奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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最近、思ったんですけどこの作品の雪風に対する磯風の感情が
某破壊大帝を兄に持つ某破壊大公の弟の憧れに近いです。
雪風のことを尊敬する姉として見ていますが、追いつきたいから努力し続ける姿とか。
ちょっと、姉に対する尊敬の心を素直に言えない所とか。
ある意味、王道的な姉妹愛だとは思います。
あの兄弟よりも妹の方が大人びていますが。


第4話「訓練の準備と訓練」

「うぅ……結局、誰も手伝ってくれないのか……」

 

 俺は千冬姉に言われるままに校庭に空けてしまった穴を埋めようと土がどこに行ったのかを確認するために辺りを見回した。

 

 まっ……自業自得だし……

 それこそ、女に重労働をさせるのは男の沽券に関わるし……

 

「えっと……土は―――ん?」

 

 辺りに散らばってしまった土を探して辺りを見回していると一人の人間が俺に近づいてくるのを目にした。

 

「……雪風?」

 

 それは雪風だった。

 雪風の第一印象は可愛らしい外見に似合わない度胸の大きい女子と言う感じだった。

 そして、相手が間違っていたら言いにくいことでも歯に衣着せぬ自論をぶつける。しかし、その言葉の一つ一つには何というか、重さみたいなものがあって彼女の芯の強さを感じさせるものだ。

 ただ、だからと言ってとっつきにくいと言うわけではなく、周囲への思いやりを忘れず、親しみやすさも感じる不思議な少女だ。

 何よりも彼女を語るうえで欠かせないのは相手を決して色眼鏡で見ない真っ直ぐさだろう。

 まるで、ほとんどの人をただの一人の人間だと見ているような気がする。

 そんな彼女が俺に近づいて来た。

 そして、

 

「手伝います」

 

「……え?」

 

 唐突にそう言った。

 いや、待て。

 今、この少女は何と言ったのだろうか。

 俺の聞き間違いでなければ、彼女は『手伝う』と言った気がする。

 

「……なあ、雪風?

 今の言葉をもう一度、言ってくれないか?」

 

「……はい?」

 

 俺は目の前の彼女が発したであろう心優しい一言が確かなものか確認したくなり、彼女にもう一度同じ言葉を繰り返すように頼んだ。

 英語で言うと『Pardon?』と言うニュアンスだろう。

 すると

 

「い、いや……ですから、『手伝う』と……」

 

 俺の要求に雪風は困惑気味であったが確かに応えた。

 そして、彼女は確かに『手伝う』と言ったのだ。

 そんな彼女の配慮に俺は

 

「雪風……!」

 

 思わず、涙を浮かべてしまった。

 

「て、一夏さん!?

 なんで泣くんですか!?」

 

 俺が突然、涙を流したことに雪風はさらに困惑の色を強めた。

 いや、だって幼馴染の箒と実の姉の千冬姉はいつも俺に厳しいし、最近俺に対して柔らかくなったと思ったセシリアや他のクラスメイトでさえ手伝ってくれない中で目の前の彼女は自分から手伝ってくれようとしているんだ。

 そんなささやかな、いや、この場合は全くもってささやかじゃない思いやりは俺の心に響いたんだ。

 

「いや……

 でも、雪風。いいのか?

 あんなに大きな穴だぞ?」

 

 雪風の思いやりは嬉しくもあったが、俺が空けた穴を埋めるというのは穴の大きさもあって土の量からかなりの重労働だし、土で汚れる可能性もあるし、何よりも自分の不始末を彼女にもやらせるというのは後ろめたさを感じる。

 本音としては情けないとは思うが手伝って欲しいが。

 

「何、言ってるんですか?

 ただでさえ、あなたは「クラス代表」なんですから、クラスの一員としては負担を軽くするのは当たり前じゃないですか?

 それと私はあなたを推薦した身ですし、訓練を指導していますので訓練の時間が削られるのは好ましくありません」

 

「お、おう……」

 

 雪風の全く文句のつけようのない正論に俺は圧倒されてしまった。

 セシリアもさっき、「常識」を理由に箒といがみ合っていたが、雪風が相手だと箒ですら圧し負ける気がする。

 なぜだろうか。

 持っている物が違うとでも言うのか。

 

 本当に那々姉さんみたいだ……

 

 この妙な迫力と真っ直ぐさはやはり、那々姉さんを彷彿させる。

 

「それに―――」

 

 だが、俺の考えは甘かった。

 

「困っている人を助けたくなるのは当たり前じゃないですか?」

 

