奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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もしこの作品の主人公が雪風じゃなくて、霞か初霜だったら……
どうなるんでしょうね?


第3話「恥の有無」

「陽知、すまんがこのまま降りて来てくれ」

 

「……はい」

 

 一夏さんがすごい勢いで墜落していったことで私の急下降と完全停止は中止になった。

 さすがにあんなことが起きたら、この私でも集中力が途切れる。

 

 私もやっちゃいましたからね……

 

 更識さんとの初めての訓練の際に私も天津風のことを参考したことで私はものすごい勢いで吹っ飛んで行ってしまい、あわや壁と激突しそうになる所だった。

 そう考えると私も一夏さんに対して偉そうなことは言えない。

 ただ、彼が墜落し私が激突しなかったのはやはり経験から来る余裕の有無の差だろう。

 

 先ずは慣れさせることから始めないといけませんね……

 

 一夏さんがこう言った失敗をするのは彼がイメージできるだけの場数を踏んでいないのが主な理由だ。

 判断力と集中力を生むのはやはり、場数と経験だ。

 ならば、セシリアさんに譲ってもらった今日の訓練において、それらに類似した環境を作る必要がある。

 それが私の役割だ。

 そんな中、一夏さんが体勢を直し終えると

 

「情けないぞ、一夏。

 昨日、私が教えてやっただろう」

 

 ……はあ?

 

 篠ノ之さんが何故か偉そうな口調と態度で一夏さんにそう言った。

 私はそれに対して、無性に怒りが込み上げて来た。

 昨日の訓練の時、確かに篠ノ之さんは一夏さんに飛行を教えていた。

 だが、あの擬音語だけの説明を説明と言うのは説明と言う言葉に失礼な気がする。

 彼女の主張は己の説明力と知識不足を棚上げにして他人に責任を押し付けてるに過ぎない。

 彼女はその説明になってもいない説明のために昨日の訓練の時間を無駄にしたのだ。 

 私はそう言ったことに怒りを覚える。

 なぜならば、それは二度も私の妹を奪い、私が三人の妹を失った作戦を立てた部下には精神主義を押し付け自分たちはエリートを自称する参謀たちを思い出すからだ。

 何よりも彼らは自分の過ちに全く気付かない。

 そう言った厚かましさも私は本当に大嫌いだ。

 そして、彼らが立てた「あの作戦」で私は妹も上官も戦友も呉と横須賀の両提督も失った。

 「あの作戦」の際に参謀たちの中で自身も参加した人間も一人だけいたが、その一人だけを除いて他の立案者は生き残っていた。

 「あの作戦」の折り、大和さんは

 

『私が沈まない限りはあの人たちは同じことを繰り返し続けるのでしょうね……』

 

 とどこか諦めた目をしながら、「最強の戦艦」としての己を犠牲にすることで駆逐艦(私たち)の未来を守ろうとした。

 あの人の犠牲は「地獄のダンピール」から始まる駆逐艦の命を軽視する価値観を払拭したのだ。

 でも、本当は私は彼女を守りたかった。

 なぜあれ程、美しくて強い彼女が沈まなくてはならないのかと私はずっと参謀たちを憎み続けた。

 しかも、あの時の作戦では本来ならば「司令」の想い人である榛名さんが旗艦を務めることになっていたのだ。

 理由はかつて、「ダンピール」の件で「司令」に更迭された参謀の一人による私怨だ。

 だから、あの作戦で「司令」にとっての想い人である榛名さんと「司令」にとっては娘のような存在であった私と磯風が配属されたのだ。

 そんな時、呉の提督と横須賀の提督が同行を申し出て、大和さん自身も

 

『その役目は「最強の戦艦」である私の役目です』

 

 と名乗りを上げたのだ。

 呉の提督は旗下の水雷戦隊に次々と先立たれたことと未だに残っていた私たち駆逐艦だけを死にに行かせることだけは許せなかったのだ。戦艦運用の天才であった横須賀の提督は虎の子の伊勢さんと日向さん、長門さんを「司令」に託して自分は大和さんと共に「大艦巨砲主義」から来る「精神主義」を醒ますために出撃した。

 何よりも三人は「司令」と榛名さんの互いの想いを成就させてあげたかったのだ。

 呉の提督も横須賀の提督も想い人を既に失っていた。

 特に大和さんは同じ艦娘として、榛名さんの恋を実らせたかったのだろう。

 霞ちゃんは呉の提督に対して

 

『あんたも馬鹿よ!!なんで来るのか、本当に解らない!!』

 

