奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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 最近、しずま艦の季節限定グラが増えたのでそろそろ雪風改二期待してもいいですよね?


第18話「戦いの末」

「辞退だって……!?」

 

 私の発言に既に察しがついていたであろう織斑さんと事前に相談していたセシリアさんを除くこの場にいる全員が衝撃を受けた。

 当然だろう。

 そもそもこの試合は「クラス代表」を巡るものだ。

 そして、私はその試合に全勝しながらもその地位を蹴ったのだ。

 お前は何のために戦ったのかと誰もが思うだろう。

 

「そうです。

 そもそも、私はクラス代表の地位が欲しくて立候補したわけではありません。

 ただこの試合に出たかったから立候補しただけです」

 

 しかし、これは思い付きで言ったのではない。

 元々、私は楯無さんからも

 

『あ、試合の結果に関わらずに任務に支障を来すから代表にならないようにね?』

 

 とある意味無理難題とも言えることを言われている。

 あの人は割と注文が多く、それも難しい注文ばかりを付けて来る。

 それだけ信用されているとも捉えられるが。

 それに私は一週間前の件で口先だけの「卑怯者」になりたくなかったから立候補してもいる。

 我ながら、感情的で自分勝手であるが、私にとっては今回の試合は「手段のための目的」でしかない。

 だから、当初は批判覚悟で無責任であるが、この試合が終わったら「クラス代表」の役目は丸投げするつもりだった。

 しかし、

 

「それにこの件に関してはセシリアさんに相談済みです」

 

「そ、そうなのか?」

 

 今は違う動機でその役目を放棄しようと思っている。

 この試合を通しては私は彼らの「可能性」に触れた。

 そして、セシリアさんには『その可能性を見てみたい』と言う理由で辞退することを伝えている。

 私の発言に戸惑った織斑一夏はその真偽を確かめるべく、もう一人の当事者であるセシリアさんの方を向いた。

 

「はい、その通りですわ」

 

 その問いにセシリアさんは待ってましたと言わんばかりに即答した。

 なにせこの人はこの件をとある条件を取引に進めようとしたら

 

『それはいい案ですわ!!』

 

 と目を輝かせながら二つ返事でそう言った。

 『恋は盲目』と言うが、少しその情熱に不安を感じる。

 

「じゃあ、「クラス代表」は誰が?」

 

 事実確認を終えて、彼は当然のようにそう考えこんだ。

 彼でなくても今の話を聞かされたら見当もつかないだろう。

 

「それも既に相談済みです」

 

「え?そうなのか?」

 

「はい」

 

 だが、彼の問に対する明確な答えは既に決定している。

 それは

 

「あなたを「クラス代表」にすると言うことで決定済みです」

 

「へえ~そうなの―――

 え?」

 

 織斑一夏が「クラス代表」になると言うことで結論は決まっている。

 

「はあ!?」

 

 それを聞いた瞬間、本人は鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてまるで、意味が分からないと言った感じになった。

 と言うよりもかなり不満そうだ。

 

「ちょっと待て!?

 どういうことだ!?」

 

 そして、そのまま私に抗議してきた。

 彼の気持ちも解らなくもない。

 セシリアさんやクラスの人々は「クラス代表」の立場を名誉ある立場と思っているようだが、彼からすればただ厄介ごとを押し付けられたようなものだ。

 昔、陽炎姉さんが呉鎮守府で似たようなことを任された時もかなり露骨に嫌な顔をしていた。

 そもそも他薦と言う物自体が他人に責任を押し付けるようなものであり、自分勝手なものでもあるのだ。

 他薦や責任の押し付けなどで多くの人間が犠牲になってきたことを知る身としては私はかなり罪悪感を覚えている。

 だけど、それでも私はこれだけは譲るつもりはない。

 

「私もセシリアさんも自薦(・・)です。

 その私たちがそれを取りやめると言うことは自然的にあなたに票が残ります。

 となると、残っているのはあなたの他薦票だけです。

 つまり、自動的にあなたが代表になります」

 