 目の前の優しさと厳しさを兼ね備えた少女は「天使」か「女神」なのだろうか。

 こんないい子がいるなんて、昨今の人々の『最近の若者は~』と言う発言に俺は反論したい。

 

「雪風~……!!」

 

「って、なんでさらに泣くんですか!?」

 

 傍から見れば女の子に泣かされるという情けない光景(もっとも「女尊男卑」の風潮から珍しくない光景らしいが)が繰り広げられるが久しぶりに感じた人の親切に涙するのは人情だと思う。

 

「いや、だってさ……

 箒はいつも不機嫌だし、千冬姉は厳しいし……

 だから、久し振りに他人から優しくされて……つい……」

 

 だって、目の前の女の子は最初は何というか、俺に対してかなりドライであったけど、友人として接するうちに彼女は誰に対してもそれは同じであることを知った。

 クラス代表を決める際の話し合いでも俺に対してもセシリアに対しても態度を変えないで、しかも俺をある程度は認めてくれた後はしっかりと謝罪もしてくれた。

 何というか、律儀だと思う。

 そんな彼女の親切は本当に身に染みる。

 

「ああ……確かに……」

 

 雪風は箒や千冬姉たちの言動に思い当る節があるのか、いや、あり過ぎたのか目を背けた。

 雪風は最初にあの千冬姉の体罰に物申した生徒だ。

 千冬姉の厳しさには戸惑いを覚えることもあるだろう。

 また、箒に関しては俺だけじゃなく雪風にも色々と当たってくるので思う所があるらしい。

 箒は未だにあの試合の件を未だに根に持っているらしく、セシリアほどじゃないがかなりきつい。

 俺としては全力で俺相手に戦ってくれた雪風にはある種の感謝すらしているのでそう言ったわだかまりはなくして欲しいところだ。

 

「ま、まあ……織斑先生はあなたに期待しているから、あの厳しさじゃないのでしょうか?

 篠ノ之さんもそうかもしれませんし……」

 

 雪風は苦笑しながらそう言った。

 ただ、後者に関してはかなり弱々しく感じるのだが。

 

「そうか?

 いくら何でも厳し過ぎじゃないのか?」

 

 雪風の考える二人の厳しさの理由については俺は疑問を拭うことができない。

 特に箒は理不尽な理由で怒ることも多いし。

 

「いいえ……

 意外と厳しく接する人と言うのはそういうものですよ?」

 

「そ、そうなのか?」

 

 そんな俺に雪風はどこか懐かしむような顔で迷いなく言った。

 こんな雪風の顔は見たことがない。

 そして、

 

「ええ……特に「姉」と言うものはそう言うものです」

 

「え?」

 

 続けて強い意志で彼女はきっぱりと言った。

 それはまるで

 

「……なあ、雪風の家族ってどういう人たちなんだ?」

 

 彼女がそれを知っているのかのようであった。

 魔が差したのか、俺は好奇心で訊いてしまった。

 友達のことを知りたいと言う子ども同士の会話のように。

 その質問に彼女は

 

「……ごめんなさい」

 

「……え」

 

 一瞬、少し顔を俯けてからそれをすぐに拭って謝罪してきた。

 

「ちょっと、他人に話せるようなものではないので……」

 

「え、あ、その……」

 

 あまりに意外過ぎる彼女の反応に俺は謝られているのに罪悪感を覚えてしまった。

 言い訳にはなるが俺は今までの彼女の姿や強さ、何よりも「姉」と言う言葉に対する彼女の思い入れの強さからこんな風になるとは想像できなかった。

 

「ごめん……」

 

 俺は思わず謝ってしまった。

 彼女の過去に対して、俺は興味本位で訊ねてしまった。

 それがどれだけ彼女にとって苦しいことなのか、俺は知らないでやってしまった。

 我ながら不注意にも程があると自覚した。

 

「いいえ、大丈夫です!」

 

 雪風はどこか空元気そうに気にしていないように装った。

 その姿は俺を気遣っての物だということは誰でも解る。

 そう言えば、雪風のこういう姿も初めて見た気がする。

 普段の雪風は何というか、どこか大人びていてクラス委員長と言う感じなのでこう言う明るく振る舞う姿は初めてだった。

 

「だけど……」

 

 それでも俺は心苦しかった。

 どこか、彼女の無理してそうな表情に俺は痛々しさを覚えた。

 そんな時だった。

 

「一夏さん、勘違いしているようですが。

 私は「家族」が大好きですよ?」

 

 雪風はとても優しくて暖かい目で彼女は言ってくれた。

 

「だから、大丈夫です」

 

 彼女のその一言に俺は何も言えなかった。

 

『誰かを『守りたい』のならば、あなた自身が強くなりなさい』

 

 そう言うことなのか……?

