奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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ボス前ダブルダイソンとかwww
マジワロタwww
後、ヲ級ちゃんもやば過ぎwww
事故る事故るwww

まあ……轟沈させずにすんでる分いいか……
ただ、これだけは言いたい……
頭を使うのと運ゲーは全く違うと言うことだけは……
そもそも消費アイテム使わないとクリアできないイベントと言うのは……
課金は改修資材と拡張だけで勘弁してください……マジで


第16話「勝者の得たもの」

「………………」

 

 第二試合が終わり、これで私の全ての試合が終わった。

 最後は相手のエネルギー消費が原因と言う呆気ない終わり方であったが私の勝利で終わった。

 

 いいものを見ることができました……

 

 今回の試合で私は感銘を覚えた。

 正直に言えば、私はこの一週間で感じたのは失望と憤りばかりであった。

 「女尊男卑」などと言った下らない幻想に囚われ、「IS」と言う力に溺れて「本当の強さ」と言うものを知らないでいたこの世界の人々に。

 しかし、試合前に私に自らの悔しさを告白したあの少女や実際に戦うことで確かに感じることができた私の試合相手の見せた「覚悟」を目の辺りして、その見解は早計だったことも認めざるを得なかった。

 彼らにも十分にその「強さ」はあったのだ。

 

「……『守る』ですか」

 

 それらとは別に最後に私が気を取られた織斑一夏のその言葉に私は未だに虚しさを覚えていた。

 彼が「姉」の何を守りたいかは分からない。

 だが、彼の『守る』と言う意思は『守れるほど強くなりたい』と言う意味に他ならないはずだ。

 それはかつての私と同じように。

 

「うらやましいなぁ……」

 

 私は彼がそう言えることがただただ羨ましくて、そして、虚しかった。

 彼と私には決定的に違い過ぎるところがある。

 彼には守るべきものが存在していて、私には既にそれらがない。

 私は確かに祖国や国民を守れたのかもしれない。

 それでも、あの「誓い」を果たせなかったのだ。

 

「私はどうすればいいんでしょうね?」

 

 織斑一夏にもオルコットさんにも「我」が確かにあった。

 しかし、今の私にはその「我」がない。

 この世界で私は何をすればいいのか分からない。

 これでは目的地がない航海と変わらない。

 「深海棲艦」すらいないこの世界で私は何を目的にして生きればいい。

 これではみんなに申し訳が立たない。

 そもそも、「女尊男卑」の世界で元とは言え「艦娘」の私ができることなどあるのか。

 オルコットさんであろうと、織斑一夏であろうと私が勝っても何の変化があるのだろうか。

 試合前からずっと自覚していたが、私は「女」だ。

 「女尊男卑」の世界で当たり前である『女の勝利』と言う事実を印象付けてしまっただけではないのか。

 織斑一夏の「覚悟」には敬意を払えた。しかし、それは私個人の感性によるものでしかない。

 いや、たとえ響いたとしてもそれは『「IS」を使える人間が選ばれた人間』と言うこの世界の認識では無意味なのかもしれない。

 

「私は……!」

 

 悔しい。

 あの織斑一夏やオルコットさんの見せた「強さ」をただそれだけで片づけられることに。

 

「陽知さん?」

 

「え……?」

 

 私が悔しさを噛み締めて無力感の中に浸っていると私に声をかけてきた人物がいた。

 振り向くとそこには

 

「……オルコットさん?」

 

 次の試合に出るはずであるセシリア・オルコットその人が立っていた。

 どうやら、私に声をかけたのは彼女らしい。

 

「こんなところで何をしているんですか?

 試合は大丈夫なんですか?」

 

 私はこんなところで油を売っていていいのかと思い彼女がここにいる理由を訊ねた。

 すると、少し恥ずかしそうに彼女は

 

「棄権いたしましたわ……」

 

「はい?」

 

 信じられないことを口に出してきた。

 プライドの高い彼女が、しかも根っからの「女尊男卑主義者」と思われる彼女が見下す対象の「男」である織斑一夏との戦いを、下手をしたら『逃げた』とも思われるのかもしれないのに『棄権した』と言ったのだ。

 

「ど、どうしてですか!?」

 

 私はあまりのことに衝撃を受けてその訳を訊ねた。

 どう言った心境の変化かは分からない。

 しかし、彼女の性格を考えると予想もできないことだった。

 