 と言って涙を流しながら嘆き続けた。

 当時、姉を全て失い、陽炎姉さんも不知火姉さんも失い、僚艦も戦友も「あの作戦」に向かうことになっていた霞ちゃんにとっては呉の提督だけしかあの作戦をする上で守れる者がなかったのだ。

 そう言った悲劇を何度も目にしてきたこともあって、程度の差はあれど、私は自分のことを棚上げして他人に責任を押し付ける輩に対しては人一倍怒りが込み上げてくるのだ。

 今回は別に大したことではないが、もしこれが他人の命に関わる事ならば、私は自分のことを制することができるか不安だ。

 自分のことを落ち着かせて横を見てみると一夏さんは怒るのではなく呆れた顔をしていた。

 この人の人の好さが理解できる。

 最初はただ「意気地なし」とは思っていたが、ここまでの理不尽に耐える、いや、苦にもならない神経を持っているのを確認すると「あの世界」にいたら良将になっているかもしれない。

 もしかすると、私が「中華民国総旗艦」時代に何度かお会いした米国のスプルーアンス提督並みの器かもしれない。

 ただ、帝国海軍にいたら大成しないと思う。

 帝国海軍は英国や米国と違って資源が乏しく、どうしても数を増やすことができず訓練主義による練度向上しか道はない。

 一夏さんのような普段、熱意に欠ける人は上官からはあまり評価されないのだ。

 あの当時最高の戦術指揮官であり霞ちゃんすら尊敬していた木村提督でさえ、艦娘や将兵からは人望を集めていた熱血漢であったがあの「キスカの奇跡」においても初霜ちゃんから聞かされた話では周囲からの猛反発を受けることや上層部からの圧力に晒されていたのだ。

 対照的に駆逐艦の命を軽視した参謀たちのような口だけは勇ましく戦略を支える戦術も考えられない人間が上層部に行く。

 戦乱の時代において仮にいいことがあるとすれば、こう言ったことに対して本当の意味での評価を平和な時代になってからはっきり下せることだけなのだ。

 それで得るものと失うものはあまりに失われたものと釣り合わないが。

 

「大丈夫ですか、一夏さん?

 お怪我はなくて?」

 

 そんな一夏さんに篠ノ之さんに再び絡み出し始めたが、絶好のタイミングでセシリアさんが一夏さんを気遣い始めたことで止まった。

 

「あ、ああ。大丈夫だけど……」

 

「そう、それは何よりですわ」

 

 今までのセシリアさんの態度から信じられなかったのか、一夏さんは戸惑いを覚えていた。

 ただ、私としてはセシリアさんに拍手を送りたくなった。

 

「……「IS」を装備していて怪我などするわけがないだろう……」

 

 そんなセシリアさんの一夏さんへの気遣いが気に食わなかったのか、篠ノ之さんが「代表決定戦」の後で私に対して「卑怯」と言ったことを棚上げにしてそう言った。

 いくら何でもそれは一夏さんに対しても無神経過ぎないだろうか。

 

「あら、篠ノ之さん。

 他人を気遣うのは当然のこと。それが「IS」を装備しても、ですわ。

 常識でしてよ?」

 

 まったくその通りである。

 もちろん、セシリアさんに下心はあるだろう。だが、彼女のやったことは人として(・・・・)当たり前のことである。

 あの口の悪い霞ちゃんですら、その実かなり面倒見が良く、そこら辺の配慮は決して欠かさなかった。

 それをしないのと、するのでは全く違う。

 それに対して

 

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

 

 篠ノ之さんが負け惜しみを口に出した。

 確かに以前のセシリアさんの態度では考えられない移り身の早さだ。

 ただ、すべきことをしないで、せっかくの好機を逃し、最善手を打たなかった時点で敵に責任を求めるのは戦術家としても苦言を申し上げたい。

 私はこれでも「水雷屋」と言う戦術の専門家でもある。

 ちなみに「二水戦」で最強の戦術指揮官は紛れもなく霞ちゃんだろう。

 下手をすると、神通さんを超える。

 この場に彼女がいたら

 

『はあ?自分でわざわざチャンスを逃しておいて、相手が使ったら文句を言う?

