね

 

 彼女の「ブルー・ティアーズ」の特殊性を見て私はそう思った。

 日向さんが見たらどう思うのだろうか。

 

―キュインッ!ー

 

 再び私は包囲網の薄い点に飛び込み、そして、彼女の攻撃が来たと同時に再び包囲網の中に戻った。

 

―キュインッ!ー

 

「くっ……!なぜ直撃しませんの!!」

 

―キュンー

 

―キュンー

 

 彼女の射撃による波状攻撃を回避し続けていると彼女は苛立ちを募らせ始めた。

 先程から彼女の攻撃は私に決定的な打撃を与えていない。

 

 ここは耐えるのみ……

 

 ただ、ここで無理に砲雷撃戦の態勢に入れば集中砲火を浴びることになるだろう。

 私は先ほどから彼女の包囲網を突破しようと動きながら即座に戻ると言うことの繰り返しを行っている。

 幸い、私の「艤装」の名残でもある「電探」による空間把握能力のおかげでどの特殊装備が攻撃態勢に入ってるのかは即座に把握できる。

 初霜ちゃんの「対空電探」も加わっているのだろう。

 避けることには何の問題もない。

 しかし、私にとっての最大の幸運なことはそれだけではない。

 

 これじゃあ、せっかくの攻撃手の多さが無駄になっていますね。

 

 それは彼女の特殊装備の行動パターンの読みやすさだった。

 私が一基の特殊装備に狙いを定めようとすると、即座に彼女はライフルで射撃をして、私を包囲網の中にまで押し込んでいく。

 それが解っているのならばその瞬間に回避するだけでいいだけだ。

 それに彼女がライフルで撃つ瞬間にはなぜか特殊装備からの攻撃は来ない。

 攻撃も移動も単調で包囲を維持するだけにしか使っていないのだ。

 これではせっかくの機動力が完全に宝の持ち腐れだ。

 

 司令……いや、山口提督がいたら懲練ものですね……

 

 司令の元直属の上司であり、当時一介の尉官で艦載機の搭乗者でしかなかったらしい提督を佐世保の艦娘部隊の提督に推薦した二航戦の猛将ならば怒るなんてレベルじゃない使い方だ。

 

―キュンー

 

―キュンー

 

―キュンー

 

―キュンー

 

 彼女の攻撃の間隔が縮まり、光線が身体を掠った。

 どうやら、それだけ包囲網の範囲が狭まったと言うことだろう。

 

 頃合いですね……

 

 耐える時間は終わったらしい。

 まさか、ここまで上手くいくとは思いもしなかった。 

 

「私を沈めたいのならば―――」

 

 ただ、なぜかこの言葉だけは言いたくなった。

 

「……?」

 

 こんなもの二航戦唯一の生き残りである飛龍さんや五航戦姉妹の対空訓練を受け、数多くの海上護衛任務を受けてあの無数の敵の航空戦力を相手にし続けた駆逐艦(私たち)に言わせてもらえば

 

「これの十倍は持ってこい!!!」

 

―ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!ー

 

―ドォン!ー

 

―ドォン!ー

 

―ドォン!ー

 

―ドォン!ー

 

「なっ……!?」

 

 数も質も足らない。

 

 

 

「わたくしの「ブルー・ティアーズ」が……全滅!?」

 

 彼女が「ブルー・ティアーズ」の包囲の中心に入ったと思って一斉射撃に入ろうとした瞬間、彼女の肩や背中から小型の機銃が展開され一瞬のうちにわたくしの「ブルー・ティアーズ」は全て撃ち落とされた。

 わたくしは愕然として現実を受け止められなかった。

 

「包囲を狭めすぎですよ」

 

「……!」

 

 「ブルー・ティアーズ」最大の武器を失い、どうすればいいのか分からずにいると目の前の彼女はそう言った。

 そう、わたくしは彼女を包囲したまでは良かったが直撃しない自分の攻撃に業を煮やして包囲を狭めて射程を短くして攻撃の速度を早めた。

 いや、違う。

 わたくしは目の前の彼女の反撃が怖くて攻撃し続けただけだ。

 そして、その結果彼女のガトリングによって包囲網は崩され最大の武器を失ってしまったのだ。

 

 まさか……これも読んでいたと言うのですか……?

 

 彼女が先ほどまで回避に徹していたのはわたくしの「ブルー・ティアーズ」が全て自分の機銃の有効射程に入り一掃できる範囲にまで来るのを待っていたからではないかとわたくしは思った。

 

―ガタガター

 

 震えてる……?

 

 「スターライトMK-Ⅲ」を握る右手が、いや、左手すらも震え出したことにわたくしは気付いた。

 

 何ですの……何ですの……!?何ですの、この人は!?

 

 試合開始直後のわたくしの動き、「ブルー・ティアーズ」展開後の回避運動、そして、わたくしの苛立ちと焦り。

 それらを全て読んでいた(・・・・・・・)かのように彼女は戦っている。

 彼女のしている「読み」は映像資料でしか見たことがないが私の知る限りはあの人ぐらいしかできないはずだ。

 織斑先生と肩を並べることのできる「もう一人の世界最強」しか。

 それを彼女はしている。

 

 怖い……

 

 初めて、わたくしは「IS」の戦いで恐怖を覚えた。

 

―ズドン!ー

 

「ひっ!?」

 

 恥も外聞もなく情けない声を出しながら彼女の攻撃を避けた。

 既にビット兵器を失ったわたくしには彼女の攻撃を止める術はない。

 わたくしを守る盾は既にないのだ。

 試合開始直後からの彼女の静かながらも苛烈な攻撃を見せつけられてきたわたくしには彼女の挙動の一つ一つが恐怖でしかなかった。

 

 ミサイルなんかじゃ……止められない……!