「それはその……あなたと戦って、そして、あなたと彼の試合を目にして自分の小ささを身に染みたからですわ……」

 

「え……」

 

 これまた意外な彼女の言葉に私は驚くしかなかった。

 確かに前者については失礼かもしれないが、オルコットさんの戦い方は理に適っているとは言え、『いじめっ子が相手が殴らないことをいいことに殴りまくる』と言うスタンスに近いものである、相手の思わぬ逆襲を受けて初めて自らがその憂き目に遭うことに恐怖を抱いたと言う感じだったので何となく理解できた。

 だが、実際に戦っていない織斑一夏のことを自分よりも大きいと思ったのかについては驚くしかない。

 

 いや……

 

 しかし、私には彼女の心境の変化に心当たりがあった。

 

「オルコットさん、もう一つお聞きしたいのですが……

 あなたが「男性」を嫌う(・・)理由は何ですか?」

 

「え、それは……」

 

 それは試合前に感じた「違和感」だった。

 彼女の抱く「女尊男卑」は他の女子が抱いている「虚栄心」や「優越感」からくるものではなく、「嫌悪」に近いものだ。

 もしかすると、今回の一連の試合で彼女のその「嫌悪」が薄れる「きっかけ」が生まれたのではないのかと私は考えた。

 

「わかりました……

 実は私は三年前に両親を鉄道事故で亡くしました……」

 

「それは……」

 

 オルコットさんはどこか辛そうに自らの過去を語り出した。

 彼女の経歴は更識さんに渡された資料である程度で把握している。

 ただし、今回の試合に関しては

 

『「更識」はあくまでも「対暗部」のための「暗部」だから、他国の情報は与えられないのよ。

 ごめんなさいね』

 

 と言って情報を提供してもらえなかったが(そこはあくまでも治安維持組織みたいなものなので仕方ないとは思うが)。

 それはさておき、私には彼女の辛さは痛いほどに理解できる。

 私には「両親」と言うものが存在しなかったが、それに近かった人々がいた。

 そして、彼女と同じように失った。

 むしろ、ある程度の覚悟をしなくてはいけない時代に生まれた私よりも平和な時代に生まれた彼女の方が辛いのかもしれない。

 

「私の母は強いお方でしたわ

 ですが……私の父は情けない(・・・・)人でした」

 

「はい?」

 

 だけど、次の言葉に沈痛な気持ちが消えた。

 

「私の父は入り婿で父はその影響もあって「IS」が生まれる前からいつも母の顔色を窺っているような方でした……

 父に対しては母に媚びる人と思う程度でした」

 

「………………」

 

 私は彼女の両親に対する異なる評価に衝撃を受けた。

 まさか、ここまで「親」と言うものを侮辱する人がいるとは思いもしなかったからだ。

 もちろん、世の中には最低な親はいるだろうが。

 ただ、たったそれだけのことでこうまでぼろ糞に言う人がいるとは思いもしなかった。

 

「ですが、私が決定的に「男」を嫌うようになったのは……

 両親亡き後の遺産を巡って私に近づいてくる男たちでした……」

 

「……!」

 

「自慢ではありませんが、オルコット家は名門でお母様が築き上げた資産は莫大なものでしたので……」

 

 しかし、次の言葉に私は彼女が男性に嫌悪感を抱く理由に納得がいった。

 オルコットさんは外見も美人であるうえに、家柄もいいし、財産も莫大なものであるはずだ。

 その彼女に下心で近づく男などたくさんいるはずだ。

 そんな状況にいれば、彼女が男嫌いになるのも無理はない。

 彼女が背負ってきたものは彼女の年齢からすればあまりにも重すぎる。

 この人は私が「総旗艦」時代に身を置いていた権謀術数渦巻く世界をたった一人(・・・・・)で歩まざるを得なかったのだ。

 彼女の高圧的態度はそう言った世界にいたことで生まれたのだ。

 

「ですが……その……

 一夏さん(・・・・)のような男性を初めて見たので……

 その……」

 

「ん?」

 

 と次の瞬間、彼女は恥ずかしそうに頬を赤くしながら何かを言いたげにしそうだったが言いにくそうだった。

 

「胸が熱くなる感じがしまして……」

 

「あ、ああ……なるほど……」

 