 私は多数決の法則で押し切ろうと思った。

 ただこの場合は彼は二人の女子から二票、私とセシリアさんはそれぞれ自分に一票ずつと言うこともあって、そもそもこの試合をした意味もなくなってしまうが。

 

「いや、理屈ではそうだけどさ!?」

 

 どうやら、多数決の件に関しては無理矢理ではあるが通用したらしい。

 交渉は度胸と駆け引き、信用が大事だ。

 それでも、彼からすればこの件については納得しかねないだろう。

 だから、今度は

 

「そうですか。

 あなたは十分、強くなれると思ったんですが……

 残念です……」

 

「え?」

 

 「神通さん式」でいこうと思った。

 

「強く……なれる……?」

 

 彼はその一言に惹かれたようだ。

 

「ええ、そうです。

 私はあなたは実戦で本気を出せる人間だと感じましたが同時に―――」

 

 私は言葉を続けて彼の「強み」を口に出した。

 実際、戦ったから解ることだが、彼は信じられない程に爆発力はある。

 しかし、致命的に足りなさ過ぎるものがある。

 それは

 

「あなたの戦いは勘に頼り過ぎています」

 

「……!」

 

 当然のことだが、経験が足りないことだ。

 彼の戦いは意地と閃きによって生まれる天性のものだと思う。

 それはそれで脅威ではあるが、一度でも対策をされれば手も足も出なくなる。

 しかも、彼は「攻め」には強いが、「攻め」と言うのは止められれば大きな隙が生まれるものだ。

 つまるところ、彼の戦い方は博打過ぎるのだ。

 「IS」にも「戦闘」にも初心者であるから仕方ないと思えるし、今はそれでいいと私も普段ならそう思えるが、彼の「願望」を聞いた後ではそうはいかない。

 

「それに……

 あなたは『守る』と言いました」

 

「……え?」

 

 彼は『守る側になりたい』と言ったのだ。

 

「『守る』と言うことは自分を守れるようになって初めてできることです」

 

「……っ!?」

 

「誰かを『守りたい』のならば、あなた自身が強くなりなさい」

 

「それは……」

 

 私は自らの経験からそう言った。

 私の戦友の中であの強かった朝潮ちゃんや磯風ですら自らを犠牲にして誰かを守り切ったのだから。

 何よりも私は姉妹である第十六駆や数々の護衛対象を守り切れなかった。 

 そして、最後にはこの「初霜」の名前を冠する彼女すらも。

 だからこそ、私は彼にはっきり言ったのだ。

 『守る』と言うのはそれだけの覚悟があって、初めて口に出すべきだ。

 そして、それを言い終えて深呼吸してから

 

「幸い、「クラス代表」の立場は場数と訓練の機会に恵まれているのでお勧めしたのですが……

 残念です」

 

「え?」

 

 とても残念そう(・・・・)に私は彼を「クラス代表」の地位に彼を推薦した本当の理由を明かした。

 

「あなたが嫌なら……

 他の方に―――」

 

 と私が誰かにこの役を譲ろうとすると

 

「いや、待ってくれ」

 

 織斑一夏はそれに待ったをかけた。

 どうやら釣れた(・・・)らしい。

 

「……俺にやらせてくれ」

 

 ようやく彼を自主的に(・・・・)動かすことができた。

 相手に残念そうな表情を見せて自主的にやらせる。

 これが「神通さん式」である。

 私も中華民国時代によくやった手だ。

 

「一夏……?」

 

「おや、どういう心変わりですか?」

 

 私は少しとぼけながら彼に言わせるように意地悪気味に訊ねた。

 

「今のあんたの話を聞いて、自分の言葉の重さを感じないでいられるほど、俺は能天気じゃない」

 

 彼は遠回しに今の自分じゃ誰も守れないと考えたのだろう。

 

「今の俺はあんたみたいに強いわけじゃない。

 でも、できることがあるのにそれをしないで後悔なんてしたくない」

 

 そして、自分に足りないものを手に入れる近道があることに気づいたらしい。

 

「だから、俺にやらせてくれ」

 

 と最後に改めて私に強くなるための「手段」として、「過程」として「クラス代表」の役目を求めて来た。

 その目に迷いはなかった。

 