 

 わたくしにもまだ攻撃手がある。

 しかし、彼女にはそれすら通用しないだろう。

 そして、それすらも通用しなかったら本当の意味でわたくしには何も残されていない。

 

 なぜ彼女は……ここまで、強いのですか……?

 

 最初、わたくしは彼女の見せつけた実力に苛立ち、いや、本当は嫉妬を覚えていた。

 あんなにも強い女性なのに男性を誇ろうとする彼女の姿に。

 だけど、今のわたくしが抱いているのは狩られるものの恐怖だ。

 

―ビュン!!ー

 

 なっ!?突撃してきた!?

 

 わたくしが彼女の攻撃に怯えていると彼女が「IS」のスピードを加速してわたくしに向かってきた。

 射撃専用の機体で急接近してくるなんて明らかにおかしい。

 だが、それゆえにその不可解な行動にすらも恐ろしかった。

 

 み、ミサイルを……でも、外したら……

 

 敵が接近してきた。

 それは「ブルー・ティアーズ」の奥の手であるミサイルによる迎撃の絶好の機会だ。

 だが、外した時のことが怖くて何もできずにいた。

 

 なんであなたはそこまで強いのですか……?

 

 もう不安か恐怖か何なのかすらも分からず頭の中がごちゃごちゃになってほとんど現実逃避に近い質問が頭に浮かんできた。

 その時

 

『ええ……また一つ背負うものができたのですから、逃げるわけにはいきませんよ』

 

 ……?

 

『はい。私には色々と背負うものがあります。

 だから、この試合、負けるつもりはありません』

 

 背負うもの……

 

 なぜか試合前の彼女とのやり取りを思い出した。

 最初、わたくしは彼女も自分と同類だと思って認識を改める程度にしか感慨を持ちえなかった。

 しかし、蓋を開けてみれば彼女の方がわたくしよりも遥かな高みにいた。

 今なら認められる。

 彼女とわたくしでは強さの次元が違い過ぎる。

 わたくしの「背負っているもの」が軽いとでも言うのか。

 

 違う……

 

 だが、それをわたくしは即座にそれを否定した。

 自分の実力が彼女よりも数段劣っていることなど、この際どうでもいいことだ。

 それでもわたくしにも譲れないものがある。

 

 お母様やお父様の遺したもの……それが軽いはずなんてありませんわ!!

 

「わたくしは……」

 

 彼女への恐怖を感じながらもわたくしはしっかりと彼女のことを見据えた。

 そして、

 

「わたくしはオルコット家当主!!セシリア・オルコットですわ!!!」

 

 「スターライトMK-Ⅲ」を収納し彼女に向かって突貫した。

 

「なっ……!?」

 

 私の予想外の行動に彼女も目を大きく広げて驚いていた。

 どうやら、今度ばかりは彼女の「読み」は外れたらしい。

 

 これしか勝ち目はありませんわ……!!

 

 ようやく彼女の「読み」から外れた状況に勝機を見つけた。

 

「「インターセプター」!!」

 

 わたくしは突撃しながら白兵戦用の兵装である「インターセプター」を展開した。

 これからわたくしは不慣れな接近戦を挑むつもりだ。

 彼女の早撃ちに勝つには最早、これしか残されていない。

 だが、これだけでは足らない。

 

「食らいなさい!!」

 

 彼女が避け切れないだろう距離を詰めると覚悟を決めてわたくしは最後の「ブルー・ティアーズ」を構えた。

 わたくしがしようとしているのはミサイルを確実に当ててその後に接近戦を畳みかけることだ。

 「インターセプター」だけならば、ダメージは小さい。

 しかし、このミサイル攻撃さえ当てれば大幅に彼女の「シールドエネルギー」を削ることができる。

 活路はこれしか残されていない。

 しかし

 

―ヴンッ!ー

 

―プシュ!ー

 

「「なっ……!!?」」

 

 同時に二つの発射音と二つの口から放たれる驚きの声が二人の間を満たし

 

―ドカアアァァァァアァァァァァァアァァァァァァァアァアァン!!!ー

 

「きゃっ!?」

 

「くっ!?」

 

 四つのミサイルのうちどれとどれが衝突したのかわからないほどの爆炎と爆風、爆音、爆圧が二人の間を遮った。

 あの瞬間、一瞬だけ見えた彼女の目にも驚きが込められていた。

 そして、次の瞬間

 

「……見事です」

 

「……え」

 

―プシュ!―

 

 そんな言葉が聞こえて来た直後

 

―ドカアアアアアァァァアァァン!!―

 

 轟音が鳴り響いた。

 

―試合終了。勝者 陽知 雪風ー

 

 試合は終わった。

 わたくしの敗北で。




ブルー・ティアーズのビットは猟犬みたいなイメージですけど基本的にセシリアのやりやすい動きしかできないイメージしかないです。
そもそもセシリアは狩りを気取っている感じがしますので。

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