 そして、続きざまにきた彼女の熱のこもった発言で私は彼女が織斑一夏に惚れたことに気づいた。

 実際、私も生死が関わっていることではないので織斑一夏の見せた「強さ」は紛れもなく私たちの生きた世界で私が見て来た多くのものに通ずるものであると思っている。

 それを今まで碌な男にあったことのない彼女からすれば、鮮烈なものであるのは当たり前であり、彼女が惚れるのは無理もないし、納得はいく。

 だが

 

「オルコットさん、失礼を承知で言わせてもらいますが……

 あなたの言っていることには一つ大きな間違いがあります」

 

 一つだけ納得がいかないことがあったのでこれだけは言おうと思った。

 

「な、なんでしょうか?」

 

 彼女は一週間前と打って変わって大人しく私の話を聞き容れてくれるようだ。

 これは助かる。

 

「それはあなたのお父さんに対する考え方ですよ」

 

 私はきっぱりとそう言った。

 

「父のことですか……?」

 

 私がそのことを言ったことにオルコットさんは不思議そうな表情をしていた。

 彼女からすれば、当然のことだろう。

 そもそも、彼女の男嫌いの根本的な理由は彼女の父親像にあるのだ。

 それを『違う』と言ったのだから、驚くばかりだろう。

 

「オルコットさん、私はあなたに近づいて来た男たちに関してはあなたが彼らに抱いた感想しか持ちえません」

 

 実際、私も彼女と同じ経験をしたことはあった。

 なにせ私も「総旗艦」時代に多くのお偉方の子息たちに食事の誘いとかを受けたことはあった。

 もちろん、それは「一国の総旗艦」と言う肩書を持つ私の地位を狙っての下心だったのは言うまでもない。無論、全てお断りしたが。

 それに「司令」と榛名さんが結ばれてからは「艦娘」にそう言った目的で近づく者も多くなったので、「旗艦」にはそう言った輩から「艦娘」を守る役割も必要になった。

 幸い、「感謝条約」による影響や未だに「深海棲艦」が世界にはいたのでそれらを武器にして守ってきたが。

 だから、彼女の気持ちも理解できる。

 

「でも……あなたのお父さんをそんな人たちと一緒にするのは違うと思いますよ?」

 

「え……」

 

 だが、そんな男たちと一緒にされては彼女の父親が浮かばれないだろう。

 

「確かにオルコットさんのお父さんは入り婿と言うこともあって肩身が狭かったのかもしれません。

 でも、あなたのお父さんはそれを誰かに当たり散らしたりしましたか?」

 

 私は彼女が言う『情けない』と言う発言から考えられる彼女の父親の人物像を基にそう訊いた。

 

「い、いえ……そんなことはありませんわ……

 あの情けない(・・・・)に人に限ってそんなことは……」

 

 私の質問をオルコットさんは否定した。

 『情けない』と言う言葉には多少の引っ掛かりがあるが、それでも私は続けようと思った。

 

「それはあなたのお父さんが強い(・・)人だからですよ」

 

「強い……?あのお父様が……?」

 

 そして、そのまま私は彼女の父親が八つ当たりをしなかった理由をしっかりと彼女にぶつけた。

 

「そんなことはありませんわ……!

 あの人はいつだって、お母様の顔色ばっかり窺って!

 お母様に強く出ようとしないのは離婚されたくないからに決まってますわ!!

 お母様だって、そんな態度にうんざりしていましたわ!!」

 

 私の言葉に彼女は頑なに否定した。

 

「では、なぜあなたのお母さんは離婚を持ち出そうとしなかったのですか?」

 

「え……?」

 

 私の少し刺激的な質問に彼女は意表を突かれ言葉に詰まった。

 

「本当に愛想が尽きていたのならば、入り婿で立場の弱い旦那さんなんて捨てるでしょう?

 それなのになぜあなたのお母さんは離婚しなかったんでしょうね?」

 

 私は少し、意地の悪い言い方をした。

 

「そ、それは……体裁を考えれば……」

 

 オルコットさんはそう言い返してきた。

 彼女の言うことも尤もである。

 「離婚」と言うのはリスクの方が大きいものだ。

 それを簡単に口に出すことなどまずありえないことだ。

 ただ、それでも私は彼女が考えようとしない「可能性」の一つを提示したかった。

 

「そうですね……

 でも、そんな苦しい不遇な環境にいながらも奥さんのことを大切にしようとしていたあなたのお父さんの苦労を考えたことはありますか?」

 