 あなたの行く道は……茨の道ですよ……

 

 彼のその言葉を耳に入れて私は彼がかつての私と同じ道を辿るかもしれないことに不安を感じた。

 彼は誰かを『守りたい』と思える強さはある。

 しかし、それは諸刃の剣でもあるのだ。

 守れなかった時の喪失感や無力感、空虚感はいつまでも付き纏うものだ。

 

 できれば……彼には私と同じ後悔を抱かせたくないですね……

 

 彼の真っ直ぐなその想いを守らせてあげたかった。

 他ならぬ彼自身がそう望むのだ。

 だから、私ができることは彼が強くなれるようにたまに助言をする程度しかできない。

 あの悲しみを知る者として、同じ気持ちを他の誰かに味わってなど欲しくない。

 

「わかりました……

 では、織斑さん。

 あなたに「クラス代表」をお任せします」

 

 少しの不安と後悔を抱きながらも彼が同じ苦しみを味わうことのないように白々しくも私は彼に「クラス代表」の役目を託した。

 

「ああ、わかった」

 

 私がそう言うと彼は強く頷いた。

 

「織斑先生。

 これでよろしいでしょうか?」

 

 と私はこの場の責任者である織斑さんに確認すると

 

「わかった。

 後のことはこちらで済ませておく」

 

 了承してくれた。

 私は我が儘ばかりだ。

 だが、これで後のことは大丈夫だろう。

 

「そう言えば、二人ともどうして名前で呼び合ってるんだ?」

 

 「クラス代表」のことが片付いた瞬間、彼は私とセシリアさんが名前で呼び合っていることに疑問を感じたらしくそのことについて訊ねて来た。

 

「そのことについてはわたくしが説明いたしますわ」

 

 とその質問に私に代わってセシリアさんが応えてくれるようだ。

 

「先ずはその……一夏さん、一週間前のことなのですが……

 あなたのことを知らないで数々のご無礼申し訳ございません」

 

「え!?ちょ!?」

 

 質問の答えの前にセシリアさんは私が事前に今までの暴言や失礼な態度については謝るようにしっかりと言い聞かせたこともあるが、自らの意思でしっかりと彼に謝罪した。

 彼女が織斑一夏に好意を持つのはいいが、流石に今までのことを謝罪しないでこれから接していくのは虫が良過ぎてしまう。

 だから、今のうちに謝っておいた方がいいだろう。

 それに対して

 

「い、いや……その……俺もごめん……」

 

 もう一人の当事者も暴言を発したこともあって頭を下げた。

 となると、ここは私も

 

「織斑さん」

 

「ん?どうした?」

 

「色々とすいませんでした」

 

「って、あんたもかよ!?」

 

 謝罪しなくてはならないだろう。

 一応、私は彼の実姉には謝っていたと言え、彼自身に暴言を吐いた事実には変わりない。

 これについては謝っていないので謝る必要がある。

 過ちを過ちとして認めないでは帝国軍人の名が廃る。

 

「ちょっと、雪風さん!?

 なんであなたまで謝罪しておられるのですか!?」

 

「い、いえ……

 私もあの場で暴言を吐きましたし……何と言うか、居た堪れないので……」

 

 目の前で当事者が謝罪し合っているのを目にして何も感じないほど、私は厚顔無恥ではない。

 

「な、なんだこれは……」

 

「さ、さあ?」

 

 私たち三人の奇妙な謝罪合戦に織斑さんと山田さんが戸惑ってしまった。

 

「と、とりあえず……

 そのわたくしは雪風さんと二人だけで話してみて……その……

 彼女との会話で自分がいかに世間を知らないことを理解して……

 それを教えてくれた彼女と友人になりたいと思って……」

 

 無理矢理気味ではあるが、セシリアさんは私たちが友人になったことを説明してくれた。

 しかし、

 

「へ、へえ~……意外(・・)だ」

 

「なっ!?」

 

 織斑一夏の余計な一言でセシリアさんの沸騰しやすい感情が再び沸点まで行ってしまった。

 

「『意外』とはどういう意味ですか!?『意外』とは!?」

 