 あんたの目は節穴なの?』

 

 と言った罵倒なのか、ご指摘なのか分からない的確な進言をするだろう。

 霞ちゃんは認めた相手には素直になれない程度であるが面倒見があるが、彼女の基準で「クズ」認定したら容赦がない。

 

「鬼の皮を被っているよりはマシですわ」

 

 これまたその通りである。

 相手に素直になれないで自分の想いに気づかない相手が悪い。

 そんな勝手な理屈で好意を寄せられてもただ迷惑だろう。

 確かにセシリアさんの振る舞いは卑怯に思える。

 だが、篠ノ之さんの考え方や振る舞いは一夏さんを「所有物」扱いしているのに等しい。

 仮に二人が恋人同士ならば、独占したり嫉妬したりする気持ちは納得できる。

 しかし、一夏さんは誰の恋人でもなく、ただの「織斑 一夏」と言う一個人に過ぎない。

 それなのに束縛するのはいかがなものか。

 

 ここに金剛さんがいたら……

 

 実の妹を含めた多くの艦娘相手に恋の全力勝負をしてきた金剛さんならば、あの普段の態度から考えられない包容力で篠ノ之さんを諭すだろう。

 

 ま、当の本人は目の前の二人相手に引き気味ですが……

 

 一夏さんの方を見てみると、当事者二人にドン引きであった。

 私も今まで修羅場は見てきたが、こういった例は初めてであるので理解できるが。

 だけど、私が本当に文句を言いたいのは篠ノ之さんの授業妨害だ。

 百歩譲っても一夏さんを巡る恋の競争は私人間(しじんかん)におけるものとして扱おう。

 だが、先ほどのインカムの件や訓練中の一夏さんへの私語は度を超えているし、他の生徒たちの訓練時間を奪っているのに等しい。

 ただ、この件についてはセシリアさんにも一部は問題があるが、これについては後で個人的に注意しようと思う。

 友人として、当たり前のことだし。

 

 と言っても……私が口に出しても聞く耳はないんでしょうね……

 

 私がここでそのことを注意しても彼女は私に対して良い感情を持っていないし、話が余計にこじれるだけだ。

 彼女を正せるのはこの場では一夏さんだけだ。

 だが、彼は変に紳士的な一面があるので女子に強く言えない。

 呉の提督ならば

 

『俺に対してはいいが、公の場ではやらないように』

 

 ときっぱり言うだろう。

 呉の提督は霞ちゃんや満潮ちゃん、時津風と言った中々癖のある部下をまとめていた方だ。

 「司令」と比べると多少、砕けているが。

 

「いい加減にしろ、この馬鹿ども。

 やるなら、端でやれ」

 

 そんな時、二人を止めたのは織斑さんだった。

 流石に教師であり、並々ならぬ迫力を持つ織斑さん相手には逆らえなかったのか、二人は多少静かになった。

 ただ根本的な解決にはなっていないとは思うが。

 

「よし、今から「展開」についての訓練を行う。

 陽知、両腕の武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 訓練を再開した彼女の手助けのために私は即座に単装砲と連装砲を即座に展開した。

 それに対して、クラス中から『お~』と言う驚きの声が上がった。

 

「この前の試合も見れば分かると思うが、陽知の射撃の腕と判断力、さらには「IS」の展開力の早さは諸君らが陽知と同じ条件で戦えるとしても十分、脅威である。

 決して、「専用機」がどうとかなどとは思わず努力を忘れないように」

 

―はい!!―

 

 私の「IS」の展開の早さを最大の材料に使って織斑さんはクラス全体の気を引き締めた。

 この人は身内びいき(一夏さんに対して厳しすぎると言う点)を除けば、教官としての能力は高いかもしれない。

 ただ、教師としてはまだまだな気がするが。

 

「よし、今度は織斑。

 展開しろ」

 

「は、はい!」

 

 織斑さんは全体の気が引き締まるのを確認すると、今度は一夏さんに「教官」としての顔でそう指示した。

 一夏さんは少し、緊張気味であった。

 その気持ちは理解できる。

 私も神通さんとの訓練の日々でどれだけ緊張したことがあったことやら。

 

―キィーン―

 

 織斑さんが集中してからしばらくして右手に「雪片」が握られていた。

 まだまだ時間はかかっているが、中々の成長ぶりだ。

 本来ならば、彼に刀をイメージさせるには篠ノ之さんの剣道による指導が一番だ。

 ただ、その篠ノ之さんまでもが「IS」の訓練にまで口に挟むことになってしまい、ただでさえ限られた訓練のスケジュールが狂い、さらにはセシリアさんまでもがケンカ腰になってしまい、大幅に時間を失ってしまっているのだが。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

 そんな一夏さんに容赦なく織斑さんはそう言った。

 「二水戦」よりは甘いが、中々に厳しい基準だ。

 

「オルコット、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 今度はセシリアさんの番だ。

 すると、セシリアさんは中々の早さで「スターライトmk-Ⅲ」を展開した。

 流石と言いたいところだが

 

「さすがだな、代表候補生。

 ……ただし、そのポーズはやめろ。横に向かって誰を撃つ気だ。

 正面に展開できるようにしろ」

 