「え……」

 

 私が提示したかった「可能性」。

 彼女の父親が誠実に家族に接していたと言う可能性だ。

 少なくとも、私はそれを前提に話していこうと思った。

 

「それに……本当に『情けない人』と言うのは……

 自分に逆らえない人に横暴を振るう人のことを言うんですよ」

 

 そして、私は自分の経験したこと事実からキッパリとそう言い切った。

 人間と言うのは不遇な環境にいれば自分に逆らえない人間につい、怒りの矛先をぶつけてしまうものだ。

 実際、私もそう言った人間を見て来た。

 

「『自分に逆らえない人』……?」

 

 その言葉に彼女は首を傾げた。

 まあ、彼女がそう言った仕草をするのも当然だろう。

 なぜならば、その人間とは

 

「それはあなたのことですよ」

 

 他ならぬ彼女自身なのだから。

 

「わ、わたくしですか!?」

 

 私の言葉に衝撃を受けたオルコットさんは狼狽した。

 この反応は当たり前だろう。

 今まで、自分の「女尊男卑」の片棒を担っていた存在よりも自分が弱い(・・)と言われたのも同然なのだから。

 

「はい。そうですよ」

 

 私は悪びれることもなくニッコリとそう言った。

 

「わ、わたくしが父よりも『弱い』と言うのですか!?」

 

 オルコットさんはやはりとも言うべきか激昂してきた。

 

「ええ。当たり前です」

 

 それでも私は主張を変えなかった。

 私は当たり前のことを言ってるのだから主張を変える必要などない。

 そして、その当たり前の事実(・・・・・・・)を私は

 

「逆に訊きますが……

 子どもの頃のあなたがお父さんに勝てるんですか?」

 

「……え」

 

 彼女に突き付けた。

 

「「IS」が生まれたのは十年前、その時あなたは5~6歳であったはずです。

 そんなあなたがお父さんに勝てたんですか?」

 

 そんな答えが解り切ったことを再度訊ねた。

 

「そ、それは……」

 

 彼女は言い淀んだ。

 確かに「IS」が生まれてからは男女のパワーバランスは大きく変わったのかもしれない。

 しかし、それはあくまでも軍事的ないしは社会的のものに限る話だ。

 少なくとも、家庭内における事情にはそこまで大きく関わらないだろう。

 それに彼女の父親は「IS」が生まれる前からそう言った感じの人だったのだ。

 それにも関わらず、子どもと言う弱い存在であるオルコットさんに横柄にならなかったのは彼女の父親の誠実さの表れとも言える。

 それは数ある「強さ」の一つだ。

 それを私は知っている。

 

「オルコットさん、「強さ」と言うのは色々な種類があるんですよ。

 少なくとも、私の初恋の人はオルコットさんのお父さんが持っていた「強さ」に近いものを持っていましたよ?」

 

「は、初恋の人ですか!?」

 

 彼女は私の意外な言葉に驚きを隠せずにいられずにいた。

 そこまで驚かれるのは少し心外だが仕方ないだろう。

 

「はい。

 その人はかっこいいにはかっこいいんですが……

 まあ……何と言うか、上司にからかわれ、同僚にもからかわれるほど女性に対して真面目過ぎる方でして……

 しかも、部下のほとんどが女性ばかりで少し押しに弱いところがある方でしたよ?」

 

「え」

 

 私は「司令」のことを例に出した。

 「司令」はあの山口提督の訓練下の機動部隊に所属していたと言うこともあって「質実剛健」を地で行く人ではあったが、後に妻となる榛名さんやその姉である金剛さんを始めとした佐世保所属または彼女たちと違って後期に誕生することになった私や磯風のような佐世保出身の艦娘たちに対して、男所帯で暮らしていたことも女所帯の鎮守府においては肩身が狭そうだった。

 ちなみに「司令」が佐世保の提督になったのは当時の帝国軍としては珍しい直属の上司の推薦によるものらしく、本人は乗り気じゃなかったらしい。

 

「ただ……あの人は優しかったです」

 

 「司令」はとても誠実だった。

 元々、根が真面目で深く考えてしまうことが多くある人であったが、元同僚たちからも『気負いすぎ』と言われるほどに真面目だった。

 しかし、それゆえにどれだけ上からの命令が理不尽であっても、叱責を受けても私たちにそれを当たり散らさずにいた。

 もちろん、彼にも「弱さ」があった。

 佐世保の鎮守府時代に出会った「艦娘」たちや戦友であった航空機の搭乗者たち、尊敬する元上司、守るべきだった民間人、そして、自分のことを愛してくれた金剛さんの死など多くの別れを経験し、何度も彼は心が折れそうになった。

 

『何が「英雄」だ……!!俺はそんなもののためにあいつらを死地に送っているんじゃない!!