 心外だったのか彼女は憤慨しながら彼に噛みついてしまった。

 

「いや……ここ一週間のあんたを見ているとなぁ……」

 

「ぐっ!?」

 

 ……ごめんなさい、セシリアさん。

 私もそれは否定できません……

 

 もし一週間前の私がこの場にいたら『あり得ない』と言える自信(?)がある私には彼女の擁護ができそうにない。

 

「わ、わたくしだって、優れた方を尊敬することだってありますわ!!」

 

 それはセシリアさんの母親に対する慕い方を見れば、納得はできるが、それを知らない人からすれば信じられない気がする。

 

「え~と……その……

 ごめん……」

 

 と彼女の憤りに流石に焦ったのか彼はそう言った。

 彼の気持ちも解らなくもないが。

 しかし、そんな彼が弱みを見せたことに彼女は気を良くしたのか次に彼女は予想外過ぎる発言をしてしまった。

 

「まったく、失礼ですわ!!

 と言うことで()としてあなたも私のことを「セシリア」と今度からお呼びなさい!!」

 

「え?」

 

「なっ!?」

 

 いや、なんでそうなるんですか!?

 と言うか、罰でいいんですか!?罰で!?

 

 セシリアさんのその発言に私は衝撃を受けてしまった。

 ここに黒潮お姉ちゃんがいたら、とんでもないツッコミの嵐が起きただろう。

 自分の事を安売りし過ぎである。

 

「い、いや……それでいいのか?」

 

「……?

 何がですか?」

 

 私と同じことを思ったのか織斑一夏は一応、親切で訊ねるが彼女は質問の意図が分からないらしい。

 教えない方が彼女のためだと思うので私は黙っておこうと思った。

 

「ふ~……

 じゃあ、セシリア(・・・・)

 これでいいのか?」

 

 と彼が改めてセシリアさんに確認すると

 

「~っ!!ま、まあ、それでいいですわ」

 

 顔を少し真っ赤にしてニヤニヤしようとしているのを隠そうとしたが彼女は少し満足気だった。

 それでいいのかと思えてもくるが、それ以前に頭は悪くないのに妙に子供ぽく彼女が見えた。

 

 ちょっと……暁ちゃんみたいですね……

 

 今までの傲慢さが抜けた影響か、私には彼女があの憎めない背伸びした特Ⅲ型の長女に見えてきて微笑ましく見えて来た。

 よく吹雪ちゃんや綾波ちゃんが暁ちゃんを妹を愛でる感じで接して本人に怒られながらも可愛がっていたが吹雪ちゃんたちもこんな気分だったのだろう。

 

 なんだか、可愛いですね~

 

 陽炎型の姉妹や中華民国時代の僚艦にはああ言った子はいなかったので少し新鮮であった。

 と私が背伸びしている感じのセシリアさんの姿に和んでいると

 

「お、おう……じゃあ、雪風(・・)?」

 

「「「え?」」」

 

 唐突に織斑一夏は私の名前を呼んできて、その一言に私だけでなく、セシリアさんと篠ノ之さんも異口同音で素っ頓狂な声をあげてしまった。

 その直後

 

「お、おい一夏!?

 なんでそいつまで名前で呼ぶんだ!?」

 

 ただでさえセシリアさんの名前の件で機嫌が悪そうだった篠ノ之さんが織斑一夏が突然、私の名前(と言うよりも、本当の名前)を呼んだことに声を荒げた。

 

「い、いや……

 セシリアのことを名前で呼ぶんだし、なんか雪風のことまで苗字で呼ぶのはなんか違和感を感じて―――」

 

「そんな理由でか!?」

 

 そんな幼馴染二人のやり取りを目の前にして私は不安に思いながらもセシリアさんの方を振り向くと

 

「……うぅ」

 

 物凄く恨めしそうに私のことを涙目気味に見ているセシリアさんが私のことを見ていた。

 

「あ、あの……

 セシリアさん?」

 

 居た堪れなくなった私は恐る恐る声をかけようとするが

 

「ズルいですわ……」

 

「うぐっ!?」

 