 織斑さんも私と同意見だったのか、私が思っていたことそのまま言った。

 そう、彼女は真横に得物を展開していたのだ。

 銃はあくまでも目で照準を合わせるものだ。

 それを横に展開にしたら、構えに余計な時間がかかるだけだ。

 

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるに必要な―――」

 

「直せ。それとも貴様は陽知との試合で何も学ばなかったのか?」

 

「……はい」

 

 織斑さんにあの試合の件を持ち出された事と織斑さんの人睨みでセシリアさんは渋々と肯いた。

 実際、無駄な動きは「死」に繋がることがあるのは自らの経験から私はよく理解できる。

 仮に今のセシリアさんが「あの世界」にいたら、敵の艦載機によって自分の身どころか、仲間の身すらも危険に晒している可能性もある。

 だから、ある程度の無動作で展開できた方がいいだろう。

 

「オルコット、今度は近接用の武装を展開しろ」

 

 だが、織斑さんはかなり容赦がなく、セシリアさんにとっての苦手分野を注文してきた。

 

「わ、わかりました……」

 

 セシリアさんは織斑さんにそう言われて心苦しそうに従った。

 彼女は「スターライトmk-Ⅲ」を収納し、近接用の「インターセプター」を展開しようとするが

 

「くっ……!」

 

 中々、展開できず苦戦しているようだ。

 

「まだか?」

 

 急かすように織斑さんが言う。

 なんとえげつない。

 

「す、すぐです!!

 ああ、もうっ!

 「インターセプター」!!」

 

 織斑さんに急かされてセシリアさんはやけくそ気味に武装の名前を叫ぶと言う初心者の行う展開法を行ってしまった。

 これは彼女にとってはかなり屈辱だろう。

 

「……何秒かかっている。

 お前は実戦でも相手に待ってもらうのか?」

 

 たとえ、経験者であろうと初心者であろうと区別しない。

 その本当の意味を示すかの如く、織斑さんの容赦のない一言がセシリアさんを襲う。

 

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません!

 ですから、問題ありませんわ!」

 

 いや……希望的観測は危険でしょ……

 

 セシリアさんの言い分に私は自分の経験から来る数々の戦友たちの「死」を思い出してしまった。

 戦場で最も危険なのは敵を過小評価し、味方を過大評価することだ。

 今のセシリアさんの発言はまさにそれに当てはまっている。

 どんなご立派な戦略を立ててもそれを運用する方法がなければそれは理想論にしか過ぎない。

 

「ほう?

 陽知にビット武装を全て破壊された挙句、「逆落とし」を食らっておきながらか?」

 

 え……「逆落とし」……?

 

 織斑さんの皮肉とも取れるその言葉の中で出て来た私の十八番である戦法に私は耳を疑った。

 だけど、

 

「ぐっ……!

 で、ですが、それなら雪風さんもあのモーションは……」

 

 織斑さんに致命的な事実を突きつけられて、言葉に詰まったセシリアさんは私を巻き込もうとしたことで私は意識をセシリアさんに戻した。

 

「陽知、近接用の武装を展開してみろ」

 

「はい」

 

「……え?」

 

 気になる事ではあったが、この世界にも帝国海軍があった上に「逆落とし」と言うのは突撃戦術であったことから些細なことだと思って私は訓練をスムーズにいかせるためとクラス全体の意欲向上、彼女の弱点克服のために心を鬼にして

 

―キィーン―

 

「錨」を展開した。

 

「なっ!?」

 

「……いいか、オルコット、

 確かに陽知もお前も射撃をメインとしているが、陽知は常に動き回るないしは全ての動きに意味を持たせているようにして攻守双方に役立てている。

 織斑に振り返り様に食らわせたあの打撃もわざと(・・・)大振りにして不意打ちを食らわせたんだ。

 それに織斑の反撃を受けた時に陽知は「錨」を逆手(・・)に持って、地面に固定することで直撃を避けている……それも忘れたか?」

 

「ぐっ……うぅ……」

 

 現実的にして合理的に過ぎる織斑さんの解説にセシリアさんはこちらが申し訳なく感じるほどに落ち込んでいく。

 それに対して、周囲は耳を傾けてメモを取るなどして集中している。

 何と言う意欲だろうか。

 

「それに仮にお前が織斑とやり合っていたら……

 陽知相手に何度も接近を成功させたのだ、相性の差はあれど下手をすれば初心者に負けていた可能性もあるぞ?」

 

「ぐっ!?」

 

 あ~……それは確かにありえるかもしれませんね……

 