 「名誉」なんて、「勲章」なんてクソくらえだ!!

 ちくしょう……!!』

 

 大規模な作戦が終わると他の人にばれないようにしていたが、自分を「英雄」と持ち上げる世間に対して、悲憤を抱いていた。

 だけど、彼は最後まで戦った。

 そんな「あの人」を見て来たから分かったことがある。

 

「どんな人だって、それなりの「弱さ」はあります。

 でも、それ以上に「強さ」もあるんですよ。

 何でもかんでも完璧さを求めるのは間違っています」

 

「………………」

 

 「弱さ」も「強さ」もあるのが人間だと言うことだ。

 そこに自分たちの理想像を押し付けるのでは、それではただ、人形を愛するのと変わらない。

 もしかすると、オルコットさんのお父さんにも他にも彼女の知らない「強さ」があるのかもしれない。

 オルコットさんは押し黙ってしまった。

 

「それに普段、自分を『強い』と思っている人ほど

 追い詰められた時ほどわかりませんよ?

 その逆も然りです」

 

「……!!」

 

 最後にトドメと言わんばかりに今回の試合後半におけるオルコットさんの様子をぶつけてみた。

 それを聞いた瞬間、己の醜態を思い出してオルコットさんは目を大きく広げた。

 そして、同時に追い詰められながら「覚悟」を見せた己と自らが初めて好意を抱いた織斑一夏の姿もあってか合点がいったらしい。

 オルコットさんのお父さんは「その機会」に恵まれなかっただけなのだ。

 

「そうですわね……

 確かにわたくしは父のことを知らな過ぎたのかもしれませんわ……」

 

 自分が今回経験したこともあって、オルコットさんは何か吹っ切れたようであった。

 彼女の様子を見て私がこれ以上言うことはないと思った。

 後は彼女が考えなくてはならないことだ。

 

「そうですか……

 すいません。オルコットさん。

 差し出がましいことをして……」

 

 少し、自分がご高説を垂れたと言うこともあって、偉そうだと自覚していたこともあって私は謝罪したが

 

「いえ、こちらこそ数々の非礼を詫びさせて欲しいですわ……

 それと……わたくしのことは『セシリア』と呼んで頂きませんか?」

 

「え?」

 

 彼女は意外な頼みごとをしてきた。

 

「陽知さんに出会うまでその……

 使用人以外にはここまで話を聞いてくれた人間がいませんでしたので……

 友人がいませんでしたので……その……」

 

 彼女は少し、恥ずかしそうにしながら

 

「友人になっていただきませんか?」

 

 と丁寧にもそう言った。

 それを聞いた私は

 

「ぷっ……!」

 

 と少し、可笑しくて吹いてしまった。

 

「な、なにがおかしいのですか!?」

 

 私の態度に不満を抱いたらしく、彼女が狼狽えるが

 

「いえ……まさか、自分から『友人になって欲しい』と丁寧に言ってくる方がいるとは思いもしなかったので……つい……」

 

「え?」

 

 私からすれば、友達と言うのは勝手にできてしまうものだと言う認識なので彼女の発言がおかしくて仕方なかった。

 

「ですが……」

 

 だけど、答えなんてとっくに決まっていた。

 

「わかりました。

 では、私のことも『雪風』と呼んでください。

 セシリアさん」

 

 と私も苗字で呼ばれるのでは不公平だと思い、私の本当の名前でもある名前を呼ぶことを条件に了承した。

 

「ほ、本当ですか!!

 ありがとうございます!!

 雪風さん!!」

 

 とセシリアさんは今まで見せたことのない年頃の少女が見せる嬉しそうな笑顔で応えた。

 その姿を見て私はどこか安堵感が湧くと同時に

 

 少し……「我」ができちゃいました……

 

 彼女に訪れた「変化」から自分の進む道を見つけられた気がした。




雪風も一夏もセシリアも己の我で戦ってぶつかり合ったことで
認め合う……殴り合いて大切だと思います

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