 とかなりいじけながらそう言った。

 その一言に私は自分に非がないとは言え、かなり罪悪感を感じた。

 その時、

 

「えっと……何か迷惑だったか?」

 

 さらに追い討ちをかけるかの如く、織斑一夏がそう訊ねて来た。

 

「いえ……その……」

 

 彼を慕う二人の女子からの嫉妬と彼の微塵も悪意も下心もない目を受けて私は板挟みになってしまった。

 本当はこの場において「迷惑」に等しいのだけど、ここで彼の無神経とは言え、「気遣い」を無下にするのは礼儀に反する気もして私は

 

「め、迷惑ではありません……」

 

 恐らく傍から見れば、一発で目が泳いでるのが丸わかりかつ、この世界に来てここまで弱々しく思えないほど小さな声で答えた気がする。

 

「そんな安々と!?」

 

「ぐぬぬぬぬぬ……!!」

 

「あんな表情もするんだな……」

 

「意外ですね~」

 

 生徒と教師で驚くほど綺麗に分かれる異なる反応を耳に入れて、私は前者の反応で完全に針の(むしろ)に包まれた気分だ。

 恐らくだが織斑さんと山田さんは今まで見せていない私の様子を良くも悪くも楽しんでいる気がする。

 そして、私にここまでの試練を投げつけて来た織斑一夏はと言うと

 

「そうか……

 よかった」

 

 少し安心感を覚えていた。

 こちらはその代償として肩身が狭くなったのだが。

 だが、

 

「あと―――」

 

 受難はまだ続くのかと言わんばかりに

 

「俺だけ名前で呼ぶのはおかしいから雪風も俺のことは「一夏」と呼んでくれないか?」

 

「えっ!?」

 

「「なっ!?」」

 

「プっ!!」

 

「あわわ」

 

 再び、爆薬が投下されてきた。

 またまた裏のない一言で私の肩身の狭さがさらに狭まり、生徒二人の嫉妬の炎には油が注がれて、なぜか織斑さんは盛大に吹き出し、山田さんはいつものように困惑していた。

 

「な、なんでそうなる!?」

 

 篠ノ之さんが再び、一夏さんに対して声を荒げて抗議した。

 それに対して

 

「いや、だって「織斑」じゃなんか、千冬―――じゃなくて、織斑先生と被りそうだし……ダメか?」

 

「え!?いや、その~……」

 

 確かに被りそうである意味正論とも思える言葉を言った。

 さらには私にまた訊ねて来た。

 彼の言い分も分かる。

 そもそも、私もセシリアさんと友人になる際に彼女とお互いに名前で呼び合うことを条件にしている。

 名前とはそれだけ大事なものだ。

 しかし、それはあくまでも同性の間においてだ。それが異性となれば意味合いが異なってきてしまう。

 

 あ、悪意のないのがここまで厄介とは……!!

 

 何と言うことだ、

 だが、これしきのことで退く訳に行かない。

 

 くっ……!ふ、不沈艦の名は伊達じゃないのです……!!

 

 「奇跡の駆逐艦」、「幸運艦」と言う名前とは異なり皮肉さを決して感じない異名を心の中で叫んで私は冷静さを取り戻し腹を括った。

 陽炎型八番艦にして、神通さん時代の「華の二水戦」の生き残り、中華民国元総旗艦としてこの程度のことで怯んでは名が廃る。

 この程度、悪くても小破程度だ。

 

「そ、そうですか……

 では、これからは一夏さん(・・・・)と呼ばせていただきます」

 

 私はそう言い切った。

 何やら恨めしそうな声や剣呑な雰囲気は感じて後ろ髪は引かれる気はするが、下心も疚しさはないのだから堂々とすべきだ。

 と自分に言い聞かせていると

 

「ああ!よろしくな、雪風!!」

 

 と一夏さん(・・・・)は私の名前を呼んだ。

 雨降って地固まるどころか、水雷撃戦の後に海上輸送路確保とも言える位に私と護衛対象の間に友好関係ができた。

 これでいいのか。

 




セシリアも偉そうじゃなかったら子どもぽくて微笑ましい気がします

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