 

 彼女が俺にぶつけてきた『守る』と言う意味の重さを俺は感じた気がした。

 きっと、雪風の過去はそんな何か、いや、もしかすると「家族」に関わることだったのだろう。

 そんな彼女の過去にまつわることの片鱗を感じた俺は

 

「わかった……ありがとう……」

 

 少し、疑問を残しながらも彼女の気遣いに感謝して話を終わらせようと思った。

 

「はい!じゃあ、片づけを頑張りましょう!」

 

 彼女はあくまでも明るく振る舞った。

 

 でも……いつかは話してほしいな……

 

 俺は今回のことで少しだけだが彼女に距離感を感じてしまった。

 それだけ彼女が今見せている笑顔には色々なものを感じさせられるものだった。

 

 

 

「それでは、今日の訓練を始めましょうか」

 

「ああ」

 

 片づけが終わり、私たちは訓練に入った。

 恐らく篠ノ之さんが来るのは時間の問題だ。

 与えれた時間は長く見積もっても30分程度だ。

 だが、今回の訓練はそこまで時間を必要としない。

 

「では、そこでじっとしていてください」

 

「……?わかった」

 

 私は彼にその場に立っているだけでいいことを伝えた。

 

「では……」

 

 そして、彼が待機しているのを確認すると私は彼の背後に回り

 

―ガシ―

 

「……え?」

 

 彼のことを羽交い絞めするように拘束した。

 

「お、おい!?

 雪風!?何してんだ!?」

 

 私の突然の行動に一夏さんは驚きだした。

 まあ、確かに女子が男子にこういうことをするのははばかられることではあるが、今回はそんなことは関係ない。

 なぜならば今回の訓練はそう言ったことを気にする暇がなくなるものだからだ。

 

「このまま飛びます」

 

「……はい?」

 

 私は今日の訓練の内容を単刀直入に言った。

 

「先程の授業で改めて理解しましたがあなたは飛行に対するイメージを持つ経験と急な出来事に対しての余裕を持ち続けることができていません」

 

「……え?いや、確かにそうだけど……」

 

 今日の彼の失敗の要因を私は一夏さんに分かり易く説明した。

 そこから考えたこの短時間でできる訓練として私は

 

「ですので、これから私があなたを抱えながら高速で色々と飛行をするので慣れてください」

 

「はあ!?」

 

 急降下、急上昇、急加速、急停止などの高機動運動を一夏さんに体感させることで体で覚えてもらおうと思った。

 これなら、篠ノ之さんがあの「説明」を口に出してもほとんど無視して飛行の上達に繋がるはずだからだ。

 私では山口提督や「司令」みたいな機動部隊の訓練はできないと思うが、幸いにも「IS」はイメージだけで動く。

 ならば、体験させるだけで十分のはずだ。

 何よりも飛行中に目を瞑ったりしてしまうことは少なくなるだろう。

 昔、神通さんに

 

『いいですか、皆さん。

 今から、私が全速力で山城さんに突っ込んでいきますので参考にしてくださいね?』

 

 と言われたことを思い出してしまう。

 あの時は『何を言ってるんですか!?この人は!?』と思ったが、よく考えてみたら戦場で目を瞑ることは相手の行動が解らなくなり何よりも攻撃を外すことに繋がる。

 そう言った事態に陥らないように訓練の内に慣れておけといういう意味だろう。

 戦場での興奮状態によって生まれた「度胸」は命取りに繋がる「無謀」になるが、訓練で磨いた「度胸」は冷静さを生む。

 そこら辺をごちゃ混ぜにするのは危険だが。

 

「校庭に肥料をばら撒くかもしれないけど、そこは我慢してください」

 

 私は訓練を開始する前に少し遠回しにあることを注意しておいた。

 

「え?それどう言う意味……?」

 

 私の言っている意味が解らない一夏さんに私は

 

「簡単に言えば、吐くという意味です」

 

「吐くの前提かよ!?」

 

 包み隠さずその意味を伝えた。

 

「では、行きますよ!!」

 

「ちょ、待った!?

 心の準備が―――!!

 て、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」




何と言うか、雪風の訓練に対する姿勢が
某空の魔王を彷彿させるテンションになっている気がします。
雪風もこうしてみると……立派に神通さんの教えを受け継いだな……と思ってしまいます。

後、個人的に思うのは……
なんで箒もセシリアもこういうさり気ない配慮をしないのか……と言いたいところです。
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