 織斑さんのトドメの一言に私は納得してしまった。

 一夏さんの土壇場での粘り強さはある意味、艦娘と比肩してもおかしくはないだろう。

 こういってはどうかと思うが、セシリアさんのあのハンティングゲーム気分の戦い方では足元を掬われる可能性は私よりも十分あり得る。

 実際、セシリアさんが私に完敗し、一夏さんが善戦したのはその心構えによるところが大きい。

 無責任な「精神主義」は嫌いだが、戦いにおいての心構えがなっていない人間については懐疑的に思う所はある。

 仮に総合力で勝っていても最初に奇襲などで大打撃を受ければ勝敗が揺らぐのはよくあることだ。

 

「基礎は何事においても重要なことだ。

 基礎ができていれば、あらゆる状況に対応できる。

 他の者も努々忘れるな」

 

―はい!!―

 

 織斑さんはまさに金言とも言える、いや、当たり前すぎることをクラス全体に言った。

 私の「随伴艦」の艦長を長く務めあげた寺内艦長も

 

『訓練は実戦のように挑め、実戦は訓練のように挑め』

 

 と言う金言を残している。

 訓練は大事である。

 ふとセシリアさんを見てみると、セシリアさんは目を険しくしていた。

 その視線の先を見てみると一夏さんがかなり困惑顔をしていた。

 どうやら、プライベート・チャネルを使っているのだろう。

 

 あ~あ……多分、八つ当たりをしてますね……

 

 篠ノ之さん程ではないがセシリアさんもかなり負けず嫌いだ。

 どうしても、自分にとって都合の悪いことが起きると誰かに八つ当たりしてしまうのだろう。

 せっかく、ある程度上げていおいた株を下げてどうするのだろうか。

 だが、これでは一夏さんが不憫だ。

 ならば、

 

「セシリアさん、大丈夫ですよ」

 

「雪風さん?」

 

 私は彼女のために行動しようと思った。

 

「訓練における恥なんて捨てるものです!!」

 

 セシリアさんは私に訝し目なを向けてきた。

 当然だろう。

 今、この場においては私はただの上から目線の嫌な人間にしか見えないだろう。

 だが、私にはいい考えがある。

 

「私なんて―――」

 

 彼女の恥なんてどこかに吹っ飛ばすかのように

 

「訓練で何度も吐きましたから!!」

 

―は?―

 

「ゆっきー……」

 

 「二水戦」にとっての当たり前を女子としての品格を問われることをお構いなしに言うことでセシリアさんの面子を保とうと思った。

 直後、クラス中の全員がドン引きした。本音さんは心配してくれていたようだが。

 だが、これでセシリアさんの恥はどこかに消え去ったようだ。

 ただ、その代償としてか、しばらくの間、この場に居た堪れない空気が漂っていたが。

 

「……時間だな。今日の授業はここまでだ。

 織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

 その空気を払拭するかの如く、織斑さんはそう言った。

 だが、それを機にクラスの人々は校舎へと向かって行った。

 ただ一人、織斑さんに片づけを命じられた一夏さんと私の許に駆け寄ってくる本音さんを除いて。

 よく見てみると、篠ノ之さんもセシリアさんもいなくなっていた。

 

「ゆっきー……流石に女の子がそれを言うのはどうかと思うよ……」

 

「すいません……ちょっと、セシリアさんと一夏さんが不憫だったので……」

 

 友人の言葉に私は申し訳なさを感じて私は謝った。

 本音さんの良いところはこう言った言いにくいことを本当に私を心配してくれるうえで言ってくれることだ。

 名前の通り、「本当の言葉」を伝えてくれるいい娘だ。

 

「すいません……本音さん、少し先に戻っていてくれませんか?」

 

 私はグラウンドにまだ残っている一夏さんを見て、本音さんに先に帰ることを促した。

 

「わかったよ~、ゆっきーは優しいからね~

 じゃあ、また部屋でね?」

 

「ありがとうございます」

 

 そう言って、本音さんと私は別れた。

 そして、再び一夏さんを一瞥して

 

 仕方ありませんか……

 

 一夏さんが一人で片づけをしているのはある意味、私のせいでもあるので私は一夏さんを手伝おうと思った。

 何よりも貴重な訓練の時間が減るのはもったいない。




一夏とセシリア、箒は同時に友人として関わっていくと
相対的に一夏の株が上がり、セシリアは少し下がり、箒は暴落していく……
なぜなんでしょうか……

後、雪風を持ち上げすぎてる部分があると自分でも思います。
擬音語の部分もまさに私にブーメランですね
以降、気をつけていかないと……
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